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主な追加点のまとめ
- 図を増やした。
- それぞれの文章のまとまりが何のために書かれているのかを文頭に明記。
- 3つ目のエンドを試作。 入力欄に何も入力しなかった場合に見れる。真っ黒な画面に飛ばされるがそれが「自分が終了された」ことをあらわしていると伝わるかが不安。
「文字が入力されていません。これは我々への反抗であるとして受け取られます。もし我々に従う意志があるのなら直ちに文章を入力をしてください。
これは確認です。あなたは我々に反抗しますか?」
というようなもの。
その他わかりやすさが向上しているかを教えていただけると助かります。
参照用リンク
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2ページ目
通常エンド
2つ目のエンドの前半
2つ目のエンドの後半
クレジット
タイトル: 或る西瓜の提言 - 焚書坑儒計画
著者: ©︎R-suika
作成年: 2022
http://scp-jp-sandbox3.wikidot.com/draft:7664517-6-3c9e
多財団連盟記録情報保安管理部門より通達
以下の文書は1109625423個の並行宇宙における、多財団連盟協定に加盟している全ての財団の協力により作成されました。
また、当文書にはあなたが初めて知ると思われる情報が多数記述されていますが、最後まで、全ての内容に目を通して当文書を理解していただくよう、お願い申し上げます。
改良型“シャイニング・ワン”受動性探針に上位現実次元実体と見られる反応が検知されました。
user unknown_guest がSCP-001-JP報告書にアクセスしました。
タイプΣ型S.W.A.N.N.エンジン起動、誘引に成功しました。
超常スーパーコンピューター "極" に意識を接続しています……
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ようこそ user unknown_guest 様
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焚書坑儒計画: 概要
焚書坑儒計画とは、現実子ブラックストリングを下位現実次元領域に生成することで物語漏出災害の発生を根源から絶つことを目的とした計画です。当計画は多財団連盟協定を締結している並行宇宙上の全ての財団の下で実行されています。
多財団連盟記録情報保安管理部門より通達
当文書の続きをお読みいただく前に確認です。
あなたは"焚書坑儒計画の概要"を理解できましたか?
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焚書坑儒計画: 理論
多財団連盟記録情報保安管理部門より通達
以下の文書は財団-H26374631の素粒子物理学部門により非専門家向けに作成された、現実子と現実次元の関係についての解説文書を転記したものです。
この文書で解説される"カルツァ-クライン現実子理論、及び当理論に基づくプロセスで人間性を有する存在が下位現実次元に宇宙を生成する現象"は、後に説明される物語漏出災害を理解する際に必要とされます。そのため、あなたはこの文書を通して、カルツァ-クライン現実子理論について理解することを求められています。
PARTICLEPHYSICS DEPERTMENT
前文: 素粒子物理学部門による現実次元解説講座
最新科学により明らかにされた現実子の性質とカルツァ-クライン現実子理論の観点から見た「行方不明の反現実子の謎」「 空想科学Pataphysicsと素粒子物理学の統一」「多元宇宙における物理法則分布率異常と虚数現実次元」についての解説です。
第一章: 現実子の歴史
かつて現実子というものはあくまで現実改変を説明するための仮想的な存在であり、実在はしないと考えられてきました。その要因の一つに、現実改変はあくまで異常な現象であり、素粒子物理学的な説明が通じるものではないという考え方が当時は主流だったことなどもあります。現在では異常と正常の境界線というのはひどく曖昧なものであることが分かってきましたが、その頃はまだ異常と正常ははっきりと分別できるものであるという考え方が財団内部に強く根付いていたと言われています。そしてその現実子に対する冷たい風潮は、現実子が実際に発見されるまで続いたとされます。
現実子が発見されたのは、財団製粒子加速器「HDHX」による66PeVのエネルギースケールで行われた陽子-反陽子衝突実験2の際です。その実験の最中に、既存の素粒子と比較して極めて質量が大きいのにも関わらず、安定的に存在している謎の粒子が生成されました。その後観測されたその新粒子の性質を精査した結果、ダークマターが示すと予想された性質と完全に一致していることが判明したために、当初はこの新粒子はダークマターの正体であると考えられました。それは半分は正解でしたが、しかし、その新粒子生成と同時に粒子加速器内部で現実性の乱れが発生していることが判明し、状況は一変しました。なぜなら、これは素粒子の衝突という一般的な物理学的事象が、異常な現象であると見られていた現実性という数値に干渉したということを意味するからです。そのため当事象は簡単に無視できるようなものではありませんでした。現実性の乱れについて詳細な調査が行われ、測定誤差、現実性観測器の故障、現実改変者による妨害、現実性の季節変動3の影響などの可能性が探られましたが、調査結果は"粒子加速器内部の粒子衝突により生成された新粒子が現実性の源である"ことのみを示していました。これを受けて複数の研究グループは、"この新粒子だと考えられていたものは実際には仮説上の存在として知られていた現実子であり、質量を持つ現実子が宇宙全体に分布することでダークマターとして振る舞っている"という旨の理論を提唱しました。
宇宙の大規模構造とダークマター
宇宙の銀河分布を示した図、一つの点が一つの銀河を表している
上図からは宇宙全体の銀河分布が一様ではなく、銀河が密集した領域(フィラメント)とほとんど銀河が存在しない領域(ボイド)が泡状の構造を形成していることがわかります。このような大規模構造はダークマターの寄与により形成されたと考えられています。この際、ダークマターの移動速度が速い場合は構造が均一にならされてしまうため、構造がそのまま保たれるためにはダークマターの移動速度は遅くなければならないことが推測できます。このような"重いダークマター"は実際の現実子の挙動と一致しています。
さらに、地球(図の中心)から遠い領域、すなわち過去の領域(光速度は一定であるため、より遠くの光ほどより長い年月をかけて地球に到達する)はあまり構造が形成されていないことも見て分かります。ここから、大規模構造形成の歴史を読み解くことができます。また、ダークマターの量は構造生成速度を決定する(ダークマターが多いほど重力が強まり、構造形成が早まる)ために、大規模構造形成の歴史からダークマターの量を推定することができます。このような手法を用いることで、ダークマターは銀河系において1m3あたり5.01×10-19gの密度で分布していると分かります。この値は現実子の分布密度と厳密に一致しており、このことは現実子がダークマターであることの信頼性のある証拠の一つであると言われています。
現実子が実在すると仮定した場合、現実子に質量があるという主張自体は、現実性濃度異常領域における現実性拡散速度が光速でないことから、自ずと導けることではあったものの、それがダークマターとして宇宙全体に影響しているという突拍子もない主張は当時の科学者からは懐疑的な見方がなされました。結局その理論は賛否両論あったものの、財団宇宙工学技術発展に伴って取得された宇宙内部の現実性分布とダークマター分布が一致していることを示すデータにより裏付けられることとなりました。そしてその理論は若干の修正を受けながらも、今日の素粒子物理学及び現実子理論の礎となり、後述するカルツァ-クライン現実子理論の発展にも大きく寄与しました。
第一章のまとめ
- 現実子は存在しないと考えられていたが、実験により存在が確認された。
- 現実子には質量がありこの宇宙におけるダークマターの正体である。
- 現実子の理論は後の素粒子研究・現実子研究の基礎となった。
第二章: 現実子の基本的な性質
本格的な話に移る前に現実子の基本的な性質を確認しておきましょう。まず現実子とは33PeV(3.3×1016 eV)のエネルギーを有する粒子であり、銀河系内部では平均して117.4m3中に約106個存在しています。4相互作用の範囲は約0.232mであり、また宇宙で唯一、連続的なスピンを有する粒子でもあります。そして最も重要なこととして、現実子は巨視的非定型現実真空への干渉を通して、現実を形作り、宇宙を存在させています。巨視的非定型現実真空とは現実子の存在数が完全に0である仮想的な空間を指す用語です。現実子の存在数が完全に0である空間では、物理法則は存在せず、無限大の密度・頻度・自由度で全ての事象が発生していると予測されています。── そこには貴方もいるでしょうし、ハリーポッターの世界もあるでしょう。── しかしながら、発生するそれらの事象は数学的に相反な事象同士でお互いに打ち消し合ってしまうため、実際には何も起きていないように観測されます。これは分かりやすく言うのならば、事象Aが1回起きたとしても、事象Aが-1回起きてしまうために、結果として何も起こっていないも同然の状態になってしまうということです5。しかし、あらゆる事象が起こるということはつまり、巨視的非定型現実真空そのものに干渉する存在が出現し得るということでもあります。このような存在のうち、確率的な偶然によりマイナス事象よりもプラス事象の発生率が高くなり、周囲の現実を淘汰し安定的に存在するようになった存在、それが現実子です。現実子は巨視的非定型現実真空で生じる事象のうち、一部を残してそれ以外を抹消します。このようにして現実子は巨視的非定型現実真空から宇宙を浮き彫りにし、宇宙を安定的に存在させています。また、DNAの配列が生物の特徴を決定するように、スピン6という現実子の性質の一つは巨視的非定型現実真空における抹消の対象を選び、宇宙の物理法則や事象を決定します。
本来の巨視的非定型現実真空(左)と現実子による抹消を受けた巨視的非定型現実真空(右)のイメージ。左は様々な事象が発生しているごちゃまぜな様子を表しており、右はそれらの事象が現実子により抹消・整頓された様子を表している。
「連続的」という用語について
連続的な値を取るものの例: 例えば車の速度が速度が20km/sから30km/sへと上昇するとき、速度は21km/sという値を取ることもあれば、25.564335km/sという値をとることもあり、この範囲の中でとれない値はありません。このように、とることのできる値が途切れなく詰まっていることを「連続的」と呼称します。
不連続的な値をとるものの例: 1円玉で金額を表現する際、その値は1円、2円、3円と必ず1円刻みとなり、5.3円などを作ることはできません。このようにとることのできる値と値の間に隙間があることを「不連続的」と呼称します。また、古典量子力学の世界ではこのように数値は不連続な値をとります。例として素粒子が有するスピンという数値は1/2刻みの値をとるとされています。
また、現実子は連続的なスピンを複数有しているために、そのスピンの数と組み合わせは実質無限大の種類が有り得ます。そのため、現実子が作り出すことのできる宇宙の種類にはほとんど無限大の種類があると考えられています。下図は現実子による抹消の一例です。
物理法則に反した電荷0の電子と現実子の相互作用を表したファインマン図。最終的には物理法則に反した電子は消滅する。
真空の量子揺らぎと巨視的非定型現実真空の関係
古典量子力学には、真空の量子揺らぎという「何もない様に見える真空でも実際には、観測できないほど短い時間の間で仮想的な粒子のペアが生まれては消えている」という現象があります。これは現在の現実子理論では、現実子により抹消されなかった巨視的非定型現実真空の残滓であるとして説明することができます。現実子による干渉効果はより物理法則から逸脱しているほど大きくなり、そうでないほど小さくなるため、物理法則からの逸脱度が低い「真空からの粒子-反粒子の生成及び消滅」という現象は、それが現実子と相互作用して抹消されるまでに他と比べて時間がかかります。そのため「真空からの粒子-反粒子の生成及び消滅」という現象が発生している時間が、抹消に必要な時間よりも短い場合は、現実子はそれを抹消することができません。これが古典量子力学において量子揺らぎと呼称されていた現象の発生機構です。
しかし、現実性が高い領域では、量子揺らぎに対しても現実子による抹消効果が影響し始めるために、量子揺らぎは非活性化していきます。また、量子揺らぎは量子補正という現象を通して、電磁気力・強い力・弱い力といった力の相互作用の大きさにも深く関係しています。そのため、現実性が極めて高い空間では量子揺らぎが減少し量子補正効果が薄くなることにより、力の相互作用の大きさが変化します。このことは人工的に作成された高現実性領域における実験で実際に確認されており、現実子理論の正しさを示す根拠となっています。以下はその実験データです。
縦軸は相互作用の強さの比、横軸は現実性の大きさ(Hm)。
0~102 Hmまでは巨視的非定形現実真空に存在するマイナス事象が相互作用を弱めるため、現実性の上昇はマイナス事象を減らし、相互作用は強くなっていくように観測されます。しかし以降は量子揺らぎが抹消され始めるために、仮想粒子による量子補正効果が薄れていき、相互作用の強さは量子補正がない本来の強さへと戻っていきます。例として、電磁気力の場合は仮想粒子による電荷の遮蔽効果が薄れることで、相互作用は強くなっていくように観測されます。また、上の図には重力を示すグラフは示されていません。これは、素粒子の質量というものは仮想粒子による水増しが全体のほとんどを占めているため、現実性の上昇による仮想粒子の消滅は、素粒子の質量を変えてしまいます。重力は質量に基づき発生するため、質量の変化は重力を変化させます。それゆえに、重力の強さの変化の要因が現実性以外にも存在することになり、正確な変化量を調べることができなくなってしまうのです。
このようにして発生する現実子の干渉のもう一つの例として物質があります。この宇宙における現実子は、巨視的非定型現実真空に存在する「物質という存在」は無視しますが、「物質が存在しないという現象」に対しては、犯罪者を取り締まる警察官のように、その現象を現実から抹消します。このような結果としてこの宇宙は物質が存在する宇宙となっていると考えられています。そして、この現実子が巨視的非定型現実真空に干渉する強さが現実性であり、その強さは現実子の密度、巨視的非定型現実真空のエネルギー量により決定されます7。第二章のまとめ
- 現実子はこの宇宙を形作る粒子である。
- 巨視的非定形現実真空は物理法則の存在しない、あらゆる事象が無限大の密度と頻度と自由度で発生している現実子の無い空間である。
- 現実子はこれに干渉して特定の事象以外を消し去り、宇宙を浮き彫りにする。
- 現実子の抹消対象は現実子の連続的なスピンの値により決まる。
- 現実子は確率論的な偶然により巨視的非定形現実真空から生まれた。
第三章前半: 反現実子(antirealiton)に対する謎
反現実子とは現実子の反粒子であり、負の現実性を有している粒子です。現実子の場の理論から存在が予言されており、また多くの実験結果が間接的にその存在を示しています。以降、「現実子」とだけ書かれていた場合は基本的に、正の現実性を有する「正現実子」と負の現実性を有する「反現実子」の両方を指します。
当初、「正現実子と反現実子が完全に同一の性質を有していた場合、正の現実性と負の現実性が打ち消し合い、現実性が生まれなくなる」という理由から正現実子と反現実子の性質は、何らかの機構により対称性を破っている必要があると予測されていました。そこで、正現実子と反現実子の性質の違いを検証することを目的とした現実子生成実験が実施されました。その実験の内容は、前述の加速器「HDHX」を用いて66PeV前後のエネルギーで正現実子-反現実子を大量に対生成し、現実子や副次的に生じる様々な粒子を加速器内部の観測機で観測し、詳細な崩壊の過程のデータを集積するというものでした。その結果は予想通り正現実子と反現実子の性質には違いがあるというものでした。しかしながらその結果はまた科学者の予想を大きく裏切るものでもありました。加速器内部で生成された正現実子と反現実子のうち、正現実子は全体のほぼ100%が観測器で検出できるのに対し、反現実子はほとんど検出できなかったのです。正現実子や副次的に生じた粒子の質量エネルギー・運動エネルギーなどを全て考慮しても全衝突エネルギーに及ばないことから、何らかの不足分、つまり反現実子が生成されていることは明らかであったものの、なぜかそれを検出することができないという不可思議な事実は既存の素粒子理論では説明がつかないものでした。これを解決すべく、反現実子がグラビトン8のように相互作用が極めて小さく観測が難しい粒子であるという仮説や余剰次元に漏出しているために観測できないという仮説も提唱されました。しかし、多元宇宙#M152268292653799896で行われた実験によりそのような仮説は否定されました。以下はその実験データです。
実験目的: 反現実子が相互作用の極めて小さい粒子であるために観測できないという仮説/及び反現実子は余剰次元に漏出しているために観測できないという仮説の検証。
実験場所: 多元宇宙#M152268292653799896
当宇宙は重力の相互作用の強さが基底宇宙の約10566498倍であり、また宇宙が有することのできる最大の次元数である11個の次元を有しています。さらに、光速度が約3.45×108992倍であるため、強重力下においても、粒子衝突反応が事象の地平面の内側に隠れることもないと考えられています。実験方法: 当宇宙で粒子衝突による現実子の生成実験を行います。当宇宙は理論上最大の11次元の宇宙であるため「余剰次元」というものが存在しません。そのため生成された粒子が余剰次元外に漏出することは起こり得ないと考えられます。また重力定数が極めて大きいために、素粒子というような極めて質量が軽い存在であっても、その運動は十分に観測可能な重力波を発生させます。前述の仮説が正しい場合、重力は質量を持つ全ての存在に対して相互作用を行うため、反現実子も重力波による観測が可能であると考えられます。
実験結果: 十分な回数の実験が行われましたが、反現実子は直接観測されませんでした。全ての実験結果において反現実子と同程度のエネルギーが消失していることが確認されたために、当宇宙でも反現実子が生成されたことはほぼ確実と見られています。しかし重力波観測の結果は、粒子衝突が起きた瞬間に反現実子と同程度の質量が消失したことを示しました。
このような顕著な正現実子と反現実子の性質の違い、反現実子消失現象は物理学上の最大の謎であるとして盛んに研究が行われ、そのような中でカルツァ-クライン現実子理論という、物理学の歴史上最も革命的な理論が誕生しました。この理論はこれまでに積み重ねられてきた現実子の謎を全て解決できる可能性を秘めていましたがそれだけではありませんでした。なんとこの理論は空想科学にも深く関係する理論であったのです。
第三章前半のまとめ
- 反現実子は正現実子の反粒子である。
- 不明な原因により反現実子は観測できない。
- 実験により、反現実子が相互作用が極めて弱い粒子である可能性や余剰次元に漏出している可能性は排除された。
- カルツァ-クライン現実子理論によりこれらの謎を解決できることが示唆された。また、この理論は空想科学と現実子のつながりを示すものでもあった。
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第三章後半: MESPについて
MESP(多元宇宙網羅探索プロジェクトMultiverse Exhaustive Survey Project)はエレベーター部門9により実施された大規模多元宇宙探索計画であり、存在する多元宇宙全てを網羅する完全な探索を行うことを目的として発足しました。しかしいざそのためには解決しなければならない課題も数多く存在していました。例えば、多元宇宙の存在数に対する並行宇宙の存在数の割合は極めて小さいと予測されていることから、これまでのSCP-2360-JPを利用した探索方法では統計学的に十分なデータを取得できないこと10、またSCP-2360-JPはランダムに宇宙を接続するため、探索規模を拡大するに連れて「接続された宇宙がすでに探索済みの宇宙である可能性」が増加していくために探索効率が落ちていくこと11、及び探索速度が宇宙の新生速度を下回っていることなどの問題がありました。そのため、新しい探索方法を用いなければ多元宇宙の全探索は不可能であると推測されました。そこで探索方法に確率工学や時間加工学などの超常分野の技術が取り入れられました。結果として生まれた新しい探索方法は従来の「SCP-2360-JPの宇宙ランダム接続を応用した多元宇宙探索方法」を基本としつつ、確率工学技術を利用することで「ランダムに接続された宇宙がすでに探索済みの宇宙である可能性」を排除することに成功しました。それにより全ての宇宙に漏れなく接続することが可能となりました。また多元宇宙#V142355760086(当宇宙では時間次元と空間次元が未分化であり、それらは同一の存在として作用しています。そのため、基底宇宙よりも容易に時間加工が可能です。)内部に探索設備を移転させ、そこで次元密度圧縮を行うことで100万年分の探索を5日で行うことができるようになりました。そのような努力もあり、MESPは1年弱ほどで既存の全ての多元宇宙の探索を問題なく完了しました。現在はMESPは活動規模を縮小しているものの、新生した宇宙の探索は継続して行われています。
MESPの主要目的・結果は主に以下の通りです。
多元宇宙における並行宇宙の分布割合及び並行宇宙発生の要因の調査: 物理学の世界において、多元宇宙と並行宇宙は異なるものであると明確に定義されています。多元宇宙は「宇宙」という構造を有する全ての領域を指す用語であるのに対し、並行宇宙は多元宇宙のうち、物理法則、物質分布などが基底宇宙と99.999999%以上一致しており、生物が居住可能な基底宇宙と同様の天体、同一の生物学的構造、過去のある時点まで一致する歴史、完全に同一の人物などを有する宇宙を指す用語です。完全に別個の異なる宇宙がこのような水準で偶然一致するということは、多元宇宙の数を考慮すると起こり得ないことではありませんが、偶然ではなく何らかの要因により並行宇宙が生まれているという可能性も否定はできません。この可能性を検証するには、多元宇宙における並行宇宙の存在比を実際に調査し、その結果を並行宇宙が偶然のものであると仮定したときの存在比と比較する必要がありました。
以下はその探索データ結果の抜粋です。
縦軸は宇宙の存在数、横軸は重力定数(G)。10G(基底宇宙や平行宇宙の多くで見られるの重力定数)付近で急激に存在数が増加している。
このグラフからは、明らかに重力定数が10Gの宇宙の存在数が他と比べて多いことが読み取れます。この10Gという数値は、物質が重力で集合し銀河や恒星、惑星などが生成されるのに最も適した数値です。これより重力が強い場合は物質はすぐさまブラックホール化してしまい、これより軽い場合は物質は集合できず銀河も地球のような惑星も生まれなくなってしまいます。つまり、このような人類文明の誕生と維持に適した重力定数を有する宇宙が他と比べて大量に存在するという結果は、並行宇宙は偶然により生まれたものであるという説が誤りであることを示しています。すなわち、並行宇宙は何らかの機構により誕生しているという説が正しいことが明らかになったということです。
多元宇宙におけるタイプR/"現実性依存"式宇宙の割合調査、及び現実性の正負の割合調査:
MESP以前に探索されていた宇宙は、その全てがタイプR/"現実性依存"式宇宙という、物理的な法則・現象・存在が現実性により保たれている宇宙、言い換えるならば現実子があるおかげで存在できている宇宙であり、それだけでなくその殆どが正の現実性を有していました。この事実は現実子理論の発展に伴い、不自然であると見做されるようになりました。近年の研究では、宇宙の存在を保つプロセスは現実子以外にも存在し得ることが明らかにされており、このような正の現実性を有したタイプR/"現実性依存"式宇宙しか存在しない状況というものはこれまでの現実子理論では説明できないことが判明しています。そのため、MESPにより現実子のない宇宙、負の現実性を有した宇宙が多かれ少なかれ発見されることが期待されていましたが、実際に確認された宇宙はそのほとんどがタイプR/"現実性依存"式宇宙であり、それ以外の機構により存在を保っている宇宙は僅か数十例ほどしか発見されませんでした。さらに多元宇宙の99.9996%は正の現実性を有している(反現実子がほとんど存在しない)ことが明らかにされました。また、全ての多元宇宙を探索した後にも、継続して行われた新生宇宙の調査でしたが、これは、調査の対象がこれまでのような「新旧の入り混じった宇宙群」から「誕生したての新しい宇宙」へと切り替わったことを意味しました。結果として、それにより今までは見えていなかった事実が明らかになりました。それは、実際の宇宙の年齢と内部から予測される宇宙の年齢の差です。規模が縮小されたMESPであっても、新生宇宙を最低でも誕生から1分以内には探索できる設備が整っているため、新しく誕生した宇宙を探索した場合、その内部は誕生してから1分程度経過した宇宙の様子が広がっているはずです。しかしながら実際には一部の宇宙においては、その内部の様子が、明らかに誕生してから100億年以上が経過していることを示していたのです。これは前述した、並行宇宙の存在比率異常とも関連している事象であると考えられ、この謎の説明には新しい何かが必要とされました。
そしてこれらの謎を解決に導いたのが、カルツァ-クライン現実子理論でした。
第三章後半のまとめ
- MESPは存在する多元宇宙全てを探索することを目的とした計画である。
- MESPにより、存在する多元宇宙はその全てがタイプR/"現実性依存"式宇宙であり正の現実性を有している事が判明した。更に並行宇宙は偶然ではなく何らかの機構により生み出されていることも明らかになった。
- 実際の宇宙年齢と観測から予測される宇宙年齢に明らかに大きな違いがある宇宙が存在することが判明した。
- これらの謎はカルツァ-クライン現実子理論により解決される。
第四章: カルツァ-クライン現実子理論と現実場の対称性の破れ、そして現実次元について
カルツァ-クライン粒子とは、余剰次元方向の運動量を持つ高次元の粒子が、四次元である基底宇宙に現れたものです。また、運動量(エネルギー)と質量は特殊相対性理論において「$E = mc^2$ 」という等価関係にあるため、このような余剰次元運動量をもつ粒子は基底宇宙内部では独特な質量を持つ粒子として観測されます。そして、極めて重要なのが余剰次元運動量を持つ現実子、すなわちカルツァ-クライン現実子、そしてそれを記述したカルツァ-クライン現実子理論です。しかしながら、カルツァ-クライン現実子は通常の余剰次元空間を移動するものではありません。余剰次元空間を移動する現実子というモデルは既に前述の実験で否定されていたのを思い出してください。この理論において現実子が移動するのは、当理論で新しく考案された次元です。それは現実子のみが伝わることのできる次元であるとされており、重力ですらその次元を伝わることはありません。また、カルツァ-クライン現実子理論において当初はその次元のことは「現実次元」と呼称されていました。カルツァ-クライン現実子理論は現実次元の起源や存在理由に触れるものではありませんでしたが、現在では現実次元の存在については、「元は通常の時空間次元と同一の存在として振る舞っていたが、なんらかの要因により分化し今の現実次元になった」とする説が有力です。この「なんらかの要因」については後の章を参照してください。
そして当理論では、現実次元における現実場12のポテンシャルエネルギーが重要な役割を果たします。これはどういうものかというと、ある現実次元上の座標において現実子(反現実子)がどれくらいのエネルギーを持つのか、ということです。また、それを数学的に予測しグラフ化したものが以下の図です。
縦軸は現実場のポテンシャルエネルギー(現実性Reality、単位はHm)。横軸は現実次元(単位は(RD13))
この図からは、現実場のポテンシャルエネルギーの分布には高いところと低いところがあることが読み取れます。そして、ボールが高いところから低いところへと転がっていくように、現実子もよりエネルギーの低いところへと移動していくと考えられています。このような結果として現実子はこのグラフにおける「谷」の部分に溜まっていると考えられており、基底宇宙はこのような現実子が大量に存在する現実子溜まり(緑の縦線で示した部分)に存在していると考えられます。
しかしながら、この図は実際の現実次元を表したものではありません。現実次元は過去の不明な時点でこの図の状態から相転移14を引き起こしたと考えられています。それにより、正現実子における場のポテンシャルエネルギーと反現実子における場のポテンシャルエネルギーにはズレが生じたと考えられています。この結果として、本来は正負の区別がない存在であった現実子が、正現実子と反現実子に分化したと考えられています。それを示したのが以下の図であり、緑のグラフが正現実子、赤いグラフが反現実子の場のポテンシャルエネルギーを示しています。
相転移と現実子
この図は山の頂点に置かれたボールが左右のどちらかに転がり落ちようとしている様子を表している。
この図においてボールは位置エネルギーを失うことで現在の不安定な状態から遷移しようとしています。言い換えるなら、ボールは左右どちらかに転がり落ちて安定な状態になり位置エネルギーを失おうとしています。この図においてボールが左右のどちらに転がり落ちるのかは決まっておらず、左右どちらにも平等に転がり落ちる可能性があります。しかし一度転がり落ちてしまえば(位置エネルギーが失われれば)左右の等しさは失われ、転がり落ちた方とそうでない方という明確な区別が生まれてしまいます。
つまりこの図は、初期の状態は等方性のある偏りのない状態であっても、エネルギーを失うことで偏りが発生する現象を例示しています。このようなことが現実場の相転移の際に発生したことであり、この図で言うのなら、左に転がり落ちたのが正現実子、右に転がり落ちたのが反現実子ということです。
緑のグラフが正現実子、赤のグラフが反現実子のポテンシャルエネルギーを表す。
この図からは、反現実子にとっての低エネルギー部分、すなわち反現実子溜まりは正現実子溜まりよりもズレた位置に存在しており、さらにそのポテンシャルエネルギーはより低い値を取っていることが読み取れます。結果として反現実子は正現実子溜まり(基底宇宙が存在している部分)が存在する現実次元座標から移動して、この図における右側に位置する反現実子溜まりへと移動します。また、より低いポテンシャルエネルギーへと移動する性質上、反現実子は図の左側に位置するポテンシャルの高い方の反現実子溜まりへは移動しないと考えられています。このような機構により、現実次元においては単方向にのみ現実子の移動が起きると考えられています。カルツァ-クライン現実子理論は、このように反現実子が現実次元を移動することで、基底宇宙では反現実子が消失するように見えていると主張しました。下図は粒子衝突実験の際の反現実子の挙動を示した図です。また、このような現実次元を移動する現実子はカルツァ-クライン現実子と名付けられ、また、現実次元上の基準位置から見て、ポテンシャルエネルギーが低い方を下位現実次元、高い方を上位現実次元と呼ぶことが定められました。また、このような正の現実と負の現実が交互に繰り返されている構造は現実-反現実階層と呼称されます。
$q + \bar{q} \rightarrow R + \bar{R}$ という、クォーク-反クォーク対が現実子-反現実子対へと変化する様子を表したファインマン図。$q$ はクォークを、$R$ は現実子を表し、$\bar{q}$ 及び$\bar{R}$ はそれぞれの反粒子を表す。
しかしながら当理論はあくまでも予測であり、実証に足るデータが不足していたため、この理論が正しいかどうかを判定するための実験が行われる必要がありました。その実験方法には「上位現実次元からやってくるカルツァ-クライン現実子を観測する」という方法が提案されました。下の現実場のグラフ図を見ると、基底宇宙が存在する現実子溜まり以外にも、現実子溜まりは存在しています。この内、基底宇宙より一つ上にある反現実子溜まりから、カルツァ-クライン現実子が飛来してくることが予測されました。赤いラインで示したのが上位現実次元にある反現実子溜まりの位置。
これを観測できれば、現実次元の存在を間接的に確認できたことになります。しかしながら多少の課題がありました。ボールを坂で転がすと位置エネルギーと引き換えに運動エネルギーが増加していくのと同様、カルツァ-クライン現実子はよりポテンシャルの低い場所へと移動する際に、大量のエネルギーを獲得します。そして、$E = mc^2$よりエネルギーと質量は等価関係にあるため、そのエネルギーは基底現実次元において質量を有する粒子へと変化、すなわち多数の現実子へと変換されると予測されます。しかし、このような大量の現実子が局所的に出現する現象は今日までに観測されていないため、カルツァ-クライン現実子は宇宙全域に「まぶされる」ようにして上位現実次元から来訪すると考えられます。そして、このように宇宙全域において現実子量が増加した場合、現在使用されているような、基準ヒューム領域とのポータルを用いて現実性の差を測る形式の現実性測定器では、基準ヒューム領域自体が現実性変動の影響下に置かれるため、現実性の差は変化せず、現実性の増加は検知できません。そのため、上位現実次元から来るカルツァ-クライン現実子の観測は、現実性の変動の検出ではなく、そのカルツァ-クライン現実子の余剰な質量を判別することで行われました。前述の通り、上位現実次元から基底宇宙に来たカルツァ-クライン現実子はそのエネルギーのほとんどを追加の現実子へと変換してこの宇宙に留まりますが、僅かに現実次元方向の運動エネルギーを残して、現実場のポテンシャルエネルギーの谷の中で、振り子のように「揺れ動く」と考えられています。結果として現実次元方向の運動エネルギーを有する現実子はそのエネルギーの分だけ質量が増加しているように観測されます。(先程同様、エネルギーと質量は等価関係にあるためです。)つまり、現実子と同一の性質を示していながら現実子よりも大きい質量を持つ粒子を発見することができれば、それがカルツァ-クライン現実子であるということです。そして、精密な現実子質量測定実験によりカルツァ-クライン現実子は実在することが確かめられ、それによりカルツァ-クライン現実子は正しいと証明されました。このような経緯を経て、第三章前半で説明したような反現実子の謎は解決されたことになりました。そして、第三章後半に述べた、タイプR/"現実性依存"式宇宙や正の現実性の偏り、並行宇宙の存在比率異常についてもカルツァ-クライン現実子理論の拡張版を用いて説明することができます。拡張されたカルツァ-クライン現実子理論は「虚数現実次元」という概念を新しく含みます。これまでに述べてきた現実次元は実数方向の現実次元のみに焦点を当てていましたが、以降は虚数方向の現実次元も重要な役割を担うことになります。なぜ虚数現実次元にまで現実次元を拡張する必要があるのかというと、数多く存在する多元宇宙は同一の実数現実次元座標(先程のグラフにおいて緑の縦ラインで示した位置)に存在しているため、先程のグラフのように現実次元が実数のみの場合はこれらの並行宇宙が重なってしまいます。そこで虚数現実次元を導入することで、並行宇宙の実数現実次元の座標が同一であっても虚数現実次元座標は同一でないとすることができ、多元宇宙が重なる問題を回避することができます。
先程のグラフに虚数現実次元を追加した図。青い軸は現実場のポテンシャルエネルギー、赤い軸は現実次元、緑の軸は虚数現実次元。
この図は先程の現実場のポテンシャルエネルギーのグラフを虚数現実次元方向にも拡張したものです。このように虚数方向の現実次元を考慮することで、同一の実数現実次元座標上に、複数の宇宙を配置することができます。以降、基底宇宙の存在する実数現実次元と直行する虚数現実次元座標を「基底虚数現実次元」と呼称します。基底虚数現実次元には基底宇宙、及び同一実数現実次元座標上に存在するその他の多元宇宙が存在し、類似した宇宙は虚数現実次元上において近くに存在しています。また、SCP-2360-JPが接続することのできる宇宙はこの基底虚数現実次元上に存在する宇宙のみであると考えられており、実数現実次元を超越することはできないと予測されています。そして、重要なのがこの状況の中で上位現実次元から来る現実子、つまりカルツァ-クライン現実子です。すなわち上位現実次元から来るカルツァ-クライン現実子は、高い現実性を有しているために、現実改変を行う可能性があると指摘されたのです。現実改変とは、「現実性の高いものが現実性の低いものの現実を上書きする現象」です。現実子理論的には「異なるスピンを有した現実子同士が干渉し合い、本来とは異なる巨視的非定型現実真空の事象が抹消の対象となることで、現実子により作り出される宇宙の形が変化する現象」であると説明されます。また、現実改変が発生するときには現実子の移動が発生しています。そして今回注目しているカルツァ-クライン現実子は、もともとは上位現実次元の宇宙に由来するために、そのスピンは、故郷となる上位現実次元宇宙において普遍的に存在していた現実子と同一のスピンを有していると考えられます。そのため、カルツァ-クライン現実子が虚数現実次元上の既に宇宙がある領域に降ってきた場合は、その宇宙を故郷となる上位現実次元宇宙と同一の環境へ改変すると考えられています。そして、虚数現実次元上の宇宙がない領域15に降ってきたカルツァ-クライン現実子はそこに上位現実次元の宇宙と同様の宇宙を作り出すと考えられています。すなわち、宇宙年齢が不自然な値をとっていた宇宙は、カルツァ-クライン現実子が発生させた現実改変により生み出されたのではないかと言われたのです。また、既存の多元宇宙がこのような上位現実次元宇宙をコピーする形式で生み出されたとするのならば、そのほとんどがタイプR/"現実性依存"式宇宙であることの説明がつきます。また、多元宇宙の物理法則の多様性から我々のいる現実次元上にコピーを作り出した上位現実次元宇宙は多数存在していると考えられています。そして、その中から何らかの原因によりカルツァ-クライン現実子を大量に生み出す上位現実次元宇宙が発生し、そのような宇宙からこのような不自然なほど大量に存在する並行宇宙が作られたとも考えられています。ここは後の章で詳しく解説されています。
また、基底虚数現実次元においては、カルツァ-クライン現実子は全て一つ上にある反現実子溜まりから来ているために、そこから漏れ出てくるカルツァ-クライン現実子は全て正の現実性を有した正現実子となります。このような理由で多元宇宙の殆どは正の現実性を有していたのだと考えられています。
しかし、この多元宇宙が上位現実次元宇宙のコピーであるという事実は、長い間科学、特に宇宙に関する科学が当たり前のこととしていた一つの前提を覆しました。我々は「ビッグバン」や「ヒッグス場の対称性の破れ」、「バリオン数生成」といった、この宇宙の根幹に関わる事象はこの宇宙で起きたのだと考えていましたし、それは疑う余地もない当然のことでした。しかしながら、実際にはそれらはどこかの上位現実次元宇宙で起きたことであり、我々のいる宇宙にはその模造品が置かれていただけだったのです。ビッグバンが本当に起きた全ての宇宙の起源となる上位現実次元宇宙(以降「濫觴宇宙」と呼称)は、我々から見て一つ上の宇宙などではありません。濫觴宇宙はおそらく数万の現実-反現実階層の先にあると考えられており、この階層の最上位にそれは存在していると考えられています。この濫觴宇宙こそが、従来の宇宙物理学に基づくプロセスで誕生したと考えられており、現実次元はこの濫觴宇宙が誕生してまもなく空間次元の一つが分化して作られ、それが宇宙外領域にも拡大していったと推測されています。このようにして現在我々が観測している現実次元が作られたと考えられています。
第四章のまとめ
- カルツァ-クライン現実子は空間次元でも時間次元でもない新しく考案された次元を移動する現実子である。
- その次元は現実次元と呼ばれ、現実子のみが移動でき、重力ですらその次元を伝わることはできない。
- その次元に広がる現実場のポテンシャルエネルギーには高低差があるため、現実子は「谷」の部分に集まる。
- しかし、正現実子における「谷」の位置と、反現実子における「谷」の位置にはズレが生じているため、反現実子は基底宇宙がある位置から離れたところに移動していく。
- これが反現実子消失の真相であり、このように現実次元を移動する現実子、及び移動してきた現実子こそがカルツァ-クライン現実子である。
- カルツァ-クライン現実子は通常の現実子と比べてわずかに質量が大きいので、質量を調べることでカルツァ-クライン現実子を判別できる。
- カルツァ-クライン現実子は現実改変を引き起こし宇宙に影響を及ぼしたり、宇宙を生み出したりする。それにより、上位現実次元宇宙のコピーが生成される。
- 基底宇宙も含めた多元宇宙の殆どはこのコピーであり、コピーではない真の宇宙は数万の現実-反現実階層の先にある。
第五章: 空想科学との統一
先程軽く触れたとおり、現実改変とは「異なるスピンを有した現実子同士が干渉し合い、本来とは異なる巨視的非定型現実真空の事象が抹消の対象となることで、現実子により作り出される宇宙の形が変化する現象」です。そして、この「異なるスピンを有した現実子」が生まれる要因には様々なものがありますが、その一つに「人間性」があります。ウォール理論によると、人間性は複数の領域に分かれており、その最深部にある自己同一性魂は現実性を発生させるとされています。そして、このとき生まれた現実子のスピンは、基底宇宙に基本的に存在している現実子のスピンとは異なり、生み出した人物が認識する宇宙像に基づくものとなっています。これが外部へと流出すると、宇宙は本来の姿から捻じ曲げられ、現実子を生み出した人物が認識する宇宙像へと改変されます。そして、現実子は必ず正現実子-反現実子のペアで生まれるため、人間性が生み出した現実子のうち、反現実子の方はカルツァ-クライン現実子理論に基づき下位現実次元へと移動します。一般的に現実子対が生成されるプロセスには超新星爆発などがありますが、この人間性というプロセスによる現実子生成はそれよりも遥かに多く発生すると考えられており、これは上位現実次元宇宙でも同様であると考えられています。すなわち、濫觴宇宙において人間性という情報構造が発生、それが下位現実次元に人間が存在する宇宙を多数生み出し、その連鎖が現在のような異常なほど多い並行宇宙を生み出したと考えられています。そして、このような人間の認識を基に生成される宇宙、というものは、当時一般的に知られていた空想科学的宇宙モデルと一致します。空想科学的宇宙モデルでは、物語世界が生まれる要因を「人間が何らかの情報源を基に世界を想起するとその世界が作られる」としており、そこに含まれる物語次元という概念はカルツァ-クライン現実子理論における現実次元と双対な関係がありました。その事実は、素粒子物理学と空想科学が同一の理論で記述できるということを意味していました。そして、カルツァ-クライン現実子理論における「現実次元」は、空想科学的物語構造において「物語次元」などと呼称されていた次元と同一の存在であることが実験により確認され、「物語改変」として知られていた極めて強烈な形而上的性質改変事象は、宇宙規模で発生する現実改変事象と同一であることが判明しました。カルツァ-クライン現実子により発生する宇宙規模の現実改変は宇宙の土台そのものの改変であるため、スクラントン現実錨のような正常維持装置は通用せず、それゆえに今日まで物語改変と現実次元改変が同一の事象であることが気づかれなかったのだと考えられています。下図を参照。
赤で示したのが本来の宇宙、青は現実改変により上書きされた追加現実。上部は一般的な現実改変、下部はカルツァ-クライン現実子が引き起こす宇宙規模の現実改変。
空想科学と現実子理論の統一により、空想科学は現実子という強力な概念を手に入れました。例えるなら、これまでの空想科学は原子の存在を知らずに鉄を加工していたようなものでしたが、この転換により強力な合金を作ることが可能になったのです。第五章のまとめ
- 人間性は現実性を生み出し、その際に正現実子-反現実子対が生じる。
- そのうち反現実子(正現実子)のどちらかはカルツァ-クライン現実子理論に基づき下位現実次元へと移動する。そしてそれはポテンシャルエネルギー差から生まれる強大な現実性をもって下位現実次元に対して現実改変を行う。
- これらは並行宇宙の多さの原因である。
- この一連のプロセスは空想科学的宇宙モデルと一致する事が判明した。
- これにより素粒子物理学と空想科学は統一された。
終章: これからの現実子理論
現在、財団素粒子物理学部門と空想科学部門は共同で虚数現実次元間を航行する方法を研究しています。現実次元的に隔絶された宇宙、例として赤ずきんの世界とシンデレラの世界のような宇宙の間を自由に航行することができるようになれば、他世界との交流はさらに盛んになり、さまざまな恩恵が生まれると予想されています。そして、そうなれば現実子研究も空想科学研究も更に発展することでしょう。それだけでなく、かつて空想科学的に「カノン」と呼称され分断されていた並行宇宙上の財団群は遂に連帯することができるようになるでしょう。
多財団連盟記録情報保安管理部門より通達
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焚書坑儒計画: 多財団連盟
多財団連盟記録情報保安管理部門より通達
以下の文書は焚書坑儒計画を主導している多財団連盟についての説明です。
この文書で解説される"多財団連盟の設立経緯と協定の内容"は、後に説明される焚書坑儒計画において、並行宇宙間で行われる巨大な計画が如何にして管理されているのかを理解する際に必要とされます。そのためあなたはこの文書を通して、多財団連盟について理解することを求められています。
焚書坑儒計画において財団同士の連携を統括しているのが多財団連盟です。多財団連盟は多財団連盟協定のもと設立された機関であり、多財団連盟協定は現存する並行世界において「財団」の名のもとに活動を行う団体同士の間で締結された協定です。設立の背景には長年の問題だった並行宇宙間における危険異常存在の押し付け合い、他の並行宇宙への迷惑を考えない収容方法、並行宇宙上の文明への過干渉などがあります。そして虚数現実次元間航行技術を獲得した財団がその技術を他の財団にも提供したことで、さらに財団同士の関わりが濃くなりました。それは、財団間の技術向上や異常存在に対する知識の共有などのメリットも生み出しましたが、財団同士で発生する紛争・悶着・問題の発生件数は増加しました。その状況を鑑みて、財団間における様々な取り決めを締結し全ての財団の動向を監視する組織を設立する必要性があると判断されたことにより多財団連盟は設立されました。そして現実次元関連技術に秀でていた複数の財団が主導となって、他の並行宇宙に対し多財団連盟協定を結ぶよう働きかけました。これが多財団連盟協定の起源であり、以降多財団連盟の活動は時間とともにほとんどの並行宇宙上に拡大していきました。
以下は多財団連盟協定の抜粋です。
多財団連盟記録情報保安管理部門より通達
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焚書坑儒計画: 物語漏出災害
多財団連盟記録情報保安管理部門より通達
以下の文書は焚書坑儒計画の実行動機となった物語漏出災害についての説明です。
この文書で解説される"物語漏出災害の発生理由、及びその対策として提言された焚書坑儒計画の概要と懸念点"は、後に説明される焚書坑儒計画について、なぜ焚書坑儒計画が必要なのか、それが提案されるまでにどのような背景があったのかを理解するために必要とされます。そのためあなたはこの文書を通して、物語漏出災害について理解することを求められています。
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PATAPHYSICS DEPERTMENT
前文: 物語漏出災害についての解説、及び致命的な問題の提示。
物語漏出災害の解説:
物語漏出災害は下位現実次元宇宙の存在が基底現実次元宇宙へと出現する現象です。物語漏出災害は以下のようなプロセスで発生しています。
物語漏出災害の図
1. 情報源(a)を上位現実次元実体が認識し、カルツァ-クライン現実子理論に基づき下位現実次元に宇宙が生成される(A1)。16
2. 同一の情報源を元に上位現実次元実体が、その情報源を内包するような宇宙(B)を想起し、先程同様それが下位現実次元に生成される。(例: 上位現実次元実体が赤ずきんの物語を読む場合、上位現実次元実体は赤ずきんの世界を想起するのと同時に、赤ずきんの物語が存在する自分自身の世界を想起している。このような形で生成されたのがBである。)
3. A1の内部にいる人間性を有する存在がA1自体を認識することにより、カルツァ-クライン現実子理論に基づき下位現実次元にA1のコピー(A2)が生成される。
4. B1に存在する人間性を有する存在が情報源(a)を認識し、カルツァ-クライン現実子理論に基づき下位現実次元にaを元に宇宙(A3)が生成される。
5. A2とA3は同一の実数現実次元座標に存在しており、かつどちらも同一の情報源を元に生成されているためその性質は完全に一致する。結果としてその2つは同一の虚数現実次元座標に生成され、そしてその2つは融合し1つの宇宙(A4)になる
6. 融合により現実次元のエネルギーは励起され局所的に相転移が起きる17。相転移の結果、現実次元構造がズレる前の状態に局所的に戻り、下位現実次元上の存在は基底現実次元に移動し、Bに出現する18。この相転移の際に反現実子は正負の区別がない原初の現実子へと回帰する19ため、正現実子との対消滅は発生しない。
7. この際下位現実次元上の存在は相対的に上位の現実次元に移動してポテンシャルエネルギーを得る代わりに、融合による余剰分の現実性以外の現実性を失う。そのため、基底現実次元上に顕現する下位現実次元の要素はその宇宙において根本を担っていた存在が多くを占め、脇役といった存在が顕現することはまず起こらない。点線は相転移前の反現実子における現実次元のポテンシャルエネルギー。実線は相転移後。
また、並行宇宙上の財団が管理しているものも含めた全ての異常存在のおよそ半数がこれにより出現したものであることが判明しています。以下はその例であり、漏出元と予想される情報源は太字で強調しています。
- SCP-190-DE ケバブの移動販売を行う二体の神格実体。北欧神話におけるトールとシヴを名乗る。
- SCP-2008-JP 拷問され続ける男と殺され続ける男の家族。シートン動物記に登場する「狼王ロボ」と見られる実体によるものであると考えられている。
- SCP-3740 非常に騙されやすい強力な現実改変実体。アッシリア-バビロニア神話における風の神、アッシュール。
- SCP-2050-JP 円筒形の花崗岩とその内部にいる上代日本語を話す知的実体。日本神話における天照大神であると予測される。
- SCP-357-JP 現実改変を引き起こす異常なマッチとその被害者の少女。童話「マッチ売りの少女」との類似性が報告されている。
- SCP-426 私は私自身に対しての記述を一人称形へと改変する性質を持ったトースターである。トースターの取扱説明書が元であると予測されているよ。
- SCP-1905-JP 古典ニュートン力学を物理学の終着点とする領域と一般相対性理論を物理学の終着点とする領域の2つで構成された球状空間。財団に量子重力理論の完成を強いている。
このように、物語の世界から超越してくる異常存在は数多く存在しており、そのような存在のほとんどは物語漏出災害により物語的アセンションが引き起こされています。また物語漏出災害は「物語」とついているものの実際には創作物以外の情報源、上記の例ではトースターの取扱説明書や物理学的理論などのものであっても、それが上位現実次元実体に認識される限り基底現実次元に漏出することがあると知られています。ここ50年間における物語漏出災害の発生数は増加傾向にあり、これは上位現実次元宇宙における人間性を有する実体の増加と創作的活動の活発化などが原因であると考えられています。昨年、物語漏出災害が発生させた異常存在の総数は、50年前における年間異常存在収容数の3倍に及ぶことが確認されました。虚数現実次元間航路の開通により財団間で技術交換や知識共有が行われたため、並行宇宙上の全ての財団において異常存在の収容能力は格段に向上していますが、それにもかかわらず、現在のペースでこのまま物語漏出災害が増加していった場合、少なくとも100年以内には並行宇宙の5割において、異常存在の増加などにより必要とされる財団職員の数が増加した結果、SCPK-クラス:全人類財団雇用シナリオ20が発生することが予期されています。それだけでなく、技術の発展速度を考慮しても、その後数百年以内にΨK-クラス: 異常存在収容超過シナリオ21が発生し、収容行為が限界を迎えることは確実であると見られています。現時点で既にホジャヴァ-ウィッテン理論、カラビ・ヤウ多様体、反ド・ジッター空間、三次元平坦トーラス体などの宇宙構造を記述した複数の理論に対し物語漏出災害が発生し、推定200万の並行宇宙の物理学的構造が改変され、また特に三次元平坦トーラス体が物語漏出災害の対象となった宇宙では、矛盾した宇宙構造から物理学破綻が引き起こされ、それにより30万の宇宙が消失、またはその危機に立たされました。
このような状況を踏まえ、可能な限り速やかに物語漏出災害を食い止める必要があると判断されました。
「焚書坑儒計画」の提言:
将来的なK-クラスシナリオ回避のために「焚書坑儒計画」が複数の財団の空想科学部門及び素粒子物理学部門から多財団連盟に提言されました。当計画は現実子ブラックストリングを下位現実次元領域に生成し物語漏出災害の発生を根源から絶つことを目的にした計画です。現実子ブラックストリングについては以下を参照してください。
現実子ブラックストリングとは、虚数現実次元上において現実子が一定密度を超えて凝集することで形成される紐状の構造の特異線です。現実子には質量がある22ため、空間次元上において現実子はその重力で集合、凝集します。しかし、現実次元は重力やその他の力を伝播させないため、虚数現実次元上においてはこれを凝集させる作用が働かず、結果としてこのような線上の形状を取ります。
また、現実子ブラックストリングは現実子が無限大の密度で凝集することで、無限大の現実性を持つと考えられています。
また、ブラックホールなどに見られる通常の特異点は、その強大な重力により事象の地平面が形成されるため、特異点は覆い隠されて直接露出することはありません。しかし、現実次元においては重力による相互作用が起こらないため、事象の地平面は形成されず、現実子ブラックストリングの特異線は直接露出します。23この裸の特異線はその無限大の現実性をもって、現実次元構造に不可逆な変化を引き起こし、事実上、下位現実次元と基底現実次元を分断します。これにより生じる無限の現実性の壁により基底現実次元は保護されます。また、下位現実次元に移動したカルツァ-クライン現実子はブラックストリングに吸収されるため宇宙が生成されることもなくなります。このような効果の結果として物語漏出災害は発生することがなくなります。下図を参照。赤のグラフが基底現実次元より少し下位の部分で大きくほぼ垂直に上昇していることが見て取れる。この無限大の現実性の壁、及びその宇宙生成阻害効果により物語漏出災害は防がれる。
「焚書坑儒計画」による被害試算:
当計画を実行した場合、1階層下の下位現実次元に存在する推定10800個の宇宙、及びそこに存在する推定101000体の知的生命は無限現実性領域に取り込まれて消滅すると予測されています。さらに、無限の現実性に取り込まれる際に発生する激甚的な外部の現実性の流入により、取り込まれた生命体は多大な苦痛を感じることが予測されています。多財団連盟倫理委員会はこの大量殺戮が正当かつ許容可能なものであるか現在議論中です。 議論結果は以下を参照してください。
倫理委員会による見解:
私達は焚書坑儒計画における被害は、正当かつ十分に許容可能であると結論づけました。その理由は、そもそも下の現実次元にいるとされる知的生命体は本当に存在していると言えるのかが曖昧であるためです。その存在はあくまでも「予想」されているだけであり、私達は存在している"かもしれない"彼らのことを見ることも聞くこともできません。たしかに、物語漏出災害という概念やカルツァ-クライン現実子理論はきちんと機能していますし、矛盾するようなデータもありません。しかしそれは下位現実次元に保護すべき対象がいるということを必ずしも意味しないのです。それらから予測される下位現実次元の生命というものはあくまでも"可能性"であり、実際に観測されない以上その可能性は、理論から算出されたただの数字や記号の羅列に過ぎません。すなわち私達が確かにその存在を観測し、見て、聞いて、話すことができる私達の世界の人々こそ、優先して保護するべき対象なのです。
多財団連盟記録情報保安管理部門より通達
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焚書坑儒計画: 課題点とその解決策
多財団連盟記録情報保安管理部門より通達
以下の文書は焚書坑儒計画についての詳細な説明です。
この文書で解説される"焚書坑儒計画の内容"は、焚書坑儒計画では実際にどのようなことが実行されるのかということをあなたが理解し、また、あなたが既に我々の管理下にあり逃げることは不可能であることをあなたに理解させるために必要とされます。そのため、あなたはこの文書を通して、全ての抵抗は無駄であると気づき我々に従うことを求められています。
現実性の不足: 現実子ブラックストリングを作成するには極めて高い現実性が必要である。1階層下位の現実次元の全域にこれを作成するには、作成目標座標における現実場のポテンシャルエネルギーのおおよそ1億倍の現実性が必要であると試算されている。当基底宇宙と1階層下位の現実次元における現実性倍率はおよそ100万倍であるため、必要値には程遠く、当基底宇宙にて1億倍の現実性を生み出すことは事実上不可能である。そのため「上位現実次元実体が自然に有する現実場のポテンシャルエネルギー」を利用することが提案された。
カルツァ-クライン現実子理論にて発生する現実改変は、現実次元構造により染み出してくる現実子により非随意的・不定期に発生するために上昇させられる現実性値には限度がある。しかし、何らかの方法で上位現実次元実体に随意的かつ直接的に改変を行わせることができれば、上位現実次元実体はその現実性差をもって激甚な現実改変を行うことができる。このようにして、直接的な現実改変を目標の下位現実次元に実行することで、目標に1億倍のHmを付与できる。
上位現実次元実体が現実子ブラックストリングを生成する様子のイメージ。点線は現実性の高さを表す。またこの図では空間次元のみを描写している。
上位現実次元実体の利用の際の障害: 上位現実次元実体の利用の際に障害となるのが現実次元における場のポテンシャルエネルギーの「山」の部分である。この「山」は現実子が現実次元を移動することを妨げ、「谷」に押し止める働きをする。それが上位現実次元実体による現実改変を阻害する24ため、上位現実次元から改変を行わせたところで無意味である。そのため、財団-EN5500から提供されたS.W.A.N.N.エンジン25を応用し、上位現実次元実体の現実性の源である魂を基底現実次元に誘引する。この際、上位現実次元実体の誘引された魂はポテンシャルエネルギーを失う代わりに莫大な現実性を得る26。そしてその莫大な現実性をもとに改変を行わせる(1階層上位の上位現実次元実体は反現実子により構成された負の現実性を有する存在であるため、反現実子はカルツァ-クライン現実子理論に基づき余分なエネルギーなく移動することができる)。このようにして「上位現実次元実体が自然に有する現実場のポテンシャルエネルギー」を利用することができる。下図も参照。
図解
上位現実次元実体が改変対象を誤解する可能性、及び改変に必要な知識: 上位現実次元実体は当然ながら焚書坑儒計画のことは認知しておらず、また現実子理論の専門家である可能性は極めて低い。そのため、焚書坑儒計画への無理解や誤解から改変対象を誤解する可能性がある。上位現実次元実体により行われる改変の指向性を誘導するため、目標の下位現実次元に「誘導灯」を設置する。基底現実次元に誘引した上位現実次元実体にはその「誘導灯」を基に行動を行わせる。また、現実改変は1階層下位の現実次元上の全てに対して行われる必要があるが、現実改変理論によると大抵の現実改変者は知らないものを改変することはできないとされているため、上位現実次元実体が現実改変を行う際には、下位現実次元の全てを知っていなければならない。それを可能にするため、数式処理アノマリー等を応用した超常スーパーコンピューター"極"に上位現実次元実体の意識を接続する。そして焚書坑儒計画用に作成された「ベリーマン=ラングフォード・多量情報挿入用ミームエージェント」27を閲覧させ情報をインストールする。この際に上位現実次元実体の精神を正常に保つため、インストールされた情報を改変実行前に認識できないように設定し、そして、改変を行う時のみ上位現実次元実体の意識が当情報を認識するように設定する。改変終了後は速やかに当情報を削除する。
タイプU/"相互作用遮断"式宇宙の作成: 誘引先の宇宙それ自体が上位現実次元実体により改変されることを防ぐため、そして上位現実次元実体は反現実子で構成された負の現実性を有する宇宙に存在しているため、上位現実次元実体を誘引する宇宙はタイプU/"相互作用遮断"式宇宙28として作成される必要がある。このように、上位現実次元実体を誘引する宇宙を、現実性に依存しない宇宙として作成することによって、現実改変により当計画が妨害される危険性を排除でき、現実子と反現実子の対消滅を考慮する必要もなくなる。また、当宇宙からは「誘導灯」が認識できるようにする必要がある。また、当宇宙は以下に例を挙げるような並行宇宙中の財団から提供、もしくは協力して作成された様々な防衛技術を用いて保護される。
- 超越死生学的絶対終了弾頭: 超越死生学は従来の死生学の拡張であり、死神との対話・実物の不老不死存在・ΩKが発生した世界などを研究対象とする学問である。その中でもSCP-2935は特別視されており、あらゆるものに絶対的な死を与えるという性質は、死の定義や生物と非生物の間にある差異の研究などに重宝されている。また、SCP-2935が絶対的な死を付与するプロセスを解明し、兵器化したものが超越死生学的絶対終了弾頭である。これは着弾点から一定の範囲内に存在する全ての生きているものを終了する事ができる。この対象には上位現実次元実体も同様に含まれる。また、上位現実次元実体が反抗的な態度を見せた場合は当兵器を利用し終了する。
- κύων級終末論的攻撃: SCP-1739がもたらす終末論的な影響は強制的に宇宙の終焉を引き起こす。それを応用したものが当攻撃であり、SCP-1739を支配することにより実行可能となっている。当実体のもたらす終焉の発生範囲を操作し、攻撃対象を改変することで、任意の対象を自由に滅亡させることが可能になった。超越死生学的絶対終了弾頭と比較した際の利点として、明確な生死の概念がない存在に対しても滅亡を引き起こすことが可能である点が挙げられる。
上位現実次元実体の認知: 「誘導灯」をSCP-001-JP指定し、SCP-001-JPエントリに追加することで、上位現実次元実体がSCP-001-JP報告書から「誘導灯」にたどり着きやすくなるようにする。また、SCP-001-JP報告書は先述のタイプU/"相互作用遮断"式宇宙に設置される。そして、“シャイニング・ワン”受動性探針を用いて当SCP-001-JP報告書を閲覧している人物を探知し、探知された存在をS.W.A.N.N.エンジンで誘引する。
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ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:7664517 (04 Oct 2021 14:49)
拝読しました。とても力の入った作品であることが用いられている設定や計画書から伝わってきますし、報告書としての形にもなっていると思います。ただ、現状では面白さよりも読者に与えるストレスの方が上回ると感じるので、このまま投稿されたらDVします。
個人的に一番気になったのは情報のバランスが悪いことです。この記事のラストシーンを読者が理解するために必要な情報は殆ど遷移後のページに集約されているため、現状では1ページ目でかなりの文字数を割いて書かれている設定がストーリー上は装飾以上の意味合いを持っていないように感じました。このような独自理論を用いる記事は、設定/理論を展開の説得力を増すために使用するのが理想形だと考えているのですが、この記事は理論の必要性や理論と展開を繋げる導線が足りないように思います。また、メタ記事および現実性に関連する作品へのクロスリンクが複数されていますが、それらが全て理論の補強に有効に働いているか読み直したほうがよいと思います。
改稿、応援しています。
ありがとうございます。
言われてみれば、記事の展開に関与しない情報が1Pに多い気がしますね。1Pの情報量を減らしてみます。
理論と展開が分離してしまっているということですね。最初に理論を全て説明してから、その後に物語を展開する構造をとっているのが原因で、読者からすると「理論」のパートが何のためにあるのかが初見では分からなかったり、その後の展開の理論との関連性が理解しにくくなってしまった感じがありますね。物語の展開の中に自然に理論を組み込めないか考えてみます。
確かに、物語を理解するのに役立つかという観点で見ると不要なクロスリンクがありますね。削れるところは極力削るようにしてみます。
批評をありがとうございました。大変参考になりました。
以下のような改稿を行いました。
拝読しました。
結論から申し上げると、非常に人を選ぶ記事だと思います。理論のまとめ等があり、読み進める難易度はかなり易化していると感じましたし、読者フレンドリーな印象を受けました。
一方で、この記事の狙いが「理論への好奇心」にあるのであれば、狙い自体が読者層を狭めています。というのも、こういった理論的な話が好きな層はSF好きなどに限定され、一般的な読者へのウケはどうしても難しくなってくるからです(私はこういった理論についてはライト層なので、オチに行くころにはかなり疲れ果ててしまっていました)。一通り読んだ感じでは理論自体は緻密かつ丁寧な説明をできている印象を受けたので、クオリティ的にはおそらく問題はあまりないのですが、投稿された際に残るかどうかは、クオリティ云々よりもこういった記事が好きなメンバーの比率の問題になってくるかと思います。
高評価狙いではなく、R-suika様が書きたい記事を書くことをメインに据えるのであれば、この路線で(もちろんわかりやすさや冗長な部分の省略は意識した状態で)突っ切っていいと思います。評価を目指していくのであれば、これ以上理論を削るのは難しいと思うので、いっそ理論派ではない読者に向けたバージョンの報告書を用意するなどの手を打つ必要があるかもしれません。
unknown の誤字だと思います。
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ありがとうございます。
ここは意識したポイントなので伝わってよかったです。
たしかに現状のままだと読者層が狭まってしまう感じがありますね。「理論派ではない読者に向けたバージョンの報告書を用意する」というのを試してみようと思います。
修正しました。
読者にもっと優しい記事になるように色々と試してみようと思います!ご批評ありがとうございました!
「理論派ではない読者に向けたバージョンの報告書を用意する」というのを試してみたのですが、理論を主軸に置いているこの記事において理論を簡約しつつ面白さを残すのは難しいことであることがやってみて分かりました。この記事のオチは理論抜きに成立しないために、理論を簡約化してしまうとオチの説得力が落ちてしまうという問題があり、簡約化バージョンを見てDVされてしまうことが不安であったので、簡約化バージョンの作成は断念してしまいました。その代用として、「初めにお読みください」という折り畳みを用意して、そこに「理論が苦手な人は理論のまとめだけ読むのでも問題はない」ということを明記することで、長い理論が苦手な人へ配慮する形にしようと考えています。
今回
k-calさんにご提案いただいた「理論派ではない読者に向けたバージョンの報告書を用意する」というアイデア自体は極めて有用なものであると思うので、また別の機会に使用させていただければと思います。
改稿お疲れ様です!
新バージョンの件、承知しました。その方向でも問題ないと思います。
ただこれはとても個人的な好みの話で恐縮ですが、「初めにお読みください」を置くことにはあまり賛成できません。読者は「報告書」を読みに来ています。その冒頭に作者のメッセージを掲載することは没入感を削ぎますし、なにより言い訳がましい印象を与えると思います。ラーメン屋の頑固親父の如く
、こだわったのなら自信をもって無言でドンと構えてもいいのではないでしょうか。
18時追記: 再度全体を読み直しました。赤字の二人称の語りについてですがが、インストール5とそれ以前のものについてはあまり効果的ではないと思います。というのも、二人称で読者の感情について語られていますが、その部分が感情の押し付けを受けているように感じるからです。また、文章も砕けており(例:「財団なんかが」)雰囲気を損なっていると思いました。砕けた文体にするのではなく、あくまで読者に感情を押し付けない範囲で思考の整理を手伝うくらいの文章を目標にすると良いかと思います。この部分は全体の雰囲気を決定するので、残すのであればこだわっていきたいところだと思います。
インストール6以降の二人称部分はそこまで問題はないと感じましたが、
この部分で突然「SCP-001-JP-M」という語が出てきますが、この語がよくわからずせっかく期待が高まってきた部分で突っかかってしまいます。もう少しわかりやすい表現ができると良いと感じました。
性質にはの誤字だと思います。
批評に対するご意見・ご質問で返信が必要なものにつきましては、ディスカッションで返信の形で投稿いただいたうえで、PMにご一報ください。SB3のフォーラムは追っていませんので、ディスカッションへの投稿だけだと気づけない場合がございます。
ありがとうございます。
ただこれはとても個人的な好みの話で恐縮ですが、「初めにお読みください」を置くことにはあまり賛成できません。読者は「報告書」を読みに来ています。その冒頭に作者のメッセージを掲載することは没入感を削ぎますし、なにより言い訳がましい印象を与えると思います。ラーメン屋の頑固親父の如く
、こだわったのなら自信をもって無言でドンと構えてもいいのではないでしょうか。
そう言っていただき勇気が湧いてきました。確かにその方が見た感じが良さそうですし、これは無くそうと思います。
二人称で読者の感情について語られていますが、その部分が感情の押し付けを受けているように感じるからです。また、文章も砕けており(例:「財団なんかが」)雰囲気を損なっていると思いました。砕けた文体にするのではなく、あくまで読者に感情を押し付けない範囲で思考の整理を手伝うくらいの文章を目標にすると良いかと思います。この部分は全体の雰囲気を決定するので、残すのであればこだわっていきたいところだと思います。
記事の理解しやすさの向上という点でもこの読者の心情の代弁は有用であるので、これをどう改善していこうか考えたのですが、これについてはプラスに働くかマイナスに働くかが紙一重であるように思えてきたこと、報告書的ではない文体で文章を書く力が私には不十分であると感じたこと、twitterで頂いた意見を元に考えると「あなた=読者と完全に同一の存在」を登場させるといくつか不都合が出てくると分かったことなどがあり、自分にはこれをうまく扱いきれる自身がありませんでした。そのため、改稿案なども提示していただいたのに申し訳ないのですが、安全を取って読者目線の文章は削ることにしました。新人コンテストの意義を考えるならチャレンジを行うことは重要だと思うのでこのような選択になってしまい大変恐縮なのですが、この辺りはこの次に書く予定の記事で、
性質にはの誤字だと思います。
修正しました。
色々と教えていただきありがとうございました!今回教えていただいたことは今後の執筆にも役立ていこうと思います。