【マイクラ部門下書き】SCP-6392 (ponhiro氏の下書きを改稿)

財団記録・情報保安管理局より通達

以下の文書は記録のため保存されたものです。

この文書は現在使用されておらず、情報は更新されていません。 そのため不正確な情報が含まれている可能性があります。

— RAISA管理官、マリア・ジョーンズ

Item#: 6392

Level3

Containment Class:

safe

Secondary Class:

{$secondary-class}

Disruption Class:

dark

Risk Class:

critical

link to memo

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特別収容プロトコル

SCP-6392に関する全ての資料はサイト-230の標準資料保管庫に保管され、SCP-6392-Aはサイト-120の真空無光収容室に収容されます。

説明

SCP-6392は、ビデオゲーム"Minecraft"のバージョン1.12.8に生成された異常なワールドを指します。バージョン1.12.8は開発中であったバージョンの1つでしたが、当該バージョンを用いたテストプレイの最中に発生した事故によってその存在はあらゆる記録から抹消され、一般のプレイヤーはゲームをプレイする際に当該バージョンを選択することが出来ません。

SCP-6392内には現在2 8名のプレイヤー(以下、順にSCP-6392-1から-8)が存在します。SCP-6392-1のゲームIDは"Robert1109"であり、これはMinecraftの開発者の1人であるロバート・A・クリスチャンセンがテストプレイに用いていたIDと一致します。SCP-6392-2のゲームIDは"SelenaD"であり、これはロバートと同じMinecraftの開発者であるセレーナ・ディーツがテストプレイに用いていたIDと一致します。両者ともにゲームのテストプレイ中に発生した事故によって行方不明になっており、2人はテストプレイに用いていたバージョン1.12.8のワールド内のプレイヤーとして封じ込められたとみられています。なお、SCP-6392-3からSCP-6392-8までの実体の身元は判明しておらず、これらの実体は後述するSCP-6392-Aを介して後天的にSCP-6392内部に封じ込められたものだと見なされております。詳細については補遺資料を参照してください。

SCP-6392-Aは2㎥の平面円形状の黒色の時空間異常です。現在、サイト-120の真空無光収容室に収容されています。

補遺 — 事案ログ

以下はMinecraftのバージョン1.12.8のテストプレイ中に発生した事故を記録していたカメラ映像の抜粋です。

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+ fileserv:/S:/6392/files/cylog1.log にアクセス

インシデントログ.6392

メンバー

• Minecraft開発チーム"███" 主任 ロバート・A・クリスチャンセン
• Minecraft開発チーム"███" 補佐 セレーナ・ディーツ

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<記録開始>

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[セレーナは資料を見ながらコーヒーを飲んでいる。]

セレーナ: ロバート ― これホントに大丈夫なの？

ロバート: 何が？

セレーナ: 何が？じゃなくてね。その ― コンセプトは悪くないと思うの。ゲームの中に入ってうんたらかんたら、ってのはまぁ ― ありきたりだとは思うけど、実現出来たら凄いわ。

[セレーナは資料をロバートに見せる。]

セレーナ: でもそれは実現出来たらの話であって、方法論上の問題を有している。無謀よ。0と1でできた電子世界をどうやってこんな複雑な丸い世界と繋げるわけ？

ロバート: 方法論上の問題はあっても、理論上は出来るぞ。というより逆だ、この世界を0と1にするんだ。

セレーナ: それこっちの世界が終わらない？問題を起こしたらクソ会見開かなきゃならないじゃん ― ああ世界が滅べば会見開かなくて済むか。

ロバート: まぁまぁポジティブに行こうじゃないか、セレーナ。俺達は時代の最先端を行くゲームを開発してるんだ、予測不可能なことをしなきゃいけない。それにゲームの世界とこっちの世界を繋げるテストはこれが初めてじゃない ― 別のゲームで何回も成功してる。

セレーナ: はぁ ― いいわ。もし世界が終わるようなことがあれば特設の屋外ステージで会見を開いてもらうけど、貴方がそう言うのなら大丈夫なんでしょう。ゲームモードは？

ロバート: クリエイティブモード。¹

セレーナ: 権限は？

ロバート: Robert1109とSelenaD。Mob設定はオンにしとく。

セレーナ: 了解。指揮は貴方に任せるよ。いつ始める？もうそろそろランチの時間だけど。

ロバート: 今軽くやってしまおう。準備は？

セレーナ: 出来てる。

ロバート: よし、俺たちは今からMinecraftの世界とこの世界の ― [部屋の奥を指さして]あそこら辺をポータルで繋げる。OK？

セレーナ: OK。

ロバート: グッド。それじゃ行くぞ、3…2…1…

[ロバートが手に持っている機器を操作すると、空間が歪曲し始める。]

ロバート: よし、よし！後は ―

[施設内に停電が発生する。数秒後、複数の衝撃音と2人の悲鳴、ノイズ音が発生する。]

[停電が回復する。部屋に2人の姿は無く、部屋に置かれた機器は煩雑に散らばっており、空間の歪曲は元の状態に戻っている。地面に倒れた2つのパソコン ― それぞれロバートとセレーナの所有するもの ― はそれぞれ別のMinecraftの風景を映している。]

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<記録終了>

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その後、他の社員がカメラ映像を確認したことにより事案の詳細が判明し、ロバートはRobert1109、セレーナはSelenaDとしてゲーム内に閉じ込められたことが明らかになりました。また、不明な要因によってゲームモードはクリエイティブモードではなくサバイバルモードのハードコア²になっていました。その後はMicrosoftの社員によって当該事案やカメラ映像はバージョンとともに社外に漏れることなく隠蔽されました。

補遺2 — インタビュー

SCP-6392の存在はSCP-4335に関連する調査のためにMinecraftの開発チームに潜入していたルナ・キャロルによって偶然発見されました。先述のSCP-4335に関する情報を収集していたところ、施設の最上階にある電子ロックで封鎖された部屋内に2つの起動状態のパソコンとサーバーおよび事案についての全文書が保管されているのが確認されました。また2つのパソコンの画面はそれぞれRobert1109とSelenaDのMinecraftの視点を映していました。キャロル含む財団エージェントはこれら全てを秘密裏に回収し、起動状態を維持したままサイト-230の中型物品収容室に保管しました。事案を知る社員などの関係者には記憶処理を施しました。

その後、セレーナとロバートのそれぞれに対してインタビューが行われました。

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+ fileserv:/S:/6392/interview/log1.log にアクセス

インタビュー - セレーナ・ディーツ

メンバー

• 財団潜入エージェント ルナ・キャロル
• Minecraft開発チーム"███" 元補佐 セレーナ・ディーツ

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<記録開始>

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[キャロルは自身のMinecraft IDである"LUNAR"のIDでワールドにアクセスし、会話相手をSelenaDに指定してチャットでの会話を開始する。]

LUNAR: 誰かいますか？

SelenaD: えっ誰？月LUNAR？

LUNAR: あぁ ― ルナ・キャロルです。貴方はセレーナ・ディーツさん？

SelenaD: ええそうよ。え ― どうやってこのワールドに入ってきたの？入るための権限は私とロバートしか持ってなかったはずだけど。

LUNAR: その権限は私が弄りました。今このワールドに入ってこれるのは貴方と私と ― ロバートさんですね。

SelenaD: そうなのね…よく分かんないけど、こっちの世界は貴方には見えてるの？

LUNAR: 画面越しに。パソコンに貴方の一人称視点が映ってます。

SelenaD: え。[ジャンプして]今ジャンプしたんだけどそれ見えてる？

LUNAR: もちろん。四角い世界で生きるのは大変そうです。

SelenaD: え？四角く見えてるの？

LUNAR: え？

SelenaD: そっちの世界と何ら変わらない風景だよ。建物とかは無いし、いかにもMinecraftって感じの世界だけど、四角くない。

LUNAR: そうなんですか？ちょっと試しに木を切ってくれませんか？

SelenaD: めんどくさいんだけど ― まあいいわ。[木を切って]どう映ってる？

LUNAR: 真四角の木の一部が切れて…そこを境に浮いてますね。

SelenaD: まぁ浮いてるのはこっちも同じだね…今6分くらいかけて切ったんだけど、それは伝わってる？

LUNAR: 本当ですか？こっちでは僅か3秒で切ったように見えました。

SelenaD: そ ― そんな。時間の流れが違うのかしら。

LUNAR: まぁそれは置いといて、貴方はこの世界で何をしているのです？資料を見たところ、貴方はこの世界に閉じ込められて3年くらい経っていますよ。

SelenaD: 生き残るのに必死よ。ほら、ロバートのやつ、テストプレイの時に「クリエイティブモードに設定してる」とか言ってたのに、この世界はサバイバルモード、しかも最高難度のハードコアモードよ。一度死んだらやり直しできない。モンスターも強い。一時停止も出来ない。クソゲーよこんなの。

LUNAR: クソゲー…まぁうん、開発者が言うのもどうかと思いますが ― よく死なずに生きていけましたね。

SelenaD: 目標があったからね。

LUNAR: 目標？

SelenaD: ロバートをね、このダイヤ剣でぶっ刺そうと思ってるのよ。普通にこんなバカげた事に巻き込まれて恨んでるし。…ノった私も悪いけど。

LUNAR: なるほど。ロバートは？

SelenaD: 同じワールドの…どこにいるかは分からないけど、私から逃げてる。え、この会話って個人チャットだからアイツには見えてないよね？

LUNAR: そうですよ。

SelenaD: そっか。ところで、貴方は誰なの？ルナ・キャロルなんて名前は聞いたことない。どこの部署の人？

LUNAR: そうですね ― 私は財団という所に務めています。貴方のような異常な事物を調査する組織であり、貴方の身柄…身柄？は、パソコンやサーバーごと組織に回収されました。

SelenaD: え、メンインブラックか何か？…回収される前は私どこにいたの？

LUNAR: 貴方達の存在はMinecraftの会社の奥底に放置されていました。一応管理自体はされていましたが、貴方達の存在を指し示す一切の証拠、事案のログなどはすべて隠蔽されていましたよ。

SelenaD: あら。じゃあ会見を開く必要はないわね。

LUNAR: そんなことを心配していたんですか。…それにしても、ロバートは逃げるのが上手いのですね。

SelenaD: いやぁ、その事なんだけどさ…

LUNAR: どうしましたか？

SelenaD: …アイツの事が好きになり始めてるの。

LUNAR: はい？

SelenaD: いや、だって一緒の開発チームで6年も過ごして、今は2人しかいないこの世界で追いかけっこ。内心、嬉しくなり始めてる自分がいる。否定したいのに、寿命の概念が無いここでずっと鬼ごっこする日々が続いてほしいと思ってる。でも一度出会ったら…私達は殺し合いを始めて、どちらかが絶対に死ぬ。

LUNAR: …だから、追いかけようと思っても上手く追いかけられない、と？

SelenaD: そういうこと。認めたくないけど、私はアイツにゾッコンなの。曖昧なままここで過ごしていたい。現実世界とここは大差ない…それどころか家を作ったりすれば現実よりも快適なの。

LUNAR: なるほど。

SelenaD: …あ、もしかしてこの後アイツにもチャットする？だとしたら、この事は伝えないでほしいな。

LUNAR: 分かりましたよ。

+ fileserv:/S:/6392/interview/log2.log にアクセス

インタビュー - ロバート・A・クリスチャンセン

メンバー

• 財団潜入エージェント ルナ・キャロル
• Minecraft開発チーム"███" 元主任 ロバート・A・クリスチャンセン

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<記録開始>

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[キャロルは個人チャットの相手をロバートに指定してチャットを開始する。]

LUNAR: ハロー？

Robert1109: 誰だ？

LUNAR: 私はルナ・キャロル。貴方はロバート・A・クリスチャンセンで間違いないですか？

Robert1109: そうだ。月LUNARだなんてなかなかクールな名前だな、女神さん？

LUNAR: 人間です。ところで、貴方は今何をしているんです？

Robert1109: あー…洞窟探索。ていうか、アンタどうやって入ってきたの。

LUNAR: 権限を弄りました。えー、今の時刻や年月は分かりますか？

Robert1109: 洞窟だからな…昼夜は分からん。年月は ― テストプレイに失敗してここに閉じ込められたのが20██年だから ― もう18年は経ったろ。

LUNAR: まだ3年しか経ってませんよ。

Robert1109: ウソだろ。俺はアイツと随分長い間鬼ごっこをしてるつもりなんだけど。

LUNAR: そちらのいる世界はこちらに比べて時間の流れが緩やかか、そもそもその概念が根本から違っているのでしょう。

Robert1109: そうか。外の世界はどうなってる？俺達の話題で持ち切りかい？

LUNAR: いえ ― 貴方達の存在は隠蔽され、社内でも知る者は非常に限られています。というか、半ば放置されてました。

Robert1109: なるほど。じゃあ元の世界に戻ってこれたとしても会見を開く必要はないな。アイツが喜ぶだろうな。

LUNAR: アイツ、って。

Robert1109: セレーナ・ディーツってやつでな。テストプレイの失敗で俺と一緒にこの世界に閉じ込められてしまった。あ ― ちょっと待って、あんた誰？社内の偉い人じゃないよね？

LUNAR: 経緯を話すと長くなりますが、私は財団という組織に務めています。ワケ合ってMinecraft開発チームに潜入して、そこで貴方達の存在を知りました。詳細は省きますが、今貴方達は財団の管理下にあります。

Robert1109: 何も分かんないけど、まぁそういうことね、理解理解。要するにメンインブラックみたいなアレでしょ、たぶん。

LUNAR: そういうことです。理解が早くて助かります。

Robert1109: オーケー、俺達の体は今Minecraftの世界にあるけど、現実世界に戻せるのか？

LUNAR: それは分かりません。現実世界とゲームの世界を繋げる技術が確立してませんから。

Robert1109: そうか。まぁ ― ここは快適だし、出なくてもいいとは思ってるけどさ。

LUNAR: そうなんですか？

Robert1109: ん、ここは物理法則がちょっとおかしい以外に現実とは何の違いもない。むしろこの世界には2人しかいないから楽だよ。

LUNAR: なるほど。セレーナは？

Robert1109: セレーナはな…俺を恨んでんだよ。俺はアイツから逃げてる。俺がアイツをテストプレイに招いたせいでセレーナはずっとずっとここに閉じ込められているんだ。

LUNAR: テストプレイはなぜ失敗したのですか？資料を見ましたが、貴方の理論はほぼ完璧で、失敗する余地はありませんでした。

Robert1109: たぶん停電のせいだ。どうしてあのタイミングで停電が発生したのか俺にも分からん。一応俺のせいじゃないのはほぼ確実なんだが。…あと、クリエイティブモードって嘘をついてハードコアモードにしたのは完全に魔が差したんだ。あれを謝りたい。

LUNAR: そうでしたか。

Robert1109: それで、アイツは逃げる俺に向かって「ダイヤ剣で刺し殺してやる」って叫んで。それ以来アイツから遠く離れたところにきて、長い間姿すら見てない。

Robert1109: 俺、セレーナの事が好きなんだよ。

LUNAR: は？

Robert1109: 6年も一緒の開発チームで過ごして、現実時間で3年 ― こっちでは18年ほどの長い年月を追いかけっこして過ごしてる。開発チームだったころは趣味もピッタリ、一心同体、まさに相棒って感じだった。俺はアイツとなら何だって出来る！ってくらいには思ってたよ。

LUNAR: そりゃぁ ― 好きになってもしょうがないですね。

Robert1109: 分かってくれるか。まぁでも ― 出会ったら確実に殺し合いになっちまう。だから俺は出会いたいと思いながらもずっと逃げ続けてるんだよ。

LUNAR: そうでしたか。

Robert1109: あ、セレーナともチャットするのか？するんならこの事は内緒にしてくれよ。

LUNAR: はぁ、約束しますよ、それは。

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<記録終了>

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補遺3 — リバースエンジニアリング記録

前述の通りSCP-6392内部には2人の人間の意識が内包されており、これらの救助は非常に困難であると。

脚注

1. Minecraftからサバイバル要素を除いた安全なワールドであり、ブロックの生成や破壊が簡単に行えるモード。

2. サバイバルモードの中でも最も高難易度のモードであり、プレイヤーは1度死亡するとリスポーンが不可能となる。

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注記: 報告書SCP-6392 旧版/2012-05-11は以上です。

最新版の報告書には こちらからアクセスできます。

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