打ち付ける雨を横目に、左腕のメンテナンスを始める。
カチカチと鳴り続けるこの体も長年使ってきたが、特段愛着はない。
ただ、この体を使って得た立場には満足してる。神父なんて俺のガラじゃないが、子供を見るのは好きだし、インベンターが定期的に持ってくる油は長持ちするから金がかからなくて良い。
随分俗物的な神父に見えるんだろうな、だが多分どこの教会も似たようなもんだろう。本教1の連中なら心臓まで鋼鉄に囚われてるだろうが。
おっと、油が切れちまった。どこに仕舞ったかな。
メンテナンスを終え、体を軋ませながら立ち上がる。
痛みはないがこの調子じゃ半年も保たないか。今度大聖堂で診てもらおう。
壁に寄りかかって油をなじませていると、数少ない生身の耳が、軋みと雨の中に何か引き摺る音を捉えた。
目の前の裏口の方からだ。
様々な可能性が頭を駆け回る。財団か?それともGOC?いいや、やつらは足音なんて立てるヘマはしないだろう。じゃあ信徒か?それも可能性は低いだろう。裏口は隠してるわけじゃないが、あるとも公言していない。ここを知ってる人間は限られてる筈だ。それに夜の11時だぞ。考えてる暇はない、とにかく見に行こう。
急いでクローゼットから燃料缶を取り出し、メンテナンスを終えたばかりの左腕の注入口に燃料を注ぎ込む途中で、聖油は使えないことに気付いた。クソッ、雨でさえなけりゃ使えたのに。
隣に置いてある散弾銃を手に取り、シェルを装填する。残弾2発、無いよりかはマシだ。
裏口の前に立ち、音源を探る。右はクリア、左もクリア。
正面か。
こういう時は勢いが大事だ。最悪この体なら拳銃弾程度は耐えられる。
右腕を水平にし、扉に一発。素早くハンドグリップを引く。手応えなし。
弾が貫通した穴の先には暗闇と雨だけが見えている。
扉を蹴り開ける。暗闇が濃く数m先の小麦畑すら見えない。
目も標準化しておけばよかったか。今だけは戦闘用の標準化をしたレガーテが羨ましい。
右腕で散弾銃を構えたまま、左腕で肩部投光機を点ける。
光が小麦畑を照らす。音の主は見当たらない。
音も聞こえない。だが放置はできない。身を乗り出すのは危険だが、やるしかないか。
一歩踏み出す。素早く左に右にと体を捻り確認。居ない。足跡も無い。
もう一度居ないことを確認して扉を閉め、深く息を吐く。
思い違い、か。
幸い今日は俺しかいないし、雨が強いから銃撃音も掻き消されただろう。
シェルだけ換えて寝るとしよう。
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