在りし日のエール - SCP-JPサンドボックスⅢ

在りし日のエール

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クレジット

タイトル: SCP-XXX-JP - 在りし日のエール
著者: ©ashimine
作成年: 2021

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP被験者となる人物の条件が限定的であることから、現行の特別収容プロトコルは条件適合者の監察及び新規被験者発生時の事後処理に重点が置かれています。本稿執筆時点で全適合者の把捉が財団によって完了しており、以降の新規適合者は出現しないものと考えられているため、SCP-XXX-JPを被験していない適合者の数が0人となった時点でSCP-XXX-JPのオブジェクトクラスはNeutralizedへ変更されることが予定されています。

説明: SCP-XXX-JPは以下の条件を満たした人物(以下被験者と表記)が生涯で一度だけ経験する明晰夢です。

・成人して10年以上が経過している。
・都立████小学校で、同校教師であった斉藤正道が担任教諭を受け持つクラスに在籍していた。
・6歳から12歳の間に何らかの目標を志向しており、現時点でそれを達成していない。

被験者は夢の中で小学校の教室と思われる場所で椅子に座っており、目前には先述の斉藤正道と同様の容姿をとる人物(以下SCP-XXX-JP-Aと表記)が教壇に立っています。SCP-XXX-JP-Aは被験者に対して、被験者が小学生の頃に志していた目標があったこと、及びその目標を未だに達成していないことを強く叱責し、被験者ならば目標を必ず達成出来るという旨の激励を強く行います。SCP-XXX-JP-Aは最終的に被験者が目標を達成することをSCP-XXX-JP-Aに誓約するまで激励を続け、誓約を行うと同時にSCP-XXX-JPは終了し被験者は目覚めます。

SCP-XXX-JP経験以降、被験者は誓約を行った目標に強い情熱を抱き、その達成に日常生活の大半を費やすようになります。同時に被験者の所有する物品・資格・職業が目標の達成の支障となる場合、被験者はそれらを破棄します。これらの現象はSCP-XXX-JPによる精神影響と見られており、記憶処理によって除去することは不可能です。

SCP-XXX-JPは、20██年██月██日に開催された████小学校の同窓会における、出席者の「夢で斉藤先生に励ましてもらった」という話題からその存在が確認されました。同会に出席しており、SCP-XXX-JPを財団へ報告した枡研究員は、小学生時代に「学者になる」という目標を掲げていたことから、被験者にはならなかったと推定されています。その後被験者へのインタビューからSCP-XXX-JP被験の条件を分析、████小学校からの情報提供を元に調査が進められ、現在103名の被験者及び875名の条件適合者が確認されています。

以下は、SCP-XXX-JPに関連する人物へ行ったインタビュー記録の抜粋です。

インタビュー記録XXX-JP-8 - 日付20██/██/██

対象: 鴫野美穂

インタビュアー: 小林研究員

<録音開始>

小林研究員: インタビューを始めます。鴫野さん、あなたが見た夢の内容を、詳しく教えてください。

鴫野美穂: はい。私は教室で椅子に座ってました。多分████小学校の教室だったと思います。

小林研究員: どうして████小学校の教室だと？

鴫野美穂: それは、ああ。[対象は恍惚とした表情を浮かべる]目の前に、斉藤先生がいたからです。

小林研究員: よく斉藤正道氏だと分かりましたね。記録によると貴女が████小学校で氏のクラスにいたのは、3ヶ月にも満たない期間だったようですが。

鴫野美穂: ええ、親の都合で転校を繰り返してましたから。その短い間でも先生は本当によくしてくれて、私すごくお世話になったんです。忘れるはずありません。

小林研究員: 他の方からも伺いましたが、斉藤氏は生徒からの人気が非常に高かったようですね。

鴫野美穂: はい、それはもう。バレンタインには先生の靴箱にチョコレートが溢れるくらい入れられるのが恒例行事だったんですよ。ああ、今頃先生何してるのかなあ。もう奥さんとかいらっしゃるのかなあ。

小林研究員: なるほど。それで、斉藤氏は貴女に何と？

鴫野美穂: 先生は、とても険しい表情をなさって言いました。「お前が小学生の時に言ってた夢はどうなったんだ、もう諦めちまったのか」って。私それで思い出したんです。子どもの頃に抱いてた夢をまだ叶えていなかったって。それから先生は何度も何度も、「絶対に諦めるな」とか「遅すぎることなんてない」、「お前なら必ずうまくいく」と私を強く励ましてくれたんです。私も先生の言葉を聞くうちに「ああその通りだ、信じてさえいれば叶わない夢なんてない」と自信をもって考えられるようになって。先生に「分かりました。絶対夢を叶えます」と約束したところで目が覚めました。起きた後も、夢の中で感じた気持ちはそのまま残っていて。その日から夢を叶える為に行動を起こしましたね。

小林研究員: その、あなたの夢というのは。

鴫野美穂: はい！友達100人つくることです！今は4人目の友達を作るために、大学の同じ学部生に片っ端から声をかけているところです！

小林研究員: ……分かりました。それではこれでインタビューを終了します。

鴫野美穂: あ、ちょっと待ってください！最後に1つだけいいですか？

小林研究員: 何でしょう。

鴫野美穂: [強く興奮して]良ければ私と友達になってくれませんか？一緒にご飯とか、遊園地とか行きません？ほら、せめて████の交換だけでも！

<記録終了>