みのがす - SCP-JPサンドボックスⅢ

みのがす

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クレジット

タイトル: みのがす
著者: ©ashimine
作成年: 2022

賄い食べるのが遅くなっちゃって、終電間に合うかギリギリの時間だったんですよ。バイト先から行き帰りに使ってる地下鉄の駅まではダッシュで10分くらいの所にあるんでかなり焦ってました。それでホームに駆け込んだら丁度電車が入って来て。「良かった間に合った」と思って、ドアが開いて一歩乗り込んだところで、足を止めたんです。

車内の色んなところに吊革が吊ってあったんですけど。そのひとつひとつに、リカちゃん人形っていうんですか？あれがぶら下がってるんです。ちょうど首の付け根を、輪っかの所に引っ掛ける感じで。

なんか、脳みそが考えるのやめちゃって。左足だけ踏み入れまんま固まっちゃったんですよね。そしたら。

「のらないの」

吊るされてる人形から、確かにそういう声が聞こえてきたんです。それも1つだけじゃなくて、人形全てが喋ってるみたいに、ありとあらゆる所から。

「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のれば」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のるな」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のれよ」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」「のらないの」

踏み入れてた足を戻したと同時に、ドアが閉まりました。電車が動き出したら、中の人形も、ぶら下がったまま揺れてるんですよ。まるで僕のことが可笑しくて、身体を揺らして笑ってるみたいに。

かたかたかたかたかた、って。

電車が闇の向こうへ見えなくなったところで、ふと時計を見たんです。後で気付いたんですけど、ちょっと時間が狂っちゃってたんですよね。

終電は、もう10分も前に出てました。

まあ、そんな訳で今こうしてタクシーに乗ってるんですけど。

下らないですか？でもついさっき本当に見たことなんですよ。大袈裟ですかね。どうも、昔から心配性な質なんですよね。

だから、ねえ。

運転手さん。

その、首輪みたいな、ネックレスですか？ネックレス、ですよね？

お願いだから、外してもらえませんか。

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