テスト

• 転
「最終確認……よし。」

サイトに到着した私は、突入前に最後の所持品確認をする。拳銃・銃弾の確認を終え、最低限身を守れる程度の装備を装着した。本来ならば起動部隊が使用するような専用装備が欲しいところだが、非常事態に贅沢は言っていられない。

「……妙だな。」

いざ内部に潜入すると薄暗いうえ、所々に内装・内壁の破損箇所がみられるが、外の騒動とは打って変わって不気味なほどに静まり返っていた。ある意味で此処は安全なのだろうか?そんなことを考えつつも足を進める。

「本当に何も残ってないのか?」

調査を進める中、オブジェクトの収容房をいくつか発見したが全て空であった。そのオブジェクトはどこに行ったのか?と新たに疑問が生まれたが、今は財団に何があったのかを調査するため最下層にあるデータベースを目指す。

中層に差し掛かった頃、突如としてフロア全体に侵入者を知らせる警報が鳴り響く。どうやら保安システムに補足されてしまったらしい。侵入者の進行を防ぐための隔壁が閉じ始める。私は、このままでは先に進むことが不可能になってしまうと判断し走り始めた。隔壁の閉じる速度は決して遅くなく、一息つく暇すら与えてはくれなかった。

「はぁ、はぁ……!」

次のフロアへと続く階段の隔壁が今にも閉じようとしているのを確認した私は、道中の瓦礫を飛び越えながら全速力て駆け抜ける。隔壁の下にも瓦礫が貯まっていたため完全に閉まりきることはなく、横になれば人体が辛うじて通過できるほどの隙間があった。それでも、おそらくもって数秒だろう。

「クソッ!間に合え」

勢いをつけその隙間に滑り込み、そのフロアを脱出した。直後、隔壁の障害となっていた瓦礫が崩れ完全に閉まりきる。警報は鳴り止んだが、隔壁は開く気配もなく私は呼吸を整え次のエリアへと足を運ぶ。

「今度は……何だ?」

そこに居たのは捕縛用の武装をした警備ロボの集団だった。私を侵入者と見なしたのか、捕縛用ネットを私に向けて一斉に射出した。横に転がるように避け、それぞれの頭頂部に存在するカメラに向け銃弾を撃ち込み無力化する。

「まだ腕は鈍っていないようだな」

そう言葉を漏らしリロードを終え先に進む。奥に進むにつれロボの武装も捕縛を目的としたものから、銃火器などの攻撃的な武装へと変化していった。幸いにも狙いの制度はそこまで良くなく、一旦避けてから撃ち込めばなんとかなるレベルであった。

20機ほど相手にし終え、少し経った時
だった。物陰から拳銃を手にした6体の人型の機械が現れ私の進路を妨げるように登場した。その内の1体はら流れるような動作で拳銃を構え、私に狙いを定める。この時点で先程までの警備ロボとは格が違うことを確信した。

私は咄嗟に横に飛ぶ。ついさっきまで私の顔があった空間を弾丸が通過し、奥の壁へと埋もれていった。一瞬でも気を抜いていれば、今ごろ即死だったことだろう。

「そら、お返しだ」

引き金を引く。放たれた弾丸は真っ直ぐカメラ部分吸い込まれ、鈍い金属音を響いた。これで無力化出来たはず、と思った私の予想を裏切りその動きを止めることはなかった。

「おいおい……冗談だろ?」

私は奴等の正確な射撃を紙一重で避けながら走り続ける。時折、隙をついては何発か撃ち込んではいるものの、効き目は薄く関節部に当てれば若干動作が鈍くなったが、そうなったところで気休めにもならなかった。

逃走を続ける内にサイト全体のセキュリティーを管理するコントロールルームにたどり着いた。私は急いで部屋の隔壁を起動させる。間一髪のところで奴等と分断できたのは良いが、ここの出入口は先ほど自ら閉ざしたたった1つのみ……要するに袋のネズミだ。隔壁の向こう側からドリルのような音が響く。急いで奴等の機能を停止させるべくサイト内の警備プログラムにアクセスを試みる。しかし、セキュリティーロックが何重にもかけられており突破するには軽く見積もっても2、3時間は必要だろう。もちろん余裕なんて、あるはずがない。

「もう……これしかないな」

最後の手段を取ることにし、一通りパネルを操作した。後私にできることは、ただその時を待つのみだ。

次第に音が大きくなり、隔壁が抉じ開けられた。

「タダで終わるのは癪に合わなくてな……。悪いが道連れだ」

私はパネルに手を伸ばす。その画面には起爆の二文字が浮かんでいた。フロア全体に仕掛けられた非常用の起爆装置が作動する。爆発の衝撃を直に受け、私は意識を手放した。





あれからどれ程の時間経ったのだろうか?意識がわずかに戻った私は、横たわったまま重たい目を開き、自分が置かれている状況を分析する。

「ここは、まさか?」

上を見上げると、あの時の爆発の影響なのか数階層分の穴が空いていた。どうやら目指していた最下層にたどり着いていたらしい。

「ッ!」

体を起こそうとした途端、激痛に襲われた。あばらを何本か逝ってしまったらしい。さらに右腕の感覚が、いや右腕自体が消えていた。おそらくこれも爆発の影響だろう。もしあの時、意識を失っていなければ激痛によりショック死していたかもしれない。この程度で済んだことは不幸中の幸いと言えるだろう。その時、背中の違和感に気がついた。

「なるほど、こいつ等のお陰か」

そこにあったのは、あの機械達だった。爆発と落下の衝撃を受けたせいか完全に機能を停止している。私が生きているのもこいつらがクッションになったからだろう。こちらを殺そうとしていた存在に命を助けられるとは奇妙なこともあるものだ。

「やっと……たどり着いたんだ」

悲鳴をあげる体に鞭を打ち、なんとか立ち上がる。今はただ、財団に何があったか知らなければならない。その思いを込め、端末に向かい歩を進める。そして今、真実を知るためデータベースにアクセスする……

• 結

慣れない左手で端末を操作しながら、財団に何があったかを知るためにデータベースを閲覧する。財団が狂ってしまった原因に繋がりそう事案は無いかと確認していく内に、とある文章に目が止まる

『PNEUMAプロジェクト』

長い間、財団職員を勤めてきた私にも聞き覚えのない単語であった。恐らくこのプロジェクトこそが、すべての元凶であろう。固い唾を飲み込み、意を決してプロジェクトの概要を確認する。

「な、なんだこれは……」

  • 大規模記憶処理プロジェクト
  • 人類の集合的無意識、心理空間のマッピング
  • 人間性の治療・異常存在の影響

様々な情報が私の脳内で入り乱れる。働かない頭を無理やりフル稼働させ混濁とした思考の中、私は1つの結論に至った。

「人間性、あるいは人類そのものが異常であり、異常存在によって現在の人類の大元が成り立っている……?」

だとするなら財団は……私たちは……

「は、はは……はははは」

あまりの馬鹿馬鹿しさに思わず笑い声をあげてしまった。こんな話を聞かされて誰が信じる?私たちが命を懸けてまで守ろうとした存在が、守ってきた私たちそのものが、同じく命を懸けてまで防いできた異常存在だというのだ。

それでも財団なら正常であり続けようとするに違いない。今まで死守してきた数十億人を殺戮することになろうとも……その結果この惨劇を産み出してしまったのだろう。

「あぁ……畜生。もう長く持たないな」

鋭い痛みが全身を駆け巡り、その場に座り込む。応急措置を施したとはいえ、身体に深刻なダメージを負ったことに間違いはない。ここから地上に帰還することは不可能だ。私はこのままここで死ぬのだろう。

「すまない……」

真実を知りたがっていた民間人の顔が脳裏に浮かぶ。そもそも生き残っているのかもわからない。守れもしない約束をするもんじゃないなと諦めに近い後悔をしていた。

しばらくしてサイト内に緊急アラートが鳴り響く。また何かが起こるのだろうか?そんな呑気なことを考えながら、先程の端末を覗き込み、その内容に絶句した。

モニターにはSCP-1857-JPが異常な膨張を開始しているという通知が表示されていた。

どのようにして異常に膨張させたのか方法は不明だが、恐らく目的は日本。いや世界全土を極寒の地獄に変えるため、あるいは内部に蓄積された途方もない熱エネルギーを利用した無差別攻撃のためであろう。少なくとも今の財団ならどちらもやりかねない。

事の真偽を確かめるべく端末を操作し、モニターに外部カメラの映像を映し出させる。そこに現在の惨劇とは不釣り合いなほど美しい満開の花を咲かせた桜の大木を確認した。今にもはち切れんばかりに膨張しており、所々から白光を放っていた。

「こ、これは……」

白光の光が急激に強まった途端、桜の大木が音を立てて爆発した。大木の内部に溜め込まれていた莫大な量の熱エネルギーが外部に溢れ出し徐々にその範囲を拡大していった。つい先程まで付近に建っていたビルは数秒で溶け崩れ、山などに生い茂る木々は一瞬で炭と化し、川や湖の水源は瞬く間に蒸発していた。

「あ、ああ……」

日本の国花として知られる桜によって日本全土が焦土と化している。そんな非日常的な光景を目の当たりにして、焼き払われていく日本を目撃して様々な感情が渦巻き、上手く言葉として形容することが出来なかった。

どうせこのまま私も死んでいくのだ。不謹慎だとは思うが、最期くらい自分に正直でいてもバチは当たらないだろう。そう考えていた。このような事態の中でも桜の花びらは華麗に散り降り注いでいる……それの映像を見ていると思わず言葉が漏れだした。




「綺麗だ」

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