鏡よ鏡にうつる彩色

訳あって僕は口をきくことができない。
もし何があったとしても、僕は声を失った日のことを忘れることはないだろう。

世界が眩しく、目が眩むような不自然な景観に変化した あのときからずっと。

本来なら、僕もその景観の一部となる筈だった。僕の出身はもう誰の記憶にもない地域なんだけど、そんなことはどうだって構わない。
父が褒めてくれた空とそっくりな髪の色は、確かに空とそっくりなままだったのだけれども以前の美しい色じゃなくなって、まわりの景色も同様だった。
チビの新入り職員だった僕は、それをもとに戻す為の実験や研究を行うサイトに配属されていたから、そこで自然な色彩を復元するための研究を行っていたわけだ。
まぁ、それはある意味で失敗に終わってしまったのだけれど。

そして僕は間抜けにもその研究の成果に曝露するという失態を犯してその効果を身を以て実感する羽目になってしまった。つまりは自分たちで開発したオブジェクトの影響を取り除くオブジェクトとやらに接触して、僕の色彩はあるべき姿に変化した。
その代償に声を失ったけどね、当時の僕は自慢の髪色がもとに戻った喜びの方が大きかった、なんて口が裂けてもこれから言えそうにない。
……もっとも、口が裂けしまったとしても発話なんてものができないから心配は無用なんだけれども。

結果としてそれでは不完全であるとした財団によって人々は不自然な色彩に違和感を覚えないようにと記憶処理されていってしまった訳だ。

僕以外には、あとは写真や映像などの記録も受けなかったみたいなんだけれども残念ながらそれが真実の姿だと認識している人間は今日いないし、それらはやはり不完全だから当時の様子を伝えるには不十分だ。それでいい、いや。財団としてはその方が都合がいいのだろうけど。

鏡に映る僕の姿も、品の無い彩色に汚されてまるでこの世界の景観の一部のようになってしまう。

耐え難い悲しみを癒してくれるのは、長く伸ばしたこの髪だけ。


ページコンソール

カテゴリ

SCP-JP

本投稿の際にscpタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。

GoIF-JP

本投稿の際にgoi-formatタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。

Tale-JP

本投稿の際にtaleタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。

翻訳

翻訳作品の下書きが該当します。

その他

他のカテゴリタグのいずれにも当て嵌まらない下書きが該当します。

コンテンツマーカー

ジョーク

本投稿の際にジョークタグを付与する下書きが該当します。

アダルト

本投稿の際にアダルトタグを付与する下書きが該当します。

既存記事改稿

本投稿済みの下書きが該当します。

イベント

イベント参加予定の下書きが該当します。

フィーチャー

短編

構文を除き数千字以下の短編・掌編の下書きが該当します。

中編

短編にも長編にも満たない中編の下書きが該当します。

長編

構文を除き数万字以上の長編の下書きが該当します。

事前知識不要

特定の事前知識を求めない下書きが該当します。

フォーマットスクリュー

SCPやGoIFなどのフォーマットが一定の記事種でフォーマットを崩している下書きが該当します。


シリーズ-JP所属

JPのカノンや連作に所属しているか、JPの特定記事の続編の下書きが該当します。

シリーズ-Other所属

JPではないカノンや連作に所属しているか、JPではない特定記事の続編の下書きが該当します。

世界観用語-JP登場

JPのGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。

世界観用語-Other登場

JPではないGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。

ジャンル

アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史

任意

任意A任意B任意C

ERROR

The DaiyaUzuki's portal does not exist.


エラー: DaiyaUzukiのportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:7582228 (04 Aug 2021 12:46)
特に明記しない限り、このページのコンテンツは次のライセンスの下にあります: Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License