SCP-XXXX-JP(暫定)――十三は13な数字

通達

現在O5評議会に提案されている「プロトコル"絵踏"」の実行が承認された場合、当該アノマリーはSCP-XXXX-JPとして再分類されます。当報告書の内容は、再分類後に記載を予定している暫定的なものであり、今後変更される可能性があることに留意してください。

— サイト-8157 AN-XXXX担当 村上博士

アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Yesod¹

特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPは、サイト-8157の低危険度オブジェクト保管用容器に収容されています。SCP-XXXX-JPと同一の画像が偶然に発生する可能性は極めて低いと推測されますが、財団webクローラの運用によるSNS・イラスト投稿サービスの監視、コミックまたはライトノベルの出版社へのエージェント派遣などによって、SCP-XXXX-JPの類似画像の民間への拡散を防止してください。SCP-XXXX-JPと完全に同一の画像が確認された場合は、描画者を特定したのちBクラス記憶処理を施してください。

SCP-XXXX-JPの研究目的での持ち出しは、責任者の許可のもと担当職員が行うものに限り認められますが、毎年█/1から10日間に限り、財団人事部の職員は「プロトコル"絵踏"」に使用する場合のみSCP-XXXX-JPをサイト-8157外に持ち出すことが認められます。使用時を除き、SCP-XXXX-JPを直接目視することは禁止されています。

説明: SCP-XXXX-JPは、東京都在住のイラストレーター・[編集済]氏によって描かれた"魔法陣"²です。調査の結果、文様は「悪魔デビちゃんが来たっ！」³の挿絵に描かれたものと概ね一致していることが判明しています。
SCP-XXXX-JPの異常性は、オブジェクトを直接視認した際に発現します。SCP-XXXX-JPを直接視認した人間(以後「対象」)は、日常的な会話及び筆記に使用する単語の一部が「十三」に置換されます⁴。このとき、対象に「十三」と発声または筆記している意識はなく、他者からその異常を指摘されると困惑を示します。また、「十三」はそれぞれが置換前の単語として発せられているため、対象が「十三」と発した単語を他者が「十三」と表現した場合は疎通せず、置換前の単語を使用しなければなりません。

SCP-XXXX-JPは当初、AN-████「視認者の言葉の一部を『十三』に変化させる魔法陣」として分類されていました。Anomalousアイテム分類時の各種記録は、以下のAN-████関連記録を参照してください。

+ AN-████関連記録を閲覧する

インタビュー記録-XXXX-い:

実施日時: 202█/1/15

回答者: [編集済]氏

質問者: エージェント・推古

付記: エージェント・推古は、[編集済]氏宅付近の総合病院に研修中のカウンセラーとして潜入している。同院の精神科に来院した[編集済]氏の症状に興味を持ったエージェント・推古が、診察を終えた[編集済]氏に自主的にインタビューを行った。

---

<記録開始>

[編集済]氏: 何でしょうか、いきなり話を聞きたいだなんて。

推古: すみません。ですが、上司から聞いたあなたの症状がどうにも気になったもので。ご協力いただけませんか。

[編集済]氏: ……わかりました。

推古: ご協力、感謝します。早速ですが、あなたが当院を受診するに至った経緯をお聞かせ願えますか。

[編集済]氏: はい。私はフリーランスでイラストレーターをしてまして、小説の挿絵を描いたり、イラスト本を描いてコミケに出展したりとか、そういったことをして生活してます。何日か前だったかな、Twitterのフォロワーさんから有償で二次創作イラストの依頼をいただいて、描き進めてたときのことがきっかけですね。

推古: なるほど。

[編集済]氏: 「魔法陣の上で決めポーズをとっているイラスト」という依頼だったので、手始めに魔法陣のデザインを決めてしまおうと思いまして、試しに適当な裏紙に描いてみたんです。一応うまくいったんですけど、それから肝心のポーズが全く思いつかなくて……インスピレーションをもらえればなぁと思って、イラスト仲間に電話しました。
でもあの子、私が真面目に話してるのに、「十三って何」とか、「何か██⁵、変だよ」とか、そんなことしか言わなかったんです。結局まともに取り合ってもらえなくて、電話も切られちゃって……そんなこんなで、精神的な疲れがたまってるんじゃないかと思って、来ました。ここでも話は通じなかったし、大して解決しなかった気もしますが……。

推古: ありがとうございます。もし私でよければ、お話をお聞きしましょうか？

[編集済]氏: いいんですか？ ではお言葉に甘えて……。
電話では、自分が13かもしれないという話をするつもりでした。実は少し前にも、出版社の方からいただいたイラストの依頼を、一旦引き受けたのに後からお断りしたことがあったんです。構図が浮かばなかったり、いざ描いてみても出来に納得がいかなかったりして……そのイラスト仲間も、前に13に陥ったことがあるって聞いてたので——

推古: 待ってください。先ほどからおっしゃっている「十三」というのは？

[編集済]氏: えっ？ (ため息)……やっぱり。あの子も今日の先生も、同じ感じでした。十三なんて一言も言ってないのに、十三って何だ、ふざけないでくれ、って。

推古: 申し訳ないのですが、私には[編集済]さんの発した言葉の中に「十三」が不自然に挿し込まれているように聞こえます。例えば、十三に陥った、ですとか。

[編集済]氏: 陥った……？ あ、えっと、そこは「13」と言ったつもりだったんですけど。おかしいな……。

推古: 私には「十三」と聞こえているのですが。えー……そうだ、その単語を別な表現で言い換えられませんか？

[編集済]氏: 別な？ そうですね、スポーツ選手とかで、その人の思ってるよりも実力が発揮できない状態、って感じでしょうか。

推古: なるほど……それは、「スランプ」のことでしょうか？

[編集済]氏: ……13！ そうです、13です！ やっと伝わった……！

推古: お役に立てたようで何よりです。ところで、その「十三」と相手に聞こえてしまう、と言えばいいのでしょうか、その現象はいつから起こっていたのですか？

[編集済]氏: いつから……うーん、さっき話したイラストを描く前にスーパーに行ったときは特に問題なかったので、絵の構図を考えてた頃、ですかね？

推古: ありがとうございます。

<以下、関連性が低いため省略>
<記録終了>

---

備考: インタビュー後、エージェント・推古は[編集済]氏宅から製作途中の当該イラストのデータおよび"魔法陣"の下書きを回収。[編集済]氏にはBクラス記憶処理が施された。後日、[編集済]氏が再度来院し、症状が改善したことを報告した。

音声記録-XXXX-ろ:

日時: 202█/1/15

対象: エージェント・推古、柏原研究員

録音者: 亀山上席研究員

付記: 当音声記録は、[編集済]氏へのインタビュー(インタビュー記録-XXXX-い)を終えたエージェント・推古がサイト-8157に回収物品を移送後、一時的に当該サイトに滞在した際に録音されたものである。回収された"魔法陣"はサイト到着後、柏原研究員によって紙媒体オブジェクト保管用容器に暫定的に収容された。

---

<記録開始>

[編集済]氏: 何でしょうか、いきなり話を聞きたいだなんて。

推古: すみません。ですが、上司から聞いたあなたの症状がどうにも気になったもので。ご協力いただけませんか。

[編集済]氏: ……わかりました。

推古: ご協力、感謝します。早速ですが、あなたが当院を受診するに至った経緯をお聞かせ願えますか。

[編集済]氏: はい。私はフリーランスでイラストレーターをしてまして、小説の挿絵を描いたり、イラスト本を描いてコミケに出展したりとか、そういったことをして生活してます。何日か前だったかな、Twitterのフォロワーさんから有償で二次創作イラストの依頼をいただいて、描き進めてたときのことがきっかけですね。

推古: なるほど。

[編集済]氏: 「魔法陣の上で決めポーズをとっているイラスト」という依頼だったので、手始めに魔法陣のデザインを決めてしまおうと思いまして、試しに適当な裏紙に描いてみたんです。一応うまくいったんですけど、それから肝心のポーズが全く思いつかなくて……インスピレーションをもらえればなぁと思って、イラスト仲間に電話しました。
でもあの子、私が真面目に話してるのに、「十三って何」とか、「何か██⁶、変だよ」とか、そんなことしか言わなかったんです。結局まともに取り合ってもらえなくて、電話も切られちゃって……そんなこんなで、精神的な疲れがたまってるんじゃないかと思って、来ました。ここでも話は通じなかったし、大して解決しなかった気もしますが……。

推古: ありがとうございます。もし私でよければ、お話をお聞きしましょうか？

[編集済]氏: いいんですか？ ではお言葉に甘えて……。
電話では、自分が13かもしれないという話をするつもりでした。実は少し前にも、出版社の方からいただいたイラストの依頼を、一旦引き受けたのに後からお断りしたことがあったんです。構図が浮かばなかったり、いざ描いてみても出来に納得がいかなかったりして……そのイラスト仲間も、前に13に陥ったことがあるって聞いてたので——

推古: 待ってください。先ほどからおっしゃっている「十三」というのは？

[編集済]氏: えっ？ (ため息)……やっぱり。あの子も今日の先生も、同じ感じでした。十三なんて一言も言ってないのに、十三って何だ、ふざけないでくれ、って。

推古: 申し訳ないのですが、私には[編集済]さんの発した言葉の中に「十三」が不自然に挿し込まれているように聞こえます。例えば、十三に陥った、ですとか。

[編集済]氏: 陥った……？ あ、えっと、そこは「13」と言ったつもりだったんですけど。おかしいな……。

推古: 私には「十三」と聞こえているのですが。えー……そうだ、その単語を別な表現で言い換えられませんか？

[編集済]氏: 別な？ そうですね、スポーツ選手とかで、その人の思ってるよりも実力が発揮できない状態、って感じでしょうか。

推古: なるほど……それは、「スランプ」のことでしょうか？

[編集済]氏: ……13！ そうです、13です！ やっと伝わった……！

推古: お役に立てたようで何よりです。ところで、その「十三」と相手に聞こえてしまう、と言えばいいのでしょうか、その現象はいつから起こっていたのですか？

[編集済]氏: いつから……うーん、さっき話したイラストを描く前にスーパーに行ったときは特に問題なかったので、絵の構図を考えてた頃、ですかね？

推古: ありがとうございます。

<以下、関連性が低いため省略>
<記録終了>

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備考: インタビュー後、エージェント・推古は[編集済]氏宅から製作途中の当該イラストのデータおよび"魔法陣"の下書きを回収。[編集済]氏にはBクラス記憶処理が施された。後日、[編集済]氏が再度来院し、症状が改善したことを報告した。

202█/1█/█、サイト-8157所属の村上博士により、O5評議会に当該オブジェクトに関する提案が行われました。以下はその概要です。

Footnotes

1. 財団の統制機構に組み込まれているオブジェクトが指定されるクラス。

2. ファンタジー作品に登場する、多くの場合は内部に記号や模様が描かれている円。地面に描画するなどし、魔法の使用や生物の召喚に用いる。

3. (株)出版から発行されたライトノベル作品。現時点で、当該書籍に異常性は確認されていない。

4. 筆記する際にはアラビア数字が用いられます。なお、アラビア数字を理解していない幼児に対する曝露実験は行われていません。

5. [編集済]氏の本名。

6. [編集済]氏の本名。

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