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「ハッピーバースデー、トゥーユー!」
「ハッピーバースデー、トゥーユー!」
ユキオが皿に乗せて運んできたのは、大きなホールケーキだった。
蝋燭が20本以上……俺の年齢の数だとしたら21本刺さっているだろう。
「ハッピーバースデー、ディア、ソウタ~!」
「ハッピーバースデー、トゥーユー!」
見えるのはゆらゆらと揺れる蝋燭の火と、それにぼんやりと照らされる2人の顔だけだ。
俺は思い切り息を吸い込んで、吐き出す。一瞬にして何も見えなくなった。
「イエーイ!!」
「おめでと~!!」
明かりがつけられる。2人はクラッカーを鳴らし、満面の笑みを浮かべて拍手した。
少し、照れ臭くなる。
「まあ本当のバースデーは1ヶ月後だけどな」
「でもその日は彼女と過ごすんだろ?」
「まあね。」
「リア充はこれで満足しとけ!」
ユキオが勢いよく俺の胸に箱を押し当てた。その大きさと重さからすると……タバコのカートンだろう。
その後、シゲちゃんもゆっくりと俺に箱を手渡してきた。これは……タバコのケースだな。
こんなにしっかり祝ってくれるのは彼女を除けばこいつらくらいだ。
いい友達が出来て良かったと、心の底から思う。
「ユキオ、お前またカートンかよ。去年と同じじゃねぇかよ。」
「何気に一番うれしいやろ?吸え吸え~!」
「まぁ、嬉しいけど。ありがとな。」
「シゲちゃんもありがとうな、これめっちゃ質感良くね?」
「100均だぞそれ。」
「え。」
「なわけあるかい。ちゃんといいやつだから安心して使えると思うぞ。」
「なんだこいつ。」
ふと気がついた。
シゲちゃんのスマホが小さい三脚で机にセットされている。
この誕生日会の様子を撮影しているようだ。
去年は撮影なんてしなかったが……悪戯が好きなこいつらのことを考えると、嫌な予感がした。
こいつらが撮りたいものは、きっと俺が蝋燭を消すところなんかじゃないはずだ。
「おい、ソウタ。こっち向けや。」
「どした?」
振り向くやいなや、俺の顔面に粘性の高い何かが衝突した。
視界が真っ暗になる。
瞬時に理解した。
これ、パイ投げだわ。
誕生日迎えた人にそんなことするか?
ほんとにさぁ……。
「やべぇ、怒ってね?」
「俺のプレゼントが100均だったから怒ってんの?」
ふざけんな!と怒鳴り飛ばした。
よく見えないが、2人は大笑いしているみたいだ。
まぁ、こいつららしくて悪くないか。
手探りでタオルを手に取り、パイを拭う。
とても、楽しい。
ずっとこんな時間が続けばいいのにと思った。
このソウタ、すごく楽しそう。
パイ投げで顔が真っ白なの、何回見ても笑っちゃう。
私といる時も、こんな感じならいいのに。
「ハッピーバースデー、トゥーユー!」
「ハッピーバースデー、トゥーユー!」
ユキオが皿に乗せて運んできたのは、大きなホールケーキだった。
蝋燭が21本刺さっている。
「ハッピーバースデー、ディア、ソウタ~!」
「ハッピーバースデー、トゥーユー!」
見えるのはゆらゆらと揺れる蝋燭の火と、それにぼんやりと照らされる2人の顔だけだ。
俺は思い切り息を吸い込んで、吐き出す。一瞬にして何も見えなくなった。
「イエーイ!!」
「おめでと~!!」
明かりがつけられる。2人はクラッカーを鳴らし、満面の笑みを浮かべて拍手した。
「まあ本当のバースデーは1ヶ月後だけどな」
「でもその日は彼女と過ごすんだろ?」
「まあね。」
「リア充はこれで満足しとけ!」
ユキオが勢いよく俺の胸にタバコのカートンを押し当てた。
その後、シゲちゃんもゆっくりと俺にタバコのケースを手渡す。
こんなにしっかり祝ってくれるのは彼女を除けばこいつらくらいだ。
いい友達が出来て良かったと、心の底から思う。
「ユキオ、お前またカートンかよ。去年と同じじゃねぇかよ。」
「何気に一番うれしいやろ?」
「ありがとな。」
「シゲちゃんもありがとうな、これ質感良いな。」
「100均だぞそれ。」
「なわけあるかい。ちゃんといいやつなんだろ。」
「まぁな。」
シゲちゃんのスマホが小さい三脚で机にセットされている。
この誕生日会の様子を撮影しているようだ。
去年は撮影なんてしなかったが……悪戯が好きなこいつらのことを考えると、嫌な予感がした。
こいつらが撮りたいものは、俺が蝋燭を消すところじゃない。
瞬時に理解した。
これ、パイ投げだわ。
「おい、ソウタ。こっち向けや。」
振り向くと、ユキオがパイを持って振りかぶっている。
俺は寸前で避け、パイが床に叩きつけられた。
誕生日迎えた人にそんなことするか?
ほんとにさぁ……。
「まじか!?避けられたぞ!!」
「すげぇ~、神回避じゃん。」
ふざけんな!と怒鳴り飛ばした。
2人は大笑いしている。
まぁ、こいつららしくて悪くないか。
タオルを手に取り、床にへばりついたパイを拭う。
とても、楽しい。
ずっとこんな時間が続けばいいのにと思った。
あれ。おかしいな。
このソウタ達も、私たちと同じなのかな。
「ハッピーバースデー、トゥーユー。」
「ハッピーバースデー、トゥーユー。」
ユキオがホールケーキを置く。
「ハッピーバースデー、ディア、ソウタ~。」
「ハッピーバースデー、トゥーユー。」
俺は思い切り息を吸い込んで、吐き出した。
「おめでと。」
「おめでと~。」
明かりがつけられる。2人はクラッカーを鳴らし、拍手した。
「誕生日プレゼントは——」
「カートンでしょ。ありがとう。」
「そ、そう。去年と同じでごめんな。」
その後、シゲちゃんもゆっくりと俺にタバコのケースを手渡す。
「シゲちゃんもありがとうな、これ質感良いよな。」
「気に入ってくれて良かった。」
シゲちゃんのスマホが、小さい三脚で机にセットされている。
「もしかして、パイ投げしようとしてる?」
「……。」
「その、床が汚れちゃうから……ごめんな。」
「あぁ、いや、こちらこそごめん。」
楽しい誕生日会のはずなのに、言いようのない感情に支配されている。
不安感とういか、焦燥感というか。
俺だけじゃない。これは2人も感じているように思える。
無言になる。
時間が止まったかのような感じがした。
そうだ、絶対そうだ。
もう止めておいた方がいいかな……?
「ハッピーバースデー、トゥーユー。」
「ハッピーバースデー、トゥーユー。」
ユキオがホールケーキを置く。
「ハッピーバースデー、ディア、ソウタ~。」
「ハッピーバースデー、トゥーユー。」
俺は思い切り息を吸い込んで、吐き出した。
「おめでと。」
「おめでと。」
明かりがつけられる。2人はクラッカーを鳴らした。
「誕生日プレゼントは——」
「カートンでしょ。ありがとう。」
「……。」
その後、シゲちゃんもゆっくりと俺にタバコのケースを手渡す。
「シゲちゃんもありがとうな、これ質感良いよな。」
「気に入ってくれて良かった。」
スマホが、小さい三脚で机にセットされている。
「もしかして、パイ投げしようとしてる?」
「……。」
「俺、お前らに話したいことがあるんだけど。」
空気が緊張する。
「俺、この誕生日会の夢を見たことがある気がするんだ。それも、何度も、何度も。」
シゲちゃんがコーラを飲みほした。
「何言ってんの?なんかあれか?スピリチュアル的なやつ?こわー。」
「シゲちゃんもさ、本当は見てるんだろ。俺の誕生日会の夢。」
「……。」
無言になる。
時間が止まったかのような感じがした。
まぁいいか。
他にやることないし。
もう好きじゃないし。
「ハッピーバースデー、トゥー、ユー。」
「……。」
ユキオが手を滑らせ、ホールケーキの乗った皿を床に落としてしまった。
「シゲちゃん電気つけて。」
「うん。」
明かりがつけられる。
2人は何かに怯えているようにみえた。
俺も、怯えている。
「この誕生日会、何回目だ?」
ユキオは震えながら言った。
シゲちゃんは下を向いている。
「俺の誕生日会が繰り返されてる……みたいな、そんな感じがする。」
「いやでも、そんなわけ——」
「シゲ!お前も分かるだろ!いい加減にしろよ!」
思わず怒鳴ってしまう。
シゲちゃんは黙ってしまった。
「なぁ、お前ら。」
ユキオがドアをガチャガチャしている。
「何やってんだよ。」
「開かねぇんだよ!」
俺は駆け寄って、ドアノブに手をかけた。力いっぱいに捻った。
それでも、微動だにしない。
ドアが、開かない。
スマホが、小さい三脚で机にセットされていた。
そこからは出られないよ。
ソウタはどうするのかな。
「電気つけろ。」
明かりがつけられる。
「俺とソウタは外に出れないか試す。シゲは外と連絡を取ってくれ。」
ドアと窓は固く施錠されているように開かない。
部屋で鈍器になりそうなものを探し、それを叩きつけても傷一つつかないようだ。
「外と連絡が取れない。」
シゲちゃんはスマホの画面を何度もタップしている。
「は?」
「スマホが動かないんだよ!ビデオ撮る画面から動かない!」
俺とユキオも自分のスマホを確認する。
俺たちのスマホに関しては電源が入らない。
充電もできない。
「くそ、くそ!!」
ユキオがやけくそになってドアを殴打し続ける。
シゲちゃんはスマホを床に叩きつける。
俺は混乱し、ただそんな状況を眺めることしかできなかった。
そんな時間が、ずっと続くような感覚だった。
彼女に、マミに会いたい。
嬉しい……。
この時は、まだ私のこと本当に好きだったんだ。
「おい、分かったぞ。」
ユキオはそう言って明かりをつけた。
「シゲ、お前なんだろ?」
「は?何が——」
ユキオが振りかぶって、シゲちゃんを思い切り殴った。
「お前が、ここに、俺たちを閉じ込めたんだろうがよ!!」
混乱して動くことができないシゲちゃんを、馬乗りになって殴り続ける。
ユキオの手が鼻血で汚れている。
「やめろよ!お前おかしいぞ!」
「いいや、おかしいのはこいつだね!なんでこいつのスマホだけ動いてるんだよ。なんでずっと録画してんだよ。なんでずっと、ずっと、俺たちを見てんだよ!」
「やめろ!!」
俺はユキオを羽交い絞めにして抑えた。
シゲちゃん放心状態だ。
こんな時間は、いつまで続くのだろう。
誰か、俺たちを見ているのか?
ソウタ、かっこいい。
正義感の強いソウタが好き。
「がっ……。」
気が付くと、暗闇の中からユキオの声が聞こえた。
しかし、それも最初だけ。
今は何か湿ったような音だけが聞こえる。
明かりをつけた。
「おい、シゲ……?」
シゲちゃんは答えない。
下には血だまりができていた。
俺たちのケーキを切り分けるのに使うはずだったそれを、ひたすらユキオの胸に突き立てている。
「シゲ、やめろ…やめてくれ……。」
俺はその場で膝から崩れ落ちた。
嗚咽することしかできなかった。
「だって、殺されるじゃん。先に殺さないと。」
俺を振り向いてそう言った。
真顔だ。
「ソウタも、俺のこと殺すだろ?」
「そんなこと、するわけねぇだろ!!」
瞬間、熱を感じた。
胸に熱いものが、奥深く刺さったような感覚。
呼吸が浅くなっていく。
「嘘つき、嘘つき、嘘つき。」
シゲちゃんが何を言っているか、理解ができなかった。
視界が真っ暗になる。
マミ……。
死ぬときも、私のことを……。
このソウタは私を愛してくれる。
もっと、私を求めて。
包丁に一番近いのは俺だ。
ざまぁ見ろ。
暗い闇の中で殺しあっている。
ずっと、殺しあっている。
飽きた。
試しに自殺に挑戦してみた。
死にきれない。
痛い。
少し慣れてきた。
これ腸かな。肺よりイケる。
流石に包丁じゃ切れないかぁ。
この赤い光はなんだ?
俺がなぜここにいるかすら、もう覚えてはいない。
もう動く気力もない。
なんで生きてるんだろう。
何度も、何度も、死んだのに。
俺は生きている。
生き続けている。
私はここ数年、一度も寂しさを感じたことがない。
最愛のソウタは生きているから。
事故で死んだ?
いや、生きている。
少なくとも、ここでは。
再生ボタンを押した。
今日もソウタは生きていた。
ここなら、いつだって、生きているソウタに会える。
ソウタが生きていることこそ、私の喜び。
ソウタにとっては辛いかもしれないけど、ソウタと手を繋げない私も辛いんだよ。
だから、少し我慢してね。
停止。
終わっちゃった。
でも、また会える。
再生ボタンを押す。
なんて嬉しいことだろう。
何度も、何度も、会えるのは。
ソウタは生きている。
生き続けている。
補遺: SCP-1733の収容以降、SCP-1733に酷似した異常性を持つオブジェクトが多数収容されています。このことからゲーラー博士はSCP-1733を「映像記録媒体に発生する異常な現象」として再定義する案をサイト管理官に提出し、現在協議中です。
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任意A任意B任意C- portal:7455630 (15 May 2021 14:23)
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