湖面の幻2

クレジット

タイトル: SCP-XXXX-JP - 湖面の幻
著者: Genryu
作成年: 2023

SCP-XXX-JPが生息する湖

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPが存在する湖の周囲1kmを高さ180cmの有刺鉄線フェンスで覆い、一般人が立ち入ることを防いでください。また、SCP-XXX-JPは周囲に設置した監視カメラによる監視状態を継続し、これまでの挙動と逸脱している点が見られた場合は速やかにサイト管理官に報告してください。

説明: SCP-XXX-JPは██県██市の██湖に生息する葉足動物に類似した分類未定の生命体です。全長約10mで頭部はサレマ・ポーギー（学名:Sarpa salpa）に酷似しており、円柱状の胴部には20対の歩脚と14対の触腕を有しています。SCP-XXX-JPはその歩脚を用いて湖底を移動し、湖底に沈殿した生物の死骸を摂食することで生命活動を維持しています。触腕は摂食対象を掴むために用いられ、5〜10mの長さに伸縮します。

SCP-XXX-JPは自身の周囲20〜40mに存在する生物に対して幻覚症状を引き起こすことが可能です。監視カメラでは湖周辺の昆虫が不自然な形で湖に入水していく様子が頻繁に確認されており、これはSCP-XXX-JPが周辺に生息する生物に幻覚症状を引き起こしているためと考えられています。SCP-XXX-JPは入水して溺死した生物を摂食していることから、幻覚により摂食対象を自身の生息する湖へ誘導していると考えられています。

SCP-XXX-JPの異常性は人間に対しても行使されることが確認されています。しかし、人間が湖に入水するよう誘導された事例は現在に至るまで確認されていません。幻覚症状で認識する事象は個人によって多少の差異は見られますが、異常性に曝露した者（以下、対象）は多くの場合混乱を示します。混乱状態に陥った対象は多くの場合、幻覚によってSCP-XXX-JPが摂食可能な食物を湖に投擲するよう誘導されます。SCP-XXX-JPは対象を混乱させて食物を与えるよう誘導する習性があり、人間を捕食することはその習性上消極的であると考えられています。

発見経緯: SCP-XXX-JPは「幻が見える湖がある」という近隣住民の風説を耳にした財団エージェントによって調査され、発見に至りました。上述した風説は周辺地域に定着しており、SCP-XXX-JPの異常性に曝露した可能性があると考えられる人物が19人発見されました。SCP-XXX-JPの異常性の曝露を防止するために近隣住民への記憶処理を行い、現在の収容プロトコルが確立されました。以下は近隣住民へのインタビュー記録です。

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+ インタビュー記録1-XXX-JP

対象: 小野瀬氏

インタビュアー: 松井研究員

<記録開始>

松井研究員: 湖での不思議な体験について教えていただきたいです。

小野瀬氏: 友達4人で散歩をしていたんです。そしたら湖にコイがいることに気がついて、なんとなく餌をあげたくなったんですよね。ちょうど餌になりそうなスナック菓子を持ってたので。

松井研究員: コイは1匹ですか？

小野瀬氏: 10匹くらいいたかな。餌をあげたんです。そしたら……ああ、これ言うとバカだと思われそうなんで言いづらいっすね。

松井研究員: あの湖で不思議な体験をする方は他にもいらっしゃるようです。あなたの話も信じます。話してくださいませんか？

小野瀬氏: ……組体操を始めたんです。

松井研究員: え？あなた方が？

小野瀬氏: いや、コイが。過激に。

松井研究員: 過激に組体操……？

小野瀬氏: それで、喋ったんですよ。

松井研究員: なんて？

小野瀬氏: はぁ〜どっこい。［腰を素早く突き出す］

松井研究員: ［沈黙］

小野瀬氏: それが終わるとコイ達は1列に整列しました。なんか、こう、訳が分からなかったんですけど、チップ払わないとダメなやつかなと思ってスナック菓子全部あげました。

<記録終了>

メモ: 他の事例を踏まえると、人間はSCP-XXX-JPに餌を与え、SCP-XXX-JPは人間が望む幻覚を与えるという一種の共生関係が構築されている可能性がある。それを明かすためには今後、実験を重ねていく必要があるだろう。

幻覚症状はおそらく、餌を持っていそうな人間に曝露させているのだろう。人間の興味を引くような幻覚を見せることで、また、ハードッコイという未知の品種について調査必要か。

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+ インタビュー記録2-XXX-JP

対象: 内藤氏

インタビュアー: 江端研究員

<記録開始>

江端研究員: 噂の湖についてお話を伺ってもよろしいですか？

内藤氏: あの湖はここらじゃ有名な釣りスポットで、土日になると沢山の釣り人が集まってくるんですよ。なんでかって、昔っから言われてる伝説みたいなのがあるんです。

江端研究員: 伝説？

内藤氏: そう。ここら辺の釣り人がこぞって釣りたがってる伝説のヌシ。他の場所では見たことのないような七色の鱗を持つ魚がいるんです。それがたまに湖の真ん中でバシャーンと水面から飛び出してくるんですよ。その美しさたるや……ああ、なんとしてでも釣ってみたい。

江端研究員: 確かに、かなり珍しい魚ですね。その魚の姿が分かるような写真や動画はありますか？

内藤氏: ないんですよそれが。不思議なんです。なんたってカメラに映らないんですから。なので、あの湖に足を運んだことがない人には信じてもらえない。いやぁ、本当に不思議なんですよね。

江端研究員: 記録に残すことは難しい、と。では、その魚が釣り針にかかったことはありますか？釣るまでいかなくても、惜しいところまでいったとか。

内藤氏: 誰もヌシを引っ掛けたことがないんです。ヌシは相当に頭のいいやつで、餌だけ綺麗に食っちまう。ルアーを試してもダメでしたね、何回か使ううちに壊されちまうんです。なので沢山の生き餌を持っていくんですが、帰る時はほぼなくなってんですよね。［笑う］

江端研究員: なるほど。こんなことを言うのは失礼かと思うんですが、すみません、その魚は本当に実在するんですか？

内藤氏: 写真にも映らないのでそう言われても仕方ないですよね。集団幻覚？ってやつかもしれないですし……本当はヌシなんていないのかもしれませんね。でも、仮にヌシの存在が幻だったとしても別に俺は気にしませんけど。

江端研究員: 何故ですか？大物を釣り上げるために湖に通っているのではないのですか？

内藤氏: 確かにヌシも釣り上げてみたいですけど……俺が本当に欲しかったのは珍しい魚じゃなくて、沢山の釣り仲間だったんです。いつもの場所で動かない釣り糸と睨めっこしながら、しょーもない話をし合える仲間がね。ヌシはそんな俺の願いを叶えてくれた神さまみたいなもんなんです。その礼だと思えば、餌なんかいくら食われたって構わないくらいですよ。

<記録終了>

メモ: SCP-XXX-JPはヌシの幻覚を見せることで多くの釣り人を呼び、その生き餌を捕食していたのだろう。これまでの事例を踏まえると人間はSCP-XXX-JPに餌を与え、SCP-XXX-JPは人間が望む幻覚を与えるという共生関係が構築されていると考えられる。

また、SCP-XXX-JPは見せる幻覚を個人に応じて変化させ、より最適に餌が手に入るように工夫しているとも考えられる。だとすれば、SCP-XXX-JPは個人の趣味や嗜好を読み取るような異常性もあるのかもしれない。それを明かすためには今後、実験を重ねていく必要がある。

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+ インタビュー記録3-XXX-JP

対象: 小泉氏

インタビュアー: 江端研究員

<記録開始>

江端研究員: 貴重なお時間をいただき、ありがとうござます。ではまず、湖で幻覚を見た状況について教えてください。

小泉氏: 深夜の2時くらいだったでしょうか。その時は雨が降ってましたね。特に変わった様子はありませんでした。

江端研究員: 深夜2時？何故そんな時間に湖にいたのですか？

小泉氏: そうですね……実は私、死にたいと思ってたんです。あてもなく車を走らせていたら、たまたま湖を見つけて、そこで身を投げて死んでしまおうかなって。交通事故で息子を亡くした事実を受け入れられなくて……あの子がいない世界なんて生きてても辛いだけ。命なんて捨ててしまいたい。そう思っていたんです。

江端研究員: そう思っていた？ということは考えが変わったということですか？

小泉氏: あの湖のおかげなんです。

江端研究員: 詳しく伺ってもいいですか？

小泉氏: いいですけど、信じてもらえないと思います。それくらい変な話なんですけど……。

江端研究員: 話してみてください。あの湖で何があったのですか？

小泉氏: 私が身を投げようとして湖に近づくと、星空が水面に映って見えたんです。私はついにおかしくなってしまったのかと思いました。だってその時は雨が降っていて、夜空に星なんて見えなかったんですから。

江端研究員: 続けてください。

小泉氏: 私はしばらく水面に映る星空を眺めていたんですが、一際輝く星を見つけたんです。そして何故か分かりませんが、その星が私の息子だと確信したんです。そうとしか思えなかった。しばらく見つめていると星は徐々に私の方へ近づいてきて、すぐ手前で止まりました。そうしたら私……何を思ったのか必死に星を掴もうと水面に手を伸ばしました。何回も、何回も、必死に。でも、掴めませんでした。手に届きそうなほど近くで輝いているのに。

江端研究員: それほどまでに星を手に入れたかったのですね。

小泉氏: ですが、本当は分かっていました。水面に映っている星は触れることすら出来ない。星は雲の上にある。掴めそうなほど近くにあるようで、遥か遠くにある。だとしても、掴もうとすることをやめられなかった。……しばらくすると私は疲れ果てて、ただ輝きを呆然と見つめて泣くことしかできなくなっていました。

江端研究員: その後はどうしたのですか？

小泉氏: どうもしませんよ。見つめ続けていました。涙を拭って見てみたら本当に美しくて……。

江端研究員: その時点では自殺をすることはもう考えていなかったのですか？

小泉氏: はい。忘れてしまうくらい星の輝きに魅入っていましたから。気づいたら夜は明けていて、雨上がりの清々しい空が広がっていました。湖に目を戻すと星はもう見えなくなっていましたが……生きよう、って思いました。

江端研究員: 生きていたいと思った理由はなんでしょうか？

小泉氏: 星は輝き続けていると分かったからです。遠くにあっても、近くでずっと。この輝きを私は忘れない。

<記録終了>

メモ: SCP-XXX-JPはその体躯から人間も十分に捕食可能と思われるが、敢えて入水することを回避させるような幻覚を見せた理由は不明。持続的な食料源となる人間が命を断つのは、将来的に不利益と考えたのだろうか？

星は異常性によって認識したものと考えられる。だが、そこから見出した希望は幻覚ではないだろう。

+ スポイラー

・幻覚で周辺の昆虫を捕食する怪異です。ハルキゲニアに魚の頭が着いたような姿をしてます。
人間は捕食対象ではなく共生関係です。幻覚で人を楽しませることで餌を貰うという習性があります。

補遺1→幻覚の内容
補遺2→共生関係と個人に応じた幻覚について
補遺3→幻覚を見せる習性で自殺を止める

・補遺3がメインで、テーマは人の死の受容です。
①雨の降る夜（死の直後）
②星に手を伸ばす（死を受け入れられない）
③涙が枯れても星を見つめる（徐々に死を受け入れ始める）
④夜明け、青空（死を受け入れる）
星は輝き続けている＝綺麗な思い出を忘れない、心の中で生きている…的なニュアンスです。

SCP-XXX-JPは餌が定期的に得られるように幻覚を見せます。
人間には長生きしてもらいたいと考えているため、自殺をその場だけ防げるようなものではなく、今後も自殺しないよう生きる希望を与えるような幻覚を見せました。

+ 気になっている点

1. インタビューに違和感は無いか？
2. 説明のクリニカルトーンについて、もっと良い表現はないか？
3. 生態はユニークか？また、オチは生態に沿っていて不自然でないか？
4. UV,NV,DVを付けるとしたらどれか？

+ 画像の出典

ソース: https://publicdomainq.net/sunset-lake-0030729/
ライセンス:パブリックドメイン/CC0

タイトル:日暮れの湖の風景

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