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アイテム番号: SCP-XXXX-JP

SCP-XXXX-JP復元骨格標本
オブジェクトクラス: Safe / Ticonderoga
特別収容プロトコル: 現在財団が保有するSCP-XXXX-JPの標本はサイト-J2-44においてアルゴンガスで充填された密閉式アクリルケース内に保管されています。損傷した軟組織は10%ホルマリン水溶液を固定液として浸漬されています。液浸標本の保管にあたっては直射日光を避け、また年に1回固定液の1/3を交換してください。
地球上に生息が示唆されるSCP-XXXX-JPは望遠カメラによる観察を受けます。財団がSCP-XXXX-JPと直接接触する予定はありません。
説明: SCP-XXXX-JPは、有鱗目ヘビ亜目ナミヘビ科に属する、地球上に生息する飛翔性動物です。全長は約10mに達し、新生代の爬虫類としては極めて大型の部類であり、また飛翔性生物としては最大です。SCP-XXXX-JPの飛行可能速度の上限は不明ですが、平常時において11.2km/s以下と推定されます。SCP-XXXX-JPは当該の飛翔能力を利用して生息圏を大気上層へ拡大した種と推測されます。

SCP-XXXX-JPは旧式のロケットエンジンと類似する機能を消化器系に搭載している。
SCP-XXXX-JPはおそらく複雑な消化器系を有しており、内部で気相あるいは液相の調整を行います。既知のヘビ亜目爬虫類の消化器官には無数の共生細菌や寄生性原虫が生息しており、SCP-XXXX-JPの体内環境も同様と想定されます。SCP-XXXX-JPは嫌気環境に生息するメタン生成菌を体内に共生させ、発生したメタンを飛翔用の燃料に利用すると考えられます。
消化管の蠕動とこれらの微生物相による調整を経て、SCP-XXXX-JPの消化管内では可燃性ガスであるメタンを中心とする気相が充満します。SCP-XXXX-JPが膨張した消化管を背腹方向の波動運動と肋骨の変形に伴って圧縮すると、調整された圧縮ガスは酸素と共に総排出孔から噴射され、爆発的な燃焼を発生します。燃焼で生じた莫大な二酸化炭素と水蒸気により推進力が獲得され、SCP-XXXX-JPは極めて高速での飛翔を可能としています。
SCP-XXXX-JPは飛行に適した骨格形態を持ちます。肩帯・腰帯が完全に退化しているため、空気抵抗は低減されています。またSCP-XXXX-JPは肋骨を開放して体を扁平化することにより有翼化します。SCP-XXXX-JPは文献記録の存在する既知のすべてのヘビ亜目有鱗目と同様に胸骨を持たないため、固定されていない肋骨は自由に開閉可能です。この機能によりSCP-XXXX-JPは肋骨を外側に拡張する形で翼を形成し、飛行中の姿勢を安定させ、また十分な揚力を獲得します。
SCP-XXXX-JPは地球表層から高度約10~25kmの領域を飛行します。当該領域の気温は大多数の地球生命には致命的とされますが、SCP-XXXX-JPは飛翔能力の獲得と共に内温性の動物へ進化し、また飛行時に発生する断熱圧縮によって熱を獲得していると見られます。またSCP-XXXX-JPの鱗は主にタンパク質のケラチンから構成されますが、チロシンやメラニンをはじめとする他のタンパク質も含有されています。チロシンは鱗の硬度の向上による破壊耐性の付与に寄与し、メラニンは高高度ゆえに曝露する強力な紫外線を吸収し、それぞれ莫大な運動エネルギーと極限環境への適応と見られます。
断熱圧縮の効果は卵にも付与されており、大気中に産卵された卵は第一宇宙速度を維持しながら保温され、やがて孵化に至ります。孵化した幼体は直ちに滑空を開始し、熾烈な生存競争に置かれます。同種の成体をはじめとする捕食動物や後述うするSA-XXXX-JP-βなど吸血昆虫の脅威を回避し、燃料となる可燃性ガスや食餌の摂取に成功した個体のみが生存します。幼体は孵化直後から滑空や飛行を行い、約3~4年をかけて成熟します。性成熟を迎えたSCP-XXXX-JPの雄個体は鱗や肋骨の動作で以て雌にアプローチし、成功の場合に交尾へ至ります。
SCP-XXXX-JPは上記の生態を持つ中で、以下のような生物と相互作用を持つと推測されます。
番号: SA-XXXX-JP-α

Cardiospermum halicacabum
概要: 浮遊性植物。Cardiospermum halicacabumの果実に類似する直径3 - 5mの袋を持つ。当該の袋は一般的な地球植物での葉との相同器官と推測される。茎は退化して痕跡器官に変化しており、植物体の支持機能を喪失している。根も表面積が大きく複雑な構造をとり、植物体の固定機能を欠き、球体の最下部に付随して大気中に存在する水蒸気・水分の吸収に寄与する。
本種の浮遊様式は明らかではないが、水素生成触媒として機能するカタラーゼ様酵素によって水を分解して水素を合成するか、あるいはSCP-XXXX-JP同様共生メタン生成菌によりメタンガスを貯留して浮力を獲得していると目される。本種をメタン供給源とするSCP-XXXX-JPの行動は観測されていないため、前者が有力視されている。
相互作用: 高速飛行に伴って放出されるSCP-XXXX-JP由来の二酸化炭素は当該植物の光合成に寄与し、その成長を促進する。また、大気中に放出する排泄物に含有される窒素・リン・カリウムといった物質は栄養塩として機能すると推測される。
SA-XXXX-JP-αは他の生物の食糧資源としての役割のほかに、水の供給源としての機能が推測される。SA-XXXX-JP-β, -εのように繁殖に水を要する生物には妖精の住処をも提供すると考えられる。
番号: SA-XXXX-JP-β

Aedes albopictus
概要: 高高度に適応した昆虫類と目される。厳密な分類は不明であるが、SA-XXXX-JP-αへの付着(植物体内の液の摂取と目される)やSCP-XXXX-JPへの接近(吸血行動の可能性あり)が見られることから、カ科に属する双翅目の可能性が指摘されている。大規模な群集が確認されており、吸汁行動のため上空へ飛来しているものと考えられる。
幼虫体と虫卵の所在は不明である。成虫の群集が地表に降りる様子が確認されていないことから、SA-XXXX-JP-αが貯蔵する水分中に産卵し、内部で孵化する可能性がある。
相互作用: SCP-XXXX-JPが本昆虫を直接的に摂食する様子は確認されていないが、本種は浮遊性植物から資源を得ており、間接的にSCP-XXXX-JP由来の物質を利用している。また、昆虫のバイオマスは現代においても莫大であり、生態ピラミッドの下位層として大気生態系を維持する効果が考えられる。
なお特に体サイズの小さいSCP-XXXX-JPの幼体にとってSA-XXXX-JP-βの群集は脅威である。体力的に成体に劣り、またそもそもの血液量の乏しい幼体は、SA-XXXX-JP-β群集の吸血行動によって死に至る場合も観測されている。
番号: SA-XXXX-JP-γ

Drosera rotundifolia
概要: SA-XXXX-JP-αに付着する寄生性植物。つる性の植物であり、かつて北アメリカ大陸で致命的な侵略的外来種として扱われたPueraria lobataから派生した可能性がある。つるの先端部の構造は複雑化しており、Drosera rotundifoliaに類似する粘着性の捕虫器官と目される。植物に寄生しつつ昆虫を捕食する、従属栄養性を強化した種と言える。
散布する種子は粘着質の液体(捕虫用の粘液との関連は不明)に被覆されており、その状態で宿主となるSA-XXXX-JP-αをはじめとする植物上に落下する。粘液によって宿主の表皮に固着すると、発芽して根を伸ばし、寄生を開始する。
相互作用: SA-XXXX-JP-γの捕虫器官にSCP-XXXX-JPが吻部を挿入する様子が確認されている。SCP-XXXX-JPがその体サイズを昆虫食のみで維持可能とは考えにくいため、当該の行動は腸内微生物あるいはその調整に寄与する成分の摂取にあると考えられる。SA-XXXX-JP-γが双翅目昆虫の誘因にメタンガスを用いている場合、SCP-XXXX-JPが共生メタン生成菌をSA-XXXX-JP-γから獲得する可能性はある。
番号: SA-XXXX-JP-ε

Cheilopogon melanurus
概要: 飛翔性魚類。常に大気中で行動することから、祖先の鰓呼吸と異なり肺に類する器官での呼吸を行うと推測される。発達した腹ビレと胸ビレで羽ばたくことによって揚力を獲得しており、SA-XXXX-JP-βをはじめとする昆虫類を捕食する。
最低でも数百におよぶモルフォタイプの多様性が認められており、高速度での飛翔に長けた流線形のものや、SA-XXXX-JP-αの根に巣を設ける固着性のもの、硬組織からなる鋭利な構造を外皮に持つものなどが確認されている。
相互作用: SA-XXXX-JP-εは鳥類が根絶された現在の大気中における主要なタンパク源であり、SCP-XXXX-JPに常食されている。上述の多様性はSCP-XXXX-JPの捕食圧やその他の生物との相互作用に起因する可能性がある。
これらの生物が生息する環境において、SCP-XXXX-JPは頂点捕食者の地位にあると推測されます。

回収された椎骨。急激な温度変化や宇宙線に曝露し、劣化が認められる。
発見経緯: ██/██/██/██、約14.3km/sで運動する小規模天体が小惑星観測網に検出されました。当該物体は異様に細長い形状をしており、また脊椎動物の頭部および胴部に類似する形状が認められたことから、サスペクテッド・アノマリーとして取り扱われました。当該オブジェクトは近傍天体の引力の影響を受けて加減速を繰り返し、██/██に木星第二衛星エウロパへ落下しました。
当該オブジェクトとエウロパの衝突は2.0×109Jに達する莫大なエネルギーを生じました。この結果として、周囲の氷床地殻は破壊され、また広範囲に亘って熔融し莫大な水を生じました。エウロパ上の財団施設は衝突による直接的な被害を免れましたが、約5,000m3に及ぶ氷床の融解につき洪水をはじめとする二次被害の対応に追われ、サイトの完全復旧とオブジェクトの回収には2週間を要しました。
回収されたオブジェクトは衝突の衝撃・熱・および宇宙空間で晒された真空状態をはじめとする様々な要因で損傷を受けていましたが、保存された椎骨はヘビ亜目の脊椎動物としての形態形質を確認できるものであり、また周囲の水や水氷で冷却された鱗や軟組織も確認されました。細胞は著しく破壊されていましたが、採取されたDNA断片を繋ぎ合わせた結果、塩基配列と系統解析の結果からはDasypeltisとの近縁性が示唆されました。

鳥類の卵を嚥下するDasypeltis scabra
進化史: ヘビ亜目の起源は新しく、中生代の白亜紀まで遡ることができます。白亜紀において抗重力器官を喪失して波動運動によるロコモーションを獲得したヘビ亜目は、古第三紀に爆発的な放散を遂げ、陸域から海域までに幅広く生息圏を拡大したとされます。ヘビ亜目の爬虫類は咀嚼することなく獲物を嚥下しますが、この際に肋骨の自由度を利用して胸郭を拡張します。SCP-XXXX-JPの祖先はこの特性を継承し、捕食行動から滑空行動に転用したと推定されます。
SCP-XXXX-JPを含め地上棲の生物が空中に生活圏を移動したドライビングフォースとしては、地球表層環境の悪化が挙げられます。約500万年前にHomo sapiensが開始した大規模な環境改変は、北極海における海氷の成長パターンを大きく変化させ、氷の下層に存在した膨大な植物プランクトンバイオマスに影響を与えました。植物プランクトンの異常増殖は数百km規模で拡大し、当時は地球を周回する人工衛星から緑色の水塊を容易に視認できたとされます。
ファイル「人間活動に伴う環境変動」も参照
個体群密度の上昇をシグナルとして突然異変を遂げた一部の藻類は代謝活動を変化させました。彼らは北極海海底に存在する熱水噴出孔(大西洋中央海嶺の活動と関連か)から供給される硫黄化合物含有鉱物粒子を代謝に用い、硫化水素を発生する硫黄呼吸を卓越させる進化を遂げました。硫化水素はプロトン勾配を形成して当該藻類のATP合成に寄与しますが、過剰量の硫化水素は一部の酵素の作用によって有毒性の硫黄酸化物に変化します。すなわち、当該藻類は呼吸の過程で二酸化硫黄をはじめとする有毒ガスの排出を開始しました。
当該のガス排出は特に対流圏における地球の大気組成を大きく変化させるものであり、絶対的な規模は約24億年前の大酸化事変に次ぎ、また進行速度はそれを有意に上回ったものであると推測されます。大酸化事変においてはマントル組成の変化とシアノバクテリアの光合成により約3億年をかけて大気中酸素濃度が増大しましたが、本件では数千年スケールで汚染が進行し、当時の人類は生存圏確保のため地球外への脱出を余儀なくされました。人類はエウロパをはじめとする一部天体に地球観測施設と人員を残し、恒星間航行船による移住を開始しました。
ファイル「人類の生存圏開拓に係る提言」も参照
二酸化硫黄は動物の皮膚・粘膜を強く刺激するほか、真菌類・細菌類に対する抗菌剤としての効果を持ち、生物体に対して有害です。陸上植物相が大幅に衰退したため、陸上動物相は大気汚染と飢餓によって壊滅しました。特に、発達した気嚢システムを持つ鳥類はその呼吸効率が仇となり、大気汚染の影響を如実に受けて絶滅を迎えました。陸上動植物は藻類の影響が及ばない低緯度や高地へ進出し、やがて地面や低層の大気に依存しない浮遊性・飛翔性の種が出現しました。
加えて二酸化硫黄は水溶性を示し、水と接触して生じる亜硫酸もまた生物体に強力な作用を及ぼします。北極海の藻類による莫大な二酸化硫黄生産は風成循環と熱塩循環の双方から海洋酸性化を促進し、比較的短期間で海洋生態系を破壊したと推測されます。海棲節足動物・軟体動物は絶滅し、魚類は鳥類が不在となった空域に進出した一部の種のみが生存しました。
ファイル「人新世における大量絶滅事変」も参照
SCP-XXXX-JPは肋骨に付着する筋肉の発達を経て滑空から飛翔へ行動様式を変化させ、新たな生活圏である空へ進出しました。SCP-XXXX-JPをはじめとする生物は地表大気の1/4~1/100に相当する希薄な大気、-50℃に達する低温、紫外線を含む強力な太陽光といった過酷な環境条件に適応しました。一般的な地表生物が経験しうる呼吸器系・神経系等の種々の重篤な障害を解消し、正常な生命活動が継続されています。
SCP-XXXX-JPのような大型の捕食者の存在は生態系の完全な回復を示唆します。極めて深刻な大量絶滅事変の後、生態ピラミッドは栄養段階の下位から上位を埋めるように再構築されます。汚染された地上から空へ進出した生物群は新たな均衡を作り上げ、SCP-XXXX-JPに代表される高度な生態系を完成させていたことが分かります。
また、エウロパで発見されたSCP-XXXX-JPの存在は火山活動をはじめとする偶発的な事故により加速を受けたと考えられますが、それを加味してもSCP-XXXX-JPは第二宇宙速度に近い速度で飛行可能であることが示唆されます。今後も大気上層が待避地としての機能を数千万年に亘って維持した場合、SCP-XXXX-JPに代表される生物群は人類に次いで大気圏を脱出し、外宇宙に自ら触れる第二の地球生物となる可能性があります。
付与予定タグ: esoteric-class scp jp xコン23 _イベント3 _イベント4 空棲 国外収容 生命 地球外 動物 爬虫類 ヘビ
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本記事はXのコンテスト参加作品です。テーマは「Q(Quest)」です。
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任意A任意B任意C- portal:7450069 (16 Nov 2021 13:06)
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