Chiyisameの下書き3「月の懐中時計」

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アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPは、その性質上移動が困難であるため、SCP-XXXX-JPを中心にして収容施設を建設し収容します。収容施設内は、SCP-XXXX-JPの故障を防ぐため常温に保ち、相対湿度が50％を超えないようにしてください。収容施設付近の住民にはカバーストーリー"小規模な研究施設"を流布してください。SCP-XXXX-JPに磁力を発する器具を近づけてはなりません。
SCP-XXXX-JPを用いた実験を行いたい職員は、事前に桂井博士の認可を得てください。ただし、認可を得た場合においても、分針を550分以上回すことは禁止されています。現在、SCP-XXXX-JPを用いたいかなる実験も認可されていません。

説明: SCP-XXXX-JPは、Aerowatch社¹製の懐中時計と酷似した外見をした、直径37.2m、質量4tの時計です。SCP-XXXX-JPには長さ194mのステンレス製の巨大なチェーンが括り付けられています。SCP-XXXX-JPの本体は破壊耐性を持ちますが、チェーン部分は破壊耐性を持っていません。SCP-XXXX-JPは不明な動力によって外部から力を与えられることなく動作を続けており、その時刻は原子時計の指す時刻と完全に一致しています。なお、竜頭²を引き出して回転させることにより、時刻を調整することは可能です。ただし、SCP-XXXX-JPの針は時計回りにしか進めることはできません。また、SCP-XXXX-JPの時刻を竜頭を回して調整しても、10分～20分かけて正しい時刻に自動的に戻ることが実験により判明しています。
SCP-XXXX-JPの特異性は、竜頭を回して針を回転させた時に発揮されます。SCP-XXXX-JPの分針が回転した時間の分だけ、潮位が変化します。この潮位の変化は一時的なものであり、継続しません。潮位の変化する時間の長さは、時間の調整分とほとんど同じです³。現在までの実験で、潮位は最大█.1m変化することが判明しています。
なお、分針を回転させる際に、SCP-XXXX-JP内から波の音がすることが確認されていますが、上記の現象との関連性は不明です。

補遺: SCP-XXXX-JPは、2007年2月18日、岡山県倉敷市██町の廃屋に出現しました。現地住民は「廃屋を中から引き裂くように時計が出現した」という証言を残しており、その住民の携帯電話内の映像からそれが事実であることが確認されました。現地住民にはクラスB記憶処理が実施され、2007年2月28日から収容施設の建設が開始されました。また、Aerowatch社に対して「日本で大きな時計を作ったことはあるか」という趣旨の問い合わせを行ったところ、「ない」との返答があったため、SCP-XXXX-JPがSCiPであることが確定されました。

補遺2: 2019年█月██日、同日までの調査により、日本近海での潮位が、2000年と比較して0.7m程度上昇していることが判明しました。SCP-XXXX-JPおよびSCP-███-██との関連性が指摘されており、現在調査が行われています。SCP-XXXX-JPとの関連性について新しい情報や知見を得た職員は、桂井博士に報告してください。なお、この件に関して、カバーストーリー"地球温暖化"を流布することが検討されています。

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特別収容プロトコル(2018年7月██日改訂): SCP-XXXX-JPは、その性質上移動が困難であるため、SCP-XXXX-JPを中心にして収容施設を建設し収容します。収容施設内は、SCP-XXXX-JPの故障を防ぐため常温に保ち、相対湿度が50％を超えないようにしてください。収容施設付近の住民にはカバーストーリー"小規模な研究施設"を流布してください。
通常時には、SCP-XXXX-JPを用いたいかなる実験も禁止されます。ただし、真に特別な理由があり、SCP-XXXX-JPを用いた実験の実施が必要である場合には、日本支部理事██の認可を得た上で実施することができます。
SCP-XXXX-JPによる地球への影響が顕著になった場合には、財団は各学会やNASAなどにエージェントを潜り込ませ、大規模な情報操作を行い、SCP-XXXX-JPの影響を隠蔽してください。

説明: SCP-XXXX-JPは、その時刻が進んだ分だけ、月の軌道を地球の重心へ近づける特異性を持つオブジェクトです。近づいた分の月の角運動量は角運動量保存の法則に従って減少し、減少した分は地球の角運動量および月の軌道に移動するものと推察されています。
また、財団の行った調査により、地球と月の共通重心が、月の接近だけでは説明できないほどに月の側に寄っていることが発覚していますが、これについては、██博士により、「SCP-XXXX-JPは、月を地球に接近させるだけでなく、月の質量を増加させる特異性も持っている」という有力な仮説が唱えられています。
月の軌道は、通常、SCP-XXXX-JPが自然に経過させる時間に比例して地球に近づきます。竜頭を回転させて分針を進めた場合、分針が正しい時刻に戻るまで、回転させて進めた時間の分だけ近づくようです。衛星や望遠鏡などを用いた調査によると、2018年10月時点で、月は2007年時点と比較して█863km地球に近づいているものと推定されます。

月が接近した影響により、地球の自転速度が2006年と比較して█7ミリ秒長くなっているほか、月に面した地方の重力加速度がわずかに減少する現象が発生しています。潮汐の変化により、今後数十年間で海抜の低い地域が断続的に水没するようになると考えられています。その他にも、月の公転周期が微細に変化しており、月の「裏側」が徐々に地球側に向きつつあります。また、「SCP-XXXX-JPの活動と連動して、月の質量が増大する」という仮説が事実であれば、いずれ地球の公転にまで影響を及ぼす可能性があります。
現在までの月の接近速度から推測すれば、月は27██年までにロシュ限界を超えて地球に衝突すると考えられており、XK-クラス:世界終焉シナリオの要因の一つとなります。

追記: SCP-XXXX-JPの針は磁力の影響をわずかながら受けることが、201█年█月に発生したインシデントにより判明しました。SCP-XXXX-JPの近傍に強力な電磁石を配置し、針を逆に回転させることによって月を遠ざける計画が準備されています。この計画は201█年に桂井博士によって提案されましたが、「逆に針を大幅に進める結果になるだろう」として却下されました。しかし、現状SCP-XXXX-JPによる影響を軽減させる手段はこれのみであることから、この計画は再び検討されることとなりました。

Footnotes

1. スイスの時計メーカー。

2. 時計の横についている、時間を調整したりぜんまいを巻いたりするのに使用するつまみ。

3. 例えば、分針を60分回すと、潮位の変化は約60分間続きます。

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