千依田"研究員補佐"のはじまり
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 2021年4月15日 午後8時頃
 は1人、住宅街の路地を歩いていた。
「今日遅くなっちゃったな……」
 腕時計を見ながら呟く。
 今日はやけに患者さんがたくさんいた気がする。研修医だからといって楽できるわけではなく、先輩たち含めて病院はてんやわんやだった。
「ま、一人暮らしだから時間関係ないけど。」
 夜ごはんは親子丼で済ませよう、なんて考えていると、
 グチュ
 微かながら、肉が潰れるような音がした。
「えっ?」
 音のしたほうを見ると、そこには細い路地があった。
 奥で何かが起きてる……?え、まさか殺人事件とかじゃないよね?
 恐る恐る近づいて、路地を覗く。
「!」
 そこにいたのは、見たこともない生物、というより、怪物だった。
 高さ2mほどの、生きているのが信じられないほど腐った見た目をしたそれは、骨張った四肢を動かす度に、グチュグチュと音を立てていた。
 と、それが振り向いて、白く光る目のようなものがこちらを見てくる。
「ひっ……!」
 目があった。
 僕に気づいた怪物は、方向転換すると、その巨体に似合わないほどのスピードでこちらに向かってきた。
 まずい、このままだと殺される。今すぐ逃げなきゃ。
 頭でははっきりとそう悟っているのに、身体が言う事を聞こうとしない。心臓は今にも破裂しそうなくらいに暴れているのに、足がちっとも動かない。
 その間に迫ってきた怪物は、僕をつかもうと言わんばかりに前足の先の鉤爪を伸ばしてくる。
 そのとき、ようやく足が動いた。
 回れ右をして猛ダッシュする。家への道順なんて気にせず、ただひたすら走る。
 だけど、僕の体力の無さは火事場の馬鹿力でなんとかなるものじゃなかった。体感1分半ほどで、足に力が入らなくなった。そのまま地面に倒れ込む。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
 後ろを見ると、怪物はすぐそこだった。
 やばい、本当に終わったかもしれない。
 死を覚悟した、そのときだった。

 目の前の怪物が、突如として倒れた。

「あ……え……?」
 ギリギリで命拾いしたのはよかったけど、なんで急に……?と思っていると、曲がり角から10人ほど人がやってきた。白衣を着ている人もいれば、スーツを着ていたり、身軽そうな格好をしていたりする人もいる。
 他の人たちが怪物をあれこれ見始めたなか、1人のスーツ姿の長髪の女性が僕に駆け寄る。
「大丈夫ですか?立てますか?」
 そう言って、手を差し伸べてくれた。
「あ、はい……ありがとうございます。」
 お礼を言いながら、僕はその手を引いて立ち上がる。
「いえいえ。こんな時間に申し訳ないのですが、今さっき起きた出来事について、私たちの拠点でお話を聞かせていただけないでしょうか?」
「拠点……ですか?」
「ええ。ここで話すには、聞かれたらマズイことがたくさんあるので。」
「わかりました……」
「ありがとうございます。では、私についてきてください。」
 そう言って、彼女は歩き出した。言われるがままについていくと、路端に1台の車が止めてあった。中に運転手と思わしき人がいる。
「どうぞお乗りください。」
「あ、ありがとうございます。」
 彼女に促されて、その車に乗る。続いて彼女も、僕の隣に座った。と、ふと彼女が、耳につけている通信機器らしきものに、なにか話しかけていた。
「えー、こちら被害者救助班。サイトに戻ってインタビュー調査を行います。」
 被害者……は僕のことか。サイト……?ウェブサイト……?
 まあ、着いてみればわかるだろう。
「ドライバーさん、サイト-8181へお願いします。」
 彼女がそういうと、車は動き出した。


「では、時間も限られていることですし、ここで聞けることは聞いておきたいと思います。」
 車の中で、彼女はクリップボードとペンを持って、話しかけてきた。
「わかりました。」
「ではまず、お名前をこちらに書いていただけますか?」
 クリップボードを渡される。白い紙には親切に『名前:』と書いてある。
「はい、大丈夫です。」
 素直に受け取って、文字の後ろに『千依田 音寧ちいだ ねね』と書く。
「書けました。」
 クリップボードを返す。
「ありがとうございます。千依田さんですね。」
「はい。あの、あなたの名前は……なんでしょうか?」
「申し遅れました。私は鳥目 鈴とりめ すずといいます。どうぞお気軽に呼んでください。」
「鳥目さん……でいいんですよね?よろしくお願いします。」
「はい。こちらこそお願いします。」
 お互いに会釈をする。
「では、お仕事は何をされていますか?」
「えーと、仕事かはわからないんですけど、研修医として、病院で働いてます。」
「そうなんですね。わかりました。」
 鳥目さんがメモをする。
「研修が終わったら、何科の医者になりたいとか、あるんですか?」
「内科系、ですね。外科は責任に潰されてやらかしそうなので……子どもは好きなので、小児科とか、いいなって思ってます。」
「なるほど。ありがとうございます。それではひとまず、車内でのインタビューはここまでとさせていただきます。事件の経緯等々は着いてからで。」
「わかりました。」
 ……
 車内が沈黙に包まれる。
 なんか話した方がいいよね?
「あ、あの……」
「はい、なんでしょう?」
「鳥目さんたちは、一体何者なんですか?あんなものを見ても動じないなんて……」
「何者か……ですか。」
「日頃からこういう『異常』に関わってる人……ですかね。」
「日頃から……?え、ああいうのが他にもいっぱいいるんですか?」
「いえ、私たちのいう『異常』は、今の地球の科学じゃ解明できないもののことなんです。貴方が遭遇したような異常生物もいれば、異常な性質を持った物体、実体がないものもあります。」
「なるほど……」
 今の地球の科学じゃ解明できないもの……

 ……僕の能力も、鳥目さんのいう『異常』なのかな?

「じゃあ、その中には人間も含まれてたりすることとかって……あるんですか?」
「ええ。もちろんです。」
「そういう異常たちって、どうなるんですか?」
「確保、収容、保護。これが私たちの組織の理念です。異常を一般の目から遠ざけ、異常を守る。それが私たちのやり方です。」
「そう、なんですね。」
 ともすれば、

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