クレジット
タイトル: SCP-XXXX-JP - メタタイトル
著者: あなたのアカウント名 does not match any existing user name
作成年: 20XX
☆[[include credit:end]]
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2008年、1月1日00時01分。
三重県伊勢市、伊勢神宮にて。境内を何十人もの人間が足繁く動き回っていた。
神宮は年中何かしらの神事が行われている。それは元旦でも例外ではない。
だが、今回は事情が違うようだ。闊歩しているのは観光客でも、神官でもない。
見慣れない黒いスーツを着た者、或いはかつての侍、武士を連想させる者たち。また表情は堅く、新年という単語には似つかわしくないほど緊張した空気だった。
「連絡はまだつかんのか」
小太りの神官が捲し立てるように言う。
「外郭を利用されていると見ていい、物理的な認識は阻害されている」
侍のようなの男は感情を押し殺すようにゆっくりと答える。
「ほんとに動いちゃあかんの?なんで?」
「組織成立以来の決まりだからだ、何度言えば良い」
「納得いかんわ、死人が出てるかもしれんのやろ」
スーツの男女が口論しながら歩いていく。
そんな中ふと、ひとつの影が橋を渡り、境内へ入っていった。
影は鳥居を過ぎるなり立ち上がり、中から黒装束の男を吐き出した。
男の息は荒く、真冬だというのに大粒の汗で全身を濡らしている。
1人の女性が男に駆け寄っていった。
「服部、どうだった?」
黒装束の男────服部は荒い呼吸のまま、顔も見ずにただ答える。
「…アタリ、でした」
聞いていた女性のみならず、周囲の人間も凍りついたように動かなくなった。服部は続ける。
「出雲結界内の次元が上昇、同時に結界も膨張しています。」
女性は目を瞑り、息を深く吸う。しかし腕の震えは止まらない。それも仕方のないこと。最悪の事態が訪れたのだから。
社から飛び出した1人の神官が叫ぶ。
「仮装神格、浮上を確認!」
もはや震えて止まっている場合ではなかった。
「これより神務を執行する。可及的速やかに事態を鎮圧、秘匿しろ!」
0/ -2
同年同日、0時25分。三重県警 警備部特事第一課は緊急の招集を受けた。
その一員、藤原辰徳は身なりを整えながら会議室を目指していた。
せっかくの元旦が、と言う思いとついにやる時が来たかという緊張感からか普段の茫ッとした表情は消え去り、眉間には深い皺が刻まれている。
「おぅい、藤原くぅん」
後ろから彼の先輩───丸山正孝が追いかけてきた。振り向くことなく早足で進みつつ、訊ねる。
「島根に動きがあったそうですけど、他に聞いてることあります?」
「それ、僕も聞こうと思ってたんだよぉ。卜部課長ってば、島根に動きがあったとしか言わなくてねぇ」
「……マルさんもでしたか」
第一課課長、卜部義浩は基本的に何かを怠ったりし損ねる事はない。
だから今回のは緊急かつ異常な事態であること以外掌握できていないという事だろう。だが
「なんでウチなんですかね。島根にも特事課あるでしょう?」
それだけが解せなかった。確かに特事課はどこも人員不足だと聞く。しかし、異常犯罪イハン、異常現象ゲンショウに対応できる組織は多くある。言ってはなんだが放っておいても解決されるコトはザラだ。
だというのにわざわざ不透明な事態に、更に言えば管轄外のものが関わるというのは不合理に思えて仕方がない。
「お伊勢さんが絡んでるみたいです」
丸山の後ろからひょい、と同期の平坂夏目が顔を出した。眠たげな目(普段からではあるが)を擦りながららノートパソコンを操作している。
「あのひとたち、人目につくの嫌がるもんねぇ」
丸山のため息混じりの一言に平坂は間髪入れずに
「お陰さまでええ迷惑です」
と露骨に不機嫌そうに言った。普段京都弁を抑えている平坂は不機嫌なときは地が見える傾向にある。
「夏目もなにも聞いてないのか?」
「はい、腹たったんで勝手に調べました」
丸山と藤原はぴたりと立ち止まり平坂の方を見た。
「調べられたの?」
「自分でもびっくりするくらい簡単でしたわ……これです」
開かれた液晶を2人は覗き込む。視点からしてどこかの電波塔のカメラのようだ。動画ではなく、写真。聞くに電波が遮断されているらしくなんとか引っ張り出せた一枚だという。写っているのは市街地とその奥にある巨大な影。
「……これか?」
平坂は頷く。
「はい。仮称『ヤマタノオロチ』」
「ヤマタノオロチって、あの大蛇?」
「えぇ」
平坂は写真を縮め、ブラウザのタブを開く。古事記、日本書紀に登場する大蛇───八岐大蛇の記事だった。確かに影の形は記事にある特徴と一致しているように思える。
「しかし、なんで島根なんだろうねぇ?」
丸山が藤原の心を代弁するように漏らす。
平坂は待っていたと言わんばかりの速さで答えた。
「聞くに斐伊川がモデルって話があるそうです」
丸山は合点が入ったのか面倒なことになってるねぇ、とつぶやく。その面倒ごとに、藤原はワンテンポ遅れて気がついた。
「仮想神格?」
丸山と平坂は同時に指を鳴らす。正解だった。
仮想神格とは、いわゆる集合無意識を介して人為的に作られた『神様』のようなものである。
ゼロから生み出すには世界の構築から必要になるところ、既存の神もしくはそれに準ずる架空の存在を型にして相当の存在を現実に投影する。理屈はぶっ飛んでいるが、この世界の裏側においてはれっきとした確率済みの技術だ。しかしそれでも容易なコトではない。不特定多数のヒトの無意識にアクセスし、目星だけを抽出し凝縮する行為はどんなに力に長けた人間でも100人いようと1000人いようと不可能だ。世界の人間が何十億人いると思って───
「───出雲結界か」
出雲大社を中心とした島根県内に存在する結界。長く、深い歴史を持つ空間。小規模の『世界』と定義するには十分だ。
「それでもかなりの離れ業だ。手練れだねぇ、やだなぁ」
丸山は膨れた腹をポンと叩いた。
「さすがにこれは隠蔽とか無理じゃないか?」
平坂は至極つまらなそうに
「お伊勢さんの結界術師がもう現地に着いてはるみたいです」
と口を尖らせながら言った。めでたいことだろうが、元旦休みの怨恨の方が勝っているようだ。
「ともあれ行くしかないんだろうねぇ」
丸山は観念した、という風に両手を広げため息をつき、再び歩き出した。
藤原は迷いなく。平坂は嫌々それにつづいた。
伝えられた卜部の指示は概ね想像どおりのものだった。
『神宮司庁の人間をサポートし事態を収束させろ』
開口一番、「既に知っているだろうが」だったことだけが想定外だった。
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2008年、1月1日00時01分。
三重県伊勢市、伊勢神宮にて。境内を何十人もの人間が足繁く動き回っていた。
神宮は年中何かしらの神事が行われている。それは元旦でも例外ではない。
だが、今回は事情が違うようだ。闊歩しているのは観光客でも、神官でもない。
見慣れない黒いスーツを着た者、或いはかつての侍、武士を連想させる者たち。また表情は堅く、新年という単語には似つかわしくないほど緊張した空気だった。
「連絡はまだつかんのか」
小太りの神官が捲し立てるように言う。
「外郭を利用されていると見ていい、物理的な認識は阻害されている」
侍のようなの男は感情を押し殺すようにゆっくりと答える。
「ほんとに動いちゃあかんの?なんで?」
「組織成立以来の決まりだからだ、何度言えば良い」
「納得いかんわ、死人が出てるかもしれんのやろ」
スーツの男女が口論しながら歩いていく。
そんな中ふと、ひとつの影が橋を渡り、境内へ入っていった。
影は鳥居を過ぎるなり立ち上がり、中から黒装束の男を吐き出した。
男の息は荒く、真冬だというのに大粒の汗で全身を濡らしている。
1人の女性が男に駆け寄っていった。
「服部、どうだった?」
黒装束の男────服部は荒い呼吸のまま、顔も見ずにただ答える。
「…アタリ、でした」
聞いていた女性のみならず、周囲の人間も電流が走ったかのように動かなくなった。服部は続ける。
「出雲結界内の次元が上昇、同時に結界も膨張しています。」
女性は目を瞑り、息を深く吸う。しかし腕の震えは止まらない。それも仕方のないこと。最悪の事態が訪れたのだから。
社から飛び出した1人の神官が叫ぶ。
「仮装神格、浮上を確認!」
もはや震えて止まっている場合ではなかった。
「これより神務を執行する。可及的速やかに事態を鎮圧、秘匿しろ!」
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同年同日、0時25分。三重県警 警備部特事第一課は緊急の招集を受けた。
その一員、藤原辰徳は身なりを整えながら会議室を目指していた。
せっかくの元旦が、と言う思いとついにやる時が来たかという緊張感からか普段の茫ッとした表情は消え去り、眉間には深い皺が刻まれている。
「おぅい、藤原くぅん」
後ろから彼の先輩───丸山正孝が追いかけてきた。振り向くことなく早足で進みつつ、訊ねる。
「島根に動きがあったそうですけど、他に聞いてることあります?」
「それ、僕も聞こうと思ってたんだよぉ。卜部課長ってば、島根に動きがあったとしか言わなくてねぇ」
「……マルさんもでしたか」
第一課課長、卜部義浩は基本的に何かを怠ったりし損ねる事はない。
だから今回のは緊急かつ異常な事態であること以外掌握できていないという事だろう。だが
「なんでウチなんですかね。島根にも特事課あるでしょう?」
それだけが解せなかった。確かに特事課はどこも人員不足だと聞く。しかし、異常犯罪イハン、異常現象ゲンショウに対応できる組織は多くある。言ってはなんだが放っておいても解決されるコトはザラだ。
だというのにわざわざ不透明な事態に特事課、更に言えば管轄外のものが関わるというのは不合理に思えて仕方がない。
「お伊勢さんが絡んでるみたいです」
丸山の後ろからひょい、と同期の平坂夏目が顔を出した。眠たげな目(普段からではあるが…)を擦りながららノートパソコンを操作している。
「あのひとたち、人目につくの嫌がるもんねぇ」
丸山のため息混じりの一言に平坂は間髪入れずに
「お陰さまでええ迷惑です」
と露骨に不機嫌そうに言った。
普段京都弁を抑えている平坂だが、不機嫌なときは地が見える。
「夏目もなにも聞いてないのか?」
「はい、腹たったんで勝手に調べました」
丸山と藤原はぴたりと立ち止まり平坂の方を見た。
「調べられたの?」
「自分でもびっくりするくらい簡単でしたわ……これです」
開かれた液晶を2人は覗き込む。視点からしてどこかの電波塔のカメラのようだ。動画ではなく、写真。聞くに電波が遮断されているらしくなんとか引っ張り出せた一枚だという。写っているのは市街地とその奥にある巨大な影。
「……これか?」
平坂は頷く。
「はい。仮称『ヤマタノオロチ』」
「ヤマタノオロチって、あの大蛇?」
「えぇ」
平坂は写真を縮め、ブラウザのタブを開く。古事記、日本書紀に登場する大蛇───八岐大蛇の記事だった。確かに影の形は記事にある特徴と一致しているように思える。
「しかし、なんで島根なんだろうねぇ?」
丸山が藤原の心を代弁するように漏らす。
平坂は待っていたと言わんばかりの速さで答えた。
「聞くに斐伊川がモデルって話があるそうです」
丸山は合点が入ったのか面倒なことになってるねぇ、とつぶやく。その面倒ごとに、藤原はワンテンポ遅れて気がついた。
「仮想神格?」
丸山と平坂は同時に指を鳴らす。正解だった。
仮想神格とは、いわゆる集合無意識を介して人為的に作られた『神様』のようなものである。
ゼロから生み出すには世界の構築から必要になるところ、既存の神もしくはそれに準ずる架空の存在を型にして相当の存在を現実に投影する。理屈はぶっ飛んでいるが、この世界の裏側においてはれっきとした確率済みの技術だ。しかしそれでも容易なコトではない。不特定多数のヒトの無意識にアクセスし、目星だけを抽出し凝縮する行為はどんなに力に長けた人間でも100人いようと1000人いようと不可能だ。世界の人間が何十億人いると思って───
「───出雲結界か」
出雲大社を中心とした島根県内に存在する結界。長く、深い歴史を持つ空間。小規模の『世界』と定義するには十分だ。
「それでもかなりの離れ業だ。手練れだねぇ、やだなぁ」
丸山は膨れた腹をポンと叩いた。
「さすがにこれは隠蔽とか無理じゃないか?」
平坂は至極つまらなそうに
「お伊勢さんの結界術師がもう現地に着いてはるみたいです」
と口を尖らせながら言った。めでたいことだろうが、元旦休みの怨恨の方が勝っているようだ。
「ともあれ行くしかないんだろうねぇ」
丸山は観念した、という風に両手を広げため息をつき、再び歩き出した。
藤原は迷いなく。平坂は嫌々それにつづいた。
伝えられた卜部の指示は概ね想像どおりのものだった。
『神宮司庁の人間をサポートし事態を収束させろ』
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- portal:7286907 (29 Sep 2022 08:34)
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