村雨博士のインシデントリポート
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プロローグ
 
 
「そういえば、織ちゃんってオブジェクトと直接関わったことってある?」
 
博士のレポートの訂正箇所を確認しているときにその質問は突然投げかけられました。
 
「あ…えっと、まだ、ないです…。」
 
戸惑いながらもそう答えると、彼女はー花さんはー少し苦笑いしました。
 
「あぁ、やっぱり?あの子、絶対に認めないけど過保護なのよね。」
 
「あ…、でも、その、実際にオブジェクトと関わるのは、やっぱり、その、勇気がなくて…。」
 
「もちろん、私も無理強いはしないわよ。でも、もしも少しでも興味があったら、あの子に言ってみたらどう?多少驚かれるかもしれないけど、あなたの頼みならあの子も無下にはしないと思うけど。」
 
SCPオブジェクト、それは今の私からしたら恐怖の対象でしかありません。ここのサイトは比較的安全なオブジェクトが多く収容されているためか、収容違反なんかはめったに起こりません。それでも、時々人が亡くなっています。今は博士が守ってくれています、でも、もしも博士が何かの拍子にいなくなってしまったら……?私はその先どうすれば……?
 
「あの、花さん、」
 
「ん?どうしたの?」
 
「私、博士に話してみます…。ここじゃなくてもいいので、どこかのサイトで見学して、実際に関わってみたいって。」
 
花さんが思いっきりむせ返って、心配そうにする私に向かって笑みをこぼしました。
 
「まさか、織ちゃんが乗り気になってくれるなんて。」
 
「ダメ…でしたか…?」
 
「とんでもない!織ちゃんが興味を持ってくれたならよかった。うん、そしたら、私からもあの子に話してみる。」
 
「あ…、ありがとう、ございます。」
 
その時、廊下から男女の声が聞こえました。何か言い合っているようでした。
 
「博士、いい加減にレポートを提出してください。これで何回目ですか。毎回毎回お偉いさんから小言を言われている僕の身にもなってみてください。」
 
「一ちゃん、ボクはもうそのレポートは書いてあるって。今、織ちゃんがチェックしてくれてるから、もうちょっ
と待ってて。」
 
「またそう言って…。」
 
「大丈夫、もうそろそろチェックも終えてくれてるはずだから…。」
 
その言葉と共にドアが開き、声の主が研究室に入ってきました。
  
私の先輩である長月研究員、そして、この研究室のリーダー、村雨博士が。
 
   *
 
「ダメ。」
 
村雨博士は一向に私の頼みを受け入れてくれませんでした。花さんが一緒に話してくれましたが、それでも無理でした。
 
「凪、織ちゃんが、あの織ちゃんがオブジェクトに興味を持ってるのよ?」
 
「それでもダメなものはダメ!危険な目に遭わせたくない!」
 
「またそう言って…。凪のその気持ちはわかるけど…。あぁ、もう!長月君、どうにかならない?」
 
「うーん…、こうなってしまってはなかなか話を聞いてくれませんから…。」
 
そう言って、困り顔で資料をめくる長月研究員の目の色が変わりました。
 
「博士、」
 
「ダメ!」
 
「いや、そうではなくて。一旦この話は置いといてですね、出張に関する話です。」
 
「あー、うん、いいよ。それは聞く。」
 
「明後日の出張なんですけど、サイト-81██に来てほしいそうです。」
 
サイトの名前を聞いた途端、花さんが動きました。私には聞き取れませんでしたが、何か花さんには考えがあるらしいです。
 
「凪、そこなら基本的には安全なサイトだから、織ちゃんを連れて行っても問題ないんじゃない?」
 
「えー…、まぁ、まだ比較的マシなほうか…。」
 
花さんが私に目配せをしました。多分、ここだ、ってことだと思います。
 
「お、お願いします!連れて行ってください!」
 
粘った甲斐があり、最終的に村雨博士は私の同行を了承してくれました。
 
「そこまで言うなら、わかったよ。今度の出張には織ちゃんを連れていく。」
 
「じゃあ、僕は残って博士のためている書類の処理を進めておくので、ぜひ行ってきてください。」
 
「良かったじゃない!じゃあ、織ちゃん、楽しんできてね。」
 
「はい…!ありがとうございました…!」
 
そうして、私の初めての出張が決まりました。

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