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クレジット
タイトル: 企画案2022-439: "ただ貴方の為に咲く"
著者: Transcend_man
作成年: 2022
http://scp-jp-sandbox3.wikidot.com/draft:7270672-28-2f9f
名前: リンネィ・ゼンセ
タイトル: ただ貴方の為に咲く
必要素材:
- テラコッタの植木鉢 1つ
- 銅製のジョウロ 1つ
- 携帯型のエヴァーハート共鳴器 1つ
- 拙作 "まだ見ぬ開花 " (あの初々しい白百合の蕾つぼみは、今も手元にあるのでしょうか?)
- 粉末状に加工した私の遺灰 (心配せずとも、手配はこちらで済ませましょう)
要旨: "ただ貴方の為に咲く"は私自身の遺灰を培養土の代わりに敷き詰めた植木鉢と、溶媒置換の奇跡論を施したジョウロからなる一対の作品です。植木鉢には私の処女作である"まだ見ぬ開花 " が植え替えられます。
エヴァーハート共鳴器を内部に組み込んだジョウロは、それを把持した人間の保有するEVEエネルギー色相に感応し、様々な液体を内部に生じさせます。具体的な例を挙げれば、悲嘆に暮れる人間からは涙液が、(あまり考えたくはないですが、)性的鬱屈を抱える人間からは精液等の発生が考えられます。そして、鑑賞者がこの生成された液体を植木鉢に注ぐことで、"まだ見ぬ開花 " は上記の色相に基づいた奇跡論的変容を見せます。この変容はジョウロで液体を注ぐ限り何度でも発生し、また同じ作品に変化することはありません。
私の遺灰には特殊なミーム処理が施されており、本作品が如何に姿を変えようとも"ただ貴方の為に咲く"として、ひいては私の残す最後の作品として尚も変わらず認識される為に、鑑賞者の認知的不協和を抑制する楔のような役割を果たします。
意図: 私が初めて異常芸術家アナーティストを名乗り臨んだ展覧会は、それはもう散々な結果に終わりました。私のブースに足を運んだ観覧者は、口を揃えて"まだ見ぬ開花 "が如何に小手先だけの中身が無い作品かをつらつらと物語っていきました。誰もが哀れと思われたでしょう。これまで自身の才能を疑うことすらしなかった故、あまりに無情な現実を前にして放心するしか無かったのです。
そんな折に、貴方が現れました。
剥き出しの嘲笑と無関心の渦中にあって、それでも"まだ見ぬ開花 " を手放しで誉めてくださった、たった1人の観覧者でした。あの時、私がどんなに大きな想いを抱えて、貴方の目をじつと見据えていたのか想像も付かないでしょう。
その後も、私は何度も何度も自信を込めた作品を展覧会に持ち込みました。その度に、貴方と貴方が引き連れた何人かの美術商だけが私の作品にポジティブな評価を下して、それ相応の値段で買い取っていくのを繰り返す日々。隣のブースの同業者が批評家達からの惜しみ無い称賛を浴びる中、それを尻目に私の心は何故か満たされていきました。
ええ、私はとても満たされてしまった。このままでも悪くはないと、そう思ってしまった。
世に名の知れたアナーティストが前に立ち、こちらを嗤う世界に向かって“Are We Cool Yet? 俺たちはクールだったろ?”と問い掛ける。そんな“We我ら”の片隅にリンネィの名が連なっている。それで十分、私は幸せなのだろうと。
けれど最近、ふとした瞬間に振り返ると、がらんとしたアトリエの陰に沿って立ち並ぶ、売り切れた筈の彼等の姿がそこに見えるのです。他所の子達に比べると、酷く貧相な発想の我が子達の姿が。それがどうにも痛々しくて耐え難く、私はひたすら床に額を擦り付ける、そんな幻視を。
そうして夢から醒めた後、私は"ただ貴方の為に咲く"の創作を決めました。否が応にも私の中から湧き上がる、忌むべき醜いアイディアを、もう2度と何かの形に出来ないように。今こそ私の全ての才を、ここに集約しなければならない。
きっと貴方は気に入るでしょう。何故なら貴方は悉く、私と彼等の 父親パパなのですから。それにほら、彼等のような出来の悪い子供を引き取って、1人で可愛がるのが貴方の昔からの趣味なのでしょう?
甘い、甘い泥濘ぬかるみに自ら進んで根を張った私から。
蕾のままで、とうとう何者にも成れなかった私から。
決別の証として、この作品を遺します。
宛先: "リンネィ・ゼンセ"
差出人: " 後援者パトロン"
件名: あまり良い選択だとは思えない。
リンネィ。断っておくが、恐らくは君の生涯での最高傑作になるであろう "ただ貴方の為に咲く"も、来月に行われる展覧会で批評家連中から幅広い評価を得ることは叶わないだろう。
正直なところ、行き詰まった芸術家が苦慮の末に自身の死を題材とする流れには、僕としてもウンザリするほどの既視感を覚えざるを得ない。だからといって、この作品が必ずしも駄作であると決め付けることはできないが。
そもそもで、君は企画案の中で「何者にもなれなかった」と書いているが、それでは今まで支援を続けてきた僕の立つ瀬が無くなってしまうじゃあないか。少しずつでも、君の作品に価値を見出す人間が増えているのは確かな筈なのに、こんなにも中途半端な終わり方で本当に満足なのかい?
例え、どんなに君が蔑まれ、その才能を否定されようとも、それでも僕は君の生み出す作品が好きなんだと胸を張って言える。だから余程の事が無い限り、僕自らがスポンサーの座を降りることはないだろう。何故なら君の創り出した作品は間違いなく、世界中どこを探しても代わりの無い、君にしか成し得ない代物なのだから。
最後に。数え切れないほどの悩みや苦しみを経た先で、ますます尖り磨かれるだろう君の“次”なる作品を、これからも首を長くして待っているよ。
その必要があるのなら、何時でも僕に相談してくれ。
宛先: 後援者パトロン"
差出人: "リンネィ・ゼンセ"
件名: Re:あまり良い選択だとは思えない。
いつもながらのお心遣い、ありがとうございます。
"その必要があるのなら、何時でも僕に相談してくれ"
貴方がささやく、その言葉だけがずっと。私にとって唯一の救いであり、終わりのない呪いでした。
I Wanted To Be Cool.
続く我らが、きっと望んだ芽吹きを迎えることができますように。
宛先: "リンネィ・ゼンセ"
差出人: " 後援者パトロン"
件名: どうなっている?
3日前に、君の作品が届いた。
文句も出ない、素晴らしい出来だったよ。仲間内にも披露したが、まあ何も知らない外野の野次には一考の余地もないしな。
知り合いの伝手で調べてもらったが、間違いなく、植木鉢に詰められた遺灰は君のものだった。だから君は本当に死んでしまったんだろう。今さら疑う余地もない。残念だが、甘んじてこの現実を受け入れよう。
そうすると、昨日の展覧会で拍手喝采を浴びていた、若い女の姿にどこか見覚えがあったのは、やはり僕の勘違いだったろうか? そう言えば、彼女の名前は今まで聞いたことが無いものだった。“ライゼ”とかいう名前だったか。僕も気になって、後からこっそり彼女の作品を拝見したが、天辺から爪先までナンセンスの塊で、どうやってアレが批評家連中の評価を得たのか未だ理解に苦しむよ。
僕は今でも、あんなモノより"ただ貴方の為に咲く"の方が遥かに優れた作品だと確信している。ジョウロで水を注いだ時から、その凝り固まった考えが頭にこびりついて離れない。万人の評価に値するリンネィの作品はこれ以外にあり得ないし、認めない。あんなモノは決してリンネィの作品ではない。絶対に。絶対に。絶対に。そして、それは何故なんだ? 僕はどうしてこんなにも固執している?
分からない。が、恐らくは当てつけだ。君の本心、暗い想いが込められた、遺灰の放つミーマチックエフェクトの所為か何かだ。もしかして君は最初から、僕に対する仕返しの為だけに"ただ貴方の為に咲く"を作り上げたのか?
教えてくれ。お前は誰で、いったい僕に何をした?
宛先: 後援者パトロン"
差出人: "リンネィ・ゼンセ"
件名: Re:どうなっている?
ああ、うん。流石にスルーは悪いから、面倒だけど答えてあげる。
知っての通り、"リンネィ・ゼンセ"は死んでるよ。彼女はもはや存在しないし、彼女の残した作品も、物好き野郎のアンタ以外に覚えているのは居ないかも。それを知ってるアタシ自身は例外としてもね。ちなみにアタシが“ライゼ”だからね、どうも。
にしても、どうして彼女はわざわざ死ぬことを選んだんだろうね。結局、自分にアナートの才能が無いと悟ったから? それとも気持ちの悪い後援者の偏愛から逃れるためかな? 何にせよ、まったく正しい選択だったとは思うけど。
本気で明日の生まれ変わりを望むなら、人間全てを捨てる必要があるものね。捨て切れなければ、欲しがるアホに押し付ければいい。それこそ今までアンタとリンネィで築き上げた、見るに堪えないWin-Winの関係性と何も変わりはしない。
Am I Reincarnated?私は見違えたでしょ?
実はこれから新しい後援者との大事な打ち合わせが控えてるんだよね。おっと、そうだ。
その必要があるのなら、医者か誰かに相談しては?
じゃ、そういうことで。
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ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:7270672 (13 Feb 2021 23:26)
この手合いのAWCYにロジカルな批評ってのは中々難しいですね。異常物品の異常性をソコソコに感情の表現に移行してますからね。つまりは読んだ感想を書き連ねていくことになります。
ご自身の体験をネタにしているということなので、あんまこういうこと言ってしまうのは残酷か分からんですが、「この次元の思考を今更語られても、とAWCYの連中は考えるのでは?」「現実世界の我々から見てもとっくに解決している話/結論がでている話」という感想です。
もしかしたらこの記事の内容に共感してUVしてくれる読者は居るかもしれません。しかし、それは客観的な面白さとは言えず、共感できない人にとっては登場人物のウジウジが気になる内容だと思います。コンテスト記事ですから、多くのUVを稼ぐならば客観的にも面白い感情を描く方が良いです。
創作者にスポットが当たるのがAWCYですから、創作者はユニークな思考で、何か物事に対して斜に構えた態度を取る人間(さくらももこみたいな人間)などにすると、同じ作品を題材にした文書でも差が産まれると思います。
貴方の得た感情をテーマから外す必要はなく、感情表現を諦めたりはしなくて良いですが、文書の視点を変えるのを試してみると良いかもしれないですね。
御批評ありがとうございます。
この記事を書いていて、確かに登場人物が感傷的に過ぎるかもしれないと思うところもあったので、全体の雰囲気を今一度整理しつつ、登場人物の人間性に於いては、オチの部分で皮肉めいた捻りを加えたいと思います。
(自分が悪いんですが)途中まで読み方を忘れていたのでカタカナに開いた方が直感的だと思います。
良いと思いますが、若干消化不良に感じました。オチと異常芸術の話の組み込み方についてです。
まずオチについて。後味の悪さとほろ苦さについては意図したものだと思いますが、個人的にあまりにもやりきれないように思います。かなり極端な見方ですが、現状だと「評価されない異端であるよりはすべてを打ち捨てて生まれ変わった方がいい」がメッセージとして強く出ている形になります。それは別に構わないのですが、これを結論として話を結ぶのはやりきれないな、というところがあります。
ゴッホにせよゴーギャンにせよ、評価を受けるのが死後になった作家は数多く存在します。売れそうな絵を描かなかったというよりは描けなかったのだと思いますが、一種の貫徹し極めた部分がその評価に繋がっているといえます。つまりは、そうして極めていった先に作家独自の世界観があるのは確かなので、例えそのアンチテーゼなのであったとしても無碍にしてほしくはないな、と思いました。現状の完結部分までではそういったところへの言及がないので、(肯定するとしても否定するとしても「踏み台」として用意すべきものに思うので)勿体なく感じます。
次に異常芸術の絡め方についてです。現状、シーンとして「ただ貴方の為に咲く」が使われていないので、是非とも使ってほしいなと思いました。異常性も鑑賞者の感情表現と直結しており、実際のアクションを交えた特殊な比喩を出すことができそうです。
上記二点を踏まえての提案ですが、今の下書きにさらにもう一通、後援者のメールを足してみてはどうでしょうか。リンネィ→ライゼの変化を経ての後援者の意思表示、そしてその状態で水を撒いた「ただ貴方の為に咲く」での表現など、いろいろなものを含んだ演出が可能だと思います。仮にそれを否定したいのが真意だとしても、そこにライゼのメッセージを足せばより完成度は高くなると思います。
御批評ありがとうございます。
確かに、この2人の最後のやりとりは現状で救いが無いものとなっていますし、私自身が表現したかったものとは僅かにズレた極端なオチになっていたかもしれません。記事の最後で何とも言えないモヤモヤというか、やるせなさを演出するにしても、もう少しだけ結末を軟着陸させた方が良いかもしれませんね。
ご提案頂いたメールの追加に関しては、次回の改稿で組み込んでみようと思います。まず全体の流れを再度調整してから、幾分か後味の良い方向に修正するつもりです。その中で、「ただ貴方の為に咲く」の持つ要素も活用できるような展開を考えてみようと思います。
オチの追加などの改稿を行いました。
恐らく、ここから大まかな流れを変えることはないと思います。何度か読み直して違和感を潰していき、問題がなければ明日か明後日に投稿したいと思います。
私自身、読み返し過ぎて訳が分からなくなって来たので、表現の不備などの御指摘があれば、お教え頂きますよう、宜しくお願いします。
拝読しました。面白かったです。
決別の部分で終わっていたならば面白みはありませんでした。しかしその後の展開で、結局何が正解になるかもわからない展開に進んだのが面白かったです。二人ともそれぞれの意志を持って進んでいったのが良いですね。最後も簡潔に終わっていてよい読後感でした。現状でもUVできます。
この部分の意味がよくわからなかったので、もう少し別の分かりやすい表現に変えてもよいかもしれません。
批評に対するご意見・ご質問で返信が必要なものにつきましては、ディスカッションで返信の形で投稿いただいたうえで、PMにご一報ください。SB3のフォーラムは追っていませんので、ディスカッションへの投稿だけだと気づけない場合がございます。
ありがとうございます。皆様からの批評を基に、私個人の好みになるようなオチにできたので、楽しめて頂けたのなら幸いです。
御指摘のあったの文章は、代案を考えて変更しようと思います。