贋杯

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chalice

SCP-XXX-JP

アイテム番号: SCP-1757-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-1757-JPは現在サイト-81██の危険物収容小型ロッカーに保管されています。外部への持ち出しは禁止されており、SCP-1757-JPを運搬する際は運搬用アームの使用が義務付けられています。現在、SCP-1757-JPはいかなる実験も禁止されています。

説明: SCP-1757-JPは、高さ15㎝、幅5㎝のゴブレットです。基本的な材質は銀で構成されており、上部のみ金で塗装されています。現在までに6つが発見され、そのうち5つが財団によって回収されていますが実験により3つに減少しています。これらの物品に異常性の差異は確認されていません。

SCP-1757-JPの異常性はSCP-1757-JPを手で握っている1人間がSCP-1757-JPに対して欲求を念じた際に発動します。無意識に念じた欲求や、欲求を念じる対象がSCP-1757-JPでない場合には異常性は発動しません。被験者がSCP-1757-JPに対して欲求を念じるとSCP-1757-JPの周辺に被験者の欲求に準じた物品が出現します。空想上の物品を要求しても、同様に物品が出現することはありません。

被験者が物品を要求した時、被験者の所持品が消失する場合があります。2消失する物品の数や価値などはランダムですが、被験者の比較的に重要視しているものが消失している傾向にあります。現在、どのような原理で消失しているのかは判明しておらず、物品が消失する瞬間を確認する試みは全て失敗に終わっています。また物品が出現しなかった場合、被験者自身とSCP-1757-JPが消失する現象が確認されています。

補遺1: SCP-1757-JPは20██年に起きた京都府██市における多数の行方不明事件に関連して発見されました。当時、██市では前年の倍以上の行方不明者が出ており財団でも異常存在による影響を疑い調査を進めていました。
 
SCP-1757-JPは20██年6月██日に北上恵理子氏が発見された際に初めて確認されました。発見当時北上氏は日常生活に支障を来すほどの筋肉量の低下、思考能力・認知機能の低下などの症状が確認されており、繰り返し「帰らないと」とうわごとを発していました。このことから北上氏の住居に異常存在が現存している可能性が高いと考えた財団が北上宅でSCP-1757-JPを発見しました。
 
その後、行方不明者4名が発見され、その全員から重度の衰弱が、その全員の住宅からSCP-1757-JPが確認されました。発見されていない行方不明者の住居内も捜索しましたが、SCP-1757-JPを発見することはできませんでした。3また北上氏は、8歳の娘である北上陽子氏と一緒に住んでいましたが、現在も発見されておらず捜索が進められています。

補遺2: 下記は回復した北上氏に行ったインタビュー記録です。
 

対象: 北上恵理子

担当職員: 蓬莱博士

<録音開始, (20██/██/██)>

蓬莱博士: 北上さん。あの事件が起こった原因や心当たりを教えてもらえますか?些細なことでも構いません。

北上氏: はい…。そうですね、すみません。記憶がぼやけていてあまり細かいことは分からないかも知れません……。

蓬莱博士: 分かる範囲で結構ですよ。あまり話したくないことがあるなら気持ちが落ち着いたあと話してもらえれば結構です。

北上氏: わ…わかりました。

(北上氏がうなずく。)

北上氏: 多分、あの器のせいだと思います。銀色の……。

蓬莱博士: この物品のことでしょうか?(蓬莱博士がSCP-1757-JPを撮影した写真を北上氏に見せる。)

北上氏: あっ……はい、これです。

蓬莱博士: どうしてこの器が原因だと思うのですが?

北上氏: 私たち、いえ……私は夫に捨てられたんです。簡単に言えば、その……大量の借金と私を残して逃げられて。それで……私はパートやバイトを掛け持ちしてなんとかやりくりしていたんですが……パートを一つクビになってしまって、急に時間が空いて特に目的もなくブラブラ……していたんです。そしたら女の人に声をかけられて……。

蓬莱博士: その人物はどのような人でしたか?

北上氏: 何というか、髪の毛は長くて……だいたい20歳くらいの人だったと思います。普通の格好をした人でした。その人が私にこう言ったんです。「今あなたたちは不幸せではありませんか?」って。

蓬莱博士: それにあなたは何と……?

北上氏: 最初はもちろんムカついて、なんで何も知らない赤の他人に不幸呼ばわりされないといけないんだと思いました。けど、私はあの時、本当に気が滅入っていて……余裕なんて無かったので……話を聞いたんです。

(北上氏が咳き込む)

蓬莱博士: ……大丈夫ですか?

北上氏: だい、大丈夫です。……それで私はそのまま教会の地下4に連れて行かれました。教会と言っても普通の小さなビルで地下が礼拝堂のようになってるだけなんですが……。そこで私は神父様と呼ばれてる男の人に会いました。30歳くらいだと思います。だいぶ若そうな感じがしました。服はよくある神父って雰囲気の服を着ていて、顔は………(北上氏が頭を抱える)すみません、あまりよく覚えていません。

蓬莱博士: 大丈夫ですよ。続けてください。

北上氏: 彼の周りにはたくさんの人がいて、それで私に気づいた彼が私に言ったんです。「もう安心ですよ」って「神様は貴方達を見ています」って。あのとき何故かわからないけど、その言葉に救われたんです。胸の奥にスッと入ってきて……。(北上氏が自身の胸を撫で下ろす)

それで彼がその時くれたのがあの銀色の器です。彼はこう言ってました。「これは神様が貴方達に与えた祝福です。もし、食べ物に困ったならこれを握り、お腹いっぱいに食べたいと願いなさい。そうすれば神様からの祝福があるでしょう」って

蓬莱博士: ……それを持ち帰ったということですか?失礼ですが、そんな摩訶不思議な話をおかしいと思ったりはしなかったのですか?

北上氏: ……はい。あの時は、あの人の言うこと全てが本当の事のように聞こえたんです。この人は嘘を付いていない、信用できる、そう今でも思ってます。おかしいですよね、顔も覚えてないのに。(北上氏が薄く微笑む。)

蓬莱博士: 他に何か言われたりしませんでしたか?

北上氏: ………何か大切なことを……すみません。覚えてません。あと、銀色の器は二つ貰いました。

蓬莱博士:二つですか?

北上氏: はい、それで家に帰って彼に言われたようにすると、ご飯が出てきたんです。いきなり目の前に。最初は夢かと思いました。でも夢じゃないことがわかって、私はお腹が空いてたのに……

蓬莱博士: どうかされましたか?

北上氏: いや、あの……わかりません。何か突っかかってて……。それで時々それを使って食べ物を出して食べてたんです、けど……。

大切な……誰かが、私に幸せになってほしいって。言ったような……あれ?それでアレを使って……私じゃない誰かが、消えて、取り戻そうと必死になって、でもわからなくて、何を失ったか忘れて、何を取り戻そうとしていたのかも忘れて。……そこからの記憶が、ぼやけてて、何も思い出せなくて、大切な……

蓬莱博士: (沈黙する北上氏に対して蓬莱博士が)大丈夫ですか?

北上氏: (北上氏がイスから転倒しうずくまり、唸り声を上げる。)大切な何かがあったはずなのに……あんなに大切だったはずなのに……なにも思いだせない。邪な思いで杯を使ったから……止められてたのに……大切な……私の……あっ……。

<録音終了>

補足: その後、回復した北上氏に再度インタビューを行いましたが、北上氏の発言に出てきた「教会」の所在地以外に有益な情報が得られませんでした。そのため、インタビュー終了後、Bクラス記憶処理を施し解放されました。また、北上氏の住居に二つ目のSCP-1757-JPは確認されませんでした。

補遺3: 下記は北上氏の発言に出てきた「教会」への機動部隊メデイアのによる制圧記録です。周辺住民へのカバーストーリーとして「強盗犯による立てこもり」を流布しています。

    • _

    ミッション概要: 未知の団体の制圧及び団体の所持する異常存在の奪取。

    担当機動部隊: 機動部隊は-13 ("メイデア")

    Church

    建物内部の画像記録

    (記録開始)

    (別働隊による一階、二階の制圧が行われた。室内には10名程度が居たがほとんど抵抗することはなく、どちらの階層にも異常存在は確認出来なかった。)

    アルファ: これより、地下一階の制圧を開始する。

    ベータ: 了解。

    ガンマ: 了解。

    (アルファが指揮を取り、ドアを開けて突入する。)

    アルファ: クリア。部屋の中に人の存在は確認できない。奥に扉が一つある。

    ベータ: こいつは……。

    ガンマ: 司令部。ここは本当に地下か?俺たちの位置情報はどうなっている?

    司令部: 位置情報に異常は確認できていません。何かありましたか?

    ベータ: 窓から光が差し込んでいる。外は草原のようだ、日本かどうかは……怪しいな。

    ガンマ: これは地下じゃねえよな。異常空間のようだ。位置情報に間違いがないなら飛ばされたって可能性は低そうだが……。

    司令部: 他に何か気になる点はありますか?

    ガンマ: そうだな。強いて言うならば、綺麗すぎる。人が使っていたとは思えないほど綺麗に整頓されている。まるで博物館のような……。見た目は教会そのものだが、それっぽく見せるために模倣した「典型的な教会」という印象を受ける。この部屋は普通の教会とは違う目的で作られたんじゃないか?

    アルファ: あまり想像で話を進めるな。そういうのは後で調査チームが調べるだろ。俺たちは俺たちの任務だけを意識していれば良い。

    ガンマ: それもそうだな。

    (主に窓の外を警戒しながら奥の扉の前に進む。)

    アルファ: 突入。クリア、小部屋のようだ。人はいない。SCP-1757-JPを発見。予定通り回収する。(アルファがSCP-1757-JPの回収行為を開始する。)

    ベータ: おかしくないか?

    ガンマ: たしかにこの空間はおかしいが……

    ベータ: そうじゃなくて、……人っ子一人いない。資料では沢山の人がいたって話じゃないか。上には何人かいたがアレについて知ってそうなやつは一人もいなかった。それに話に聞く神父とやらもいねぇ。こいつは……逃げられたんじゃないか?

    アルファ: 下に何かが挟まっている。(アルファがSCP-1757-JPの下から紙を取り出す。)

    アルファ: (アルファが折り畳まれた紙を開く)何かが書いてあるようだが……。ちょっとまて……これはどういう意味だ?
     
    司令部: どうしました?
     
    アルファ: ……いや、なんでもない。紙には文章が書いてあるようだ。そちらから確認できるか?
     
    司令部: はい。確認できます。
     
    アルファ: ……なんだこれ。右下にも何か小さな文字で書かれてる。えーと?聖杯よ、我らが作りし虚構の器よ、自壊しろ?
     
    (アルファが読み上げた瞬間、SCP-1757-JPが発光し始め、隊員が装着した通信機器、記録機材からの一切の通信が不能となる。その五秒後、オフィスビルが突如として爆発し、機動部隊全員からの通信が途絶える。)

    補足: 機動部隊が地下にいる状態でオフィスビルは爆発しました。調査が行われましたが原因は不明のままです。また異常空間である地下一階は存在ごと消滅しており、確認したSCP-1757-JP及び部隊員3名を回収することは出来ませんでした。

      • _

      文書SCP-1757-JP: 下記はアルファが発見した文章を模写したものです。

      貴方達が略奪者であることを知っている。神を驕る悪魔の使徒であることを知っている。聖遺物と呪物を混同し、神と悪魔を同じ檻に入れる。愚に等しい行為と言えよう。終の時は近い。我々は次へと備えなければならない。全てが終わった時、神代が復活し、人類は救済される。

      聖杯よ 我らが作りし虚構の器よ 自壊しろ

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