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「博士、このサイトはどうなるんスか」
サイト-81██。エスカレーターやオートウォークはすでに張りぼてと化し、何度掴んだかわからない手摺は部分ごとに切り離され、壁沿いに転がっている。
「おお、scp-877-jpか。久しぶりだな」
「……えと、自分スか。ピールオブバナナマン。そう呼んでくれ、と言ったはずっス」
「悪ぃ。で、何だったか」
「説明する必要もないと思うんスけど」
バナナの皮は、何か言いたげににサイトを見回した。動きとともに鼻をつく腐敗臭が漂っている。
「ああ。退去通知、だってさ」
「見たらわかるっスが」
「はは。あぁ……悪かったな」
「構わないス」
物憂うように天井を見上げた。その背中は大きく爛れていた。
「おい、どうしたんだ?」
「この傷スか。痛くないんで平気スよ」
「そうじゃねえ」
「……昨日、これからどうなるか知ったんス。それで、どうしても、……やっぱ覚えてないっス」
彼は、おかしいっスよね、こんなの、と笑った。その笑みにはひどい悲しみが包み込まれていた。
「……お前はいつもそうだよなぁ。腐りやすい性格の癖によ」
「冗談に聞こえないっス」
「これは冗談なんかじゃねえ」
無理に笑みを繕おうとするバナナの皮を、正面から見つめた。
「お前たちみたいなアノマリーを保護するのが俺らの仕事なんだ」
その眼には、話し始めた時の眼とは全く別物の、"普通じゃない"何かが秘められていた。
「無理のない範囲で構わない。何があったか、なぜ再生されないのか。教えてくれないだろうか」
その表情にしばらく呆気を取られていたが、やがて落ち着いたとみえ、ゆっくりと語りだした。
「今朝、いつもみたく踏まれてケガをしたんス。でも、再生されなくて」
「原因は、わかるか?」
「きっと、昨晩のことが原因だと思うんスけど」
博士は「昨晩のこと?」と、オウムのように繰り返した。
「……退去通知を知って、自分なりに考えてたんス。でも、分からなくて」
「考えるごとに、このサイトを離れたくなくて。それはできないという現実が、自分を追い越して行くようで、苦しくて。自分、バナナの皮じゃないスか。あの日、財団が貧しくなった日から、どんどん状態が悪化して。……においがひどくなっていることも、自分を苦しくさせて。でも、でも」
言葉が出なくなってきた。
「……それで、なんで自分なんか生きてるんだろうな、なんて考えちゃって、そんな時に踏まれたんス。きっとそのせいっスね」
息を吸って、吐いて、深呼吸。爛れていた彼の皮は鮮やかな色を取り戻し、幾分か修復されたように思えた。
「ハハ。こんなこと言っておいて、やっぱ生に拘ってたんスね」
誰もいない方向を見上げ、語り掛けるように呟いた。
「馬鹿みたいな話っスよね。いっそのこと、ひと思いに笑ってほしいっス」
彼の足元に落ちた一枚の、バナナの臭いがひどく染みついたクリアランスカードには、田辺博士の顔写真が貼り付けられていた。
「だからお願いっス。みんなを、自分の生活を返してください」
博士は、答えなかった。
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ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:7200455 (28 Feb 2021 12:38)
拝読しました。面白かったです。いくつか指摘させていただきます。
SCP-877-JPと大文字にするといいですよ
黒塗りは避けた方がいいと思います。
以上です。記事書くの頑張ってください。応援しています。
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[[[(ここにURL)|]]]という構文は、リンク先のページタイトルを表示する構文となっています。
例えば、[[[scp-2919-jp|]]]はSCP-2919-JP、[[[yamizushi-file-no882|]]]は闇寿司ファイルNo.882 "バーバリー"というリンクになります。絶対リンク1ではなく相対リンク2なので、本サイトに投稿する際のみ機能する構文となります。
SCP-877-JPが収容されているサイト名が黒塗りであるため、リンク先に準拠した形になります。
内容については具体的にいかがでしたでしょうか。少しの指摘よりも「どう面白かったか」を伝えてくれたほうが"より良い批評"になる筈です。
拝読致しました。現状必要最低限の描写に留まっているように思えるためNVです。
状況的にサイトの修理が行われなくなった事でサイト-81██内ではSCP-877-JPの収容違反が多発していたと思うので、そういった描写を増やすべきだと思います。
SCP-877-JPのインタビューにてSCP-877-JPは自身が神様のような謎の存在によって治されている、治してもらえるからには守り続けなければならないという信念で活動している事が明かされますが、その記述と矛盾する現象が起きている点に違和感があります。
また、
このセリフも人一倍責任感の強いSCP-877-JPのセリフとして見ると、退去通知が届いた状況的に今更感が勝ってしまい、あまり感情移入できませんでした。
私個人の感想ですが、この作品の本質は財政難に陥り、通路の修理すら行わなくなり退去命令を余儀なくする事となったサイト-81██の現状と、かつて自身が守ろうとした人達を次々と失い、ついには居場所すら失われようとしているピールオブバナナマンが肉体的にも精神的にも腐っていく様子がリンクしている所にあると思いますので、
会話の合間合間に回想といった形でサイト-81██が廃れていく描写を増やしつつ、SCP-877-JPの願いも虚しく現在(サイト-81██の退去命令)に落ち着くといったストーリーラインを明確にする事でより良い作品に仕上がるかと思われます。
長文失礼しました、悪い点ばかり指摘しましたが、作品のコンセプトやこのどうしようもない雰囲気はめちゃくちゃ気に入ってますのでとても応援しています。執筆頑張ってください。