財団メシ番外編: 魅惑のスイーツ食べ歩き

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「どうですか……?申請は受理されましたか……?」

サイト-81██の一角に存在する申請受付センター。ここでは異常性持ち職員の外出申請や、実験許可の申請などといった財団の業務等に関わる申請を受け付けている。申請が受理される時は、申請者の精神面や性格、そして ― 異常性を加味した上で上層部が許可を出した場合に限られる。

そんな申請受付センターの窓口前に、肩にてるてる坊主をちょこんと乗せた空色の髪をした女性がそわそわしてる様子で立っていた。女性の名前は双雨 照。サイト-81██勤務の博士であり、大のお菓子好きだった。しかしながら、過去に引き起こしたとある事件によってお菓子の一切の購入や食べることを禁止されていたのだった。

「あの、まだですかね……?」

双雨はしつこく窓口受付に話しかける。窓口受付は笑っている表情だったが、呆れているような、そんな雰囲気が滲み出ていた。もう一度双雨が声を掛けようとしたその時だった。奥から背格好の高い男がやってきてこう言った。

「申請は受理されました。毎度言っていますが、お菓子を食べないことと、異常性を周りに見せないこと、これだけは守ってくださいね」

異常性 ― 双雨には自身の周囲に合計で2つ、てるてる坊主が出現するという異常性があった。普段は既に出現しているてるてる坊主をストラップとして身につけることでこれ以上の発生を抑制できるためまず異常性を周りに見せることはない。異常性を見せないことは守れそうだが、お菓子を食べないこと、これは守れそうになかったのだった。

「分かりました〜」

軽く受け答え、肩に乗ったてるてる坊主を怪しまれないように手持ちのバッグの持ち手部分にくくりつける。小声で「これで一安心」と言った双雨は、どこか浮かれているような、そんな足取りでサイトの正面玄関口へと向かった。

そして、それを見る女性の影が一人。それに、双雨は気づく余地などなかった。


スイーツ。それはお菓子好きや甘党にとって魅惑の嗜好品。双雨の中にはそういった持論があった。どんなに堅苦しい人であってもお菓子好き、甘党ならスイーツを通してわかりあえると。しかし、今のところそれが証明されたことはなかった。

「むぅ……どうしてサイトの皆はわたしにお菓子を食べさせてくれないんだろう……」

そう独り言を言いながら双雨は一番日当たりのいい窓辺の席に座りながらアイスクリームを嗜んでいた。久しぶりに摂取する糖分、そしてスイーツに舌鼓を打ちながら、双雨は独り言を呟き続ける。

「確かにわたしも倒れるまで食べたのは悪いけどさぁ、食べさせないは違うんじゃないかな……。食べる量を減らすだけでもいいだろうし……」

「だよねだよね」

後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。この声は誰だ……?などと考えている中、双雨の額には脂汗が滲み、先程までアイスクリームを口に運んでいた手は止まり、背中には悪寒が走っていた。おそるおそる後ろを振り返る。どうかさっきの声が聞き間違いだと信じて。

「やっほー、双雨ちゃん!」

後ろを振り返るとそこには、同じサイトにシステムエンジニアとして勤務している集姫 鈴呼が居たのだった。もちろん、彼女自身も外見上目立つ異常性 ― 身体の一部がカメレオンに置換されているというものを持っているため、夏場だが長袖を着用し、頭には麦わら帽子をかぶっていた。これによって、双雨が抱いていた聞き間違いという淡い期待はことごとく砕かれてしまうのであった。

「あ、えと……人違いでは?」

なんとか双雨は誤魔化そうとする。お菓子を食べることが禁止されているのに、お菓子以上に糖分のあるスイーツを食べてるなんてことを上に言われたらただじゃすまないからだ。しかし、鈴呼から追撃の言葉が放たれる。

「え、双雨ちゃんでしょ?だってサイトから出るときからずっと後ろつけてたもん」

まずい、これじゃ言い逃れできない。かくなる上は逃げるしか、そう双雨は考えていた。会計については後で戻ってくればいい。今は逃げなきゃ、と思い席を立とうとする。その時だった。

「じゃあ、あたし双雨ちゃんの前の席座るね〜」

「え?」

鈴呼が双雨の目の前の席に座ったのである。そして、双雨が鈴呼をよく見ると手にはブルーハワイ味のシャーベットを持っていることに気づく。袖口からちらりと見えた鈴呼のカメレオン肌が鮮やかな空色に染まっている。余程ブルーハワイシャーベットを食べたかったのだろう、と思いながら双雨の頭の中はクエスチョンマークで溢れかえっていた。しかし、次に鈴呼が口を開いたときに放った言葉でそのクエスチョンマークは払拭されるのだった。

「ん?なんで双雨ちゃんキョトン顔してるの?」

「え、だって……わたしお菓子食べるの禁止されてるし……、なんで怒らないのかな、って……」

「あー、確かにそうだったね。でもさ、お菓子食べないで過ごすのって辛くない?」

「まあ、そうだけど……」

「だったらさ、秘密にしといてあげるから今日は2人で一杯スイーツ食べて楽しんじゃおうよ!」

双雨は躊躇う。ここで素直にはいと答えて、鈴呼以外の職員にバレるとまずい、と思うが、さっきの鈴呼の言葉の誘惑に負けそうになっていたのだ。そして、数分間心の中で気持ちと自制がせめぎあった結果 ―

「そうだね、一杯スイーツ食べちゃおう!」

ことごとく自制心は負けてしまったのである。その後は、アイスクリームを食べながらどういった様にスイーツを食べに行くか、などを2人で話し合った。話し合った結果、お互いにオススメのスイーツを一つずつ紹介して、そのスイーツを食べるというものになったのである。

アイスクリームを食べ終えると2人は手早く会計を済ませて店を後にする。かくして2人のスイーツ食べ歩きが始まったのであった。


「まずはわたしからか……」

双雨は独り言のようにそう言った。じゃんけんで順番を決めることになり、双雨は負けてしまったため、双雨からオススメスイーツを紹介することとなったのだ。よくお菓子禁止前は定期的に外出してはサイト近辺のスイーツを食べ歩いていたものだ、と考えながら、鈴呼ちゃんにオススメするスイーツを厳選していた。

「どうしたの?双雨ちゃん。そんなに顔しかめて。お腹でも痛いの?」

この一言で、自分がかなり顔をしかめていたのだと双雨は自覚したのである。恥ずかしさからか、双雨の顔はやや赤みを帯びていた。そして、双雨が思い立ったように鈴呼に声を掛ける。

「鈴呼ちゃん、今何か食べたいスイーツってある……?ちょっとオススメスイーツが多すぎてさ、本人が食べたいのを薦めてあげようかな、って」

「うーん……今のところは特にないかな……、ホント適当なのでもいいからさ、美味しいスイーツだったらなんでも大丈夫だよ!」

そう言うが、双雨は納得していなかった。本人が一番食べたいスイーツを薦めてあげてそれで喜ぶ顔が見たい、というのが双雨の本心だったからである。引き続き、双雨は何を薦めようか考えていたのであった。その時。

何を思い立ったのか、双雨は鈴呼の被っていた麦わら帽子をパッと取り外し、まじまじと見始めたのである。そして大体15秒くらいして、麦わら帽子を再び鈴呼の頭にかぶせる。ちょうどその時人が通ってなかったのが幸いして異常性が露見することはなかったのだが ―

「ちょっと双雨ちゃん?!何やってるんです!外 ― それも人通りの多いところでカメレオン部分を隠してる帽子を取るなんて!」

まあ、異常性を隠している身からすれば、異常性がバレたらヴェールの崩壊には繋がりかねない。その崩壊のトリガーを引いてしまうのではないか、という不安感といった感情が今の鈴呼の中には渦巻いていた。しかし、そんなことも露知らず、双雨は口を開ける。

「なるほど……チョコレート系のお菓子ですか……」

鈴呼はどきっとした。自分が先程さっぱり目のシャーベットを食べたため、ちょっと甘めの、それこそチョコレートを食べたいと考えていたからである。なぜ双雨がそれを知っているのかについて考えたが思い付かない。彼女の人事ファイルには一通り目を通していたが、精神感応系の異常性はなかったはず、と考えてているとき、自然と口から問を零していた。

「なんでわかったの……?」

この問に対して、双雨は無邪気そうに答える。

「え、だって、カメレオン部分がチョコレートっぽい茶色になってたからそうなのかな〜って」

そうか、カメレオン肌か!と思い鈴呼はハッとする。

(そういえば前にも……)


そう、あれはある夏の日。

システムを"食い荒らす"オブジェクトの後処理に、システムエンジニアとして勤めていたときだった。システムを"食い荒らす"オブジェクトはなんとか再収容されたが、サイト全体が停電になり、空調が効かなくなるという被害を被っていた。

「ひとまずはこれでヨシかな……」

そう言ってシステム管制室から鈴呼が出てくる。ちょうど今、電気システムと空調システムが再起動したところである。システム管制室の外には暑さでうなだれている職員が大勢いた。そんな中、鈴呼が彼ら職員に向かって声を掛ける。

「空調が復活したのでもう少し待てば涼しくなると思いますよ〜」

その一言でうなだれていた職員達は一斉に活気に溢れかえったのである。ホント夏にこのシステムエラーは大変だな、と心の中で呟きながら、鈴呼は独り言を言うのであった。

「……喉乾いた……」

そう言って向かったのはサイトの購買部 ― ではなく、サイト内に存在するフロント企業商品を売っている小型商店であった。ちょうど1週間前に期間限定且つ数量限定でブルーハワイ味のジュースが販売されるということを知った鈴呼は、喉が乾いた今、ブルーハワイジュースを飲もうとしたのである。しかし ―

そこにはフードを被った男の人 ― 猿児 秀楠が居たのである。おそらく業務の休憩時間に何か買いに来たのだろう……。だが、鈴呼にとってはどうでも良かった。鈴呼は直ぐに商品棚へ目を向ける。そこにはブルーハワイジュースは一つしかなかったのだ。

それを悟った鈴呼は一目散に猿児の元へと走り出したのである。そして、猿児の目の前について、こう言った。

「すいません……、猿児さん……ジュース代わりに買ってくれませんか……?」

「ん?君は……鈴呼くんかい?ジュース……あ、なるほど」

そう言って何かハッとしたかのようにして、鈴呼にジュースを手渡す。その時の目線は、鈴呼のカメレオン肌に向かっていた。

「ありがとうございます……!ありがとー……最後の1つ、危なかった……。……でも猿児さん、なんであたしが欲しいのブルーハワイだって分かったんで?」

そして猿児は微笑みながら鈴呼に言葉を返す。

「鈴呼君、そりゃ……鈴呼君のカメレオン部分が真っ青なハワイアンブルーに染まってるからだよ。」

鈴呼はハッとしたのである。確かに体質上求めているものの色に身体の色が変わることはあるのだ。だが、そんなこと気に留めていなかった鈴呼はなんでブルーハワイジュースを欲していることが分かったのか、そこが疑問だったのである。

そして、プシュッ、と音を立ててブルーハワイジュースの蓋を開けた鈴呼はゴクゴクと音を立ててジュースを飲んでいたのだった……。


(こんなことあったな……)

回想の世界での出来事を思い出して鈴呼がふふっ、と小さく笑う。双雨はなぜ鈴呼が笑っているのかわからなかったが、何かいいことを思い出したんだろう、と思うことにした。そして、何かを思いついたように双雨が鈴呼に話しかける。

「そういえばチョコレートと言えば、近くのケーキ屋さんのチョコケーキがオススメなんだけど……どうかな?」

「いいね!食べに行こうよ!」

そうして食べ歩き一軒目のスイーツが決まったのである。お目当てのケーキ屋までは徒歩5分。ケーキ屋まで移動中、2人は財団職員 ― それも異常性保持職員ならでの会話に花を咲かせていた。

「そういえば、鈴呼ちゃんってカメレオン肌以外に異常性あったっけ」

「あるよ。極端に暗示に掛かりやすくてね、それが身体的にも影響するっていう異常性」

「極端に暗示に掛かりやすいって例えばどんな感じなの?」

「えーっとね……、催眠術のマネでも暗示に掛かっちゃうみたいな感じかな?」

「大変じゃない?その異常性」

「……うん。大変だけどさ、周りに助けられてなんとか頑張ってるんだ。尤も、異常性のせいで外出許可はなかなか降りないから限定スイーツを逃すことはよくあるけど」

鈴呼はにこやかに笑って答えた。だが、双雨は分かっていた。鈴呼が異常性によってどれだけ苦労しているのか。この笑顔の裏には相当の苦労、そして周りの支えがあることを、一人の財団職員として、そして異常性保持者として理解していた。

双雨はそっか、大変だね。と言って話を中断させる。そこからは無言で、若干気まずい空気が流れていたのだが、それは鈴呼の一言で吹き飛ぶこととなる。

「あ、着いたよ!あのケーキ屋さんでしょ?」

そう言いながら鈴呼が指差した先には一軒のケーキ屋があった。外見は蔦が何本も絡まった赤茶のレンガの小屋みたいなものであったが、ところどころから年季が入っていることが見て取れる。屋根についてる煙突からは煙の形を模したオブジェが顔を覗かせており、まるでおとぎ話の世界のような雰囲気を醸し出していた。

「そうそう!じゃあ、早速入ろうよ!」

そうして軽い音を立ててドアが開く。入店すると同時に店員が「いらっしゃいませ」と活気あふれる声で出迎えてくれた。店内は外見と異なり、モノトーンを基調としたシンプルなものとなっていた。照明も間接照明であり、店内を広く感じさせる造りとなっている。2人は店の奥のテーブル席に案内され、黒を基調とした木目の椅子に座った。

「ご注文はどうなさいますか?」

店員が聞いてくる。双雨はメニューを見ることなく、素早く「チョコケーキ二人分でお願いします」と即答する。店員は即答されたことに対して驚いたような表情を見せていたが、すぐに表情はもとに戻っていた。「ご注文承りました」と言い、店員が厨房へと戻っていくのを2人は見届けながら会話していた。

「あの店員さん、双雨ちゃんの即答にちょっと驚いてたよね」

「もうちょっと間置いててもよかったかな……?まさかあそこまで驚かれるとは思いもしなかったから……」

「もうちょっと間置いてても良かったと思うよ、でもあの驚きっぷりは逆にこっちがびっくりしたなぁ」

などと話しているときに、店員がアンティーク調の皿に乗ったチョコケーキを持ってくる。チョコケーキはガトーショコラのような見た目であった。まぶされたカカオパウダー、程よい色合いのチョコレート。それは見ただけで美味しさが脳天直撃しそうな程に完成されたものであった。

「わぁぁぁぁ」

鈴呼の表情が笑顔になる。鈴呼本人が言うには、このようなチョコケーキは食べたことどころか見たこともないと言うのだ。ただ、鈴呼は間違いなく美味であることを予感していた。そして鈴呼が一口、口にケーキを運ぶことで予感は確信へと変わる。

「ん〜っ」

鈴呼の表情がほころぶ。口の中に広がる程よい甘み。味蕾を通して快楽中枢に直接伝わるチョコケーキの美味しさが鈴呼の舌を幸せにしていく。美味しそうに食べ進めていく鈴呼を双雨は微笑みながら眺めていた。……もちろん、双雨もチョコケーキを食べながら。

(やっぱスイーツは皆を幸せにするなぁ)

などと考えながら双雨は静かにチョコケーキを頬張っていた。鈴呼があっと言う間に完食してしまったのをよそ目に、双雨は味、そして風味を口の中で転がしながらケーキを堪能していた。人間、美味しいものを食べるときは静かになるもので、2人はケーキを食べている間、これまでとは打って変わって何も話さなかったのである。静かに、時間だけが流れていく中で、2人はケーキを楽しんでいた。


そして数分後、双雨がケーキを食べ終える。「じゃあ、次のお店行く?」と言い、会計を済ました2人は外で次は何を食べるかを考えていたのであった。そして次の瞬間、鈴呼がこう言った。

「あたしがオススメしたいのはね、ジャンボパフェかな〜。前に一人で外出した時に食べたのを覚えてて」

ジャンボパフェ。双雨は面食らった顔で話を聞いていた。ここら近辺にあるスイーツ店で販売している、超がつくレベルにどでかい、大食い大会に出るようなパフェを想起していたのだ。しかも、そんなどでかいパフェをこんな華奢な女の子が、という衝撃が双雨の頭から離れなかった。

「じゃ、れっつごー!」

そうして2人はジャンボパフェを食べるために近くにあるスイーツ店へと向かったのであった。そして大体5分後、スイーツ店に到着した2人は店内へと向かう。店内には平日の昼間であるにも関わらず客足が絶えないほど人が居た。余程人気な店なんだな、と双雨は関心しながら、席に座る。

店員がやってきて、ご注文は何にしますか?と言った刹那、鈴呼がジャンボパフェ2つ!と勢いよく答えたのであった。店員と双雨の表情が凍りつく。このとき、互いに「あのでかいパフェを2つ?!」などと考えていたのは言うまでもなかった。店員は明らかに同様しながら、「ご注文承りました」と言い店の奥へと逃げるように、足早に去っていった。

「あ、あの……鈴呼ちゃん……本当に食べ切れるの……?」

やや不安げな声で双雨が鈴呼に問うた。それに対して鈴呼はこう言った。

「大丈夫大丈夫!ちょっと胃の容量と食欲を増やすように暗示掛けるだけだから!」

双雨は更に驚いた。まさかの異常性頼みだったのである。異常性がバレるかも知れないからやめたほうがいい、そう言おうと鈴呼の方を見たとき、

「あたしは沢山食べれるあたしは沢山食べれるあたしは沢山食べれる……」

早速暗示を掛けていたのである。数回同じことを言ったあとに鈴呼は小さくヨシ!と言い、パフェの到着を待つのであった。それからしばらくして、店員がどでかいパフェを持ってやってくる。

「お待たせしました、ジャンボパフェ2人分です」

そう言って店員はそそくさと逃げるように戻っていった。さて、肝心のジャンボパフェはと言うと、高さ15cmはあるであろう巨大なジョッキに入った大量のコーンフレーク、そしてクリーム。上の方にはイチゴゼリーが層のように重なっており、ジョッキの口からはチョコソースのかかったバニラアイスが2つ、そして駄目押しのクリームにプリン、棒状のクッキーが刺さっていた。こんな量を食べれるのか、という一抹の不安が双雨に押し寄せる中、鈴呼は物凄い勢いで食べ進めていた。気がつくとアイスクリームがもう消えてる、という衝撃を受け、案外行けるものなのか?と思った双雨がアイスクリームを口に運ぶ。

(軽めのバニラアイスだ……、これなら行けるかも……)

などと思い、双雨はは一口、もう一口とアイスクリームを口に運ぶ。結果、双雨は3分程でアイスクリーム、そしてプリンを食べ終えてしまった。しかし、イチゴゼリーを口に運んだその時 ―

「ごちそうさま〜」

声が聞こえたのである。まさか、こんな短時間であれ程のパフェを完食できるはずがない、と思い鈴呼の方を向くと、そこにはパフェを入れていたジョッキのみが置かれていた。

(え、もう食べ終えたの……?)

双雨は衝撃を受けた。流石に異常性によるバフがかかっていたとしてもこんなに早く食べ終えるとは思っていなかったからである。それを見た双雨も勢いよくパフェにかぶりつくも、半分を切ったくらいで双雨の胃袋は満タンになってしまったのである。

「も、もう無理……」

「え〜、まだ半分も残ってるよ?しょうがないな〜」

と言って鈴呼が残りのパフェを食べ始める。そして鈴呼はものの数分でパフェを完食してしまった。双雨は若干鈴呼に畏敬の念を抱きかけていたが、異常性の影響であることを思い出して正気に戻る。

「そういえば、暗示ってどうやって解くの?」

「暗示解く方法は色々あるんだけど、この状況だし ― ちょっと双雨ちゃんにお願いしようかな……」

「わたし?何すればいいの?」

「ちょっと、催眠術師が催眠術解く時みたいに"手を鳴らせば暗示が解けます"って言って手を叩いてくれる?」

「わかった。じゃあ、やるね」

「うん」

「手を鳴らせば暗示が解けます」

そう言って双雨が手を鳴らす ― すると、鈴呼がハッとしたかのようにビクッと震える。暗示は解けたのだろうか、そう気になり双雨が鈴呼に声を掛ける。

「鈴呼ちゃん……暗示解けた……?」

「うん。ちゃんと解けたよ!双雨ちゃんありがとう!」

と無邪気そうに笑いながら答える。その後は、少し女子トークをして、会計をし、店を後にしたのであった。


夏の夕暮れ時、涼しい風が吹き抜けていく中、鈴呼と双雨は満足げな表情で帰路についていた。

「今日は楽しかったね〜」

「そうだね〜、ジャンボパフェには驚かされたよ」

などと今日を振り返るかのように2人は談笑していた。しかし、双雨には少し、気持ち的に引っ掛かることがあった。この疑問を払拭するために、双雨は鈴呼に問いかける。

「……ねぇ、なんでお菓子が禁止されているわたしと一緒にスイーツ食べ歩きしようと思ったの?他の職員に見つからなかったから良かったけど、もしバレたら鈴呼ちゃんまで怒られちゃうんだよ?」

「まあ、確かにそうだけどさ。あたし、双雨ちゃんがお菓子我慢してるのを見てて辛そうだな、って思ったから休日 ― それも自由外出の時くらいは好きなもので楽しんで欲しいな、って思ったから……。それに、アノマリーガール同士、親睦を深められたらな、って思って」

双雨が気づく。これが鈴呼なりの気遣いであったことを。双雨は内心で鈴呼に感謝して、こう言った。

「ありがとうね」

「大丈夫だよ!また今度機会があれば一緒に食べ歩きしようね!」

双雨がこくりと頷く。

「そうだね。あっ、そうだ!今度外出するときあったら一緒に買い物にいかない?そして、買い物で買ったものでお菓子一緒に作ろうよ!」

「えっ、いいの?!行く行く〜!一緒に美味しいお菓子作ろうね!」

かくして2人のスイーツ食べ歩きは終わったのだった。

2人の楽しそうな笑い声が夕日にこだました。


……後日。

「え、なんで減給処分?!」

双雨はサイトの一室で人事部門の職員に向かって驚いた表情で聞いていたのだった。おかしい。わたし、何か減給処分受けるようなことしたっけ?と独り言をつぶやく双雨をよそ目に、人事部門の職員が、冷徹に、淡々と話していく。

「この前、外出の時にお菓子 ― それもスイーツを食べましたね?」

双雨がギクリ、と顔をしかめる。

「な、なんのことですか?わたしはただ買い物してただけですよ〜」

明らかに動揺しているのが目に取れる。双雨はぎくしゃくしながら答えたが、人事部門の職員は追い打ちをかけるかのように証拠を見せたのであった。

「外出の際に謀反等を企てないように、監視カメラ映像を通して監視してます。双雨博士、あなたがスイーツ店に集姫鈴呼SEと一緒に入店したことは分かっています」

そういって、手元の封筒から現像された一枚の写真を取り出す。そこには、双雨が鈴呼と共にケーキ屋に入っていく様子が捉えられていた。

「これでも、まだ言い訳します?」

人事部門の職員がトドメの言葉を言い放つ。双雨は涙目になりながら、減給処分を受け入れるのだった。

楽しかった食べ歩きから真っ逆さま、最悪の結末が待っていたのだった。


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執筆者: teruteru_5
文字数: 11376
リビジョン数: 78
批評コメント: 4

最終更新: 07 Mar 2022 12:32
最終コメント: 07 Mar 2022 12:32 by Tsukiyomizuku

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