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From: サンドボックスオペレーター
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クーラーの効いた部屋の中で私──箕田 太一は横たわっていた。布団の上で手足を広げ、全身から力を抜いていく。ひやりとした風がアルコールで火照ったあなたの身体を撫ぜる。管理部門と人事部門が共同開催したハロウィンパーティー、そこで不思議な夢を見せるらしい酒を飲んだことを漠然と思いだす。耳元に置かれたスマートフォンから流れる音楽は自然と私の耳の中へ吸い込まれていった。
えもいえぬ心地良さを感じながら意識が微睡んでいくのを理解する。瞼が重くなり、目を開けているのもやっとになった。睡魔が身体を蝕んでいくのを感じる。私は部屋の電気を消すために右手を横に伸ばした。
照明のリモコンを掴み、ボタンを押す。それに伴って電気が消える。ふっと暗くなった空間には空調音と自分の呼吸音だけが響いている。
眠るため、私は目を閉じた。足元にいったシーツのことを忘れて意識を手放していく。頭がふわふわとする。全身からじわじわと力が抜けていくのを感じる。
それが続いたある瞬間、私の意識は深い眠りの底へと落ちていった。
私は電車の座席に座っていた。車内にいる人の数は両手で数えられる程度だ。ガタゴトという揺れに身を任せながら窓の外を見る。窓の外は夕焼けで、しかも上の方は既に夜になっている。藍と橙が混ざって、混沌とした色彩を放っている。
数羽のカラスが窓際を飛ぶ。翼をはためかせ、先へ先へと進んでいく。遠くへ行って、夕焼け空に溶けていった。
ふと、電車の行先が気になった。これはどこに向かっているのか、はたまた向かう先などないのか。気になったが、すぐにどうでもいいことだと考えた。私は電車の揺れに身を任せることしかできない。結果がどうであろうと自分にはどうにもできない。それを理解した。
スピーカーから音が鳴る。日本語ではない、未知の言葉が聞こえてきた。知らないはずの言葉だが、私はそれに聞き覚えがあった。
そう、母親の子守唄だ。
かつて眠るときに聴いていた子守唄のメロディに似ている。漠然とした安堵を感じながら、私はこれが夢であると悟った。電車が止まる。ドアが開き、人がなだれ込んでくる。その流れに飲み込まれ、ぐちゃぐちゃになるまで揉まれていく。身体が変形し、原型を留めなくなるまで潰される。流れに逆らおうとしたが、余計に苦しくなるだけだった。
ふと、過去の出来事を思い出す。職場でとあるプロジェクトを任された時のことだ。当時の自分は悪い意味で尖っていて、周りの意見を聞き入れようとしなかった。プロジェクト担当者の間で対立することもあった。揉めに揉めて、最終的に担当者から外された。流れに逆らったことで苦悩を浴びることとなったのだ。
流れには逆らってはいけない。周りに合わせて適当に相槌を打つことが最適解だと心の中で考える。変に流れに逆らうと苦しむし、最悪死んでしまうんだ。ということは、つまり。
大多数が「はい」と言ったら自分も「はい」と答えることしかできないように、流れに身を任せることしかできないのだ。
高層ビルにあるレストラン。私はそこの窓際席で食事を楽しんでいる。目の前には愛しの彼女がいる。真っ赤な唇が動き、運び込まれた料理を咀嚼していく。その艶やかな様子に、私は見入っていた。
ウェイターがやってきてテーブルの上にステーキを置く。焦げ目のついた表面はまさに「食べてくれ」と叫んでいるようだった。テーブルの上のナイフとフォークを手に取り、ステーキに切れ目を入れる。ナイフを動かす度にカチャカチャという金属音が鳴る。
カットした肉をフォークで突き刺し、口へと運ぶ。じゅわ、と肉汁が溢れる。それだけではない。脳内に記憶が溢れ出す。
彼女との出会いは偶然だった。部署異動の際に出会い、話していくうちに意気投合した。最初はぶつかることもあったが、次第に打ち解けていった。告白したのは私からだった。バラの花束を抱えて放った「愛してる」の言葉は不格好なものだった。それでも、緊張のあまり声の裏返ってしまった私を、彼女は優しく受け入れてくれた。
指輪が彼女の左手薬指に通される。その一瞬に宿った美しさを今も覚えている。子供には恵まれなかったがそれでもよかった。彼女といれるならそれでよかった。
でも、その彼女はもういない。つまり、目の前にいるのは。
私は全てを悟った。これは夢だ。彼女は幻影だ。彼女の輪郭が緩やかにぼやけていく。滲んで、空間に溶けていく。周りが真っ暗になった。彼女の姿も見えなくなっていく。夢なら覚めないでくれ。幸せなままでいさせてくれ。涙を流しながら、目の前に残されたステーキを食む。
次第に彼女の存在すら思い出せなくなった。愛人がいたのは分かるが、それが誰なのかは分からない。見た目も名前も声音も何も覚えていない。漠然とした恐怖を感じる。指の間からするりと指輪が抜けてしまった。もう、彼女と会うことはできない。怖い、寂しい、叫びたい。声が出ない。身体の支配が効かない──まるで操り人形のように身体が動いている。
ステーキを食べ終わった私の元に、先程より一回り大きい肉の塊が運ばれてくる。嫌な予感がした。これを食べれば何かを失うと直感で悟った。でも、その「何か」の正体は依然として不明だ。分からないということは、その程度のものなのだろう。だったら、いっそ。
肉を両手で掴み、歯を立て、噛みちぎる。生肉を素手で触っているようで気持ち悪かった。咀嚼し、飲み込み、口元についたソースを舐めとる。
仄かに塩味がした。心に穴が空くのを感じる。
私はフランス某所にある酒場の常連だ。今日も酒を飲むためにそこを訪れている。目の前にはウイスキーの入ったグラスが1つ。私はそれを飲み干し、勢いよくテーブルに置いた。
酒場の店主は黙々と仕事を続けている。私はそれを見ながら、テーブルの上に置かれたつまみのナッツを食らっている。ふと、入口のドアが開いた。視界を動かすと、そこにはびしょ濡れの少女が立っていた。端正な顔立ちと透き通るような白い肌。パッと見では人形と勘違いしてそうなほどだ。
少女が私の隣に座る。店主は少女にオレンジジュースを差し出した。少女はストローをさしてオレンジジュースを飲む。私はその様子を黙って見ていた。私の視線に気付いた少女はにこやかに笑ってみせた。
それはまるで、幼少期に見た人魚のようで。
そう思い浮かべた途端、少女は「正解」と呟いた。立ち上がって指をパチンと鳴らす。足先が変化していき、魚の尾ひれになった。指の間には水掻きがある。少女は、まさしく人魚だったのだ。
思わず驚いた。人魚がいると知って喜んだ。そして暫くして、これが夢だと気づいて落胆する。人魚が店を去っていく。私は「待て」と言おうとしてそれをやめた。
夢は追っているだけでいい。手に届かない方が、綺麗に見えるから。昔からそうだった。自分は飽き性で、欲しいものを手に入れてもすぐに捨ててしまっていた。理由は単純、魅力を感じなくなったからだ。ヒーローの人形も、ゲーム機も、ラジコンも、全部捨ててしまった。手に入れるということは魅力を失うことと同義なのだ。
今もそれは同じだ。流石にものを捨てることは減ったが、確かに魅力は感じなくなっている。ならきっと、ここで人魚の手を掴んだって、いずれ飽きて捨ててしまうのがオチなのだろう。かつての自分の憧れを捨てるのは嫌だ。かつて過ごした日々に泥を塗るようで辛いから。思い出はずっと綺麗なままで置いておきたい。
ウイスキーを口に含んだ。テーブルの上には1枚のウロコがある。私はそれをゴミ箱に入れて店を出た。
目覚まし時計のアラームで私は目を覚ました。
窓の外を見る。燦々と輝く太陽と透き通るような青空が広がっている。身体を起こすと、足で蹴飛ばされてよれたシーツが目に入った。枕元に置かれたスマートフォンのバッテリーは5%になっている。クーラーからは相変わらず風が吹いている。
不思議な夢を見た気がする。それは電車で揺られる夢であり、最愛の人と食事をする夢であり、かつて追っていた夢を再発見する夢だった。
それらの夢に関連性はない。意味もなければ、物語性もない。それでも、私は夢を見る。夢を見て、そこに広がる世界に想いを馳せる。そんなことに意味なんてないのに。
身体を起こしてベッドから降りる。普段着に着替えて寝室を後にする。リビングで家族に「おはよう」と言って食卓に座った。テーブルの上には私の好物であるベーコンエッグが置かれている。
それを食べる頃には、とっくに夢の中での記憶は薄れてしまっていた。
これで私が見た夢についての話はおしまい。
ファイルページ: 貴方の見た夢についての話。
ソース: こちら
ライセンス: CC BY-SA 3.0
タイトル: 貴方の見た夢についての話
著作権者: teruteru_5
公開年: 2024/07/07
補足:
以下画像を使用
タイトル: [フリーイラスト] 3種類の草花のライン
作者: 不明
ソース: こちら
ライセンス: CC0/パブリックドメイン
公開年: 不明
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- 夢の話が3個なのは睡眠時に体験する夢が3〜5個だから。
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- portal:7178014 (30 Dec 2020 05:31)