早朝のサイトはどこか不気味だ。そこかしこに存在する物陰はいつもよりも薄暗く、漠然と「中に何かいるのではないか」と思ってしまう。まるで一人だけ異世界に来てしまったと錯覚してしまうかのような孤独と静寂が早朝のサイトにはあるのだ。
そんな薄暗く不気味な廊下をわたし──梅川晴香──は進んでいく。目的地は資料室、と考えながら台車を押して歩いている。コツコツという足音と、ガラガラという車両の回る音が廊下に響く。何もこんな早朝に頼まなくてもいいのに、と呟やく。そもそも芸術関連の資料が欲しいなら芸術専攻の人を頼るべきだろう。自分は超常心理学にしか詳しくないのだから、役に立てるかなんてさっぱり分からないのに。そんな風にぽつぽつと愚痴を零していると、中庭の近くに差し掛かった。そうだ、と呟き、中庭に向かって歩き出す。
その理由は単純で、その方が早く資料室に到着するからである。早朝のサイトと違い、中庭には幻想的な雰囲気が漂っていた。空から差し込む微かな日差しと、朝露によって濡れた土の匂い。心が落ち着いていくのを感じながらわたしは台車を押していた。
その時、ふと視界の端に何かが映った。
なんだろうか。もしや、本当に「何か」がいるのか。恐る恐るその方向を見てみると、そこには二人分の人影があった。胸の部分に取り付けられた財団徽章からアノマリーではないと判断し、近寄っていく。その途中であることに気付いた。二人分の人影、その足元に誰かが横たわっているのだ。その誰かは微動だにせず、まるで死体のようだった。そう考えると同時に背筋がゾクッとした。もしあれが死体で、人影が殺人犯だったら。そう思うと恐怖でいっぱいになってしまった。でも、見たからには無視できない。目撃者として情報を伝えなければ。そう思いながら、そっと、息と気配を殺して近づく。音を立てないように、そっと──
その時、足元からパキッという音が鳴った。ふと下を見るとそこには折れた木の枝があった。どうやらわたしはそれを踏んでしまったらしい。まずい、バレてしまう。そう思って逃げようとするも、どうやら遅かったらしい。わたしの目の前には一人の男が立っていた。頭の中で「逃げなきゃ」という言葉が反芻している。脳が危険信号を絶えず発している。だというのに、腰が抜けてしまって動けない。辛うじて口から出た言葉は「たすけて」の一言だった。
それを聞いた男が「落ち着いて」と言う。乱れていた呼吸を整えながら男の顔を見る。そこにあった顔はわたしにとって見覚えのあるものだった。
「猿児、さん……?」
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