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以下の記録はPoI-5217-JP("狐窓 三種")の所持品の一つである原稿用紙に記載されていた内容の転写です。所持品についての詳細は付属ファイルを参照してください。
文書記録 PoI-5217-JP.17
皆さん、こんばんは。俺の名前は狐窓 三種。フリーのオカルトライターとして活動している者だ。専門は特になし。オカルトとあればなんだろうと飛びつくオールマイティなライターを自負している。先日公開した記事ではUFOを捉えることができなかった訳だが今回は違う。確かに俺はこの目で幽霊──トイレの花子さんを見たのだ。
学校の怪談として有名なトイレの花子さんだが、意外にも目撃地点は近所の公園の公衆トイレである。身近なオカルトスポットを見逃すなど、なんたる不覚。灯台下暗しとは正にこのことである。……雑談はここまでにしておいて、本題に入ろう。この度、俺──狐窓 三種はトイレの花子さんに取材をすることに成功したのだ。以下の体験談はきっと、オカルトマニアな読者達にとっても目新しいものとなっているに違いないだろう。
時刻は午前2時。トイレの花子さんに出会うため、俺は近所の公園の公衆トイレを訪れていた。深夜の公衆トイレは暗く、かなり不気味な雰囲気を帯びていた。その雰囲気に若干怯えながら、個室の扉をノックする。コンコンコン、という扉を叩く音と共に、俺は口を開いた。
「花子さん、いらっしゃいますか?」
少しの沈黙が流れる。やはりダメだったか、そう思って帰ろうとした時、奇跡は起こった。
「はぁい。どちらさまでしょうかぁ」
扉の向こうから、女性の声がしたのである。遂にオカルトに出会えたという興奮を抑えながら、俺は更に「花子さんですか?」と問いかけた。そして返ってきた答えは「はぁい」という肯定を示すものだった。
喜びのあまり、思わず叫び出してしまいそうになる。しかし今は夜。叫んでしまったら通報されかねない。そう考えて黙っていると、扉の向こうから更に声が聞こえてきた。
「あのぉ、用がないなら帰ってくれませんかぁ?目障りなのでぇ」
強めの語気で花子さんが言う。まずい、このままでは折角のチャンスが無駄になってしまう。そう考えた俺の口から、自然と声が出る。
「申し訳ない!俺は狐窓 三種。トイレの花子さん──つまるところ、貴女について取材させて貰えないだろうか?」
花子さんが黙り込む。考えているのだろうか?なんて考えていると、ドアの向こうから声がした。
「取材ってことはぁ……話を聞いてくれるって言うのぉ?」
すかさず「はい」と返事を返す。返事を聞いたであろう彼女が声を発する。
「じゃあ──わたしの悩みを聞いて貰おうかしらぁ」
花子さんの悩み。これはかなりリアリティとオリジナリティのある話が聞けるに違いない。そう思った俺はすぐに「わかりました」と返事を返した。そうして彼女が、最初の悩みを口にする。
「最近ねぇ、不眠が続いているんですよぉ。夜中に肝試しに来た人達に叩き起されてねぇ。こっちはぐっすり眠ってるって言うのにぃ、ヒトの気すら知らないでぇ。本当嫌になりますよねぇ」
不眠という言葉に反応する。幽霊も寝るのだろうか。疑問に思った俺は質問してみることにした。
「もちろんよぉ。幽霊だって寝る時は寝るわぁ。そうじゃないと生活リズム狂っちゃうしねぇ」
幽霊も寝るそうだ。幽霊の新しい側面を知って内心小躍りしていると、彼女が次の悩みを打ち明けた。
「それにねぇ。最近わたしのものがよく盗まれるんですよねぇ。トイレットペーパーだったり、芳香剤だったりぃ。ヒトのもの盗んじゃいけないって習わなかったんですかねぇ?」
どうやら盗難関連の悩みもあるらしい。思ったより人間臭い悩みを抱えているようだ。元が人間だからと言えば当然なのだが……。そう考えていると、彼女は更に悩みを吐露した。
「ああ、あとぉ。用を足した後に流さない人が最近多いんですよぉ。わたしが処理してやってるんですけどぉ、本当に汚くてぇ。困って困って仕方ないんですよねぇ。臭いし汚いしでぇ、本当に最悪ってやつですよぉ」
かなりの悩みを抱えているようだ。超有名幽霊の花子さんと言えど、悩みからは逃げられないのだろう。そういった面が、俺にはひどく人間臭く思えた。「花子さんも人間臭いんだな」なんて問いかけてみると、彼女はこう答えた。
「幽霊だってイメージチェンジしますしねぇ。適応することが長生きのコツなんですよぉ。まあ、わたしもう死んでるんですけどねぇ」
そう言って彼女は笑い声を上げた。人間臭い悩みやくだらないジョークで笑っている姿を見て、俺のロマンは粉々に砕け散ってしまった。
その後は小一時間ほど花子さんの愚痴トークに付き合わされて、気が済んだタイミングで解放されるというものだった。俺のロマンは、花子さんの愚痴によってオーバーキルされてしまったのだ。
ロマンの死んだ俺は、一人静かに夜に溶け込んで行った。
……というか、花子さんも悩んでるんだな……。
終了報告書: 所持品回収後、PoI-5217-JPは記憶処理を施したうえで解放されました。PoI-5217-JPの追跡・監視は継続されています。
悩んでるのはこっちだよ。くだらないロマンとやらに付き合わされて休日出勤になるつらさが分かるか?……本当嫌になるよ - エージェント・駒場
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アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:7178014 (30 Dec 2020 05:31)
現状DVです。
あまりにも御都合主義的で納得がいきませんでした。この異常性は何かトイレの花子さんと掛かっているのでしょうか?
-Aではなく-Bではないでしょうか。
Anomalousアイテムと危険性が低いとははいえ、職員が勝手に侵入できる管理体制だったとは考えにくいです。
こういったスケールの小さいシュール記事はあまり珍しいものじゃないので、この記事の一番の新規性であろう「トイレの花子さん」の要素を上手く調理する必要がありそうです。現状、トイレの守護神の役割しかしていないので花子さんが個室内でどのような言動をしているかにフォーカスをあてると、-Cの緊迫さとの落差が強調されて良いかもしれません。
批評ありがとうございます。
Tsukajunさんの言う通り、トイレの花子さんに注目した上で記事を改稿してみようと思います。
確かに御都合主義的なのは否めないですね。