アイテム番号: SCP-3996-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-3996-JPを囲うようにして小型管理収容サイト-10が建造されます。小型管理収容サイト-10は表向きは修繕工事現場として偽装される必要があります。SCP-3996-JP-Aとなった生存者に対する特段の対応は行われません。
説明: SCP-3996-JPはフランス国内に存在する建造物です。かつては“ベルガマーの酒場”という名称で認知されていたことが調査の結果明らかになっています。SCP-3996-JPを構成する建材は非異常性のものであることが確認済みです。また、正規の手段を用いてSCP-3996-JPに進入することは不可能であるとされています。
SCP-3996-JPにはクラスΔ霊体1のみがアクセス可能です。この時アクセスするクラスΔ霊体をSCP-3996-JP-Aに指定します。SCP-3996-JP-Aは睡眠状態にある存命人物の身体より無意識的に“抜け出す”形で出現し、SCP-3996-JP内へと転移することが確認されています。この時SCP-3996-JP-Aが発生する要因および条件は明らかとなっていません。
SCP-3996-JP-AはSCP-3996-JP内にしばらく滞在した後、存命人物の身体に“入り込む”形で消失します。消失後、街灯の存命人物はSCP-3996-JP内での出来事について“夢である”と認識するようになります。これはSCP-3996-JPに関する事前知識を入手する事によって対処可能です。特筆すべき点として、SCP-3996-JP-A発生時に該当する存命人物を睡眠状態より覚醒させる試みは全て失敗に終わっている点、SCP-3996-JP-A消失から24時間以内に該当の存命人物は何らかの要因によって死亡する点が挙げられます2。これによって死亡した死体の表情は一貫して微笑んでいることが明らかとなっています。
SCP-3996-JP-Aの証言によると、SCP-3996-JPの内装は“西洋のバーのようである”と形容されるものであり、カウンターとその他複数のテーブル席、そしてスタッフルームから構成されていることが証言より明らかとなっています。また、SCP-3996-JP内部にはSCP-3996-JP-Bに指定される人型実体が存在していることが確認されています。
SCP-3996-JP-Bはバーテンダーのような装いの人型実体です。多数の男性的特徴を有しており、財団に対して友好的に接することが明らかとなっています。SCP-3996-JP-Bは“SCP-3996-JPのマスター”であると自称しています。現在までにSCP-3996-JP-Bの経歴に関する詳細情報を確認できた例は存在していません。SCP-3996-JP-BはSCP-3996-JP-Aに対して何らかの飲料を提供します。この飲料自体に異常性はないものと見られています。多くのSCP-3996-JP-Aは提供された飲料を摂取し、SCP-3996-JP-Bと対話する様子が確認されています。
SCP-3996-JPは2010年に“夢の中で訪れたら死ぬ酒場”という都市伝説として知られていました。これを察知した財団が調査を行った結果、都市伝説内の酒場が実在することが判明。その後の実験により現在の異常性が発覚するに至っています。その後、標準的な建造物収容手順に基づいてSCP-3996-JPは収容されました。これによる事後対応は情報の流通形式を踏まえたうえで行われませんでした。
補遺.1: 調査記録
2010/██/██、Dクラスを用いたSCP-3996-JPの調査が行われました。以下は調査後に被験者のDクラスに対して行われたインタビュー記録の抜粋です。
インタビュー記録 #1
対象: D-3996-1
インタビュアー: ジョン博士
[記録開始]
ジョン博士: ではD-3996-1、例の酒場の夢について教えてくれ。
D-3996-1: 分かった。まず、俺は何もないところをさまよってる感じの夢を見たんだ。辺り一面が真っ暗で、何も見えない。そんな空間をひたすらにさまよってる感覚だった。
ジョン博士: なるほど。
D-3996-1: そんな時、ふと目の前に一軒の建物があるのが目に入ったんだ。俺はこの気味悪い空間から抜け出そうと思って建物に入った。
ジョン博士: [相槌]
D-3996-1: 建物はバーだった。いくつかのテーブル席とカウンター席があって、カウンターの向かいには30代前半くらいのバーテンダーが立ってた。客は何人かいたが、カウンター席が空いてたからそこに座ったんだ。
ジョン博士: 続けて。
D-3996-1: 俺が席に座ると、バーテンダーは目の前に酒を出したんだ。それも俺の好きな銘柄のやつをな。最初は警戒してたけど、バーテンダーに飲むように促されたから飲んだんだ。夢とは思えないほどおいしかったよ。現実でこんな風に酒を飲めたらな、って思うくらいには。
ジョン博士: ふむ。
D-3996-1: 酒を飲んでいくうちに酔いが回ってきてな。ふと色んなことを思い出したんだ。
ジョン博士: 色んな事とは?
D-3996-1: 俺がシャバに残してきた娘や嫁のこと、犯罪を犯したことに対する後悔、死と隣り合わせの毎日のストレス……まあ、とにかくたくさんだ。そう考えてると、ふと悲しくなってきてな。何も人の役に立てずに死ぬのか、って。
ジョン博士: なるほど。
D-3996-1: 気が付いてたらバーテンダーの前で泣いてたよ。泣きながら色んなことを話した。俺の人生のこと、犯罪のこと、後悔のこと……思い出せる限りの全部を吐き出した。大体4時間くらい話してた気がするな。
ジョン博士: ふむ。
D-3996-1: そしたら結構心が軽くなってさ、いつ死んでも後悔がないように思えてきたんだ。多分今ならどんな死にざまでも悔いは残らないと思うぜ。
ジョン博士: その後はどうしたのですか?
D-3996-1: その後はバーテンダーとちょこちょこ話をする程度だったかな。そして気が付いてたら目が覚めたって感じだ。……とまあ、なかなか不思議な夢だったな。
ジョン博士: ありがとうございます。
D-3996-1: おうよ、これで役に立てたなら本望だしな。にしても久々にいい夢見た気がするぜ。
[記録終了]
終了報告書: 当インタビューの5時間後、D-3996-1はアノマリーを用いた実験時に異常ミームに暴露する形で死亡した。特筆すべき点として、死体の表情はほほえんでいたことが挙げられる。
上記インタビューを受け、財団は更なる情報を引き出す目的で再度の調査を実施しました。第二回調査において対象に選出されたD-3996-15にはSCP-3996-JPの情報を伝えたうえで霊素通信技術を習得させています。
調査ログ #1
対象: D-3996-15
担当者: ジョン博士
[記録開始]
D-3996-15: 例のバーに入りました。内装は教えてもらった通り、数個のテーブル席とカウンター席、そしてスタッフルームから構成されているように見えます。
ジョン博士: 中には一体どれくらいの霊体がいる?
D-3996-15: そうですね。[数秒沈黙]大体7人です。見えてないだけで他にもいるかもしれませんが……。
ジョン博士: 了解した。では適当な席に座ってバーテンダーとコンタクトを図ってくれ。
D-3996-15: 分かりました。ではカウンター席が空いてるのでカウンター席に座ろうと思います。[着席音]
SCP-3996-JP-B: いらっしゃいませ。こちらサービスのワインとなります。
D-3996-15: ありがとうございます。そうです、少しお話を聞きたいのですがいいでしょうか。
SCP-3996-JP-B: なんでしょうか?答えられる範囲でなら答えますが。
D-3996-15: ありがとうございます。ではまずですが、あなたは何者ですか?普通では入れないはずのところにいるということは常人ではないと思うのですが……。
SCP-3996-JP-B: 私はこのバーのマスターですよ。それ以上でもそれ以下でもありません。
D-3996-15: 次にですが、あなたは何故霊、それも生霊を相手に酒を提供するのですか?何か理由がないとそう言ったことをするとは思えないです。
SCP-3996-JP-B: 単純に趣味だからですよ。生霊と言えど、元は人ですから。お客としてやってきたらサービスするくらいは当たり前でしょう?ああ、あと。
D-3996-15: あと?
SCP-3996-JP-B: お客様の人生を見るにはそっちの方が手っ取り早いというものもありますねえ。
D-3996-15: 人生を見る?
SCP-3996-JP-B: 失敬、失言してしまいました。忘れてください。
D-3996-15: [沈黙]わかりました。では次ですが、ここを訪れた人が死ぬ理由とかはわかりますか?どうにも、ここを訪れた生霊の元になってる人が翌日に死んでいるらしく。
SCP-3996-JP-B: それは、ここが明日死ぬ人が訪れるバーだからですよ。
D-3996-15: それはどういう意味ですか。
SCP-3996-JP-B: 死ぬ前に後悔や名残を聞いてあげることで悔いなく死ぬことが出来るようにするためにここはあるのですから。
D-3996-15: つまり、偶然明日死ぬ人がここに集まると?
SCP-3996-JP-B: はい。こちらでは一切手出ししておりませんから。
D-3996-15: なるほど。ありがとうございます。質問は以上です。では私はこれで──
SCP-3996-JP-B: 待ってくださいよ。せめてこのワインだけでも飲んでいっていただきたいです。貴方のお好きな銘柄ですから、気っと気に入ると思いますよ。
[記録終了]
終了報告書: 当調査記録の5時間後、D-3996-15は急性心不全によって死亡した。死体の表情はほほえんでいたことが確認されている。
補遺.2: 追加調査
補遺.1における調査記録を受け、財団はSCP-3996-JPについての更なる情報収集を行いました。結果として、SCP-3996-JPに関する複数の新情報が明らかとなりました。以下は新情報の一部抜粋です。
- SCP-3996-JP-Bは二代目マスターであり、以前はケイト・フィルソンという男性がSCP-3996-JPを運営していた。
- SCP-39996-JP-Bは“死神”として知られる低級多能性神格であると推測される。これは回収されたケイト・フィルソンの日記より明らかとなったことである。
- SCP-3996-JP-Bはケイト・フィルソンと交友関係にあったとされる。
- ケイト・フィルソンは2009年の末に持病が悪化し死亡している。これは非異常的なものであるとされる。
この情報を踏まえたうえで再度SCP-3996-JP-Bに対してインタビューが実施されました。実施者はD-3996-34であり、前回同様にSCP-3996-JPの情報を伝えたうえで霊素通信技術を習得させています。
インタビュー記録 #2
対象: SCP-3996-JP-B
インタビュアー: D-3996-34
監督者: ジョン博士
[記録開始]
D-3996-34: こんにちは、マスター。
SCP-3996-JP-B: いらっしゃいませ。こちら特性カクテルになります。ぜひお飲みください。
D-3996-34: ありがとうございます。[D-3996-34が提供されたカクテルを一口すする]そうです、少し質問してもよろしいでしょうか。
SCP-3996-JP-B: なんでしょうか。お答えできる範囲で答えさせていただきますね。
D-3996-34: ありがとうございます。ではまずですが、ケイト・フィルソンという男性はご存じでしょうか。
SCP-3996-JP-B: [沈黙]どこでその名前を知ったのですか?
D-3996-34: それはお答えすることができないです。守秘義務というものがあるので。
SCP-3996-JP-B: わかりました。
D-3996-34: それで、ご存じあるのでしょうか。
SCP-3996-JP-B: ああ、もちろんだとも。こんな身の私に優しくしてくれた唯一無二の人間であり、親友でしたからね。
D-3996-34: なるほど。では次の質問です。あなたはつまるところ“死神”と同等の存在なのでしょうか。
SCP-3996-JP-B: [沈黙]そうです。と言っても、他の死神と比べたら弱く矮小なものですが。持ってる権能を死期と死因が分かるというものだけですしね。
D-3996-34: ありがとうございます。ということは、その権能を使ってこの店に生霊を集めていた、と。
SCP-3996-JP-B: そうです。ケイトのように、未練を持ったまま死ぬ人が一人でも減ればと思いましてね。
D-3996-34: 詳しく聞かせてください。
SCP-3996-JP-B: ケイトは持病を患っていました。心臓病の一種で、不治の病と言われるものだったと聞いています。私が彼と出会った時で既に余命は2年と少ないものでした。
D-3996-34: なるほど。
SCP-3996-JP-B: ですが、彼は持病に抗いながら過ごしていました。きっと苦しかったことでしょう。ですが、私にはどうにもできなかったのです。
D-3996-34: [相槌]
SCP-3996-JP-B: 私はせめて彼が苦労しないように、と共にこの店を運営することにしました。その過程で人間の情というものに触れていきました。
D-3996-34: ふむ。
SCP-3996-JP-B: 私は一生懸命に彼を支えていたんです。だけど、やっぱり人間ですからね。寿命が来てしまったんですよ。彼の死に顔は後悔にあふれていました。彼が残してくれた遺書を眺めたのですが、親族のことなどで色々抱えていたようでした。
D-3996-34: [相槌]
SCP-3996-JP-B: その時私は感じたんです。後に遺された人達は、死んでいった人の思いを忘れてはいけないと。だって、そうじゃないと報われないじゃないですか。
D-3996-34: なるほど。
SCP-3996-JP-B: 忘れるべきなのは、去り行く自身が抱く未練だけでいいんです。せめて安らかに、安心して逝ってほしい。その一心でこの店を運営することにしました。私が、少しでも旅立つ彼彼女らの旅支度をしてあげれば……と。
D-3996-34: なるほど。
SCP-3996-JP-B: 私は単純に、悩んだり抱えたりと苦しんだまま死んでほしくないだけなんです。
[記録終了]
終了報告書: 当インタビューより、確認された情報の裏付けや理念・起源などの詳細情報を得ることに成功した。また、インタビュアーとして起用されたD-3996-34はインタビュー実施から4時間後に脳梗塞によって死亡した。D-3996-34の死体の表情はほほえんでいたことが確認されている。
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任意A任意B任意C- portal:7178014 (30 Dec 2020 05:31)
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