みつかる

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これは僕が高校生位のときに地元の町であった話なんですけどね。毎日夜、それも深夜位になると変なやつが来るんです。変なやつと言っても、妖怪とか、お化けとか、怪物とか、そう言ったものじゃないんですよ。

はい。人間です。それも40代くらいの男の人。両手で顔を覆いながら何かぶつぶつ呟いてゆっくり歩いているんです。まあ、最初に遭遇したのはちょっと友達と遊んでて帰りが遅くなったときですかね。初めて見たときは酔っ払いかなと思ってたんです。スーツ着てましたし、肩からカバン提げてましたし。

家に帰ってからはすぐに寝ようとしました。でも、あの男の人のことがやけに気になって。頭の中で歩きながら何かを呟く様子がループする感じというか。元々、気になったことはとことん突き詰めたがる性格なので、次の日からこっそり後を付けてみたんです。今思えば、それが駄目だったのかもしれません。

まず、一日目です。男の人の後をこっそり付けました。二日目も、三日目も。とにかくまずは移動ルートを把握するために最初の数日はとにかく後を付けていました。よく考えればストーカーですよね。でも、気になってしまったんです。まるで、蜜におびき寄せられる虫のように。

しばらく後を付けていると、あることに気が付きました。男の人は必ず町外れにあるお堂のところに行って、しゃがんだ状態でモゾモゾと動いているんです。それに、移動ルートは、お堂を通るように決まった道を通って町を一周していたんです。お堂で何をしていたのかはその時はよく分かりませんでした。

で、それを知って収穫を得たので、ひとまず僕は満足していました。そこからはあまり気になることもなくなって、深夜に家を出て人の後を付けることはなくなりました。起きて、学校へ行って、部活して、帰って。この繰り返しでした。

でも、ある日部活後の自主練習が遅くなったにも関わらず、友達と帰り道の通りにあるコンビニで立ち話してたんです。どれくらい話をしていたのかは分かりませんが、ひとまず遅いだろうし帰るか、って時です。

コンビニのドアが空きました。正直、これだけなら買い物してた人が出てきたんだろうな位で気にも留めなかったんです。でも、出てきた人を見たら気に留めないわけにはいきませんでした。そこに立っていたのは、スーツ姿、カバン、そして手首には黄色い液体の入ったポリ袋。顔は手で覆って何かを呟く様子。僕は気付きました。

あの男の人です。でも、前はポリ袋なんか持っていませんでした。なんで持ってるのか分かりませんでしたが、また気になってきちゃって。ひとまず、友達には用事思い出したから先に帰ると言い訳をしてその場から立ち去るフリをして男の人の後を付けました。いつも通る帰り道でしたが、やけに薄暗く感じたのは覚えています。

男の人は前に付けた時のように、駅前を通り過ぎ、ガソリンスタンドの後ろを通って、ちょっとした草むらを抜けて、そしてお堂の前に来ました。お堂の入口には鳥居があって、横には石碑があるんです。地元では、地域の守り神が祀られていると言われていましたが、あのときは何とも言えぬ悍しい雰囲気が漂っていました。

そして、次の瞬間です。男の人は今まで顔を覆っていた手を離して、ポリ袋に入っている液体を石碑に掛けはじめました。辺りにはアンモニア臭が漂っていて、この時に液体の正体を知りました。

尿だったんです。神様を祀っているお堂の石碑に尿を掛けるなんてバチあたりだと思いますが、当時はそうでもありませんでした。なんというか、男の人の行動が正しいように思えたんです。おかしいですよね。でも心の中では気持ち悪さがあって。急いでその場所から立ち去ろうとしたときに、木にぶつかっちゃって。ガサガサって音がしたんです。

まずい、って思って急いで男の人の方を見たんです。男の人はやっぱりこっちの方を向いてて。でも普通の様相ではありませんでした。手を再び顔に押し当てていて。でも目は見開いてて。ほら、よくホラー映画見るときとかに手で顔を覆うけども、指の間から覗くことあるじゃないですか。それと同じような様子です。

男の人の目はすごい血走ってて。これは怒られる、とか考えてたんです。次の瞬間、男の人が口を開きました。怒鳴られるだろうな、と思っていたからか、それとも他の何かが関係しているのか分かりませんが、とても驚いて怖かったのを覚えています。

「みつかっちゃった」

そこそこ大きな声で言いました。そして間髪を入れずに、男の人は

「みつかっちゃった」
「みつかっちゃった」
「みつかっちゃった」
「みつかっちゃった」
「みつかっちゃった」

何回も連呼しました。その迫力や雰囲気、恐怖に気圧され、僕は急いで後ろを向いて逃げました。男の人の足音が聞こえました。怖かった。あの瞬間より怖かった経験は未だ体験していません。

家に入ると同時に急いで鍵を締めました。足音はしていませんでした。次の日、母に前日の経験を話すと、あの男の人について知ることができました。あの男の人は、元々統合失調症を患っていて、情緒が不安定だったことがあったそうです。人を睨みつけたり、大声で叫んだり。そんなことは良くありました。あと、徘徊癖もあったようです。

で、ある日お堂の近くを通りかかった近所の人が男の人を見たようです。男の人はその時、お堂で用を足していたとかなんとかで、注意したそうですが、近所の人を見るなり逃げ出したとか。

でも、お堂にはお供え物がされていたらしくて、何かのやむを得ない事情で用を足していたのだと考えていたそうです。翌日、お供え物はカラスに食い荒らされたらしく、お供え物はなかったらしいです。

その日から男の人の症状は悪化していって。突然小声で何かを呟くようになったらしくて。男の人の身内の方は、毎日夜になると決まって家を出るから困ると言っているのを母が聞いたらしいのですが、統合失調症のこともあり、症状のせいだろうと無視していました。

その後、僕は男の人に遭遇することなく高校を卒業して、上京してきたので男の人のその後は分かりませんが、今も何かを続けているように思えて仕方ないんです。

あ、そろそろ時間ですね。じゃ、管理頑張ってくださいね。くれぐれも見つからないようにしてください。


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