天命潜入捜査官オルレアンズ・アイボリー

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アイテム番号: SCP-2381-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-2381-JPはサイト-81██の高強度人型オブジェクト収容室に収容されます。未解明の異常性を起因とする認識災害やミーム汚染の懸念があるため、当該実体へのインタビューは複数人で行い、接触中は常に別室から警備員が監視している必要があります。SCP-2381-JPよりSCP-2381-JP-Aが分離した場合、複数人で速やかに回収してください。回収されたSCP-2381-JP-A群はサイト-81██内の低脅威物品用ロッカー内に保管されます。

説明: SCP-2381-JPは天命潜入捜査官オルレアンズ・アイボリーと自称している、未解明の異常性を持つ象牙色を基調とした衣服及び各種装備(これらをSCP-2381-JP-Aと呼称)を所持した人型実体です。当該実体の外観と声質から、20代前半の女性であると予想されています。初期収容段階における交戦でSCP-2381-JP-A群の一部が破損する様子が見られたため、これらの装備を破壊することは可能です。
SCP-2381-JPはSCP-2381-JP-A群やその他未確認の異常性を用いて特定の組織に潜入し、最終的に内部告発や内部抗争を誘発させる事で組織を壊滅させていたことが確認されています。
 
以下は、現在判明しているSCP-2381-JP-A群の機能一覧になります。
番号 説明
SCP-2381-JP-A-1 SCP-2381-JPの頭部に装備されていた、アンテナ、通信機具、バイザーを複合させたとみられる機器。SCP-2381-JPは「リベレーションバイザー」と呼称し、「正義執行に関する啓示を受けるユニット」と証言している。初期収容時に回収済み。財団観測下では不明な言語を時折発する以外に異常性は見られない。
SCP-2381-JP-A-2 SCP-2381-JPの右腕部に装着されたリング状の装置。SCP-2381-JPは「ライトオブライト」と呼称し、紫外線や赤外線を含む強烈な光を発することで生物を昏睡させる異常効果が確認されている。初期収容時の戦闘で効果が発揮されなかったことから、戦闘中に破損し現在は機能が失われていると考えられる。
SCP-2381-JP-A-3 SCP-2381-JPの着用している上下一体型のインナー。SCP-2381-JPは「アーリーオブメイデン」と呼称し、パワーアシストスーツであると証言している。収容以前の記録並びに初期収容時における戦闘で、SCP-2381-JPは平均的な成人女性の約1.5倍の身体能力を発揮したほか、SCP-2381-JP-A-3は高い防弾、防刃、防火性能を持っていることが確認された。
SCP-2381-JP-A-4 SCP-2381-JPの背部に背負われた機材。SCP-2381-JPは「リバティーフラッグ」と呼称する。機材上部よりホログラフィーによりGoI-8139("超電救助隊")のロゴがあしらわれた旗のグラフィックを展開し、周囲の人間の感情に働きかけるミーム災害を引き起こしていたと思われる。初期収容時に回収済みである。

その他、認識改変や未来予知等の未判明の異常性が、確認されていないSCP-2381-JP-A 群、もしくはSCP-2381-JP本人に備わっていると、後述のインタビューより推察されています。
 
SCP-2381-JPは20██年██月██日に東京都██区の株式会社████1の一斉検挙時に、その存在が明るみになりました。財団の事後調査の結果、当該実体は少なくとも半年以上前から株式会社████に潜入しており、公安調査庁に対し情報の匿名提供を行い、更に検挙日には自ら社内で混乱を起こして検挙を援護していたことが判明しました。
その後もSCP-2381-JPは複数回、違法行為の疑いのある会社や反社会組織2に潜入し、それらの検挙の発端となっていたことが確認されました。
事件関係者には記憶処理を行っています。

以下は、SCP-2381-JPの出現情報の一部抜粋です。

出現組織 説明
株式会社████ 財団がSCP-2381-JPを認知した事件である。当該実体は社長秘書として潜入していた。回収された監視カメラの映像では、公安部の一斉捜査の直前でSCP-2381-JP-A-2を用いて役員を昏睡させたのち、警備員を少なくとも3名、素手で無力化し脱出した様子が確認されている。
反社会組織██組 SCP-2381-JPは一般組員として潜入していた。██組が隔月に催していたと思われる全体会合の日時と場所を公安部にリークし、一斉検挙を誘発。更に、公安職員によって現場が包囲され硬直状態になった際にSCP-2381-JP-A-4を展開した。SCP-2381-JP-A-4の異常な心理作用によって██組は混乱と戦意低下に見舞われ、公安職員によって██組組員は全員捕縛された。
有限会社██・█████ SCP-2381-JPは事務職員として潜入していた。20██年██月██日に財団が存在を捕捉、機動部隊に-83"バンカーランナー"が派遣され軽度の交戦の後、確保に成功した。財団の事後調査で、有限会社██・█████は関税法を違反し、違法物品3の輸出入を行っていたことが判明した。

 
インタビュー記録2381-JP-1 - 20██年██月██日

対象: SCP-2381-JP

インタビュアー: 天倉研究員

付記: インタビューは初期収容直後に行われました。

<録音開始>

天倉研究員: こんにちは。

[SCP-2381-JPは天倉研究員を一瞥し、目を反らす]

天倉研究員: 差し支えなければ、あなたの名前と所属を教えてくれませんか。

SCP-2381-JP: [深く息を吐く]……“差し支えなければ”と来たか。ヒーローから仮面を奪っておいて、そんなことを良くも言えたもの。まあいい、私は天命潜入捜査官オルレアンズ・アイボリー、察しの通りの超電救助隊HEROの一人よ。解放しろと言っても、そうはしてくれないのだろ、財団さん。

天倉研究員: 申し訳ありませんが、それは不可能です。

SCP-2381-JP: はっ。こういうことは一応言っておくのが筋だろうと思ったから言ってみたけど、存外面白くないものね。

[数秒間の沈黙]

天倉研究員: 質問がいくつかあるのですが、答えて頂けないでしょうか。

SCP-2381-JP: 拒否権は無いのだろう?不都合なことを言われたら黙り込むだけだから、試しに言ってみるといい。

天倉研究員: 分かりました。それでは、今まであなたが行ってきた任務について教えてください。

SCP-2381-JP: 私の事を待ち伏せて部隊を展開出来たんだ、何やってたかなんて、大体は分かってんだろうに。潜入捜査だよ、潜入捜査。悪い連中の懐に入り込んで、悪事をすっぱ抜いて全員お縄にしてやるのよ。

天倉研究員: なるほど。潜入捜査、ですか。あなたの装備は他のヒーローの方々よりも軽装に見受けられますが、それは任務の為と考えてもよろしいでしょうか。

SCP-2381-JP: そうね。人ってのは誰しも良い心と悪い心を持っている。場合によっちゃ、どっちが勝つかは分からない。だから私は、私個人が強力な装備で力を振るうのではなく、大衆の力を借りて正義を成す。[天倉研究員を正面から見据え]最後は良い心が勝つって事を証明するためにね。

天倉研究員: そうですか。しかしながら、異常効果を用いて人を扇動することに、心のあり様が関わっているとは思えませんが。

[SCP-2381-JPの表情が一瞬真顔になったのち、俯き静かに笑いだす]

天倉研究員: 何かおかしいことを言いましたか?

SCP-2381-JP: いや、財団さん。あんたたち何も分かってないんだなって。まさか私の任務遂行が、あの装備だけで行われていたと思っているの?

天倉研究員: と言いますと、どういうことでしょうか。

SCP-2381-JP: 確かに私は先輩たちより軽装で、それは私の任務の性質によるものよ。けど、それは私、オルレアンズ・アイボリーの本質じゃない。[数秒の沈黙]私は、生まれつき特殊な力を授かっててね、予知染みた天啓を受けられるのさ。

天倉研究員: ……予知、天啓、なるほど。

SCP-2381-JP: 私はこの天啓に従って悪の組織に潜入し、天啓に従って行動を起こしてきた。人の心が善であるからこそ、正義を成す未来が私に伝えられて、それが実現されてきたって事。あんたたちに襲撃されることを予知できなかったのは残念だけど、それはそうとして、この状態も全く絶望的じゃない。[僅かに目を伏せ、再度顔を上げ]いつかは天啓が下る。

天倉研究員: 脱出の機会があると考えているという事でしょうか。

SCP-2381-JP: 脱出で済むと良いね。私の予知に、あんたの仕事場の崩壊って結末を伝えられないように、祈っといて損は無いと思うわ。いっそそんな未来が怖いなら、とっとと私の事を処刑するべきよ。

天倉研究員: そういった行為は我々の理念に反するので、行われません。

SCP-2381-JP: あら残念。私が受けた天啓の一つに、私が磔刑にかけられた時に人々の心に不変の正義が宿るって物があるの。財団さんの気が変わって、私を処刑して自分達が悪であると実証する日を、楽しみに待っているわ。

[以降、SCP-2381-JPが質問に返答しなくなる]

天倉研究員: ……インタビューを終了します。

<録音終了>

終了報告書: 今までのGoI-8139構成員の多くとは異なり、SCP-2381-JPはSCP-2381-JP-A群だけではなく、SCP-2381-JP本人にも異常性が備わっていることが推察されます。当該実体へのインタビュー並びに実験は、異常性が正確に特定されるまで複数名の立ち合いと別室からの監視を必須とする事を提言します。

 
補遺2381-JP-1: 機動部隊が取得したGoI-8139資料

以下は、20██年██月██日に機動部隊に-83"バンカーランナー"がGoI-8139関連施設と思われる建物を捜索した際に発見した資料のうち、SCP-2381-JPに関係すると思われる物の抜粋です。
当該施設は機動部隊の捜索前に放棄されており、資料類のほぼすべてが破棄されていましたが、一部の資料が不完全ながらも消去しきれず残っていたことから、比較的直近まで運用されていたと考えられています。
 
資料2381-JP-1: 施設に残されていた物理書類
 
以下は、施設跡地に残されていた書類内容の抜粋になります。
書類は日付毎に「Tasks」「Memos」の2項目に分かれた形の記録となっており、書かれている内容に一部公私混同に近い表現が見受けられるため、GoI-8139関係者の私的な記録であると推測されています。
 


 
〈本報告書には無関係の内容の為、前略〉
 

 20██年██月██日


Tasks
・██月度パワーアーム・オレンジ活動報告書製作
・20██年██月度予算会議資料製作
・レスキューチーム担当員との打ち合わせ(13:30~)
・第2次ビルダー計画(仮)提案書製作
・新規ヒーロー候補生の顔合わせ(14:00~)
・U-HEC[データ削除済]資料4の解析作業


Memos
オレンジ、財団と接触。マークされたか。
連中の機動部隊程度に後れは取らない装備、装着者にやや消極的な面もあるが実績を残すチャンスと見るべき。
大型重機系装備の実績と、潤沢な予算。ビルダー・ボルドーへのリベンジの為にも、オレンジは成功させねばならない。

 

 20██年██月██日


Tasks
・パワーアーム・オレンジ装着員との個人面談(16:45~)中止
・██月度パワーアーム・オレンジ活動報告書製作
・20██年██月度予算会議資料製作
・第2次ビルダー計画(仮)提案書製作
・U-HEC[データ削除済]資料の解析作業
・候補生の迎え入れ(15:00~)
・新規ヒーロー案の構想


Memos
オレンジが不明な第三勢力に捕縛されたとの報告。
事態が呑み込めない。一端全て考えを紙に書きだす事にする。
財団相手ならまだやりようがあったかもしれない。不明な第三勢力?なんだそれは。
装着者は助かるか。死んだものと考えて次の装着者を選定した方がよさそうか。元々あまり結果は芳しくなかった。この際変えた方が良い。
これ以上は思考がまとまらない、翌日に回す。

 

 20██年██月██日


Tasks
・██月度パワーアーム・オレンジ活動報告書製作
・20██年██月度予算会議資料製作 予算だけは守らねば
・第2次ビルダー計画(仮)提案書製作
・U-HEC[データ削除済]資料の解析作業
・新規ヒーロー案の構想
・オレンジの追跡捜索 最重要
・候補生面談(10:30~)
・オレンジの捜索部隊の追加要請についての会議(13:00~)
・スタッフ人数の見直し
・資金確保手段 どうする?


Memos
オレンジの足取りはつかめない、なけなしの資金で探索人員を増やしてもらう。
予算の都合、スタッフを数名開発プロジェクトから外すことにした。
新たに来た候補生の来歴を見たが、なんだこりゃ。とんだ厄介くじだ。
身体能力の高さは間違いないのだが、今はそれに似合うヒーロー案も浮かばない。
士気は高いようだから、そのまま自主トレーニングに励んでもらう。

 

 20██年██月██日


Tasks
・オレンジをどうするか
・20██年██月度予算会議資料製作
・パワーアーム・オレンジの新装着員の確保
・資金確保手段
・新人候補生のパーソナリティ調査


Memos
頭を整理しよう。そうしないと何もできそうにない。
回収したオレンジは暴走状態だった。
装着者だった男が妙な物質に覆われてしまっていて、それが原因で制御不能になっているらしい。
とりあえずは行動不能にして拘束した、今じゃ倉庫の片隅で無様にライトアップされている。
同行していた開発スタッフの絶望的な表情が忘れられない。
この分だとスーツを分離させるのにも危険が伴う、解析が終わるまで何もできない。
間違いなく装着者は死んでいるだろうし、オレンジの活動再開には時間がかかりそうだ。
 
正直、当面の予算をどう得るかの問題が大きい。
現状の資金は乏しく、活動できる管理下のヒーローもいない。
俺だったらそんな奴に追加予算は出さない。
新人候補生をヒーローに仕上げて、開発費と活動費を得るのが得策か。
それにしても金のかからないプランが必要だ、彼女の来歴から生かせるものがあるか探ってみる事とする。

 

 20██年██月██日


Tasks
・オレンジに付着した物体の解析 別の手段は無いか?
・行方不明の間のオレンジの足取り調査
・20██年██月度予算会議資料製作 保留
・資金確保手段
・新人候補生のパーソナリティ調査


Memos
状況は芳しくない。
資金の都合、解析作業を私自ら行わねばならないのが手間だ。
素材研究は私のメイン分野じゃない。
解析しようにもスタッフ人数も削減してしまってギリギリだ。
新人候補生からも暗に急かすような言葉を貰ってしまった、今はそれどころではないというのに。
 
何かヒントをくれ。
きっかけさえあればどうにかしてみせるのに。

 

 20██年██月██日


Tasks
・オレンジに付着した物体の解析
・行方不明の間のオレンジの足取り調査
・資金確保手段
・新人候補生のパーソナリティ調査
・チラシの主との接触


Memos
オレンジが行方不明の間の足取りを調査したところ、ふざけたチラシを発見した。

本当にふざけたチラシだが、これはチャンスかもしれない。
もう私に手段を選んでいる余裕はない。

 
〈以降、数ページの間、Tasks、Memosの両方が塗りつぶされ、判別不能な内容が続く〉
 

 20██年██月██日


Tasks
・サンプル解析
・提出用新ヒーロープラン資料製作


Memos
数着のサンプルが届いた、これから解析に入る。
おおよその形で草案は出来ているが、このサンプルの解析結果をベースに提出資料は考えなくてはいけない。
装着者になるであろう候補生や、残っている開発スタッフにもこの内容を上手くかいつまんで説明しなくては。
だがこれで綱渡りの第一関門を超えたと言った所か、ここからまた忙しくなるだろう。

 

 20██年██月██日


Tasks
・サンプル解析
・提出用新ヒーロープラン資料製作


Memos
候補生は納得させる事ができたが、開発スタッフから不安の声が上がった。
確かに今回のヒーロー案は精神操作系能力が主になると説明したし、私が集めたスタッフはどちらかと言えば物理系の技術者が中心だ。
私自身、精神系は最低限の知識は有れど、重火力パワー系システムの構築がメインである。
ただ、今回の件に関しては資料の内容はほぼ偽りと言ってもいい、最低限の体裁は整えているが、あの仕組みを実装する気は全くない。
だから、必要なのはサンプルの解析と制御、そしてそれを実現できる資金が得られれば良い。
そのための手段を、私は選ぶつもりはない。

 
〈以降、数ページが書類より破り取られて失われている〉
 

 20██年██月██日


Tasks
・オルレアンズ・ホワイトプランの説明(14:15~)
・オレンジの調整準備


Memos
俺はやった、全てがこれで上手くいく

 

 20██年██月██日


Tasks
・オルレアンズ・ホワイトプランの修正
・オレンジの調整準備


Memos
クソが、もう失敗したプランの色との被りなんかどうでもいいだろう
とっとと資金を出せ

 

 20██年██月██日


Tasks
・オルレアンズ・アイボリープランの提出
・オレンジの調整準備


Memos
これで滞りなく進めば入金も間に合う
勝った

 
〈最終ページ、これ以降の時系列の内容を記した書類は未発見〉
 


 
資料2381-JP-2: 資料2381-JP-1と共に発見された印刷物
 

ワオ!博士の大発明「THE 戦闘員」の特別カスタム「THE 悪の首領ドン」を発注してくれてありがとう!THE 悪の首領を着れば、どんな冴えない子でもカリスマ悪の首領に早変わり!光の当たらない暗闇でいろんな人を誑かして、でっかい組織を立ち上げちゃおう!博士の懸命な改良工夫すっごく 大変だったから博士をほめてね!)でお顔が見えるようにチューンしたから、パパもママも偉くなった君の顔を確認できて安心!しかも、お昼寝の時間にはみんな一瞬でぐっすり寝れるし、そのほか色んな隠し機能まで付いてるよ!楽しもうね!

超電救助隊HERO 御担当者様
この度は「THE 悪の首領」を発注してくださり、誠にありがとうございました。つきましては、████/██/██までに、「████銀行 ███支店 普通預金 ███████ ██ ██(████ ███)5」まで、お見積り時の金額をお振込みください。お手数をおかけしますが、振込手数料もご負担願いますよう、よろしくお願いします。

 
補遺2381-JP-2: 補遺2381-JP-1の内容を踏まえた調査結果

補遺2381-JP-1で得られた情報からSCP-2381-JP関連事件の逮捕者を再調査したところ、██件の事例全てにおいて、主犯格の人物が失踪していることが判明しました。
また、これらの失踪は不明な手段で隠蔽されており、関係者内で全く注目を集めていない事から、何らかの異常な手段が用いられたことを示唆しています。
現在、失踪者並びに隠蔽手段について調査が継続して行われています。
 

補遺2381-JP-3: 追加インタビュー記録2381-JP-6 - 20██年██月██日
 

対象: SCP-2381-JP

インタビュアー: 天倉研究員

付記: 天倉研究員の隣には警護としてエージェントが1名同席しており、別室よりカメラにて警備員が部屋を監視している。

<録音開始>

天倉研究員: こんにちは、SCP-2381-JP。

SCP-2381-JP: [ため息]……また来たのか、財団さん。いい加減私から情報を得ようだなんて、諦めたら?

天倉研究員: そうですね。ただ、本日はSCP-2381-JP、あなたについてお聞きしたくやってきました。

[数秒間の沈黙]

SCP-2381-JP: [驚いたような素振りを見せ]……私についてだって?

天倉研究員: はい、その通りです。

[数秒間の沈黙]

天倉研究員: 質問を受けて頂けるでしょうか。

SCP-2381-JP: 言ってみなさい。答えたかったら答える。

天倉研究員: それでは、超電救助隊HEROに所属する前、あなたはどこで生まれ育ったのかを教えてください。

SCP-2381-JP: ……まぁ、言ってもいいかしら。私は物心ついた時から教会育ちだったわ。場所は知らないけど、どっか日本で孤児院やってた教会を総当たりすれば、財団さんなら見つけられるんじゃない?6

天倉研究員: なるほど、教会ですか。そこでの暮らしの中でご自身の予知能力について知った、という事で、お間違え無いでしょうか。

SCP-2381-JP: “知った”というか、この能力に対してかなり熱心だったのは、私というより神父様だったけどね。

天倉研究員: ふむ、その神父様についてお教えください。

SCP-2381-JP: そう言われても、神父様は神父様だったとしか。昔、変な声が私にだけ聞こえるって事を神父様だけが信じてくれたから、私も自然と神父様に包み隠さず相談するようになった、ってだけで。

天倉研究員: なるほどなるほど。続けてください。

SCP-2381-JP: あの時はまだ、得体のしれない呪文にしか聞こえなかった声を、神父様は古い書籍を探してきて解読してくれたのよ。だから私も必死にその言葉を覚えたわ。そうしていくうちに、声は未来について話している事に気が付いたの。

[天倉研究員は無言でメモを取り続ける]

SCP-2381-JP: 食事の献立、明日の天気、来客予定みたいなくだらないものもあったけど、“誰かが階段で足を滑らせる”みたいな、そんな悲劇を予知する声もあった。前に話した磔刑の天啓を神父様に伝えたら、私は現在に生まれた聖女で、神に選ばれた子供なんだって大はしゃぎしていたわ。

天倉研究員: それで、あなたはご自身を特別な存在だと思うに至ったと。

SCP-2381-JP: いいえ、だってその時の私はただ天啓を聞いていただけ。それじゃただの受信装置じゃない。

天倉研究員: なるほど?

SCP-2381-JP: 本当に私が自身を特別だと知ったのは1█歳の誕生日の日。前の晩に神父様に「とっておきのサプライズを用意するから、神様には聞かないでね」なんて言われてたっけ。聞こえてきた予言は“明日、君の世界は変わるであろう”だったし、天啓を受けたのに何が待っているのか想像もつかなかった。だけどその日の朝、用意されてたプレゼントが何なのかを知る前に教会は炎に包まれた。神父様も、一緒に生活していた仲間たちも、炎に遮られて見失ったわ。

[天倉研究員は無言でSCP-2381-JPを見つめる]

SCP-2381-JP: 私はただへたり込んで逃げ出せもせず、ああ今日が磔刑の日なのかって、全てを諦めた。

天倉研究員: それは、……いえ、続けてください。

SCP-2381-JP: 死をただ待っていた私を救ったのは、一人の 赤いヒーローだったわ。「俺はヒーローだ!君を助けに来た!」そう言って彼は私を抱え上げた。彼が走るとまるでモーゼの奇跡のように炎が割れて道が出来て、私は命を救われた。

[天倉研究員はSCP-2381-JPに話を促しつつ、メモを隣のエージェントに渡す。メモの内容を確かめたエージェントは通信機器にて別部署に連絡を入れる]

SCP-2381-JP: 行先の無かった私を彼らは迎え入れてくれた。私がこの天啓の力を正義に活かしたいというと、喜んで訓練をさせてくれた。結局の所、未来のことを知れたとしても未来にどう進んでいくのかは人の心次第と言うことを、私は思い知った。だから、私もヒーローになったという訳さ。

天倉研究員: なるほど。……いえ、なるほど。とても興味深い話でした。

SCP-2381-JP: ねぇ財団さん。わざわざ丁寧に私の身の上を教えてやったんだ、こうして監禁してるのが無意味ってわかった?私が私である限り“天命潜入捜査官オルレアンズ・アイボリー”に変わりなく、あなた方財団の悪を、いつか裁く存在よ。

天倉研究員: ご協力ありがとうございました。インタビューを終了いたします。

<録音終了>

終了報告書: 専門部署に掛け合って公安部特事課と早急に連絡を取り、火事の件と合わせて、教会、またはそれに類する建物が用いられた案件が存在したかを確認する必要があります。
 

  

SCP-2381-JP報告書改定案: 前述の補遺、並びに調査結果を受けたSCP-2381-JP報告書の改定案が検討されています。
 


 


 
ここまで読んで下さりありがとうございます。


天倉研究員は、SCP-2031-JPよりお名前をお借りしています。
今回、他の方の記事前提の記事を初めて書かせて頂きました。
そういった点も含めて何か失礼が無いか、査読していただけると助かります。

 
エージェント・ヤマトモさんとエージェント・マオさんを初期案の中では登場させていたのですが、そこまで大きく話に絡められずちょっと扱いが良くないように感じたので、最終稿では外させて頂きました。

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