SCP-XXXX-JP
アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPはサイト-81██の低脅威度収容ロッカーに収容されます。財団のWebクローラがSCP-XXXX-JP-1またはそれに類似した現象の発生を確認した場合は、担当職員に報告して下さい。
報告を受けた担当職員は、該当するSCP-XXXX-JP-1を削除し、カバーストーリー「規約違反」「不適切な動画」などを適用してください。SCP-XXXX-JP-1は情報災害的性質を持つため、視聴の際にはミーム対抗エージェントを摂取してください。研究目的以外での視聴は許可されません。
SCP-XXXX-JP-1の視聴者はできるだけ特定し、メールもしくは簡易的コンピュータウイルスを使用してミーム殺害エージェントを送付し、記憶処理を行ってください。
説明: SCP-XXXX-JPは異常性を有した電子ピアノです。これまで品番やメーカー等の製造に関する情報の特定には成功していません。下記の異常性を除き他の異常性のない電子ピアノと差異はありません。
第一の異常性は、当該オブジェクトが発生する音声が有する精神効果です。当該オブジェクトから発生する音声は聴いた人間に対し軽い依存性を与えます。この効果は時間経過により減衰し、3日ほどで完全に消えるほか記憶処理で消去可能です。この効果は録音などによっても発生します。
第二の異常性は、当該オブジェクトから発生する音声を録音したものがインターネット上に投稿(以降この投稿をSCP-XXXX-JP-1とします)された場合に発揮されます。
SCP-XXXX-JP-1は上記の異常性に加え、何らかの方法で投稿されたサイト内での表示順序を上げる異常性を持ちます1。また、視聴者に対し、投稿者に対して何らかの形で金銭や物品などを提供しなければならないという精神影響を与えます。これは主にSCP-XXXX-JP-1が投稿されたサイト内での投げ銭機能の使用によって行われます。この異常性のため、SCP-XXXX-JP-1の収容違反が発生する可能性は非常に高くなっており、webクローラの性能向上が検討されています。
SCP-XXXX-JPは20██年██月██日に、YouTuberであった高木氏の自宅にて発見されました。財団のWebクローラがYouTubeにて同時視聴者数500,000人を超えるライブ配信を発見し、その内容が一見特筆すべきものがない電子ピアノの演奏であったこと、即時異常性解析ソフトウエアで異常性があると判定されたため何らかの異常性によりこれだけの同時視聴者数が存在している可能性が高まったため、該当ライブ配信を中止させ履歴を消去するとともに収容チームが高木氏の自宅へ派遣されました。
収容時、高木氏の自宅には彼のフォロワーと思われる民間人5人がおり、前述の異常性を受けていたため、インタビューののち記憶処理が適用されました。
インタビュー記録 XXXX-JP-1
インタビュワー: エージェント・平田
対象: 高木 ██氏
付記: インタビューの様子が撮影されるのを防ぐためにサイト-81██内で行われた。
<録音開始>
高木氏: 突然こんな店に呼び出して撮影もしちゃいけないって言うのはYouTuberとしてちょっときつくないですかね……?何かの企画でもやるんですか?やるんだったら先に言ってほしかったですが……。
エージェント・平田: こんにちは、高木さん。本日はあなたが購入した電子ピアノについて、不良品であるため回収に伺いました。
高木氏: それと撮影禁止に何の関係があるのかわからないですけど、たとえあのピアノは不良品だとしても渡したくありません。
エージェント・平田: えー、それでは単刀直入に聞きます。あなたはあの電子ピアノに何らかの異常性…つまりは特別な力があると気づいていましたか?
高木氏: あー……。気づいていなかった、といえば嘘になりますね。
エージェント・平田: それでは、あなたの持っていた電子ピアノが異常性を持つと認識していたと。
高木氏: はい。始まりは2日前の夜、暇だったんで買ったばかりの電子ピアノで弾き語りの配信を始めたときでした。それまでとは比べ物にならないぐらい配信に人が来て、なんだと思っていたらスパチャがわんさか来るんですよ。これはおかしいなと思ったんですが、その日は運が良かったと思って寝たんです。しかし、起きてみたらまだ通知が鳴りやまなくて、僕も少し調子に乗ってしまって3時間弾き語り配信とかしちゃったんですよ、そしたらあなたたちが来て、あとは知っての通りです。
エージェント・平田: それで一つお聞きしたいのですが、あなたはどこでその電子ピアノを手に入れましたか?
高木氏: ネットオークションです。具体的に言うと██████████です。
エージェント・平田: ありがとうございます。あなたがこの異常性を知ってこの電子ピアノを買ったというわけではないですよね?
高木氏: そうです。どうせテレワークで暇な時間が増えたし暇つぶしに音楽でもやってみるかぁと思って、一番安かったこれを落札したんです。
エージェント・平田: なるほど。それでは我々のほうでその電子ピアノは引き取らせていただきます。
高木氏: ちょっと待ってください、それは僕の唯一の収入源だったんです……。たぶんコロナで勤め先が赤字何でしょうけど、昨日勤め先からお暇を出されて、ちょうどスパチャがわんさか来て、収益化も通るようになったのでこれで生きていけるかなって思ってしまって。
エージェント・平田: それは…大変でしたね。残念ながら、我々もこれが役目ですので希望には添えません。ですが、我々のフロント企業で就職できるよう斡旋することはできます。
高木氏: 本当ですか?まさに助けに船って感じですね。ありがとうございます。
エージェント・平田: それで、どういった業種で働きたいとかはあります?
高木氏: そうですね、やはり音楽かITに関わるところに就職したいですね。
エージェント・平田: ありがとうございます。検討させていただきます。
終了報告書: 対象の証言からは、SCP-XXXX-JPの起源について得ることはできなかった。高木氏は記憶処理ののち、フロント企業への就職のあっせんを行い、問題なく就職した。
映像記録-XXXX-JP-1-1
0:04: 高木氏が挨拶を行う。この時点ではライブ配信の視聴者数は5人程度である。
0:12: Scp-XXXX-JPが映し出される。視聴者は8人。
0:30: YOASOBI『夜に駆ける』と思われる曲の演奏が始まる。ライブ配信の視聴者は162人となる。高木氏は恐らくは急激なライブ配信視聴者の層化により困惑した表情を見せる。
4:25: 『夜に駆ける』の演奏が終了する。高木氏は視聴者に向けて視聴したことへの感謝の意と困惑を述べる。参加者はこの時点で1058人となり、スーパーチャット機能を使用した投げ銭の総額は1350円となった。
4:34: 米津玄師『感電』の演奏が開始される。視聴者はさらに増え、5820人となる。高木氏は満足げな表情を浮かべているように見える。
4:38: チャット欄に「なんかおかしくね?何でピアノの弾き語りでこんなに視聴者いるんだよ」とコメントが投稿される。演奏の手が一瞬止まり、高木氏は苦悩したような表情を見せる。
7:20: 『感電』の演奏が終了する。視聴者はこの時点で29,654人、スーパーチャットでの投げ銭の総額は48,391円となる。高木氏は「詳しいことは言えないけどこのピアノが俺を有名人にしてくれる」といった趣旨の発言を行う。
[中略]
194:02: 高木氏がライブ配信を終了する旨の発言を行う。視聴者はこの時点で60万人を超え、集められた金額の合計は250万円を超える。コメント欄では継続を求めるコメントが繰り返し投稿される。この頃には大手ニュースサイト等のメディアが取材の手立てを取っており、財団のWebクローラに捕捉され、収容活動が開始される。
196:32: 高木氏が「皆さん、こんなしがない男の配信を見てくれてありがとうございます。本来は俺の力じゃないんですがね。それではまた来週会いましょう」と発言する。
*196:53: コメント欄では一時この発言に対する考察が行われたが、程なくして配信が終了された。
補遺: この後、高木氏の運用するTwitterアカウントのフォロワーは4,000人以上増加した(現在は削除済み)。また大手ニュースサイトにも「謎の男のピアノ配信が伸びた」との趣旨でこの配信の模様を取り上げる動きがあったため機動部隊が派遣され、関係者には記憶処理が行われ、既に配信されていた記事は削除したうえで、カバーストーリー「誤報」を適用した。配信の視聴者はアカウントが消去されていた8人を除き特定し、YouTube経由でのミーム殺害エージェントによりクラスA相当の記憶処理を行った。記憶処理が行えなかった8人はYouTUbe社に情報を照合したうえで個別にクラスA記憶処理を行った。
この映像記録を調査した結果、SCP-XXXX-JPはネットオークションで偶然購入したものではなく、高木氏が異常性を知ったうえで入手した可能性が浮上したため、再インタビューが行われました。
インタビュー記録 XXXX-JP-2
インタビュワー: エージェント・平田
対象: 高木 ██氏
<録音開始>
[中略]
エージェント・平田: 正直に話してください。あのピアノはオークションで落札したのではなく、異常性があることを知ったうえで購入した、いえ入手したのですか?
高木氏: バレちゃいました?履歴もう残ってないと思ったんだがなぁ……。
エージェント・平田: 我々はそういった情報にも容易にアクセスできます。あなたの言葉を信用してしまった私の落ち度でもありますが、あなたが嘘をついていたのであれば我々ももっと強い手段を使わなければいけません。
高木氏: わかったよ話す。あれは俺がガキの頃に作ったんだ。楽器屋で面白いぐらいに安売りしてる電子ピアノがあって、これで音楽やれば有名になれるかなと思って一度配信してみたんだが、全く見られないで諦めちゃったんだよね。そのあと放置してたんだが、YouTubeでふと「YouTubeで活動してるけど伸びないあなたに足りないもの!」みたいな動画を見つけて、その内容通りにピアノをいじって試しに配信してみたらああなったってわけ。これまで嘘ついてたのも「これを言ったら効果なくなるよ」みたいな感じで言ってたからだ。今頃もうあの力消えてるんじゃないかな。
エージェント・平田: つまり、異常性は後天的に高木氏は付与したもので、異常性を付与する方法がYouTubeに上がっていると。そして異常性は現在恐らく消失してる、ということでいいですか?
高木氏: 大体その認識であってる。ただ俺が驚くような効果を作ってるやつだ、たぶんその動画も見つからんように隠されてるし、実力もないのに有名になりたいって望んだ奴にしか見えないんだ。俺みたいに何やってもダメな奴に上辺だけの有名人面をさせてくれるような動画だ、今となっては碌なもんじゃねぇ。
エージェント・平田: は、はぁ。
高木氏: あれはたぶん承認欲が満たされないような人が見るんだ、俺は哀れにも引っかかっちまったってわけだ。これまで嘘ばっかついてたのはすまないと思ってるが、考えてみれば自分にも嘘ついてたんだなって。いやクサいな、言わないほうが良かったかも知れないな。
エージェント・平田: まぁ、その気持ちも分かります。私もこの中では若いほうですし、承認欲ないといえば嘘になりますからね……。私もまだ幼いのかも。ただ、そのために異常物品を使うのはもってのほかだと思います。ちゃんと誰かに相談するとかあったと思いますが。
高木氏: 俺に友達がいると思うか?まぁお前は同類みたいだし友人と言っても良さそうだけど。
エージェント・平田: 高木さん……何言ってるんですか、話の論点をすり替えないでください。
高木氏: それ言ったらお前さんも同罪だと思うけどな。
[中略]
終了報告書: 対象はインタビュー時に虚偽の供述を行っており、またこれ以上の情報を知っている可能性があるため自白剤と記憶補強薬の使用許可を要請する。 -エージェント・平田
許可するが、インタビュー講座をもう一度受講すること。話を順序だてて構成してください。今後は機密保持の観点からも、インタビューの回数を増やさずに、なるべく1度で終わらせてください。 -谷崎博士
更なる調査の結果、該当する動画ファイル「あなたが一瞬で有名になれる方法10選【有名になりたい人以外は見ないでください】」をYouTube社のサーバーから発見しましたが、視聴と同時にエージェント・平田を除き激しい頭痛に襲われたため調査は進んでいません。エージェント・平田にはカウンセリングが行われました。
ページコンソール
批評ステータス
カテゴリ
SCP-JP本投稿の際にscpタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
本投稿の際にgoi-formatタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
本投稿の際にtaleタグを付与するJPでのオリジナル作品の下書きが該当します。
翻訳作品の下書きが該当します。
他のカテゴリタグのいずれにも当て嵌まらない下書きが該当します。
言語
EnglishРусский한국어中文FrançaisPolskiEspañolภาษาไทยDeutschItalianoУкраїнськаPortuguêsČesky繁體中文Việtその他日→外国語翻訳日本支部の記事を他言語版サイトに翻訳投稿する場合の下書きが該当します。
コンテンツマーカー
ジョーク本投稿の際にジョークタグを付与する下書きが該当します。
本投稿の際にアダルトタグを付与する下書きが該当します。
本投稿済みの下書きが該当します。
イベント参加予定の下書きが該当します。
フィーチャー
短編構文を除き数千字以下の短編・掌編の下書きが該当します。
短編にも長編にも満たない中編の下書きが該当します。
構文を除き数万字以上の長編の下書きが該当します。
特定の事前知識を求めない下書きが該当します。
SCPやGoIFなどのフォーマットが一定の記事種でフォーマットを崩している下書きが該当します。
シリーズ-JP所属
JPのカノンや連作に所属しているか、JPの特定記事の続編の下書きが該当します。
JPではないカノンや連作に所属しているか、JPではない特定記事の続編の下書きが該当します。
JPのGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
JPではないGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:7101740 (28 Jan 2021 10:29)
コメント投稿フォームへ
批評コメントTopへ