Foundation War — 財団戦争
かつて、世界は少しの間だけだが一つになっていた。複数の組織は大きな一つの組織となり、世界を守るために立ち上がっていた。戦争が起こるまでは。
今では前のように組織は分かれ、それぞれが対立していた。対立した組織は争いを始め、今では世界中が戦争に巻き込まれていた。
巻き込まれた人それぞれが自分の理想、欲望、希望を持ち仲間を集め目的のために武器を取った。
ある者は新しいものを排除しようとし、
ある者は過去にとらわれ、栄光を戻そうとした。
ある者はすべてを元に戻そうとし、
ある者は今が変わり目だと思い新しい神を信仰した。
そして、終わることを知らないこの戦争は、新しい地獄を作り出し、人の心に潜んでいた悪魔を呼び出した。
ここは自分の中でも特にお気に入りの場所だ。誰も来ないこの場所で一人、静かに本を読んだり仕事を片付けたりしている。ここは元々新人職員用の受付だった。まあ今は新人職員どころか鼠一匹も寄り付かない場所だけど。
さて、今日は仕事が溜まってるんだ。主要都市の奪還計画の計画書作成、新型兵器の制作環境の改善策、実験施設に送る軍資金、etc…まあとにかく大量に仕事がある。急がなければ夜までかかってしまいそうだ。
???: すいません…ここが新人職員用受付でしょうか…?
龍銭: …は?
珍しい、こんな場所にも人が来るなんて。
龍銭: そうだが…..ここに何か用か?
???: あの…ここに来れば財団に入社できると聞きまして…
龍銭: はぁ?
彼女の口から入社という言葉を聞いたとき、誰だって自分が夢を見てるんじゃないかと思うだろう。
財団は今も戦争を続けているし、入社どころじゃない。当然そんなことは誰もが知っていることだ。
財団のことを少しでも知っているなら戦争の話題が出てくるはずだし、まず第一財団に入社しようとするような人は金に困った人か無理やり財団に入社させられた人だけだ。
???: あの…入社…できますか?
龍銭: あ…入社?ちょっと待って…
とりあえず受話器を取って仲間に今の状況を知らせなければ。彼女がどんな経緯でここに来たのかは分からないが、調べるまでは敷地内に入れるわけにはいかない。
龍銭: あー…もうすぐ移動用の車が来るからそれまで座って待っててくれ。
???: それは…入社できたという事ですか?
龍銭: いや、これから色々と調べさせてもらう。
???: なっ…何をですか!?体をですか?
という言葉と共に彼女は自分の体を隠し、数歩後ろに下がった。
龍銭: いやそうじゃなくて…単純に身体検査と荷物チェックするだけだから…
???: 体じゃないですか!?嫌ですよ私、人に自分の体見せたくないです!
…というと彼女はさらに数歩下がった。まるで俺が変態かと言っているかのように。
??: 龍銭さーん。車持ってきましたよー
遠くから叫ぶ声が聞こえる。同盟軍の中の一人が車を持ってやってきたらしい。
??: いやー聞きましたよ。新しい職員がやってきたんですね!人手不足なので嬉しいです!
確かに今は(二日前の戦いで)人手不足だけどうまく隠せてるな。
龍銭: ああ。状況は電話で教えてあるから早く行くぞ。
???: 本当に行ったら身体検査するんですか?本当の本当に体見られたくないんですよ。
そこまで体を見られたくないのか。何か障害でもあったりするのだろうか。
龍銭: 大丈夫だ。例え体に何か秘密があっても秘密は絶対に守られる。
???: そうですか?でも見た人が他の人に言ってしまったらどうするんです?責任取れます?
龍銭: 責任なら取るぞ。機密事項の漏洩は処罰が下るからな。
???: そうですか。じゃあ行きます。
良かった。これで行ってくれる。まあどうしてもというなら記憶処理でも殺処分でもなんでもできるんだが…流石に人手不足の今殺処分は困るし記憶処理も安定して特定の部分を処理できないからあまり使いたくないんだよな…
??: どうしました?早く行きますよ。
龍銭: ん?ああ、分かった。運転は俺がしようか?
??: やめてくださいよ!ただでさえ龍銭さんの運転は恐ろしいと評判なんですから…!
龍銭: そうか?俺が運転すると普通より3倍ぐらい早く行けるぞ?
??: いいですから早く乗ってください!運転は私がしますから!
そうして俺は車に物のような扱いで乗せられ、そのまま敷地内に向かっていった。
…..着いたか。
車に乗り続けて約10時間、やっと同盟軍の敷地内に入ることができた。
それにしても遠かったですね。いつも龍銭さんはここに来てるんですか?でも車が無かったような…?
あー…それについては聞かないでくれ。それよりこいつをどうするかだ。
そういえば詳しいことは聞いていませんでしたね。この人いったい誰なんです?
そうだな…こいつも寝てるし教えるか。
俺は彼女が誰なのか、どうして来たのかなどを憶測も含めて説明した。
…..という事だ。
そうですか…この時期に入社したいなんて言ってくるということはやっぱりお金に困っているとか?
いや、それは無いな。服装もしっかりしていたし体もやせ細っていなかった。多分だが普通に暮らせる程度には金は持っているだろう。
働く場所が無くなってしまった…とかは?
確かにその可能性も考えられるが…無さそうだな。
どうしてですか?
ただの勘だ。
そうですか…
そんなことを話しつつ、俺たちは病院の検査室へと入っていった。
よし、じゃあ検査を始めてくれ。
分かりました。あ、一応女性なので龍銭さんは出ていってください。
はいはい。じゃあ外で待ってるから終わったら教えてくれ。
分かりました。
検査が終わるまでは約1時間程度ある。それまで待っているのは退屈だし、暇つぶしにどこかへ__
<緊急速報 南扉周辺に敵対組織を確認。直ちに撃退に向かってください。>
こんな時に面倒なことになってしまった。別に行ってもいいのだが、大人数と戦うのが得意な戦術を取る自分にとって少人数相手だと戦いずらい。
…確認してみるか。
戦うことのできる人員…つまり兵士たちは専用の小型チップを体に埋め込んである。このチップのおかげで情報がすぐに見れたりするので兵士たちはその時の状況に合わせて戦うことができる。
<南扉出現敵対組織情報>
<人間:12>
<人型生命体:35>
<機械生命体:105>
<戦闘兵器:20>
<異常存在:1>
今回はかなり多い。どうやら脱獄者たちは本気で同盟軍を潰そうと考えているらしい。
かなりの大人数か…仕方ない、行くか。
検査が終わる前までに帰ってこれるか心配だが、まあそれまでには帰ってこれるだろう。
随分手間がかかったな…大体3時間ぐらいか。
無限生成タイプの機械生命体が複数いたせいで倒すのに時間がかかったが、できる限り早く戦いを終わらせた。
早くいかなくちゃな。あいつ遅れると五月蠅いし。
検査の結果はどうなった?
それがですね…思案さんの周りのヒューム値が少し低いんですよ。
思案?彼女の名前か?
はい。ポケットの中にあった個人証明に書いてありました。
ふーん。
こいつは容赦なく人の物を見てくるな…まあそのおかげで検査が早く終わるんだが。
それよりヒューム値が低いとなると…現実改変者の類か?
その可能性が高いですね。そういう装置を持っているわけでもないですし…
脱獄者の諜報員の可能性も考えておかないとな。
そうですね。それと、思案さんが起きるまであと5時間近くあります。残してある仕事、やっておいた方が…
いや。俺は戦って疲れてるんだ。さっさと飯食って風呂入って寝る。
思案さんは?
明日会うから起きたらそう知らせて部屋に案内しておいてくれ。
分かりました。おやすみなさい。
よし。あいつは騙すことができた。
…確認しに行くか。
どこに確認しに行くんですか?
いきなり目の前に山本が現れた。こいつは何かと勘が鋭いからこういう時によく足止めされる。
…..本当に、こういうのだけは得意だよな。お前は。
そうですね。それより、どこへ確認しに行くんですか?
いや…ちょっとさっきの所の忘れ物の確認をな…
そうですか。じゃあ私が忘れ物の確認をした時に見逃していたんですね。
こいつ…確認する暇なんて無かった気がするがちゃんと確認してたのか…
気をつけよう。こいつに嘘をつくのは難しい。悟られないようにしなければ。
そ…そうかもな。お前の確認が甘かったのかもしれない。
そうですか。忘れ物の話をする時は大抵どこかへ抜け出す時に使う話なのでてっきりまたどこかへ抜け出すのかと。
そこまで分かってるのかこいつは…恐ろしい。
分かった。けど今は本当に忘れたんだよ。
はあ…言っておきますが、私を騙せると思わないでください。まず第一に明らかに動揺しています。これは嘘をつく人のほとんどが無意識のうちに行う行為です。
そして第二に私が既に忘れ物を確認してあります。私も人間ですので多少の見落としはあると思いますが…私の性格などを考えれば…分かるでしょう?
確かにこいつの性格を考えると見落としをするとは思えない…まあ忘れ物自体無いんだが。
最後に第三ですが…戦闘用の短剣を持っていくのが忘れ物を確認しに行く行為とは合わないと思いますが?
戦争中に武器を持たないで陣地を離れる兵士がいるか?
じゃあ逆に聞きますがあそこは人ひとり寄り付かない場所ですが、そこで人に…しかも敵に会うと思いますか?
念のためだよ念のため
そうですか。じゃあ念の為ついて行きますね。
あいよ。
これから行く場所はこいつにも見せたいしな。ここはおとなしく言うことを聞くか。
ついてくるのは別にいいが…ちょっと走るぞ?
はあ…はあ…走るなんて聞いてませんよ!
別についてこれてるからいいだろ。
足の速さを考えてくださいよ!私の二倍ぐらいのスピードで走ってたじゃないですか!
お前にはシンクロがあるじゃないか。使っておけば楽だったのに…
シンクロは戦闘用にとっておきたいんですよ…
敵がいないって言ってのは誰だったかなー
あなたが武器を持ってくるってことは敵がいるって言ってるのと同じじゃないですか…
俺が武器を持っていくとそう思われるのか。少し悲しいな。
それより、なんでこんなところに来たんですか?見た感じただの使われていない下水道に見えますけど…
じゃあ説明してやるか。
ついさっき脱獄者が攻めてきただろ?だけど脱獄者もここを本気で潰す気ならもっと大量の兵器を引き連れてくるはずだと思うんだよな。だから予想より少人数で攻めてきたって事は何か他の狙いがあると俺は考えた。そこで何かここへ来る理由があるとすればここにSCP-682がいるっていう噂ぐらいだと思ってな。だから来た。
SCP-682って確か古流が保有していたはずでは?
知らないのか?数ヶ月前から行方不明だぞ。
マジすか…
まあ今回の目的はSCP-682の収容じゃなくてSCP-682の捕獲を目的としている古流の発見と撃退だな。
わかりましたけど…これって私が来る意味ないんじゃ…
いや…今回はお前にも見せたいものがあってな。それで来てもらった。
なんですか見せたいものって…
それを見せるためにもまずは古流の発見からだ。
はい…
そこから俺たちは下水道を端から端までくまなく探し始めた。
古流…いませんね…
まだ下水道の中でも上の方だからな。まだ下までかなりあるぞ。
そろそろ下水道を歩くのも飽きてきたんですけど…
じゃあどこを通って古流のところまで行けって言うんだよ。
別に出てくるところを狙って襲えばいいんじゃないんですかね…
この下水道出入り口が全部で20個はある。それ全部を監視しつつ現れた場所に即座に移動するのはさすがに不可能だぞ。
じゃああとどれくらい歩けば着くんですか…
今がB5くらいだからあと30階ぐらい下に降りれば着くぞ。
30階…シンクロ使って高速で走ったらもう少し早く着くんじゃないんですかね…
早く走れば音が鳴って見つかりやすくなるからな。
でも歩いてたら逃げられちゃうんじゃないんですかね…
そこは大丈夫だ。SCP-682は古流機に対する耐性を持ってるからな。捕まえるのには手こずってるはずだ。
でもこんなところには長くいたくありませんよ…ただでさえ臭いってのに…
それは俺も同じだ。
そうして俺は山本の文句を聞き流しながらひたすら降り続けた。
…そろそろ近づいてきたな。
本当ですか…はあ…でもなんで…わかったんですか?
お前相当疲れてるな。このぐらいの距離で疲れてるとこの先大変だぞ?
だって一つ1km位ある下水道を30階分降りるのは誰だって疲れると思うんですけど…
同盟軍所属の職員だったらそれぐらい朝飯前だと思うんだけどな…
それは兵士達のだけですよ…デスクワーク担当はそんなに体力ないですって。
はいは…ちょっと待て。静かにしろ。
!
察してるようだが近くで声が聞こえた。近くに古流がいる。
わかってます。聞こえてるので。
一回会話内容を聞いてから行動するぞ。
やめろ!来るな!
*血しぶきと咀嚼音*
これって…確実にやられてますよね?
ああ…SCP-682に襲われているな。これは。
どうします?行きますか?
いや。ここはSCP-682に任せたほうが早いな。ここで静かに待っていれば気づかれることも無いし。
*盛大な咀嚼音と潰される音*
…この音聞いてるの嫌なんですが…もうさっさと倒しましょうよ。
お前少しは我慢する癖をつけろよ…てかお前普段から解体作業してるくせに何でこれが駄目なんだよ。
いや…解体作業と咀嚼音はジャンルが違いますよ…
てかもうそんな話やめましょうって。ほら、もう最後の人が殺されますよ!
*咀嚼音*
よし、これで捕獲に来た第一部隊は全員死んだな。
まさか第二部隊も来たりしませんよね?別にこの深さだったらSCP-682も簡単には出られないだろうし早く帰り…
活動生命体の存在を確認。データ確認結果殺害対象DM-0113とDM-0114と判断。直ちに殺害を開始してください。
あの…これって…
ああ。古流が使ってる小型チップの音声だな。
つまり…第二部隊に気づかれてるってことじゃ…
まあDM(同盟軍関連のデータにつけられる番号)って言われてるからな…気づかれてると思うぞ。まあ場所はまだわかってないだろうしこっちから行けば倒せると思うが…
じゃあ早く倒しちゃいましょう。
OK。じゃあ合図をしたらシンクロ使ってくれ。
わかりました。
前方に刀持ち1人と銃持ち2人、後ろには鞭持ちが2人、左右にはハンマー2人、盾持ちが1人、銃持ちが4人…..
対処しやすい前後は俺がやるとして左右の敵をどう山本に倒してもらうかで勝てるかどうかが決まってくるな。
俺としては動きの遅いハンマー持ちを後にして先に銃持ちを倒してほしいんだが…
まあそこは山本の経験と知識で決めてもらうか。
行け
わかりました。
*シンクロ音*
周囲に轟音が鳴り響く。いつ聞いてもこの音は鼓膜が破れそうで怖いな。
さて、山本が銃持ちを倒してくれると信じて俺は前にいるやつらを倒すか。自分の持ってる二刀短剣だったら刀の方が相性がいいしな。
*銃声*
正直自分の移動速度では銃弾は当たらないのだが自分に飛んでくると思うと少し怖い。危険に対しての恐怖と言うのはいつになっても消えないもので、機動部隊をやっている友人ですら戦闘中は逃げ出したいほど怖いらしい。
自分も死にそうになったことが沢山あるので痛いぐらいに分かるのだが、戦闘中の異様にドロッとした生暖かい空気や、相手からこれでもかと伝わってくる殺意、死にたくないという本能、これらに加えてさらに色々なことが重なるとそれらはすべて恐怖となって自分に襲ってくる。まあ慣れてしまえはそれほどでもないのだが。
くっ…いつの間に懐に…!
恐怖について思っているうちに相手の懐に入り込んでいた。刀は長いので懐などの体と近い場所に入られると反撃がしにくいという弱点がある。それをつけば刀持ちの相手は楽に殺せる。
ぐはっ…..
昔は敵は問答無用で排除してきたが今はなるべく殺さないように最善を尽くしている。
銃などの遠距離武器を持っている敵は指を切らないと攻撃されるが刀などの近距離武器なら足の健を切るだけでいいから楽だし当てやすいから倒しやすい。
よし…一人片付いたか。山本、そっちはどうだ?
銃持ちはすでに倒してある。これがお前の要望だろ?
…わかってるじゃねえか
山本はシンクロを使っていると性格とかその他色々が尖ってくる。これもかっこいいといえばそうなのだが話しにくいというか異様な雰囲気になるのでこの状態の山本と一緒にいるのは正直言って嫌いだ。
残りは鞭、ハンマー、盾…ハンマーと盾は俺がやるから鞭は山本が殺ってくれ
わかっていますよ。あなたの戦い方ぐらい知っています
やっぱ嫌いだな、この状態の山本は。
全員倒したな。GPSは柱にくくりつけてあるししばらくはバレないだろ
それで…古流を倒したのはいいんですが…SCP-682はどこへ?
そういえばSCP-682がいたはずだが俺たちが戦っている間にどこかへ行ってしまったらしい。
どこかへ移動したんじゃないのか?
いや…682の性格などを考えると私達が戦っている間にどこかへ行きますかね?
確かに。682だったら戦いの途中に移動することは考えにくい。
移動じゃないなら…他の古流の部隊と戦っているとか…か?
その可能性が高そうですね…辺りを探してみますか
はあ…せっかく倒したのに他の部隊と殺り合ってたらさっきの苦労も水の泡じゃないか。
じゃあ俺は下を…
その必要はないぜ。同盟軍さんよお
この声は昔に聞いたことがある。独特なアクセントが特徴的で訛りの中に機械的な印象を受ける。
あの…この人、誰ですか?
こいつは…
おっと、お前に紹介されるぐらいだったら俺が自ら名乗り出てやろう
俺はなあ、第一教会を束ねる男だ!!
いや…名前とか言ってもらわないとわからないんですが…
大丈夫だ山本。こいつは名乗る気すら無い
どうせ俺のことはそいつからわかるだろ?なあ、龍銭
こいつ…龍銭さんのことを…
もういい。帰るぞ
帰ってよかったんですか?あの人のことも気になりますし…682のことも気がかりですし…
ああ、帰ってよかった。というか帰らなければならなかった
なんでです?
お前は知らないかもしれないが、あいつは俺が昔戦った敵の一人だ
昔って機動部隊にいた頃ですか?
ああ、そしてあいつは壊れた神の教会の中でもトップクラスに強いやつだ。実力的にも、権力的にも
あの人は第一教会とか言ってましたが…第一教会って今勢力を上げてる組織ですよね?
第一教会は壊れた神の教会が分裂した組織だからな
じゃあなんでそんなすごい人がいきなり私達の前に現れたんでしょうかね…
多分だが、あいつは俺に会うためにわざわざ下水道まで来たんだろう。それで俺たちが来る間に暇つぶしとして682を殺した
682を…殺した?それってどういう…
今はこんな話をしている場合じゃない
なぜです?
とりあえずついてこい。話はそれからする
はあ…
ここって…今では誰も寄り付かなくなったボロ家じゃないですか。どうやらマッドサイエンティストがいるとか化け物がいるとか…そういう噂が絶えない場所です
知ってるさ。そういう噂なら耳にたこができるぐらい聞いた
じゃあなんでここに?
お前、外戸博士がどこに行ったか知ってるか?
いえ…私が逃げ遅れている間に別の場所へ逃げたんじゃないですかね?仮にもあの人はクリアランスレベル4ですから
お前には言ってなかったがな。外戸博士は俺達が基地を作った後に来てたんだよ。ここに
本当ですか?なんで教えてくれなかったんです?
まあ色々と都合があったんだよ
で、この家と外戸博士に何の関係があるんですか?
何の関係って、そりゃあここに外戸博士が住んでるからに決まってるだろ
こんなボロい家にですか?
ああ、そうだ
*ドアの開閉音*
外戸博士、いますか?
うるさいなあ…実験の最中なんだから静かにしてもらえない?ってうわお。まさか山本がいるとは思わなんだ
連れて来ました
久しぶりですね、外戸博士
久しぶりだねぇ山本。元気してた?
まあ、元気にはしてましたよ
なら良かった。じゃあ早速話をしようかな
話?何のですか?
まあ大人しく聞いてれば分かるよ。ね?龍銭
は?…ああ、そうですね
あのさぁ…話ぐらい聞いててよ…
じゃ、話すからね
まず…この戦争をどのぐらい知ってる?
一応始まった理由などは知っていますが…
おかしいと思わない?
?
戦争を始めたのは脱獄者たちだけど…なんで一つの組織と戦うだけで戦争が起きるのか?って
?
いやそんなに?されても困るんだけど…まあどうして脱獄者との戦いの時に財団内でどんどん組織が分裂して内部から崩壊してしまったのか?って話
え…それは財団内にも財団をよく思わない人たちがいて…
財団のことをよく思わない人がいたらすぐに脱獄者に入るんじゃない?それにわざわざ別の組織を作らなくてもいいんじゃないかな?
まあそれはそうですけど…実際今こうなってるんだからそうなんじゃないんですか?
まあ普通に考えたらそうなるだろうな
まあ…外戸博士や一部の日本支部の博士…そしてお前の言う"ヤバい"博士たちはこの事態を誰かが仕組んだことだと思ってた
そ。龍銭の言う通り、自分や他の博士はこの戦争が誰かの手によって故意に始まったんだと思ってるんだ
根拠とか無いんですか?それを聞かない限りにはちょっと怪しいので…
下水道の時に第一教会のやつが現れただろ?
そういえばそんな人いましたね
あいつは第一教会でも相当偉いやつだが…色々と矛盾している
なぜ上の人間がわざわざ来たのか。どうしてあいつは俺たちを倒さなかったのか。それ以外にもたくさんの矛盾がある
うーん…でも自分にはどう考えても誰かが仕組んだことだとは思えないんですが…
まあいきなりこう言われても信じられないのは最初から考えてたよ
ま、最初はこうなるよな
まあざっくり説明すれば一週間後に第一協会がここを襲うってだけだ
はい?確かに支部の中では大きいですが…特に重要な物もないのに…どうしてここを?
ここには龍銭がいるでしょ?彼らにとっては、龍銭が一番怖いんだよ。ほら、そこの饅頭みたいに
は…ぁ…?
龍銭、今は実験してるから、しっかり話すのはまた後にしよう
分かったよ
ええと…もう少し詳しく話を…
さてと、思案にでも会いに行ってみるか
あ…思案さんの事すっかり忘れてましたね…
まあ他の人がなんとかしてくれてるだろ
そうですね…
そうして俺と山本は検査室へ向かった。検査ができる人はこの基地に5人ぐらいいる。山本もその一人だ。
あー…ちょっと前に検査した女の人ってどこに行ったか知ってるか?
女の人と言われましても…たくさんいるので…
思案という人なのだが
思案さんですか?えーと…ああ、その人なら昨日起きた後ここを出ていきましたが…
どこに行くかとか言っていなかったか?
独り言を少し聞いてしまったんですが…多分ですがanomalousアイテム保管庫に行ったのかと…
?なんでanomalousアイテム保管庫に?
すみません…分からないです…
急いで向かうか…本当に諜報員の可能性が出てきたぞ
そうですね。anomalousアイテムと言えど中には危険なものもあるので急がないと大変なことになりそうです
anomalousアイテムというのはSCPナンバーが付けられないような異常性を持った物につけられるオブジェクトクラスで、大抵はしょうもない異常性しか持っていないがたまに使い方を間違えると危険なanomalonsアイテムもある。
流石にanomalousアイテムでこの基地を崩壊させることはできないが念の為急いで向かったほうがいいな。
ほら!早くしてください!もうすぐで着きますよ!
俺より遅いやつが何いってんだあ?
今は煽ってる場合じゃないでしょうが!
まあそんなに慌てなくても大丈夫だろ
この目で見ないと安心できません!
そんな会話をしているうちに保管庫についた。ここではanomalousアイテム以外にもsafeクラスのSCP物品や資料などが保管されている。ただ一般公開されているのはanomalousアイテムだけで、その他の保管物は許可をもらわない限り見れないようになっている。
ぜえ…はあ…着きましたね…
そんな疲れてて大丈夫か?この先もっと大変なことが起きるぞ?
はあ…はあ…別に…大丈夫なので…
それよりもほら、思案が何をやってるか見に行くぞ
ぜえ…はあ…はい…
シンクロで俺の脚力などをコピーすれば早く走れる上に持久力も上がるというのにこいつは戦闘中以外シンクロを使おうとしない。別にいいと思うんだが、山本曰くいつどこで戦闘が始まるか分からないからむやみに使えないらしい。俺だって戦闘中じゃなくても戦闘中に出してる力ぐらい出しているが…まあ好きにしとけばいいか。
思案さーん!どこにいますかー?
あっちから声がするな、行ってみるか
そうしましょう
まあ興味本位で見ているだけだろう。もし変なことをしていたら…まあ捕まえて尋問とかだな。
投げるだけで200km/s出る野球ボール…?なんでこんな嘘が…
ほんと変な場所ですね…こんな意味のわからないガラクタを大事そうに飾って…
思案…さん?
あ…すいません。勝手に動いて…
いや…まあ私はいいんですが…それよりもここで何を?
あの…目が覚めてから部屋を出た時たまたまここのことが聞こえてしまって…暇でしたし来てしまったんです
悪かった…ですかね?
いや、ここは一般公開されてるから入っても大丈夫だ。それよりもすまんな。こっちも忙しくて起きた後の事を伝えられなかった
いえ…それは大丈夫です。それに関しては看護婦さんから色々と教わってますので…
ならよかった。じゃあ話すこともあるし少し腰を下ろせる場所に…
それよりも、ここに置いてある物ってなんですか?ガラスケースの中にペンとかルービックキューブとか飾ってありますけど…
思案は近くのanomalousアイテムを指さしながら質問してきた。
ああ、これはanomalousアイテムって言ってな。ちょっと不思議な能力を持った道具たちだ
不思議な?
例えば…そのペンはインクは黒いはずなのに文字を書くとインクが赤くなっている
…はい?
分かってないだろうな。これは。
まあそういう意味のわからないのがここには置いてあるんだ
…さっきの話すことって、重要なことですか?
思案は少し申し訳無さそうな感じを出しながら俺に質問をしてきた。
別に、時間はまだあるからな。それほど重要なことでもない
じゃあ、ここをもう少し見て回ってもいいですか?
別に構わないが
そう言うと思案は小さく嬉しそうに手を動かした。
…何がそんなに気になるんだか。
その後、思案は日が沈むまでanomalousアイテムを眺めていた。その姿は好奇心の塊である子供のようであり、どこかしらに面白さも感じた。
いやぁ…かなり楽しめましたね…
まあ楽しめたのならいいんだが。それよりもう夜だ。早く家に戻るぞ
…龍銭さん。ちょっと
山本が思案に分からないように自分を呼び止めた。
ん。どうした?
思案さんの家、できるの明日なんですよ…
ということはまだ住む場所が無いってことか…
あ、私の家は泊められませんよ。ちょっと機械も多いですし何よりオイルの匂いがこびりついているので女の人が過ごすには…
じゃあどうするんだ?
それは…やっぱり龍銭さんの家…じゃないですか?
俺か!?それは…
??そんなに大きな声を出して…どうしたんですか?
俺の声の大きさに驚いた思案が戻ってきた。
思案、今日は俺の部屋に泊まってもらっても大丈夫か?
なんでですか?まさか…
いや、変な理由はない。ただお前の家がまだ完成してないだけだ
あ…そうですか…
山本の家でも良かったんだけどな。本当は
私は思案さんが良ければ泊めますけど…そこらへんの工場より匂いがキツいですよ?
匂い…?
ざっくり言えばオイルと錆を仲良く煮込んで二で割った匂いだな。まあしょうがないんだが
それだったらこっちに泊まりますよ…
じゃあ龍銭さん、後は頼みました
あいよ
ここが俺の家だ
意外と大きいんですね
ああ、まあな。このへんだと一番でかい
それぐらい偉いってことですか?
いや…俺の場合は偉いというより強いだな
へえ…
そういうと思案は興味深そうに家の中へと上がっていった。
靴は…そこらへんに置いといてくれ
うわ…結構散らかってますね。掃除しましょうか?
いや、いい
この…サボテンみたいなのがサングラスかけて…これはウクレレ?
それは山本からもらった…イカしたサボ野郎だ
???
まあ玄関で話しててもあれだろ。リビングへ行くか
んで…これからお前と話したことがあるんだが
何でしょう
えーと…直球に聞くとだな…
お前のヒューム値が低かった理由を教えてほしい
はい?
?なんでヒューム値が低かったのか聞いてるんだが
ヒ…ヒューム値?ってなんですか?
お前…ヒューム値を知らないのか?
はい
そうか…じゃあ自分の思ったことが現実になる…なんてことはないか?
はい?そんな事あるわけ無いじゃないですか
本当か?
そんな事ができたら今頃私こんなところにいませんよ
まあ…そうでもあるよな…
なんでそんな事聞くんですか?
まあお前が危険な人かどうか確認しただけだ
私が危険だと思ってたんですか?
そりゃあ今はこんなだ。誰だって人を疑うさ
でも私、武器も無いし格闘技も習って無いですよ?体だって鍛えてませんし…
それ以外にも攻撃する方法は色々あるからな
あとそんなに疑うくらい今の状況って酷いんですか?
お前、今何が起こってるのか知らないのか?
何も知りませんけど
これは教えるのが面倒になってくるな。
まあ後から色々教えてやるよ。それより明日も早いんだ。さっさと寝るぞ
何時に起きるんですか?
まあざっと五時辺りだな
え?意外と遅いですね。てっきり二時には起きるのかと
今一時半だが後三十分で大丈夫なのか?
余裕ですよ!なんなら寝て五分でも平気です!
なんだこいつ。戦場じゃないんだがここは。
まあ早く起きれるのは色々と楽だしな。寝る時はあっちに客室があるから適当に布団敷いて寝てくれ
あの…ご飯とか無いんですか?あそこで夢中になってたとはいえここに来てから何も食べてないんですけど…
ここは今食糧不足だからな。明日になるまで飯は食えないぞ
えぇ…
飯が食いたければさっさと寝ることだな
はい…
起きろ、今日は朝から忙しいんだ
分かってますよ。この部屋客室のはずなのに汚すぎて掃除に時間かかったんです!
まあその部屋使ってないからな。自分の家が完成するまでは好きに使っていいから
でも今日中には完成するんですよね?
まあトラブルが無ければな
トラブルって…例えばなんです?
まあ…ドラゴンに工事現場が荒らされるとか…か?
ドラゴンなんているわけないじゃないですか。そういう冗談はやめてくださいよね
そうか?ドラゴンぐらいそのへんにコロコロいるぞ
そんなこと言ってると頭おかしいとか思われますよ
そんなことは1mmも思われないから大丈夫だ。それより今日はここの案内をするんだ。やることは山程あるからな
その前にご飯食べません?私もう死にそうなんですけど…
それならもう少しで食堂に行くからそれまで待ってろ
えぇ…
まあまずは山本の家に行くぞ
ここが山本の家だ
うわ…この匂いってオイル…ですか?
慣れてないとキツイだろうがまあここにはどうせこないしちょっと我慢しててくれ
その声は…龍銭さんですか?
建物の中から義手を外した山本が出てきた。
ああ、今日は案内をするからついてきてくれ
あれ…腕がないんですけど…もしかして義手なんですか?
あれ、教えてなかったか。山本は片腕が義手なんだ。まあそんな怖くないぞ
私も孤児院にいる時は腕や足がない子をよく見たので義手や義足は慣れ親しんでいるので大丈夫です
ただ山本の義手は生活のためだけにつけてる訳じゃないからな。まあその辺は本人に聞いてくれ
別に孤児院の子たちだって生活のため以外に義手は使いますよ
孤児院で生活以外にどうやって義手を使うんだよ。
まあ後でゆっくり聞く時間はある。今は案内が先だ
ああそうだ。龍銭さん、私は今日急用があるので案内は一人でしてくださいね
そう言うと山本はどこかに走っていった。
それで…今日はどこを案内するんですか?
とりあえず重要な場所から説明して、要望があれば他の場所も教える
重要な場所…そんなのここにありました?
そりゃあここは同盟軍の中でも大きな基地だからな。それなりに大事な場所もあるさ
でも、そんなのを私に教えてもいいんですか?
重要な場所を知っておけば色々な対処がしやすいからな
ふーん。で、最初はどこを説明するんですか?
お前絶対興味無いだろ
いや…まあ興味は元から無いですけど…
まあ興味が無くとも説明はするんだが
そうして俺は興味のなさそうな思案を連れつつ、説明をするために場所を移動した。
まずここは役所だな
役所仕事なんてあるんですか?
山程あるぞ。別の基地からの書類にプロトコル管理書に住居者の管理とか色々
色々やってるんですね
お前の身体情報も全部役所に保管されてるぞ。まあ実際はクリアランスレベル5以上の権限が必要な深層データ海にあるが
へぇ…って、はあ!?身体情報ですか!?
当たり前だ。身長体重障害はもちろん、DNA情報に仕草の癖にその他色々…
最初に言いませんでしたっけ?体だけは見るなって!
すまん嘘だ。実際は身長体重障害ぐらいでDNAなんて保存どころか見てすらないしな
…趣味悪いですよ
まあ実際は嘘じゃないんだがな。
まあここに来ることなんて少ないからな。早く次に行くぞ
分かってますよ
なんで戻ってきたんですか?
そりゃあ次に案内するのが生活区だからだ
生活区?
住民全員が生活する場所だな。あるのは共同施設と住居、防衛施設だけだ
私達が住むのもここで?
ああ
自分が住むとなると興味も湧きますね
じゃあ詳しく解説でもするか
まず前にも言ったがここには住居、共同施設、防衛施設の三が主にある。住居は住む家だな。ほとんどがアパートだが一軒家もあるぞ
そういえばあなたの家も一軒家でしたよね
ああ。資源が少ないうえに土地も少ないから一軒家を持てるのは数少ない重要な人だけだ
そんなに重要なんですか?全然そう見えないんですけど
そう見えなくても俺は重要なんだ。あと俺のことは龍銭って呼ばないのか?
呼ぶほど親しいですか?
親しくないのか?
当たり前じゃないですか
未だにはぐらかされて名前呼ばれるのは変な感じがするんだが
出会って一日程度の人を名前呼びします?普通はしないですよ?
いや上司的立ち位置なんだから名前呼びでもいいだろ
そんなに呼んでほしいんですか?
その方が楽でいい
じゃあこれからは呼びますから…これでいいですよね?
別に無理強いはしてないんだが
いやしてると思うんですか…
なんかややこしくなったからもう次の場所言ってもいいか?
まだ住居の説明しかされてませんよ
はあ…じゃあ続きいくぞ
共同施設は銭湯や洗濯場、公園に食堂…まあざっくり言うと全員で使う施設だな
アパートなら部屋にお風呂付いてませんもんね
ああ、だが大勢で入る風呂も悪いものじゃないぞ。他住民との交流ができるからな
龍銭さんって人と付き合うの嫌ってそうですけど、人と話すの好きなんですか?
いや、そんな好きなものでもない
えぇ…
で、防衛施設はその通り防衛のための施設だな。まあ住むだけの住民には関係のない場所だ
まあ興味も無いですけど
じゃあ早く次の場所行くぞ
はいはい…って待ってください!ご飯!本当に死にますよこれは!
覚えてたか…
なんですかそれ!私を殺す気ですか!
いや…ここの人はどうなってるのかあんまり飯を食べなくてもいい人が多いからな。みんな余裕で三日は耐える
それは人間じゃないですって…
それは俺も薄々思ってた
で、食堂はどこにあるんですか!?
そう焦るなって。ここの食堂はちょっと特殊でな。何もしてないお前が飯を食うには俺と一緒に行かないと無理だぞ?
じゃあ早く連れて行ってくださいよ!
あいよ
食べ終わったか?
はい!もう生き返りました!
じゃあ案内の続きやるぞ
はい!
こっちは軍事区だな
さっきの防衛施設みたいな場所なんですか?
ここはざっくり言えば戦闘用の色々を色々やってるんだ。防衛施設はあくまでも防衛用だがこっちはそれ以外も色々やってる
ざっくり過ぎません?
まあお前には関係がないしな。あるとしてもよくある滑走路とか倉庫とかだし
あー、それは興味ないですね
俺も教えるつもり無いから安心しろ
じゃあ次の場所に行くんですか?
ああ
ここは生産区だ。名前の通り作物を育てたり工場で色々作ったりしている
工場の横に畑なんて作っていいんですか?なんか汚染されそう…
財団の科学力は世界一だからな。工場の汚染物質は全て浄化されてリサイクルもされる
へー
少しぐらい興味を持つことをしないのか?
孤児院で農業してたのでそれは興味あるんですけど機械系はちょっと…
なら良かったな。ここに住む人は全員畑で働くことになってる
それって子供もなんですか?
流石に重労働は任せられないが子供だって労働力になるんだ。当たり前だろう
だからって子供を働かせるのはちょっと酷くないですか?
それなりに子供の対応はしてるぞ。労働時間を短くしたりとかな
あ…もしかして共同施設の公園って…
ああ。周りが防壁で覆われて自然も少ないんだ。この先を担う子供には自然ぐらい見せとかなきゃいけないだろ
意外と考えてるんですね
ちゃんと働いた人にはそれ相応の報酬を与えるのが常識だろ?それが金から他の物に変わっただけだ
もしかして…龍銭さんって実は優しい人なんですか?それを隠してクールにしてるだけで…
そう思うならそれでいいんじゃないか?俺は止めないしな
それって照れ隠しなんじゃないんですか?
ああもういいよ。次の場所行くぞ
分かりましたー
なんですか?ここ。なんか薄暗いですし空気もなんだか悪いような…
…今から言う事はここに住む人には人通り説明をしている内容だ
急になんですか?変な事言いだして
ここは不特定多数用異常存在隔離収容所『サイト-8101-NW』だ
…はい?急に難しい言葉を言われてもよく分からないんですが…
まず最初に、お前が最初何に入社しようとしたかは分かってるよな?
そんな試そうとしなくても分かりますよ。自分の事ですから。SCP財団です
じゃあ財団が何をしているのかは分かってるか?
…それは知らないです…けど
知らないで入社してきてるのかよ…
私は孤児院からここに入ると安心だって言われて来ただけなので…
流石に自分で調べるとかしないのか?だって自分がこれから働く職場だぞ?
いえ…孤児院から教えられた職場で働くのが孤児院の子供たちにとって一番安全なんです。元々孤児ですから
まあ孤児院には深く関わらないでおくが…とにかく、ここが何をする組織かを教えないとな
SCP財団は異常な存在…まあ簡単に言うとありえない能力を持った物品、存在、現象を危ないから収容しておく組織だ
ありえない能力?なんですかそれ?
細かく分けると色々あるんだが…お前が昨日見たanomalousアイテムみたいな人間の害が少ないやつもあれば、最悪世界が滅亡するぐらいヤバいのもあるんだ。ここは細かく説明すると長くなるからな
確かに投げただけで200km/sはおかしいと思いましたけど…そんなの本当にあるんですか?
あるんだよ。俺たちがこうやってバレないように閉じ込めておくことで、他の人が安全に暮らせるんだ
はぁ…
そしてここに収容されてるのはミスしなければ安全なやつから常にヤバいやつまで千差万別。まあ本当にヤバいのはもっと地下深くにいるんだがな
じゃあこの辺りのは?
この辺りのは逃げ出しても楽に対処できるような安全なやつだ。もし何かあっても死ぬなんて事は無いから安心しろ
へぇ…あ、やっと階段が終わった…
扉が沢山あるだろ?この扉一つ一つに収容されてるんだ
こんなに部屋が…
この階層だけでも大体40体ぐらいが収容されている。この近くには大規模なサイトがあったからな。そこに収容されていたオブジェクトは逃げ出したのを除けば全てここにいる
サイト…?オブジェクト…?
サイトは隠されて作られた施設で、オブジェクトはここに収容されている奴らの事を言う
へ…へぇー…
まあ今ではサイトは全て壊滅。オブジェクトも大多数が収容違反を起こして今どこにいるのかさっぱり分からない。できる限り収容しようとしてるが今の状況じゃ無理だな。ま、基地内は一応安全だから外に出ない限りは滅多に死なないからな
なんか…大変なんですね…
お前みたいに心配できる人はそうそういないぞ
それって褒めてるんです?
いい精神力だって事だ
なんか嬉しくないですね…
この世界では精神力が全てだと言っても過言ではない。実際、今の過酷な状況に耐えられずに自殺していった人だって大勢いる
それは…確かに大事ですね…
だろ?まあこれで案内は大体終わったし、そろそろ帰るか。多分お前の家も出来てるだろうしな
あ!私の家、今日中に作り終わるはずですよね?
ああ、トラブルが起きてなければな
そうやって心配させるのやめてくれますか…?
まあトラブルなんて滅多に無いからな。無事に出来てるさ
そうだといいんですけど…
お前の家は確か…この辺りだったよな
あ…龍銭さん…ちょっといいですか…
どうした?何かあったのか?
実は…ちょっとした…いや、とてつもないトラブルが起こってしまいまして…
はあ!?何が起きてるんだよ!?
その…家を作っている途中にですね…
作っている途中に…?
謎の人たちが空から降ってきて、家はボロボロ、しかもいきなり攻撃してくるもんだからみんなパニックで、逃げ遅れた人は攻撃を食らって今は病院で手当を…
そんな通知、俺の所には来てないぞ?
どうやら妨害電波を出されていたようで…この基地の技術では対処しようのない電波ですので、仕方なくその場にいた兵士達でなんとか被害は最小限に収めましたが…
その、急に降ってきた奴らはどんな格好をしていた?特徴は?
そうですね…腕や足が機械みたいで人間味が無いと言うか…そんな感じでした
もしかしなくても第一教会だなこれは。あのクソ集団どもが。
分かった。後はこっちでなんとかしよう
で…家のことなんですけど…これほどまでに建材も機材もボロボロにされると後一週間はかかる計算ですが…どうしましょう…
あー…まあそれぐらいだったら俺の家でなんとかなるだろ
そうですか!じゃあ一週間までには完成させるので!
ああ、急いでくれよ…
どうしたんですか?何かコソコソと話してて…
ああ、トラブルがあって完成が一週間遅れるらしいぞ
……え?
まあ見事にフラグが立ったって事だな
ほんとですか…またあの家か…
掃除はしたんだろ?ならいいじゃないか
だからって会ってすぐの人と暮らしたくはないじゃないですか…
別に俺の所じゃなくてもいいんだぞ?山本の家だってあるし
あそこは人が暮らせる臭いじゃないですよ…
あ、ちなみにここの人たちは優しいとはいえ家に泊めてくれるほど親切じゃないぞ。戦争中に人に構う暇は無いからな
仕方ないって事ですか…
まあ一軒家なんだ。もう少しの辛抱だろ
あ、そういえばここで一軒家を持てる人ってあまりいないんですよね?
ああ。例えば財団での地位が高かった人とか、今の重要人物とかだな
じゃあなんで私が一軒家を持てるんですか?
それは…まあ色々あるんだよ。色々
教えてくれないんですか?私の事なのに?
そんなに聞きたいなら止めはしないが…聞いて嬉しいものじゃないぞ?
私の事なら何だって聞きますよ
じゃあ俺の家に帰ってから話すか
その他の情報はここ。
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設定集に入りきらない設定の個別ページ。
記録集:O5評議会
外戸博士の人事ファイル
龍銭研究員の人事ファイル
番外編、記録集に登場するものも記載しています。
- SCP-682
https://scp-wiki.wikidot.com/scp-682
http://scp-jp.wikidot.com/scp-682
作者:Dr Gears - SCP-500
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- portal:7072410 (01 Dec 2020 07:57)