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さてみなさん。今回のオリエンテーションを担当させていただきます有馬と申します。もうすでに財団業務をある程度こなしているあなた方の中には私を知っている方も数名いらっしゃるかもしれませんが、財団技術部門の空間開発担当班所属の博士をしています。
えー、みなさんは自分の意思、あるいは上司からの指示を受けてこのオリエンテーションを受講していると思われますが、知っての通りこの講義の内容は、財団内における次元の取り扱い方、考え方が主となります。そこのあなた、微妙な顔をしていますね。今更高次元に対する解釈を聞いたところで何か変わるのか、などとお思いでしょうか。 あぁいえ、例年この手の質問が上がるものでして。この際ですしそこから講義を始めましょう。
あなたたちはこのSCP財団に就職することが可能なまでに優秀であることは紛れもない事実です。全国の名門大学で多方面の技術や理論を学んできたのでしょうしね。しかし、それらが我々の業務では全く意味をなさないことも、新入職員のオリエンテーションで見たありえない輝きを放つロボット玩具などの異常存在を、今までの研修期間で幾度と目の当たりにすることで身に染みて理解したことでしょう。ですからあなた方の学んだお堅い理論物理学の弦理論、超弦理論、M理論、これら全てが通用するとは思わないほうがいい。こと空間に関しては、実に多くの可能性が混在しており、現在研究している事例での次元に関する解釈は数十種類も存在します。そのどれもが間違えているか、私たちの未知の要素が共通項になっていて、実は全てが正しい可能性すらあります。要するに全てが未知です。
あぁ、そんな顔をしないでください。この場はあくまでオリエンテーションです。専門外の方が履修する場でもありますからね。今回は我々が用いている理論の一つをできるだけ噛み砕いて説明しましょう。もちろんこれらの理論を基にして形成されている財団技術も存在しますから、その辺りの説明は致しませんので悪しからず。
まずはその理論の解説のためにおさらいから始めましょうかね。
1次元はみなさんご存知でしょう。言ってみれば、X軸しかない世界です。この世界においては、長さ以外には測距の概念は存在しないでしょうから、この世界の住人に幅や高さの概念を理解させることは困難でしょう。そしてそこに直交するY軸を生やしたのが2次元です。ここでは新たに幅という概念が追加されますが、やはり高さという概念は理解できないでしょう。前後左右しか存在しない世界です。さて、X,Y軸に直交する軸としてここにZ軸を加えると、我々の世界である3次元が生成されます。もちろん、ここでは高さの概念が形成されますね。
さて質問です。ここで、今までやってきたようにX,Y,Z軸全てに直交する軸を加えてください。
……あれ、答えられませんか。 ここで正解を出した方は間違いなく歴史上に名を残したと思いますが、まぁみなさんの思う通りで間違いありません。そうですね。分からない、が今のところ正解です。我々財団はこの思考テストの解答を常に求めていますから、どんな些細なことでも私たちにお知らせください、っと話がそれましたね。ではもう一つの質問をしてみましょう。
みなさんはこの理論で見えてくる4次元はどういうものだか想像がつきますか?
はい。では、3段目の左から2番目のあなた。
……えぇその通りですね。4次元に身を置いた我々は、周りのもの全てが見えます。文字通り、全てです。あなたの内臓から、我々財団の隠しているアノマリーまで全てが丸見えということです。なぜその結論が導かれたか分からない人は、2次元から3次元に置き換えて見てみましょう。3次元空間の存在である私が、2次元の世界に見立てた紙の上に円柱を置いたとします。この円柱を、2次元空間の住人のあなた方はどう認識するでしょうか。
……はい。線ですね。高さがないのですから円ではなく線としか認識できません。どの角度から見てもまごうことなき線です。一応距離感の把握から形の予想をすることは可能ですが、実際にその形全体をを一度に見ることは叶わないでしょう。その状態のあなた方2次元空間の住人を3次元空間に引き上げてあげましょう。あなた方は世界の全てを一度に見ることができるようになりました。これを3次元から4次元への認識転換に当てはめれば良いのですよ。
さて、次に私はこの円柱を持ち上げて紙から離しましょうか。さて、あなた達にはどう見えますか?
……その通りです。目の前から今まであったものが忽然と姿を消しました。二次元のあなた達からすれば、まるで神隠し、転移のような現象にしか見えないでしょう。さて、勘の良い方々はもうなんとなく事の重要性に気がついているでしょう。今持ち上げているこの円柱をさっきとは違うところに置いてみましょうか。……はい。瞬間移動です。そうです。これを3次元から4次元に当てはめると、4次元空間を移動すれば3次元空間に瞬間移動が可能、ということになりますね。
実際にこの技術は我々の宇宙事業や財団の次元観測、開発部門において多大な貢献をあげています。医療や災害地作としてですね。ただし、判明していない部分が多いためあくまで試作に留まっています。最初に言ったように未だ多くの解釈の余地がありますからね。そもそも我々は4次元空間では中身が抜け落ちてしまいますから、長時間の存在もできないとは思いますし、数学的知見からすれば、周回軌道が螺旋状になるせいで物質は存在できないので我々人間は消滅しかねませんから、持って行けるのは意識程度のものでしょう。要するにあなた達の意識は4次元の可能性があるということですね。我々3次元は4次元の投影ともいわれますから、意外と身近なところに高次元の片鱗を見ることができるかもしれません。御匣博士に聞いてみるのが良いでしょう。あの方はこれらに詳しいですから、大抵の疑問に答えてくれるでしょう。まぁ、私はその中の2割も理解できないのですけどね。
こんな感じで、一通り説明を終えたので簡単にまとめに入りましょうか。
結論としては、あなた方の大学での常識は捨てなさい。それが重大事故になり、重要な新事実の発見の妨げにもなり、あなたの成長の妨げにもなる事は想像に難くないでしょう。手元の資料にあるその記号だらけのページや……あぁそのページに関しては口には出さないでくださいね……異次元を旅したくなければですが。あと他にはSCP-173やSCP-1170-JPなど、瞬間移動するアノマリーは無数に存在するわけです。そしてそれらには彼らなりの道理が働いています。SCP-2623は特殊な実例です。これは特定の座標にしか発言しない瞬間転移現象ですが、これらに先ほどの理論は適用しないと考えています。SCP-396は特定条件を満たせば至る所に転移可能です。これも先に同じです。言っておきますが、これらに今のあなた達の道理は通用しません。毎年複数名は異常性を見誤って殉職していることをくれぐれもお忘れなく。
……その他の理論をもう少し提示してくれても良いんじゃないかと思う人もいるでしょう。私は君たちに先入観を持ってほしくはないのです。毎年複数名が視野を狭めた結果として殉職していることをくれぐれもお忘れなく。このオリエンテーションで提示した理論は、現在最も財団内で判例が多く、研究も進んでいる理論に過ぎません。この理論は一般大学の講義内容で説明がつくし、なんならこの理論を聞いたことがある人もいるかもしれないレベルの理論に過ぎません。
発見は常に好奇心と共にあるのですよ。
これでこの簡易オリエンテーションを終わります。出口は左です。あぁ、3次元に加える直交軸について分かった人は私の実験室前のボックスに論文を放り込んどいてくださいね! 一緒に語り合いましょう!
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任意A任意B任意C- portal:7069044 (05 Dec 2020 11:50)
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