SCP-3451-JP のぞむ

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財団記録・情報保安管理局より通達
UTC 20██/09/29 AM05:22:38に当SCP収容サイト-81██とその周辺が消失するインシデント3451-JPが発生しました。同時刻、財団・GOCが管理するSCPのいくつかが同時多発的に収容違反及び局地的破壊・消失を引き起こしたため調査が行われています。
これらの事態を受けGOCと協議を行った結果、今後の類似実験の凍結とクリアランスの見直しが行われました。

以下の機密文書の閲覧にはレベル5クリアランスおよび監督評議会の承認を要します。

— SCP財団監督評議会、RAISA管理官 マリア・ジョーンズ

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    『国際現実性保全協約』締結により当オブジェクトの実験は永久に凍結されています。


    インシデント規模指標.png
    5/3451-JP LEVEL 5/3451-JP
    CLASSIFIED
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    Item #: SCP-3451-JP
    Archon

    特別収容プロトコル: SCP-3451-JPは、媒体である鏡が一般生活に拡散・浸透しているため収容されるべきではありません。現状で一般流通が可能な最大反射率を有する鏡を製造することで発現リスクを低減しています。

    合わせ鏡の状態に置かれた鏡面を発見した職員は速やかにその状態を解除し、発現条件の解消を行ってください。研究に携わる職員には、特定の思想概念を有さない人員が選定されます。研究は無期限に凍結されています。


    合わせ鏡の見え方.jpg

    図1: 角度がついている場合、いずれ観測が不可能になるため発現規模は縮小する。

    説明: SCP-3451-JPは局所的な現実性低下現象です。SCP-3451-JPは鏡を向かい合わせにした状態(以下合わせ鏡と表記)の状態に置いた場合に発生します。その際、周囲の空間に存在する現実子は鏡面に吸引されるような挙動を行い、これによって空間の現実子量が減少することにより低現実性空間が発生します。

    異常性の発生源である鏡はそれ自体に如何なる異常性も有しませんが、現在一般的に流通している全ての鏡製品1でSCP-3451-JPを発現させる可能性が提示されています。

    また、SCP-3451-JPは鏡面の反射率が低下することで観測される可能性が上昇します。SCP-3451-JPが最大規模で発現するのは、完全に鏡を平行に置いて合わせ鏡の状態に置かれた状態であり、角度が付いていると発現規模は縮小します。これは奥の鏡像の認識が難しくなることが原因と推測されています。(図1を参照)

    周囲の現実性が著しく低下する条件として、以下に提示される内容が判明しています。

    1. 低品質の鏡を用いて合わせ鏡をする。
    2. 特定の思想概念2を有する人物が、意識的に鏡像を可能な限り限界まで認識する。

    このうち条件2はSCP-3451-JP発現のための必須要件であることが判明しています。

    SCP-3451-JPが財団に具体的に認知されたのは、長野県██市██郡███の一軒家における低級霊的実体の出現情報を受け、財団が鎮圧した事案が初例となっています。3この事案では、合わせ鏡で維持された三面鏡を中心とした微弱な現実性希薄領域が発生しており、一般人が容易に現実改変可能な濃度にまで低下していました。これが霊的実体出現の要因であると推測されています。

    インシデント3451JP発生により、以降の研究は無期限に凍結されました。
    以下はインシデント3451JPの詳細です。

    インシデントレポート SCP-3451-JP
    『インシデントレポート SCP-3451-JP』は、SRAの範囲内で保護された田畑博士以下研究チームに対する聞き取りをもとに作成されています。


    当初の実験目的(調査記録23回目に該当): SRAを稼働した状態で光学電子カメラを用い、肉眼で目視できる枚数以上の鏡像を観測する。カント計数機を用い、鏡面に吸引される現実子の動き、行方を確認する。


    結果: 当初は鏡面に向かって消失するように見えていた現実子は、鏡と鏡像、鏡像と鏡像の間に流れ込んでいることが判明しました。これにより、鏡の内部に何らかの空間が存在することを認識しました。

    インシデント概要: 本実験中、鏡像の認識枚数が███枚の時点でSRAの出力が一時的に振れたものの数秒で規定値に落ち着いたため、チーム4名に効果範囲1メートル四方のPSRA4を配布後、実験は続行されました。しかし、鏡像認識が████枚目に到達した時点でSRA2基が動作を停止し、急激な現実性の変動によりSRAの範囲外は空間中及び物体の持つ現実子の大半を吸引した影響で消失しました(下記添付画像を参照)。

    インシデント震源

    2秒間で実験中鏡面を中心とした半径54kmの現実性が吸引された

    流れ込んだ現実子により再構築されるに伴いアノマリーが██件出現しましたが、安全に鎮圧、収容済みです。

    PSRAにより保護されていた田畑博士以下研究員4名による実験の即時中止と財団派遣部隊の後処理によって、インシデント3451JPは収束しています。


    被害: 2秒間のうちに実験室周辺54キロメートルは、流入した現実子によって再構築、サイト‐81██の被害レベルは"壊滅"に認定されました。

    Hmインシデント%E3%80%80日本列島.jpeg

    インシデント後の衛星画像

    追記: 今実験中、世界的規模で、SRAを用いたSCPオブジェクト収容施設において “同時刻にSRAが2秒間停止する現象” とそれに起因するインシデントが発生しました。インシデント規模は地域によって程度に差異があります。

    以下は、被害を受けたオブジェクトの一例です。

    被害オブジェクト 内容
    SCP-3480 待機中のオメガ-12の出動によりMSRAsの移動・修復が行われ、 XACTSの臨時起動と現実改変を重ねたことで被害は最小限で収束。SCP-3480の最終的な被害はオメガ‐12内殉職・重症が██名発生しました。
    MSRAsは22台に増設され、現在まで低ヒューム領域に変化は見られません。現状、復元は完了しています。

    『過去行ったSCP-3480インシデントシミュレーションと、展開に差は存在するものの最終的にほぼ一致する設備被害率及び人的資材損耗率』です。
    SCP-1280-JP スクラントン現実錨の範囲外2メートルが希釈された影響でSRA内部機構も損傷を受け、SRA3基が全壊、15基は軽微な損傷に留まりました。
    財団職員が駆け付けた当初、収容区画内部で2.8mまで拡大していました。サイト内の備蓄SRAを設置した時点で3.1mまで拡大は進行していたものの、現在収束しています。人的損失は生じていません。

    『過去行ったSCP-1280-JPインシデントシミュレーションと、展開に差は存在するものの最終的にほぼ一致する設備被害率及び人的資材損耗率』です。
    SCP-███-FR SCP-███-FRに積載されていたSRA1基が機能停止。
    船体が当初の想定以上に拡散し消失しかけたとの証言が多数挙げられ、のちに事実である事が判明しました。当時、海域は濃霧であり、『かの船が霧と共に溶けてなくなる妄想をしない者はいなかった』という意見が多いことは一考されるべき点です。当該オブジェクトは現在、継続的な保護が危ぶまれており対策を審議中です。

    『過去行ったSCP-███-FRインシデントシミュレーションと、展開に差は存在するものの最終的にほぼ一致する設備被害率及び人的資材損耗率』です。

    補遺: 以上の重大インシデント群、インシデント3451JPに対して、財団・GOCは「未確認小惑星の大気圏突入後分解による隕石落下」、「超高密度プラズマ」、「地下水脈の枯渇による地盤沈下」を始めとした各カバーストーリーの流布及びエアロゾル化させた記憶処理剤の散布を行いました。

    回収されたカント計数機のログを解析した結果、SRAの現実子供給量を超過するレベルで現実子が外部へ流出した可能性が指摘されています。また、今実験中に、SRAの現実子吸収先である死宇宙1つの消失を観測した事が判明しました。インシデント3451-JPとの関連性を確認中です。




    以上のインシデントおよびそれ以前の研究を検証した結果、田畑博士によりインシデント発生のメカニズムが発表されました。

    『鏡を用いた霊的儀式を発端とする鏡面および周辺現実性の低下に関する、鏡面反射率および観測認知論の関係』(書き起こし抜粋)


    日時: 20██/11/██ 9:30 - 14:26 (UTC)

    場所: 世界オカルト連合外渉センタービル 大ホール

    発表者: 田畑博士


    «記録開始»

    皆様、本日はお忙しいところにこのような場を設けて頂き、誠にありがとうございます。本日お集まりいただいたのは、先日のインシデント3451-JPに関して、世界各地で同時多発的に発生した極端な現実性低下を伴う異常現象群の発生メカニズムが判明したことをご報告させて頂くためです。お手元に資料を配布していますので、発表で生じた疑問点は適宜その場で質問してください。

    ではこれから発表を開始します。お手元の資料の1ページからご覧ください。

    SCP-3451-JPの実験と経過概略

    我々がSCP-3451-JPを初めて具体的に認知したのは、長野県██市██郡███の一般民家内部で現実性希薄空間を生成していた、ごくごく一般的な三面鏡です。この三面鏡は、収容スペシャリストが到着した時点ですでに合わせ鏡の状態で放置されていました。

    私たちが研究を開始するにあたり、多数の問題が挙げられました。発生したのは一般的な家庭、異常性の発生源は市販の三面鏡、さらにSCP-3451-JPが合わせ鏡の状態に置くだけで発現するというのは明らかに条件が緩い。我々の間には真っ先に、なぜ今まで明るみに出なかったのかという疑問が生じました。

    そこでまず、“鏡の種類によって発現するか否かが左右されるのか” という検証を行いましたが、これはすべての鏡で発現すると確認が取れました。

    続いて、なぜ鏡全体ではなく鏡面にのみ二次平面的な現実性希薄空間が生まれるのかを推測した私達は、複数の仮説の中でも、反射率が関わっているのではないかと考えました。これであれば、一般の鏡が簡単には現実性希薄領域を生み出さない理由が説明できたからです。

    例えば反射率80パーセントの鏡を用いたとすると、鏡面に映る像は20パーセント現実と相違があると言えます。鏡面に二次元的に投影された鏡像は現実の我々と比較して実在性や現実性が20パーセント下がると言うことと同義であり、合わせ鏡の片側に映る鏡像を見た場合、鏡像の現実性は一枚ごとに0.642ずつ低下することになるでしょう。事実、反射率の影響であるとの仮説をもとに行った実験結果はおおよそ合致しました。つまり、合わせ鏡状態では、この反射率の相互作用によって加速度的な周辺空間の現実性低下を引き起こす可能性が提示されたわけです。

    大量生産体制が確立されていなかった頃の鏡は精度もまちまちで反射率が低く、反射率は低ければ低いほど鏡面に映る像が現実とかけ離れたものになります。しかし近年の鏡は一般流通しているものでも83~90パーセントの反射率を誇ります。その場合、反射率の高い鏡が普及した現代の方が異常性の発現が抑えられるのは道理です。5

    [傍聴者が質問を投げる]
        反射率が低ければ低いほど発現しやすいということだが、0パーセント反射、つまりそこら辺のマットな素材ではどうなるのか。

    SCP-3451-JPの発現には “鏡であること” と、“鏡像を認識できること” が必須要件です。つまりある程度まで行くとそれはもはや鏡像として認識できなくなるため、その時点で鏡とは呼べなくなり、合わせ鏡という条件から逸脱すると思われます。現にそう言った物品での発現は確認されていません。

    さて、今から提示するのはこの数値を検証するために行った実験2つ結果の比較グラフです。

    Hmmap.png

    理論値とほぼ変わらない数値が観測されている。

    青い点は反射率97パーセントを示し、赤い点は反射率88パーセントを示しますが、反射率88パーセントの方が急速に鏡面1枚ごとに空間現実性が低下していくことが確認されました。この実験で我々が予測した数値は、観測時に光の拡散等が発生しなかった場合の理論値でしたが、計算による理論値とほぼ誤差のない数値が計測されました。
    これにより、SCP-3451-JPが外的要因の干渉を受けない異常性の可能性が提示されました。現在、他多数の実験によりこの異常性はほぼ確実視されています。

    反射率88パーセントの鏡を用いて実験を行った際、鏡面に向けて周囲の現実子が吸引されるような挙動が観測されたほか、現実性希薄領域が生成されたことにより霊的実体やアノマリーが出現する事態も発生していますが、これは安全に鎮圧され、以降はSRAを利用した現実性固定環境のもとで研究が進行しました。

    しかしこの実験から数日後、サイト-81██の職員一名が散髪中に偶然SCP-3451-JPを発生させました。
    職員が利用していた鏡は反射率95パーセントの鏡であり、当初の “高反射率であれば発現しにくい” という理論のみでは合致しません。反射率が鏡面の現実性低下の主要因であることはすでに判明しているため、研究チームは追加の要因が存在すると判断しました。

    理由として挙げられたのは精神面や深層心理、専門知識でした。最終的に第2要因が知識であることが判明しています。
    当該職員は霊障科の召喚系を担う研究員であったため、専門範囲を拡大し、霊/魔術分野の知識を持たない研究員のみで構成されたチームを用いて観測実験を行いました。1回目は知識を持たない状態で、2回目は知識を付与した状態で、です。

    研究する人員が知識を持たない場合、実験用に用意された鏡面の恒常的な現実性低下以外に異常は確認されませんでした。しかし知識を与え、実験中に与えられた知識を意識して観測した場合、田畑研究チームの実験結果と同様の結果を記録しました。つまりSCP-3451-JPは、霊/魔術分野の知識・思想を保持し、観測中に意識を向けていた場合に発現するものであるということです。

    これらの結果を観測理論に基づくものと解釈した際、向こうの空間を認識するという考えが霊的儀式における鏡面と鏡像の間にパスを繋ぐ方法として用いられていると推測されます。

    これらから、SCP-3451-JPは『合わせ鏡』のような儀式動作によって周囲に影響を与えるものであることが確定しました。合わせ鏡による怪奇現象は、中国の『抱朴子6』のように世界中で古来から言い伝えが存在します。これら鏡を用いた呪術的儀式のその多くがSCP-3451-JPの異常性によるものである可能性もあります。

    SCP-3451-JP発見当初、当該現象の発生件数が少ないことに対する仮説は反射率のみが原因としてしていましたが、科学技術発展前、すなわち神秘学/オカルトが先行していた時代から、科学技術及び分類主義が台頭してきた現代に変遷するにつれ、人間が非科学な現象から興味を失ったことも小さからぬ要因となっていると推察されます。

    現実と想像上の物事の分離に成功しているという事実は、我々財団が成功しているという証と言えるでしょう。

    これらは充分な試行回数を経て得られた結果であり、異常性の発現条件と性質、現実性低下の法則に相違はないでしょう。ここまでで何か質問はございますか。

    [田畑博士がホール内を見回す]

    先に進んでも良さそうですね。さて、ここからはこれらの理論を基にした観点から、インシデント3451JPの発現メカニズムの説明に移ります。



    インシデント3451JPの発生メカニズム


    まずはこちらの資料をご覧ください。

    [田畑博士の後ろのスクリーン上に資料が提示される(以下に当該資料画像添付)]

    並行世界とヒューム値分布及び歪曲度の可視化モデル%201.2.1版.jpeg

    並行世界とヒューム値分布及び歪曲度の可視化モデル

    今スクリーンに表示されているグラフは私達が想定する並行世界とヒューム値の可視化モデルです。この中で水色に着色された直線的な空間は、合わせ鏡を作ることで鏡像同士が形成するルートであり、暫定的に霊道と表現しています。
    この霊道は、理論的には「無限に形成される、鏡面が鏡面を写す直線の回廊」と言うべきものですが、これは観測しうる中では鏡像と鏡像の間に存在する並行世界群との唯一の交差点です。

    [ポインターがグラデーション状の着色がなされた帯グラフに移動する]

    このグラフが表すのは、並行世界の現実性歪曲度です。現実子の濃度差、現実性差と言い換えることもできます。基底現実から遠い位相に位置する空間、このグラフでは手前にくればくるほど、本来の空間現実性は低いことが読み取れます。

    これらの並行世界の現実性は、観測した枚数目の鏡像へ流入する現実子量に対応していると我々は考えています。この前提であれば理論的に説明ができるため、私達は、おそらくこの解釈は正解だろうと考えています。

    しかし、このグラフではいずれの並行世界に存在する鏡面も、その並行世界の現実性に関わらず1Hmの位相に存在しています。
    これは実験の際の観測結果に基づいており、カント計数機による鏡像観測の結果は鏡像のヒューム値を1Hmと算出していました。

    さて、鏡像のヒューム値が、その鏡像が存在する並行世界の基本ヒューム値に関わらず1Hmを示している原因についてですが、端的に言えば、現実性の低下した空間に存在する物体は崩壊、拡散して絶対的な形状を保てなくなるため、鏡像として認識不可能になるからです。
    補足しますと、高ヒューム値の物質が保有する現実子は低ヒューム空間において、kejelの現実性の法則7に基づいて周囲に吸い取られるような現象が起き、現実性が低下した物質は絶対的な形状を保つ必要がなくなります。8現実性を保有する生物は、自身より低い現実性を持つ空間に対して己の考える現実を押し付けて、『塗り替える』と形容される現実改変を行うことが可能です。
    今回、鏡像が1Hmを示している理由はおそらくこれでしょう。我々が鏡像だと認識するために我々の考える『鏡』という現実を強要しているため、鏡像のみ数値が我々の基底現実と差異が生まれないのだと考えられます。

    補足にもあった通り、鏡は我々の認識に支えられることで、常に1Hmで存在します。この前提をふまえた上で現実性の明らかに違う並行世界を霊道で繋げると、無理やりその並行世界と霊道の交差点部分の現実性のみが、鏡という媒体によって我々の世界基準まで引き上げられるのです。こうして強制的に霊道で交差した部分を1Hmに引き上げられた世界は大きな歪みが発生します。これがグラフの曲がった帯が示す現実性の歪曲です。

    現実性の歪曲は1地点だけ現実性が上昇したことによるものですから、周囲が同じ現実性になれば歪みは無くなります。つまりkejelの現実性の法則に則り、霊道を通して、高ヒューム空間から現実子を吸引して安定しようとする働きが生じるのです。9

    そこで、現実子が流出した世界が私達の世界と同じようにとても広大であった場合はどうなるでしょうか。こちらのプールがほぼ尽きるまでひたすらに現実子は並行世界に流出し続けます。インシデント3451JP発生時、我々は、えー……具体的な数値は伏せさせていただきますが、4桁枚の鏡像を認知しました。しかしながら、少なくともインシデント3451JPにおいてカント計数機が弾き出せる数値内で、4桁の並行世界に流れ込んだと思われる現実子による並行世界の現実性の上昇は見られていません。

    [傍聴者が挙手し、質問を投げる]
      基底現実から流出した現実子総量が不明というのは由々しき問題であると見るが、それによって齎されるリスクは具体的にどのようなものが挙げられるか。

    簡単なもので言えば、世界的な現実性不全や一般人の現実改変の易化などでしょう。

    我々の世界の現実子に絶対量は存在するのかという問題に関しては、残念ながら現在の我々の技術力では現実子の絶対量の明確な解答には辿り着けません。そもそも現実子が何であるかも研究途上です。どうやって生成されるのかも、変性する物質であるかもいまだに判明していません。ただ、今回のインシデント3451JPを経て、宇宙1つの現実子総量にリミットは存在するであろうとほぼ確実視しています。
    光学電子カメラ等を利用して鏡像の無限回廊の限界を認識しようとした我々が、一体いくらの現実子を別世界に流出させたのかは、同時多発的なインシデント群によって具体的な算出が不可能な域に達しています。

    [ホール内が騒然とする]
    [傍聴者が挙手し、質問を投げる]
      つまり、我々の宇宙に存在した現実子は現在ある程度減っている可能性があるということで間違いないか。

    えぇ。その可能性は否定できません。ただし現実安定性ビーコンはインシデント3451JP後も基準値低下を示すログを記していないため直近の問題はあまり考えなくても良いかと考えています。

    [以下同様、あるいは派生の質問のため中略]
    [昼休憩のため質疑応答終了]

    «記録停止»

    «記録再開»

    さて、ここからは午前中に説明したメカニズムをもとに、世界同時多発的に発生したインシデント3451JPについての考察を提示します。まず、インシデントの発端となった共通事項として、同時に、世界各地に配備されたSRAの一部が停止、再稼働したことが挙げられます。

    このSRAの異常挙動は、先に提示したSCP-1280-JPに鍵があると考えています。我々の部門の観測の結果、SCP-1280-JPの報告書がまとめられた時に観測された、亜財団の存在したXKシナリオ終焉宇宙が、同時期に消失したことが判明しています。我々の用いるSRAは、Kクラスシナリオにより終焉したいずれかの宇宙から現実子を吸い上げリサイクルすることはすでに知られているかと思いますが、吸い上げる対象を失った際は新たな終焉宇宙を選定し、ワームホールの再接続を行う事で供給を再開するようプログラムされています。そしてそのラグが今回の2秒間の停止だと推測できるのです。こちらがその略図です。

    [田畑博士の背後のスクリーン上に資料が提示される(以下に当該資料画像添付)]

    再接続図式.jpeg

    SRAの2秒間の機能停止期間は、宇宙の再選定とワームホールの接続に要する時間である

    スクラントン博士のLSS開発記録に記されているクラス-C"ブロークン・エントリー"ワームホールと同様の原理ですが、SRAは終焉宇宙を選定して接続を行うフェーズが挟まるために接続先選定に動作停止期間が生じます。

    [傍聴者が挙手し、質問を投げる]

        財団やGOCはSRAを用いた防御・収容手段を多く確立しているが、これらは信頼性に欠ける装置ということか。

    いえ、本来なら到底あり得ないレベルの事象が発生しただけであり、通常はSRAを複数配備しておけば、現実性維持は継続可能でしょう。

    [傍聴者が続けて質問を投げる]

        LSSはSRAの前身の装置だが、SRAの吸入先選定機能が無いワームホールがLSSで用いられているということか。そのワームホールを用いた際、今回のインシデントの防止は可能だったか。

    防止出来たかという問いに対して、結論から言えば不明です。SRAのワームホールは、アナ・ラング博士により安定性が最大限高められており、SCP-3001に認められるような狭間の空間から接続先選定中の代理供給を補うことはできません。しかし、クラス-C"ブロークン・エントリー"ワームホールを用いたとしても、極端な現実性希薄空間であるSCP-3001からの代理供給で補えた可能性は低いと見積もっています。

    今回消失した終焉宇宙は報告書によれば、多くの現実子流出スポットが確認されています。しかし、その世界の財団のSRAに相当するものがいくつか確認されていました。そしてそのSRAに相当する機器は暴走10しており、他の宇宙から現実子を吸い上げていたと見られます。
    つまり、当終焉宇宙においても、少なからず現実子の供給がなされていたということです。そうして緩やかな終焉を迎えていた宇宙が一瞬で滅びた原因は、今回の実験で新たに認識した世界を維持するための現実子量が、今までの流出量に加算された状態で我々の世界から流出し、SRAがその流出分を吸入先宇宙から補填しようとしたからでしょう。

    [橋口研究員の後ろのスクリーン上に別の資料が提示される(以下に当該資料画像添付)]

    現実子流出内訳可視化.jpeg

    奥の鏡像を観測すればするほどヒューム値の低い並行世界が認識され、現実子は並行宇宙の数だけ流出する

    まさに一瞬で空白の世界にしたということです。その結論を得たのちに今回のSRAの異常挙動を考察すると、おそらくその世界に無数に空いていた穴のいくつかは私達の世界のSRAの物だったのだろうと私は結論付けました。

    [数秒間沈黙]

    SRAは諸刃です。今回の収容プロトコルとして、世界の全ての鏡の横にPSRAを化粧品よろしく置くわけにも行きません。そもそも銅ベリリウムはコストが高すぎます。

    だからといって対処法として反射率100パーセントの鏡を創り出せるでしょうか? 確かに我々にはそれだけの技術も、それを可能にするオブジェクトも保有しているでしょう。しかし反射率が100パーセントの鏡などそれその自体がオブジェクトと同義な存在は創れません。光を溜め込む次世代の二次電池か、超高温高速のレーザー砲か。どう転ぶかなど私たちには分からないのです。そもそも私たちに認識できるのか、色を持たない形を認識するとはどういうことか、100パーセントの反射を人間は観測できるのか、0パーセント反射と変わらないのではないか、私たちはこれを創り出して無事で済むのか、これ以上触れてはならないものに手を出そうというのか、今回のように宇宙の消し飛ぶ爆弾を抱えてなお、あえて手を出す勇気はあるのか? 問えば疑問は尽きません。

    鏡は鏡であり、表面に現実性異常は存在すれど、そのものに異常性など何もないのです。そもそも永遠に続く鏡像に興味を持たなければ大惨事を招くほどの規模では発現しない異常現象です。実際問題、普段の使用で対面に鏡を置いてまじまじと奥を覗くか、三面鏡をしっかりと平行に向かい合わせて利用する人がいるとは考えにくいでしょう。

    我々に可能な対処手段としては、思い込みが現実に現れる類のSCPということにするか、ただの邪説とするカバーストーリーを流布するくらいしかないのです。

    [数秒間沈黙]

    ここまでの研究結果を鑑みて、この実験は恒久的に停止されるべきであり、深淵を覗きうる技術を持つ何者からも秘匿される義務を持つと考えます。これはいわば希望のないパンドラです。私達は、改竄し、先延ばしにしなければならない。たとえ今も、財団内外問わず、鏡から微弱ながらも現実子が流出し、いつかは終焉を迎えるとしてもです。この事実が正常性維持団体以外に知られたとき、この世界は数ある死滅宇宙の仲間入りという未来に加速し続ける羽目になることは、想像に難くありません。

    [以下質問等割愛]

    «記録終了»


    付記: 発表内容の危険性から、出席者による質疑応答、意見交換ののち、各団体、総括を含む数名以外に記憶処理を施しました。この処置は出席団体の4分の3の賛成で可決されました。

    補遺3451-JP: 研究結果の公開
    田畑博士の発表した論文『鏡を用いた霊的儀式を発端とする鏡面及び周辺現実性の低下に関する鏡面反射率及び空間観測認知論の関係』を受け、レベル5以上の権限を持つ職員及び、専攻分野別代表博士会に提言を提出。
    研究結果・インシデントと照会を行なった結果、正式に理論として確立すると認められたため、GOCを始めとした、財団と協力関係にある各機関に正式に公布されました。なお、当理論は悪用の危険性が極めて高いため、閲覧要件にクリアランスレベル5以上かつO5評議会の承認を要すると設定されました。

    警告: 以下のファイルはSCP財団日本支部理事会の全会一致の賛成を要する最重要機密情報です。

    このファイルにSCP財団日本支部理事会の全会一致の賛成無しで行われるアクセス試行は記録され即終了処分の対象となります。

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      SCP-3451-JPの実態に関して


      訂正稿(暫定)

      本記事は、若桑博士、土橋博士の協力のもと編纂されています。

      アイテム番号: SCP-3451-JP

      オブジェクトクラス: Archon/Truculent11

      特別収容プロトコル(現行との変更点なし): SCP-3451-JPは、媒体である鏡が一般生活に拡散・浸透しているため収容されるべきではありません。現状で一般流通が可能な最大反射率を有する鏡を製造することで発現リスクを低減しています。

      合わせ鏡の状態に置かれた鏡面を発見した職員は速やかにその状態を解除し、発現条件の解消を行ってください。研究に携わる職員には、特定の思想概念を有さない人員が選定されます。研究は無期限に凍結されています。

      説明: 現在クリアランスレベル5に開示される報告書内の説明は後の調査状況から、“実験中に段階的な現実改変が発生したことで変質した異常性”が記述されているものと推測されています。


      インシデント発生の経緯

      当初、予測された異常性から、SCP-3451-JPの研究チームに充てられた人員は霊道思想に類する研究を行う人員で固められました。

      田畑博士の提言が示す通り、鏡面に当たる2次元空間上の現実性が基底現実よりも失われていることは、SCP-3451-JPの発見当時の状況から異常現象報告のあった各地の鏡面を観測した結果を参照し、概ね確実視されていました。

      田畑博士以下研究チームは、当観測結果を基軸として実験を重ね、理論を構築しました。その時点で判明している要素を検討した結果、研究チームの推測に矛盾が見られなかったため、財団は研究を継続・推進しました。その結果、UTC 20██/09/29 AM05:22:38に、世界各地で同時多発的な現実性崩壊インシデントである、インシデント3451JPが発生しました。

      インシデント3451JPを受け正式に調査が進行。田畑博士が理論を発表し、その理論を基に再現性実験を行った結果矛盾点が存在しない12ことから、正式に現行バージョンのオブジェクト報告書が編集、公開されました。

      これにより当理論は超常科学技術として一般的な理論と認定され13、SCPオブジェクトへの認定後にインシデント群を含む理論の詳細は最高機密となり、実験中に発生しうる問題への対策が世界規模になり得るため締結された『国際現実性保全協約』の影響で実験による常識再改変実験は凍結されました14


      日本支部理事会“升”は田畑博士の理論と実験で得た数値の"都合の良さ"に疑問を抱き、現実安定性ビーコン等を参照して実験内容の再調査を行いました。

      コメント: 理論の"都合の良さ"に関して


      私が疑問を抱いた点として、実験記録中に算出された現実性低下の理論値がある。無論、今回反射率の計算に用いられた計算式は単純だ。単純ゆえに財団の研究チームであれば予測と実測の誤差を限りなく小さくすることは可能だし、予測が正確であれば問題が生じないまま研究が継続されることは往々にして起こりえる。しかし、今回一連の実験記録3451-JPを精査した結果 “光の拡散による光度減衰が発生しない場合の数値を算出する” とする表記が発見された。

      この数値が無視されている限り、実験結果の誤差は鏡面の観測量が増加するにつれて大幅に広がっていくはずだ。つまりこの計算で算出された予測値に『環境要因と見られ、数値に問題はないレベルであるとみなされる誤差』程度しか発生しないのは異常の一言に尽きる。無論これが元からの異常性であった可能性は否めないが、ビーコンを調べた結果、現実改変が発生していることが確実であるため可能性は低いだろう。仮にそうだとして、この問題はSCP-3451-JPのうちで留まるものではない。今回発見されたことは徹底的な実証実験を行うに足る内容であると考える。しかし、現状『国際現実性保全協約』により研究再開の目処は立たない。

      以下は、再調査によって判明したSCP-3451-JPインシデントに至るまでの現実改変の疑いがある記録抜粋です。


      現実安定性ビーコンについて:
      サイト-74に配置されている現実性の揺らぎ、異常を感知する機器であり、サイト‐81██のビーコンは同型機です。現実性の強度を記録し、現実性の低下・現実改変事象を感知した場合は記録されます。

      SCP‐3451-JPは平常時、鏡面の現実性低下を引き起こしていますが、全ての鏡が普遍的にこの現象を持つため、現実安定性ビーコンに影響は記録されていません。

      現実改変資料.1: 財団による初発見事例で発生した現実改変。
      この事案では、合わせ鏡で維持された三面鏡を中心とした微弱な現実性希薄領域が発生していました。
      本来であればこの現象が鏡のみが原因であるとは限らないため、収容後にさまざまな再現性実験が行われます。しかし今回の場合、少なくともこの段階で、状況証拠から『現実性希薄領域は鏡を媒介に発生している』と断定されたことによりSCP-540-JPに見られる “低現実性空間における集団思考の蓄積” に起因する現実改変が行われていた場合、以降鏡のみでこの現象が観測されることになります。

      元から鏡以外・あるいは鏡では確認されなかった異常性であった可能性もありますが、現状それを確かめる術はありません。しかしながら私は、この発見事案と対応する時刻にサイト-81██の現実安定性ビーコンにて、現実性の局所的な揺らぎが観測されていることから、なんらかの現実改変が行われたことは確実であると判断しています。

      現実改変資料.2:

      ビーコン1.png

      資料1: サイト‐81██の現実安定性ビーコンの記録した、SCP-3451-JP調査記録1進行時の現実性の揺らぎ及び現実改変度。上へ振れるほどヒューム値15が低下し、色が赤に寄るほど現実改変度が高い。

      実験記録3451-JP.1進行時、サイト‐81██の現実安定性ビーコンはごく小さな振れを記録していますが、極めて低レベルの現実改変が起きたのみ(上添付画像 資料1参照)であり、人類存続に影響を及ぼさないレベルと判断され、データ上に記録されるのみで留まっていました。

      これは、“低レベルの現実性の揺らぎが比較的頻繁に観測されている” ことや “多くの場合で発生地点は財団内である” ことから記録のみが行われ、現在まで関連性が見いだされなかったものと推測されます。

      実験記録3451-JP.1に記述された内容から、研究チームと下部サポートチームは『合わせ鏡にした鏡面同士の現実性の低下』現象を理論的に説明するため、実験と並行して『鏡面にのみ二次平面的な現実性希薄空間が生まれる理由は反射率が関わっているためである。』という仮説を立てました。その結果、SCP-540-JPに見られる “低現実性空間における集団思考の蓄積” に起因する現実改変が行われたと推測されます。
      これにより、当初の鏡が持っていたと考えられるSCP-3451-JPの異常性は新たなものに置き換わったと推測されます。

      現在に至るまで、以前の異常性の詳細は判明していません。


      現実改変資料.3:

      ビーコン2.png

      資料2: サイト‐81██の現実安定性ビーコンの記録した、SCP-3451-JP調査記録2進行時の現実性の揺らぎ及び現実改変度。

      実験記録3451-JP.2進行時、サイト‐81██の現実安定性ビーコンはごく小さな振れを記録していますが、低レベルの現実改変が起きたのみ(上添付画像 資料2参照)であり、人類存続に影響を及ぼさないレベルと判断され、データ上に記録されるのみで留まっていました。

      実験記録3451-JP.2では実際に反射率97%の鏡を利用した実験が行われました。
      本実験では実験記録3451-JP.1を踏まえ、『反射率97%の鏡を用いた際に発生する現実性低下の理論値』を予測して観測調査を行いました。

      観測実験は実験記録3451-JP.1の通り、合わせ鏡にした事でヒューム値の大きな低下が確認されました。周囲の現実性が低下した中で予測を利用した観測を行ったことにより “低現実性空間における集団思考の蓄積” に起因する現実改変が発生し、本来観測されるであろう数値ではなく、予測の数値が観測されたと推測されます。

      これにより、当初の鏡の有していたなんらかの異常性の一部は、『“外的要因の排除を行なった理論値通りの現実性低下現象”が発生する鏡』という性質に置き換わったと推測されます。

      ビーコン3.png

      資料3: サイト‐81██の現実安定性ビーコンの記録した、SCP-3451-JP調査記録3進行時の現実性の揺らぎ及び現実改変度。

      実験記録3451-JP.3ではでは、実験記録3451-JP.2で理論通り急激なヒューム値低下が観測されたことで、詳細な数値の計測および、ほかの反射率でも理論が適用されるかを実験し、予測値と限りなく合致する数値が観測されました。
      本実験では実験記録3451-JP.2と同様に、『反射率88%の鏡を用いた際に発生する現実性低下の理論値』を予測して観測調査を行いました。

      観測実験は実験記録3451-JP.2中に変化したと推測される『”外的要因の排除を行なった理論値通りの現実性低下現象”が発生する鏡』という性質により、予測値と限りなく合致する数値が観測されました。

      現実安定性ビーコンで中程度の振れを観測したため観測場所に機動部隊が派遣されました。(上添付画像 資料3参照)

      発生アノマリーのうち1つに微弱な現実改変能力を持つ対象を発見し収容されました。今回の現実改変における支障はほぼ見られないと判断され、以降の実験にSRAを使用する事でアノマリー発生を防止する対応がなされ、本事案は収束、記録されました。

      現実改変資料.4:

      ビーコン4.png

      資料4: サイト‐81██の現実安定性ビーコンの記録した、インシデント発生時の現実性の揺らぎ及び現実改変度。極度の現実性変化によりエラーを起こした。

      サイト‐81██の現実安定性ビーコンは観測限界を振り切り、同時にインシデントによって消失したため正確な諸数値は不明です。(上添付画像資料4参照)

      インシデント3451JP発生時、『”外的要因の排除を行なった理論値通りの現実性低下現象”が発生する鏡』という性質に基づいた理論値予測をほぼ確信した状態で実験を開始。結果、SRAのワームホール投錨先の宇宙が消失。同座標宇宙を利用していた各国のSRAが一時的に機能を停止。インシデント3451JPが発生しました。

      その後に田畑博士が発表した理論は、正常性維持機関の検証による “低現実性空間における集団思考の蓄積” に起因する現実改変によって、現在のSCP-3451-JPの異常性になったと推測されます。


      上記の内容が判明したことにより、懸念点として、その他のSCPオブジェクトの実験中に現実性が低下していた場合、集団による度重なる現実改変を引き起こし、収容当初の異常性が消失あるいは変容する、あるいはすでにしている可能性が提示されています。

      インシデントSCP-3451-JPによるSRAの停止の影響でSCPオブジェクトが引き起こした現実性低下環境において、集団意識による現実改変が生じていると推測されるログが多数存在します。下記はその一例です。

      SCP-3480


      過去行ったSCP-3480インシデントシミュレーション手順に沿った対応の結果、算出された物的、人的資材の被害規模に概ね一致する結果が得られました。

      SCP-1280-JP


      過去行ったSCP-1280-JPインシデントシミュレーション手順に沿った対応の結果、算出された物的、人的資材の被害規模に概ね一致する結果が得られました。

      SCP-███-FR


      収容作戦に参加したSCPS乗組員への聞き取りの内容及び、SCP-███-FRインシデントシミュレーションにおけるSCP-███-FR船体の拡散速度を大幅に上回る拡散速度を記録した事案から、すでにヒューム値が低下したSCP-███-FR船体に対して、乗組員の大半が濃霧により観測不能状態のSCP-███-FRが消失してしまう、という系統の類似した想像をしていたことが、現実性拡散速度の加速という現実改変に至った可能性が高いと見られています。

      また、既に明確に以前の異常性と現在の異常性が変化していると確定し、自らが現実改変能力を有しているSCPオブジェクトとしてSCP-1308-JP、SCP-███、SCP-███-PTなどが挙げられます。

      むすび



       この実験において、SCP研究における重大なジレンマが浮き彫りになったと言える。

       研究職はそれぞれの分野のエキスパート達の集まりだ。よって、ある程度の原因予測の可能なSCPの研究にはそこに見合った分野の研究チームをつけるのが我々財団のセオリーである。

       今回でいえば、田畑博士と研究チームは科学や数学を用いることで、(それが低現実性空間内での現実改変によって無理やりに辻褄合わせがなされた代物であろうと) 確立した理論を導き出した。当初SCP-3451-JPは、“鏡面が二次元的な低現実性領域であるだけの鏡” でしかなかった。しかし今は “霊道に造詣のある人物が意識して鏡像を観測すれば基底現実の現実子が際限なく流れ出し、突き詰めれば宇宙一つが簡単に消滅する、超科学的に確立された論理を有する鏡” である。
       微々たる変化を積み重ねられ、その度仮定を修正し、その結果さらに正確な数値を導き、そしてそれを研究対象に対して無意識のうちに押し付ける。するといつの間にか真実は姿を変えている。インシデントすらも再発せぬよう論理的に解釈して、法の元に自らを雁字搦めにして、幻想を科学で塗り固めてしまう。今我々は、自らの手で作り出した幻を収容していると言えるのだ。

       しかしながら、財団とその理念の維持には理論構築やプロセスの明確化は必須要件であり、分類主義や合理主義に基づいてオブジェクトクラスや実験による異常箇所の発見、既知技術に照らし合わせて解明しようと試みざるをえない。今回のインシデント3451JPにおいても、ある程度のマニュアル化されたプロトコルに沿い、各々のインシデントシミュレーションは正確な数値を導き出した。初期ナンバーのオブジェクト群も収容保護に留まらず、多くのクロステストを経て異常性のメカニズムが解明され始め、様々な特殊部門の創設による細分化もなされた。当初はただ異常で危険、未知で不気味なだけの存在だったにも拘らずだ。

       しかしあろうことか、これら全てが理論で固めた虚構、幻想である可能性が浮上した。

       この事態に対し、現在財団は有効な手立てを用意できない。少なくとも実験申請の受理は、現実性の関わるオブジェクトを筆頭とした全てのオブジェクトでより一層の吟味が為されなければならないだろう。

       なお、SCP-3451-JPに類似する現象による影響の範囲は未だ予測の範疇を越えてはいないものの、現在まで████件が候補として挙がっている。

      桝.png

      20██年1月16日
      財団日本支部理事会
      日本支部理事"升"


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scp jp archon 異次元 概念 観測 儀式 現実改変 財団製 非実体 未収容


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