(書き終わり)Are You Cool Really? Never...

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静まり返った夕方の会議室、唐突に電話が鳴った。
足が勝手に動く。
クソ、なんなんだこいつ。
受話器の前に……?
おい、腕を伸ばすんじゃない。
これ以上不安要素を増やさないでくれ。

「もしもし」

クソ、なんでこう。

「やぁ、君が2ヶ月前にこのサロンに所属した田口君かい」
「そうです」
「こちらはアメリカングースのグレイス・ロバートソンだ。よろしく」
「これはこれは、よろしくお願いします」

なんで別サロンのメンバーが俺なんかに。

「君の絵を見せてもらったよ。非常にいい出来だ」
「ありがとうございます」

あぁ、あのデタラメみたいな絵か、今すぐ機動部隊を呼んで回収してほしいほど汚い絵だ。

「ついでに君のライブラリも見させてもらったよ。いい絵を沢山見ているね。どうやら私と趣味が合うようだ」

お前と同じ趣味なら死んだ方がマシだ。

「ところで、最近あの財団なる我々の活動を阻害する彼らに我々の最高傑作、サロンを超え知られる『寄生』が盗まれた事件を知っているかな」

『寄生』って、俺が実験中見ちまったあの絵か。
あの絵を見た限り自分の体に制御が効かない。
まるで操り人形だ。

「なんとか回収には成功したものの、今だに彼らは我々を馬鹿げた芸術家と罵ってくる」

当たり前だ、何を言っているんだ。

「”そこで”だ。我々の絵を罵る彼らには、我々の絵の素晴らしさを理解するまで魅せてやればいい」

おい。どういうことだ。

「今回君に連絡したのはそれが理由だ。決行は日本時間の19時に行う。今が17時だから2時間後か」

何言ってるんだ。

「いつでも我々の絵がヤツらの目に入るよう、財団の検索エンジンにどんなワードで検索しようと『閃空』の画像がヒットするというプログラムを用意した」

どういうことなんだよ。

「サイト-81██、サイト-81██、サイト-81██、サイト-81██の入り口付近にそれぞれ『修羅能』『酌時』『愚鈍』『龍光』の4つの作品を設置する」

サイト-81██って。あのサイトには。

「この作戦には君のような指導者が必要だ。かなり唐突ですまない。だがこれはいわゆる”試験”みたいなものだ。引き受けてくれるかな?」
「はい」

”はい”なんて言うな。

「そうかい。やはり君はそう言うと思ったよ。そういえば、君がハンコを押していたあの加藤君の絵がもうじき完成するらしいじゃないか」
「そうですね」

”そうですね”なんかじゃない。

「なんと言っても、テーマが『破裂死』なんて言うじゃないか。これこそ君が喜びそうだ」
「はい、非常に楽しみです」

お願いだ……今すぐ口を閉じてくれ。

「と、まぁ日本での活動は任せたよ。素晴らしい報告を期待しているよ」

クソ、なんでこんなこと。
あの絵さえ、見なければ。

あれは3ヶ月前、サイト-81██で行われた実験のとき。
俺はDクラスにこの絵をみるように指示した。
そしたら突如Dクラスがその絵を持ってこちらの方向に絵を見せてきた。
俺はその絵を見てしまったきり体の制御が効かずにサイトを抜け出し、なんとかAWCY?の仲間入りを果たしひとつのサロンに参加した。
それから俺の意志と反して、体は続々と絵を描き続けた。
全部俺の趣味に合うものではなかったし、元々油絵すらやったことのない俺の体が描く絵など酷いものだった。
あの時から3ヶ月、同じサロンのやつと批評会をしたり、色んなことを俺の体はした。
でも何故か全員ほぼ同じような性格のように見えた。
まるでクローンのように、口を揃えて意見を述べていた。

「おい、なんだ。やめ───」

唐突に受話器の向こうが騒がしくなる。
なんだ……?

「…クソっ、コイツの性質から何まで全部話す。いずれ制御が効く時がくる。コイツらが何十時間も俺らの頭を制御し続けるなんて無理だからな。その時は食事をするな、決して寝るな……排泄をやめろ──、そしたらコイツらの制御は鈍る。コイツらは複製された人格みたいなもんだ。これが殆どのAWCY?のメンバーに潜伏してる。お前がもし今制御されていないことに願って伝える。この情報を財団でもGOCでも何でもいいから誰かに伝えてくれ、俺は─────────」

おい、どうしたんだよ。

「…………はぁ、この体はもうダメだ。お前もな」

突如ツーツーと耳元で音が鳴り、電話が切れたことに気づいた。
どういうことだ。
アイツも俺と同じ状態なのか。
また足が動いた。
窓の前、ここは5階だぞ……
おい、……やめろ、開けるな。
動くな動くな動くな動くな動くな、やめろ、やめろ、やめてく────────────

「知ったお前が悪い」

なんで俺がそんなこと言うん……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
足は、動く。
手も動く。
だけど、痛い。
暖かい。
解放されたのか。
ヤツは出ていったのか。
受話器の向こうのアイツも今頃……
 
 
……何がCoolだ。
 



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