幸取豪奪

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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP‐XXX‐JPはサイト-81██にある低危険度物品収容ロッカーに収容されます。SCP‐XXX‐JP暴露者は標準人型収容室に収容され、担当職員は暴露者が重度・軽度問わず精神負担を示した時点でカウンセリングを行ってください。

説明: SCP‐XXX‐JPは87cm×69cmの油彩画です。古びた木造建築を背景に福谷 佑真氏1と思われる人物が描かれており、裏面には“題 「前世」 20██”と記述されています。

SCP‐XXX‐JPの特異性は、推測される条件下の男性2 (“暴露者”と呼称) の視認をトリガーとして発生する認識災害です。これはSCP‐XXX‐JPを複写・撮影したものであっても同様に発生しますが、実物を直接視認した場合よりも影響は弱まります。暴露者は視認後経過した時間に応じて精神異常を引き起こします。

時間の経過によってもたらされる認識災害の影響については以下を確認してください。
時間の経過 暴露者の様子
視認直後 SCP‐XXX‐JPに傾注する素振りを見せ、オブジェクトへの注目・接触を始める。
視認後 約30分経過 SCP‐XXX‐JPに対して一層傾注する。他の人間との意志疎通が可能な環境にある場合、出来る限り多人数にオブジェクトを鑑賞させるように働きかける。
視認後 約40分経過 前兆もなく突如昏睡する。
視認後 約5時間経過 昏睡状態から覚醒する。この時点でSCP‐XXX‐JPへの興味は消失し、精神状態が元に戻る。

以上の過程を経た後、暴露者に記憶への影響が現れます。暴露者が想起する過去の事象は一部を除いて異常な点が見られていませんが、記憶内の自分自身の容姿・音声等がSCP‐XXX‐JPに描画された人物 (SCP‐XXX‐JP‐Aと呼称) に置換されることが判明しています。その際想起された記憶内ではSCP‐XXX‐JP‐Aを背後から見下ろす視点に固定されます。この影響は永続であり、記憶処理による除去が不可能です。また、暴露者が再びオブジェクトを視認した場合には異常性が発現しません。

SCP‐XXX‐JPは2016/01/08に中井 徹氏が自宅内で縊首し死亡した件を契機に行われた家宅捜索中に発見されました。中井氏の自殺の原因はSCP‐XXX‐JPによる精神的負担であると推測されています。

以下は死体と共に発見された、中井氏が遺したと思われる文書です。

ごめん、母さん、父さん。この遺書を読んでいるということは、私はもう生きてはいないということですね。本当に急でごめんなさい。私がこうなるまでに至った経緯を一から話して2人が納得できるとは思わないけど、一応書きます。警察の方もぜひ捜査の参考にしてください。信じてもらえないかもしれないですけど。

大体1週間前の事でした。ふとスマホで通信販売サイトを眺めていると、『一点限り!!絵画福袋』みたいな商品名が目に飛び込んできました。値段は覚えていませんがかなり高額だった印象です。どうするか悩みましたが、元々アートには興味があったこともあり、「一点限り」の文言に引っ張られて衝動的に買ってしまいました。福袋は2日ほどで届きました。期待と少しの後悔を胸に早速開封してみると、そこには1人のみすぼらしい男の肖像画?がありました。

不思議な話ですが、それを見た時私は、何かにとりつかれたようにその絵に夢中になってしまっていました。本当に精神が操られているような感じで、無我夢中だったので、もう当時私が何を考えていたのか覚えていません。その状態からしばらく経つと、これも不思議な事ですがいきなり意識を失って、数時間後に目が覚めました。その時に、やっと我に返ることができました。ただ我に返るといっても状況がのみ込めた訳じゃなくて、もう何が何やらという感じで。そんな混乱の中、1つの変化に気が付きました。記憶の中の私が、あの絵の男に置き換わっていたんです。

自分でも最初のうちは何が起きているのか理解出来ていませんでした。だけれどあいつは不条理に、どんな思い出にも存在していました。家族でのインドネシア旅行の時、友人と馬鹿みたいに笑い合った時、██高校の合格発表の時、あらゆる記憶の私に見ず知らずの男が成り代わっていて。何だか心に喪失感だとかそういった感情が浮かんできました。それに、勘違いかもしれないですけど、あいつが現れるようになってから記憶の中の家族や友人たちが、それ以前に私が記憶していた時よりも楽しそうにしている気がするんです。いきなりこんな悪夢みたいな事が起こって、しばらくしてこれが現実だと受け入れた途端に奴への劣等感や憎悪の念が湧き上がってきました。ですが同時に、私の存在意義が解らなくなって、苦しくなって、ただただ嗚咽することしか出来ませんでした。

そんな中ある時急に、私(記憶の中ではあいつだけれど)に就職の内定通知が来た時の記憶が蘇ってきました。あいつは当時の私と同じように片手でガッツポーズをして大喜びしていたんです。でも、あいつはその後、背後で見ていた私の方に振り返って。満面の、狂った笑みを見せ付けてきたんです。そして、「ありがとう」って、露骨に悪意を含んだ声で言いやがって。それがもう耐えきれなかった。私は全てを諦める覚悟が出来ました。

ごめんなさい。あの時を思い出すのも辛いのでこれ以上詳しくは書けません。私も気が変になってしまっていて文章がおかしくなっているかもしれませんが、意図だけ汲み取ってくれるとありがたいです。そろそろ死ぬ準備に入ろうと思いますが、酷いですね。人生最後の日にすら思い出を懐かしむことが許されないなんて。

最後になりますが、これを読んでいる人にお願いしたいことがあります。自分で自分を思い出せなくなったこの私を、私、中井徹として覚えておいてくれませんか。母さん、父さん。私を思い出の中で、どうか生かしておいてください。よろしくお願いします。 それでは書きたいことも書き終わったので。

さようなら。


調査の途中、中井氏が生前SNSアプリにてSCP‐XXX‐JPを撮影した画像を投稿していたことが判明しました3。これを受けて当該投稿を視認した疑いのある人物の調査を施行したところ、4名の暴露者を特定・確保しました。4名の暴露者から更に影響が拡大しなかった要因として、視認したSCP‐XXX‐JPが写真を通したものであったため認識災害の影響が弱化し、他人にオブジェクトを鑑賞させようとする過程を辿らなかったことが挙げられます。関係者には記憶処理を施し、適切なカバーストーリーを流布しました。

以下は暴露者である堀江 颯太氏へのインタビュー記録です。

補遺: 2016/02/03、暴露者として収容されていた高橋 浩平氏が食事の配給に来た職員を殴打し、全治2か月の重傷を負わせる事件が発生しました。高橋氏は以前から粗暴な言動が指摘されており、度重なる注意が行われたにも関わらず生活態度が一向に改善されない事が問題視されていました。当事件を受けて臨時でインタビューが実施されました。


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