狐達の晩餐
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 午前8時30分、今日の御先稲荷の胸には葛藤が渦巻いていた。

 不機嫌さを表す髪の毛は7本に結われている。何かと焦っていたり落ち込んでいたりする時はいつもこの数に結われていた。サイト-8181の職員の殆どがその事を知っている。が、その職員達に彼女に声をかけようとする者はいない。皆、別の仕事で忙しかったのか、それとも単に"面倒くさい"という感情が勝っていただけなのだろうか。どちらにせよ今の彼女に話し相手はいなかった。

 それに加え、彼女が今どんな気分だろうと仕事を敷き詰められたスケジュールに変更はない。今日も彼女は混雑が落ち着いた頃に第3食堂を訪れる。今日の予定も普段通りの鬼畜っぷりだが、運に限ってはいつもより一段と嫌らしかった。豊富なメニューを並べる券売機は今日に限って殆どのボタンが売り切れランプを申し訳無さそうに光らせ、唯一残っているのは昨日も昼に食べた唐揚げ定食のみ。一応第3食堂の中では特別に絶品なのだが、最近は人気が無いのだろうか。来栖研究員だったら喜ぶかもしれないが、2日連続で同じものを食べるとなると少し気が滅入る。とはいえ贅沢は言ってられない。御先は諦めて唐揚げのボタンを押し、ウォーターサーバーから冷水をコップに注いで端っこの席に座ることにした。

 

 

 

「虎屋博士ですかー?」

 御先は今日も皿の上の唐揚げに一声かける。

「……」

 返事がない…ただの唐揚げのようだ。唐揚げに意思が無いことを確かめればもう食べて良いのだが、御先は箸をつけること無く、さっきコップに注いだ水を口につけ、そのまま机に肘をついて近くに飾られていた二匹の狐の絵を意味もなく眺める。死んだ狐を別の狐が食べている絵だ。こんな絵を食堂に飾った人が誰かはわからないが、少なくともデザイナーに向く様な芸術性の持ち主では無いだろう。

 御先は唐揚げに箸を伸ばす。少し冷めていたが、味はそこまで変わらない。

 御先は黙々と唐揚げ定食を胃の中に詰め込んでいく。何でだろうか、美味しいものを食べているのに憂鬱さがなかなか晴れない。やっと取れた折角の食事なのにひたすらゴムを噛んでいる様な気分だ。

 あの人はまだ来ない。いつもならこの時間に私を茶化しにやってくるあの足跡は聞こえない。

 いや、今は他人なんて気にしている場合じゃない。昼食の後はAnomalasアイテムの点検をまたやらないといけない。その他にも"清聴"の仕事が3件、それと膨大な書類の整理、その後は…

 …ああ駄目だ。どうしてもあの人の事が気になって仕方がない。

 ああ、ダメだ。

虎屋博士、」

 どうして死んじゃったんですか

 目から涙が、腹から唐揚げが、心から悲しみが溢れ出す。


「えっと、確かイナゴの佃煮が余ってたはず……」

 結局空腹に負けた御先は警備員の目を盗んで食堂の冷蔵庫を漁り始めた。

「あ、昨日作ったおかずの余りならありますよ」

「あ、ありがとうございます…って」

 山から降りた狐はすぐに猟師に見つかったみたいだ。


twitterで散々投稿するって言ってdr_torayadr_toraya様からも反応を貰ったくせに(ごめんなさい…)全然進まなかったyukiharayukihara様著作の狐達の夜の続編の妄想兼虎先×弟の食料品Tale。


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