8080_8080-2 SCP-××××-JP 愛麗絲

アイテム番号: SCP-××××-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-××××-JPはサイト-8102の生物型オブジェクト収容区画に設置した縦5m×横5m×高さ5mのガラスケースに収容します。ケースの側面には3つの給水器の飲み口を取りつけて固定します。床面と複数の登り木には絹と長繊維の綿わたを使用した厚さ12cm〜20cmまでのクッションを隙間なく敷き詰め縛りつけてください。1日2回、餌としてウシ亜科(subfamilia Bovinae)に分類される哺乳類の骨を700g与えてください。給餌の際には給水器のポーションを取り替えて、中身の残量を必ず記録してください。取りつける順は向かって左から王水、水、水銀です。実験またはオブジェクトからの要求があった際には1日に3種、合計300gまでのおやつを与える事が許されています。1ヶ月に1度は使用機器のメンテナンスを行ってください。

説明: SCP-××××-JPはオマキニシキヘビ属(Morelia)に近い形態の生物型オブジェクトです。全長約3.5m、体重約77kgです。全身は白くなめらかな磁器で構成されており、光に当たると表面に虹色の光沢と、劃花¹を用いたと思われる鱗の凹凸が確認出来ます。上顎と下顎の体色に差異はありません。体表には酸化コバルト(II)(Cobalt(II) oxide)と思われる青い顔料を用いて様々な植物が描かれています。この植物は現在地球上で生育しているどの種にも当てはまりません。頭部から2.5cm下がった背面には同じく青い顔料で"愛麗絲"と書かれています。通常の陶磁器よりも比較的目立つ位置にあり、オブジェクトに対してこの語句を用いて呼びかけると良好な反応を見せる事からこの"愛麗絲"はオブジェクトの製作者ではなくオブジェクトそのものを指すと推測されます。

性格は「犬よりも鋭く、猫よりも気まぐれ」と称されています。多種多様な毒物・劇物を用途に合わせて細かく使い分けます。

以下はオブジェクトの異常性を調査するため行われた実験記録の一部です。実験はすべて博士1名、研究助手1名、警備員2名の立ち会いの元、実験用チャンバー第13室にて行われました。

+ 実験記録を開く

実験記録1 日付1977/07/07

実験担当者: 剣持博士。

対象: 実験用マウス1匹。

実施方法: SCP-××××-JPから採取した毒液を注射する。

結果: 変化なし。

メモ: やはり異常性を含むのはオブジェクト本体か？

実験記録2 日付1977/07/07

実験担当者: 剣持博士。

対象: 実験用マウス1匹。

実施方法: SCP-××××-JPをチャンバー内に入れ、対象を終了するよう指示する。

結果: SCP-××××-JPは指示を出した剣持博士を自らの尾を横薙ぎにぶつけて吹き飛ばした。博士はチャンバー内の壁に激突。命に別状はなかったが骨折と内臓の損傷箇所が多かったため、財団医療部門は博士に対し、これ以降の実験はモニタリングと記録および分析のみの参加とするよう勧告した。

メモ: 口は禍の門。

実験記録66 日付1979/05/26

実験担当者:美作みまさか研究助手。

対象: 実験用ベンガルトラ1匹。

実施方法: SCP-××××-JPにおやつ(蜂蜜/50g)を与え、対象を終了するよう指示する。

結果: SCP-××××-JPは対象とおやつを無視。チャンバーの隅でとぐろを巻き静止した。この状態が約8時間続いたため実験は終了した。

メモ: 話にならない。現段階で用意出来る実験用の生体はこれで最後だったのに。

実験記録67 日付1979/06/09

実験担当者: 美作研究助手。

対象: 剣持博士。

実施方法: SCP-××××-JPにおやつ(蜂蜜/50g)を与え、剣持博士を治療するよう指示する。

結果: SCP-××××-JPはおやつを摂取しながら尾を床に激しく叩きつけたため予備のおやつ(桃、檸檬、ナッツ/合計250g)を追加。SCP-××××-JPは出されたおやつをすべて摂取すると、対象の頸部に噛みついた。オブジェクトが離れてすぐに対象は全身に激しい痛みを訴えながら痙攣し悶絶したが、その2時間後に全快した。実験後に検査を行ったところラグスクリューが骨から排出された上で折損、肝機能を担っていた中空糸膜式濾過モジュールは新たに生成された肝臓に押しつぶされるかたちで破損していた。後日、破損した器具の除去手術が行われた。

メモ1: やはりあのとき医務室のベッドでひらめいた仮説は正しかった。リノリウムの床に染みついたあらゆる薬品の臭気がすべてを教えてくれた。あの毒は誰かを傷つけるためにあるんじゃなかった、オブジェクトもそれを望んではいなかったと。※3年目にしてはサマになっていたよみい君。

メモ2: 誰がみい君ですかやめてください。

メモ3: ご自身の職務に対して意欲的なのは結構な事ですが、今回は運がよかっただけです。次にわたくし共の勧告に従わなかった場合は処罰の対象となります。──財団医療部門・整形外科主任██

実験記録71 日付1979/03/09

担当者: 剣持博士。

対象: D-6588。

付記: D-6588は逮捕時の傷から破傷風を発症した事により左肩から先を切除している。
実施方法: SCP-××××-JPにおやつ(皮つきの柘榴/50g)を与え、対象を治療するよう指示する。

結果: SCP-××××-JPはおやつをすべて摂取すると、対象の頸部に噛みついた。約50分後に対象の腕は完全に再生したが、対象は治療中の激痛についてSCP-××××-JPをなじり唾を吐きかけたため、SCP-××××-JPは再生した左腕を噛みちぎった。対象は傷口から激しい痒みを訴え約18時間かきむしった。

メモ: 口のきき方には気をつけろとあれほど言ったのに。

+ インタビュー記録を開く

対象: SCP-××××-JP-2α

インタビュアー: 美作研究助手。

<録音開始>

美作研究助手: これよりインタビューを開始します。まずは自己紹介からいきましょう。あなたは自分が何者であるか説明出来ますか？

SCP-××××-JP-2α: 今さらいらないだろう。僕だよ、剣持だよ。

SCP-××××-JP-2α: そんなのあんまりだ。頼むよみい君、信じてくれ。

美作研究助手: 誰がみい君ですかやめてください。

(2分間の沈黙)

美作研究助手: えっ。

SCP-××××-JP-2α: うん？

美作研究助手: まさか本当に、博士なんですか？

<録音終了>

終了報告書: [インタビュー後、特に記述しておくことがあれば]

補遺: SCP-××××-JPは1976年に没した世界的美容研究家████の寝室より発見されました。当時の検死報告書によると██女史の死因は心臓性呼吸不全であるとされています。当該オブジェクトは鳥籠を模した銀製の豪奢なケースに入れられており、餌皿の隣には宛先・差出人不明の手紙が入った額が飾られていました。以下は手紙の抜粋です。可能なかぎり原文の表現を残していますが、可読性を高めるため適宜ルビを加えています。

我らの姬ひめを汝に預ける。
(中略)
姬は數かずある品の中でも隨一の、可憐、多彩、淸廉なる我らが娘である。一介の身で一介ならざるものを慾ほっするなら、相應そうおうの代償を覺悟せよ。我らが、そして姬が與あたえうるは奇蹟ではなく助力である。
(中略)
我らが薄月の君は、汝の脆くもいみじき親愛の情を所望である。我らの、そして汝の目に見えぬそれを、姬は詳つまびらかに明かすだろう。
(中略)
忘れるなかれ、汝が何の上に立っているのかを。
大正十年七月七日、迪化街てきかがい一段六七號・民藝埕みんげいていの窗邊まどべより。

Footnotes

1. 陶磁器の装飾技法のひとつ。竹ヘラなどを使用して細かな文様を浅く彫りつける。

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