老翁再起
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背骨の歪んだ翁が一人。里山の畦道を急いでいる。
水路には小魚の群れが泳ぐ。真夏の太陽は彼だけを照らす。
蝉の声。清い水面の流れ。揺れる若稲。襤褸案山子。
今は無き日本の原風景そのものであった。
翁の足は止まらぬ。
汗が全身を濡らし、地面へと垂れていた。
ほんの少し前、古家を出た彼だ。
彼の目的はただ一つ。
それは勿論畑作業だとか家畜の世話ではない。
村の集まりでもなければ誰かに呼ばれたわけでもない。
鉄だ。彼だけが知る良質な鉄の堀場へと向かっていた。
彼は代々の鍛冶の仕事を継いでいた。
彼の父親も、その父親も、その祖父も、その曾祖父も。
皆例外無く野鍛冶であった。
流れは美濃の一派らしいが、それは疾うの昔に失伝していた。
以下老人が命をかけて生涯一本目の刀を打ち上げる。
その刀をさも名刀のように精密に描写する。
その際切れ味だけには明確に触れないようにする。
頑丈さについてはむしろ積極的に描写する。
最後は博物館に飾られてるオチ。
その最後のリンクはアノマラスの切れない刀に繋ぐ。
- portal:6925720 ( 15 Oct 2020 11:39 )

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