遺志
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何回カレンダーを見ても、今日は5月4日だった。

ベッドから出る右足の形容しがたい部分に少し痛みが走る。昨日も現場の任務だったから仕方ない。今日は休暇を取っていたが、気分は弾まない。そりゃそうだ。

まだ記憶補強剤の抜けきらない頭で事実を反芻する。届いた知らせ、そこに虚偽が無いことなど自明だった。

「葬儀、か。」

財団に勤務してから死、と言うものの存在は頭の中でだんだんと軽くなっていった。しかし、ただの一般人で、かつての親友だった彼の死はそんなものを跳ねのけて俺の心に暗い影を落とす。

エージェントと言う職業柄、忙しくてあまり時間が無かったのもある。自分が身分を隠すことに罪悪感を感じていたのもある。それでも、彼が死ぬ前には一度会っておきたかった。

溜息もつかずにネクタイを締め、黒いスーツを着る。普段来ているものとは、違和感のある違うスーツ。葬儀の場に着慣れているとはいえオブジェクトの血に濡れたスーツを着ていくのは、どうしても出来なかった。




その葬儀場には異様なほど人がいた。そのせいで重苦しいはずのこそこそ話が積み重なり、不謹慎みたいな賑やかさとなっていた。彼が社交的な人柄という事はここに居る全員が知っているだろうが、まさかこれほどとは誰も思わなかっただろう。


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執筆者: Dr_kuronecko
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最終更新: 07 Feb 2021 02:56
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