※人間はよく噛んでお食べください

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いよいよこの年、2048年がやってきた。相も変わらず地上の方は音だけで分かるくらい元気だ。居場所として作った地下の空洞に響く。居場所は少し広いくらいが丁度いい。まあそれもすべて俺のためにあるのだから悪い気はしない。

「なんで怒りに任せて当分味見しかしねぇなんて言っちまったかなぁ…」

小さく溜息をつく。クソデカ溜息とかつくと地震になるから仕方ない。別にがっつり食わないと死ぬ、という訳でも無いが怒りに任せて年に一度の楽しみを捨てちまったのが不味かった。おかげでこの50年は苦痛でしかなかった。空腹というものが一応存在するのもその一因だろう。性質から餓死するほど苦しまないのは不幸中の幸いというやつだろうが辛いものは辛い。

しっかり合意の上でないと食えないというのも自分ながら馬鹿馬鹿しい。味見みたいな感じで毎年行けるようにしておけばこんなことにはならなかったものを。何で自分はこうも選択を誤るのか。

とまあ後悔をしていても結局何も変わりはしないし、そろそろ時間みたいだから準備をする。今年は全部残さず捧げるとのことだ。昔の裏切りを反省したのだろうか。まあそんなことはどうでも良い。口を開け、タイミングを見計らって、ここだ。

頬にざらざらとした砂が当たる。久しぶり過ぎて忘れていたがやはりこの感覚は好きになれない。しかしこれからの事に比べれば些細な事だ。

いただきますの言葉も言わないうちに口の中につぶつぶとしたものが流れ込んでくる。供物。供物。供物。かつての感覚が蘇る様な気がしてきた。上にはもう誰も残ってはいない、約束は守られたようだ。

土の中に潜り、懐かしい味を噛み締める。くちゃくちゃ、くちゃくちゃと音を立てながら噛めば口の中に濃い味わいが広がる。やはりこれだ。もう怒らない。ありがとう人間社会。

くちゃくちゃ、くちゃくちゃ。


くちゃくちゃ、くちゃくちゃ。


くちゃくちゃ、くちゃくちゃ。


ドゴオッ!!

その時、天井に穴が開いた。穴から何かが勢いよく俺の口の中に突っ込んで来る。口の中の人間に嵌り、汚い音が鳴る。突っ込んできたそれは異常に硬かった。親切なサプライズではなさそうだ。本当にあいつら裏切る気しか無いのか?一体何なのかを確かめるべく、一度ブドウの種みたいなやり方でそれを口の外に出す。

あらかじめ開けておいたスペースに、紫色のソレが吐き出された。

「俺は児童加虐者断罪戦士ジャッジング・バイオレットだ!いよいよ人格形成も本番となってきた青年たちを傷つけるお前の行動は看過できない!」

「は?」

吐き出したそれはどう考えても頭のおかしな人間だった。いい歳してなんとかバイオレットと名乗っているあたり間違いないだろう。まず一番おいしい時期の高校生ではない。声からしてどう考えても20代老いている

その時、バイオレットの右肩が喋った。

「必要も無いのに嗜好のために青年を食らい、未来を奪ったお前に相応しい最期は…」

何かが来る、そう直感した。無駄に大きな図体を左に傾けると、さっきまで俺の方があった場所にバイオレットが右腕を前に出して突っ込んできた。バイオレットの激突した土がガガガと音を立てて崩れ落ちる。思わず咥えていた物を吐き出す。まだ食えそうだがあまり気分は良くない。

「中々やるな、だが次は外さない!お前は元超電救助隊の名にかけて殺す!」

バイオレットはただ頭のおかしい奴ではなく、実力も多少はあるようだ。しかし、俺はそれより先にこの野郎を絶対に許してはいけないと考える理由があった。

「おい。」

「何だ!人殺し!」

「お前、俺が必要も無いのに人を食った、と言ったな?」

「どこに間違いがあると?」

溜めていた怒りを、ぶちまけた。

「全部間違いだよ全部!毎年一回しか何も食ってないんだぞ!?空腹が普通より薄いとはいえ楽しみ捨てるなんてできるわけないだろうが!!えぇ!?しかも今年は50年ぶりだぞ!!」

「全てお前の自己満足だ!」

「ふざけんな!!お前どうせアレだろアレ!働く前に10秒チャージ██ゼリーでも飲んでるんだろ!!食の良さとか理解してねえのか!!どんな精神してんだ!!」

「子供をそんな理由で殺すお前の方がどんな精神してんだ!」

これ以上こいつと話しても無駄そうだ。小さく腹の音が鳴る。ただこのまま居座られるのも面倒だし、こいつ本気で俺の命狙ってきてるし、死んだらもう何も食えないし…

ドゴオッ!!

さっきとは違う場所にまた穴が開く。俺のマイホーム壊しすぎだろ地上げ屋か?今度はベージュっぽい色の似たようなヤツが現れた。本当に警察に通報した方が…警察俺の事取り締まる側だな、生徒食ってるし。早く食わせてくれ、本当に。

「悪を懲らすだけが正義じゃない!チカラでは救えない人たちがいる!」

ベージュの男は機械みたいな声でそう言った。いや本当に機械なのかもしれない。どちらにせよこいつは何なんだ。バイオレットと同様っぽい見た目だが。

「おい!お前本隊の人間だろ!何してんだよ!」

やはりバイオレットと知り合いだったようだ。最初に言っていた組織の本隊の人間、という事だろうか。うん、分からん。それにしてもこいつは何がしたいんだ。チカラでは救えない?こいつは襲ってこないのか?

「お腹を空かせた人がいるならば!今日のメシが食えない人がいるならば!」

「食える食えるそこにあるから。お前が知り合いのそいつをどうにかしてくれれば落ち着いてご馳走食えるんだわ。」

「おのれこの期に及んでまだ食おうとするとは!!」

「腹を満たすのが俺の使命!そして俺の正義だ!!」

こいつら話が通じねえ。話聞いてくれよ。俺攻撃力無いんだよ。姑息な生き方してる時点で分かるだろ。分かってくれよ。

出動!! 超援調理師ミーレイド・カーキ!!

こいつはカーキというらしい。ただ今はそんなことどうでも良い。カーキは俺の目の前でさっき吐き出した死体を料理し始めたのだ。

「クッキング・コンバーター起動!待ってろよ!今メシを食わせてやる!」

やっぱこいつ本当に俺に飯を食わせる事しか考えてない。確かに生ではなく調理されたもの、というのも新しい美味しさがあるかもしれない。問題はバイオレットの方だが。

「なんであんな奴に料理なんて作るんだよ!!話聞こえてんのか!!おい!!」

「黙れ!!お前もクッキングするぞ!!」

…大丈夫そうだった。料理されてもバイオレットは不味いだろうから食べない。あとは待とう。

「中々旨そうな匂いがするn」

「この世から貧困が無くなるまで!俺は!メシを!作り続けよう!」

俺の言葉を遮るように叫んだカーキは俺の顔めがけて飛び込んでくる。大きく口を開けて、準備をした。カーキが手に持っているのは供物を材料にした様々な料理。どれも多少重そうだが、旨そうなものばかりだった。唯一の心配事であるバイオレットは既にうずくまっている。

料理が口に投げ入れられた。旨い。普段食ってるやつより旨い。マジで3年に一回くらいの頻度で来てほしい。このサクサクの食感が堪らな…あっ、まずい。

体中に寒気が走る。それは自分の失敗を理解したからだったが、その後体中に来た不快感はそれが原因では無かった。体が支えられなくなり、倒れる。

カーキは俺の顔の近くに来て何かを叫んでいる。必死そうな顔だ。なんだよ、わざとじゃないのか。

意識がどんどん消えていく。俺小麦粉アレルギーなんだった。


tale jp 超電救助隊hero



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執筆者: Dr_kuronecko
文字数: 3471
リビジョン数: 34
批評コメント: 5

最終更新: 05 May 2021 12:58
最終コメント: 05 May 2021 12:58 by yzkrt

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