1998年、ショッカー
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1998年の下半期は、総じて特撮に携わる者にとってはすわり・・・の悪い時期だった。

全ては1998年の初夏から変わった。ポーランドに現れた出来の悪いコラ画像のような怪獣(しかしセミが集合するというアイデアは中々に画期的だった)は、この世のネジを外してしまった。現実と空想の間に存在したヴェールはとうに取り払われ、無駄に規模の大きい科学特捜隊の構成員が街を闊歩していた。

そんな中、特撮界隈は非現実と現実の融合の影響を最も受けたであろう界隈だった。しかし民衆は政権が、科学が、暮らしが変わってゆくその大きな流れに目を奪われその苦悩に気付くことは無かった。




藍崎慎一はこれまでもこれからも憂鬱な日々は続くと見立てていた。特撮を仕事の主とするシープロダクションの社員である彼は、今まで何本かの特撮映画を製作しかなり高い興行収入記録を叩き出して来た。そんな彼が今無力感に支配され、不満を曝け出す元気も無い程に弱っている理由は今このプロダクションにいる人間どころかこの世界に生きる人間なら誰もが分かる話だった。

「だからもう良いんだ。世界自体が大きく変遷を遂げている中で、俺達だけが甘える事なんて許されない。それが国民の総意なんだろ?」

スマートフォンを弄りながら藍崎は言う。拗ねた子供のようなその反応は彼が既に疲れ切っていることを示していた。スマートフォンの画面にはシープロダクションなんかより余程大手の特撮会社が製作した映画の評判が映し出されていた。そこにあるのはヴェール崩壊前には有り得なかった程の酷評である。

「拗ねてるだけじゃ何も始まらないんだよ、藍崎。いつものお前らしさは何処に置いてきたんだ?」

藍崎の同僚であり、プライベートでも親交がある萩尾は諭すような声で言った。彼の表情にも疲れは浮き出ていて、それにも関わらず何故自分のことを励ませるのか藍崎にとっては疑問でしか無かった。

「お前の思う俺らしさなんて半年前で死んだんじゃないのか?今じゃ電話を取ることさえ怖いし、映画もドラマも作っちゃいない。」

「ああ、電話を取るのが怖いのは分かるさ。今かかってくる電話なんて9割契約取り消しだしな。だがそれが特撮作品を作らない理由になるか?」

「理由なんてそれだけじゃないさ。これを見ろよ。」

話し込んでいたせいで画面の暗くなったスマートフォンに素早くパスコードを入力し、さっきの映画評論サイトを映し出す。そこには手厳しいの域を超えたような批評が書き込まれていた。それだけを見ればただの迷惑な評論家気取りのように思えるが、平均評価が☆1.8である点からそのような考えを持つ人が大半であることが証明されている。

「『世界が変化していっている中でこんな古風な内容では面白くありません。敵が現実改変者である確証もないのに突っ込み罠にはまるヒーローには終始イライラさせられました。☆1です。』だとよ。


tale jp 1998



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執筆者: Dr_kuronecko
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最終更新: 11 Jan 2021 04:00
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