跡継ぎ争い
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そこは一見会議室の様だったが、会議室の一言で説明を済ませるには全てが異質すぎた。中央に置かれた洒落た茶色の長机は、一面を白に塗りつぶされた壁と比べやけにミスマッチだ。長机の周りを囲むようにしてスーツを着た者達が座っている。口を開く者は一人もおらず、それがこれから何が起こるのかと言う不気味さを出していた。

その部屋の隅には幾つもの牢が置かれていた。フィクションでしか見られないような、奴隷売買で使われるような牢である。一つの牢の中には必ず一つの人影があったが、それが今意思を持って動いているかどうかはそれぞれだ。如何にも抵抗するぞという顔立ちの者は全員意識を失っている。勿論寝息のように小さな息をしているので死んではいない。意識がはっきりしている者たちは一切喋らず、目には各々が困惑や恐怖、そして辛抱の色を浮かべていた。

そんな牢など見えないかの様に牢の方を向かないスーツの男達の間には、重苦しい雰囲気が漂っている。原因は明らかだった。机を縦に挟んで座る二人と、その派閥に所属する者たち。互いが互いを牽制し合うような構図である。それがこの誰にとっても得の無い沈黙を引き延ばしているのだが、それを破ろうとするものは中々現れなかった。

そして遂に沈黙は破られた。沈黙を破ったのは向かい合う二人のうち一人、年上と思しき方だった。整えられた白髪は老いをあまり感じさせず、所謂「仕事が出来る」雰囲気を醸し出していた。彼の一派にはいかにも私が重鎮だという顔をした六から七十代程度であろう者達が集まっている。

「それでは、只今より役員会議を開始する。」

元から引き締まっていた空気は更に引き締まり、窒素などが悲鳴をあげるほどにまでなった。しかし彼らはこの雰囲気に慣れているかのように眉一つ動かさない。

「皆も既に言っていると思うが、先日、ずっと我らが████葬儀社を経営していた親父、いや、鈴木社長が亡くなった。」

彼の口から出たこの場に似つかわしくない「親父」という言葉は彼自身も出そうとした物ではなかった。それだけ優秀に見える彼も困惑し、悲しんでいるということだった。それを知ってか知らずか、空気が悲しみに澱んでいく。数人は今にも涙を流して泣き喚いてしまいそうな表情だった。

話はその後も続いた。彼がもう一度似つかわしくない表現を使わなかったのは流石と言った所だろう。堅苦しく出来るだけ反感を買わないように構成されたその文章は、最後に放たれたたった一文で纏めることが可能だった。

「よって我々は、新たな社長を選出しなければならない。」

牢の中の人々が我々は一体何を見せられているんだ、という顔をしている。しかし彼らにとってこの社長決めは己の進退を賭けた陰謀の渦巻く真剣勝負、いやデスゲームなのだ。その戦いの中心に居るのが向かい合った二人であることは言うまでもないだろう。

「私は今は亡き社長の長男であり、


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執筆者: Dr_kuronecko
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最終更新: 28 Jan 2021 09:57
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