小樽博士は寿司が分からぬ

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「要注意団体への潜入、ですか?」

たった今サイト管理官に告げられた辞令を、俺はオウムの様に繰り返した。

「ああ。今回は小樽博士、君が適任という事になった。」

「お言葉ですが、潜入なんかはエージェントの方が適しているのでは?」

自分に潜入なんてものが回ってくる時点で恐らくまともではない、何かとても面倒なものだ。こんな言葉でどうにかなるとは思っていないが、少しだけでも抵抗の意思を見せておく。

「確か、君はSCP-1644-JPの調査を行ったことがあったね。」

予感は見事に的中したようだった。あのオブジェクトが出てくるということは。

「ズバリ、君はGoI-8134''闇寿司''の潜入班に配属されることになった。」

やはりか。闇寿司。最近勢力の広範さにより要注意団体へと再分類された団体だ。奴らはその勢力の大きさから財団内じゃちょっとした話題になることもあるが、奴らが他のどんな団体よりも頭がおかしな連中であることを俺は知っていた。

「それなら、D-1028などの方が良いのでは?より核心に近いSCP-1134-JPに関わる人材ですし…」

「残念だが、彼は闇寿司に対して面が割れていてね。何でも、光のスシブレーダー、だのとよばれているらしい。」

管理官は面白がっているような様子で首をすくめた。まあ俺に回ってくる時点で、という何度目かの思考を回す。

「まあそういうことだ。細かいことは実地で既潜入班にでも教えてもらってくれ。」

投げやりに聞こえる管理官の言葉。諦めとも覚悟ともつかない何かが、俺の中で渦巻いていた。


あれから1週間と少しが経った。思ったより闇寿司の構成員と関わる機会は少なかったし、任務も言うほど多くは無かった。結局やることはあまり変わっていない。少し情報収集の時間が増えたくらいのものだ。

形から入るを具現したような、もう見慣れ始めた黒い廊下。そこを歩いていると、突然後ろから肩を叩かれた。

「おい。」

見ると、30代前半あたりと思しき男が立っていた。財団の関係者ではなさそうだ、つまりこいつは闇寿司側の人間だという事になる。

「お前、よくも俺の寿司を…」

男はどうやら俺に対して恨みがあるようだった。慌てて足元を見るが、寿司は踏み潰していない。興奮しているようだし、丁寧な口調で言ってみる。

「あの、人違いでは?」

「とぼけるな!お前が潰したんだぞ!俺の最高傑作を!この寿司殺しめ!」

まともに話が出来そうもない。教えられたあの言葉を思い出し、出来る限り冷静に言う。

「あなたが何を言っているのかは分からないが、私に恨みがあるのなら、寿司で勝負すればいい。私に勝てば聞いてやる。」

こんな馬鹿馬鹿しいセリフを吐くときが来るなんてな、と心の中で苦笑いする。続いてよく笑わずに言えた、と自分を心の中で称賛する。ここの寿司狂いどもは勝ちさえすれば丸め込めるらしい。

「上等だ!」

男は叫ぶとどこからともなく土俵を引っ張り出してきた。それとともに今から自分が「スシブレード」をしようとしていることを再確認する。

胸ポケットには拳銃を忍ばせてある。こいつが寿司扱いされるのなら負けてもなんとかはなるだろう。だが、騒ぎを大きくはしたくない。内ポケットから箸、湯呑、そして財団謹製の寿司を取り出す。

3、2、1、へいらっしゃい!

相手の繰り出した寿司は炙りキャラメルカツオのようだった。事前知識がなければ理解できなかっただろう。それに対し相手の男は酷く困惑していた。

「なんだ、その寿司は!」

土俵に放った私の寿司。それは誰がどう見ても我々、財団のマークだった。

「お前、まさか財団の回し者か?」

「答える必要は無い。」

「だが、そのマークという事はおそらく守備型!財団に俺の攻めの寿司は負けない!」

炙りキャラメルカツオはさながら「∞」をイメージさせるような軌道で私の寿司に攻撃を仕掛けている。その衝撃で、ロゴの矢印が棘のように炙りキャラメルカツオに刺さった。

相手が驚いた顔をする。隙だ。動きの鈍ったところに、三枚刃で斬りかかる!

生々しい気味の悪い音がして、相手の寿司が砕け散った。

「うわっ!」

男が漫画のような倒れ方をする。砕けた寿司は食わなくていいのだろうか。SCP-1134-JPの異常性が変化しているのかもな。

一先ず、財団ロゴを見たこの男には忘れてもらわなければなるまい。簡易記憶処理機を取り出そうとすると、男が言った。

「待て。」

「何だ?」

「あんた、財団ロゴの握りの使い手なんだろう?俺は一つ、それに関する面白い話を知っている。」

先人たちがここで残した功績だろうか。それとも財団の人間に対する警鐘か。少なくとも、聞く価値はありそうだ。

「そいつは極限まで進化すると、ハンバーグすらも超越したステーキになれるらしい。あんたが財団の人間なのかは知らないが、もしそうならそんなものより伝説のスシブレーダーを目指してみないか?」

呆れにも似た溜息が自然と出る。

「なるわけねえだろ。」

記憶処理機を作動させ、相手が気絶したのを確認する。後は誰かが見つけてくれるだろう。

俺はSUME-CIへと踵を返した。


tale-jp 闇寿司 財団職員id_c



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執筆者: Dr_kuronecko
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最終更新: 31 Dec 2020 03:45
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