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私は何回これを繰り返したのだろう。
何度も、何度でも、我が子を救う代わりに様々な方法で殺され続ける。何回か繰り返せば解放されるかもしれない、なんて希望は200回を超えたくらいで捨てた。
拓也を突き飛ばし、自分は転ぶ。横からトラックがブレーキ音を響かせながら突っ込んでくる。
それでも、私は闘い続けている。最初のうちは慣れなかったがもう吹っ切れた。一度我が子を守るために死んだのだ。私は何回死んでも変わらない。
走ってくる黒服の男から拓也を庇う。背中に刃物が突き刺さる。
幸いなことに、段々とこの現象の攻略法が分かってきた。この現象は必ず私の子供を殺しに来るが、私が身代わりになればそれは必ず防げる。
一人分の血清を惜しむことなく拓也に使う。毒が回り、手足から頭に痺れが広がってゆく。
つまり、覚悟さえ決まっていればどうということは無いのだ。
川から拓也を摘み上げ、上で待機している人に託す。泥水が口と鼻に侵入し、流れながら沈んでゆく。
どこか見慣れた光景が広がっている。囚われる前の記憶から、一つの結論にたどり着く。
ここは我が家だ。
とうとう帰って来たのだ。ここに。きっと元に戻ったのだ。何もかもが。もう拓也の命が脅かされることも、私が殺されることも無いのだ。
思いっきりベッドに飛び込んで、久々の感触を味わってみる。体は疲れていなかったが、すぐに眠りに落ちてしまいそうだった。顔の部分に少し湿った感触を感じる。泣くのがベッドに癒されてる時だなんて、少しかっこ悪いかな。
ピンポーン。唐突にインターホンが鳴る。人が折角帰還の喜びに浸っているというのに。ただ、今の私はすこぶる機嫌が良い。涙を拭いて、笑顔でドアを開ける。
「はい!」
ドアの先では、黒ずくめの男二人が拓也の両脇に立っていた。
状況が呑み込めない。今度は何が起こった。というかこの人たちは誰だ。
「あの、どちら様でしょうか?」
「失礼しました。我々、SCP財団という者です。」
「えっと…宗教の勧誘ならお断りします。」
「いえ、ちゃんと政府公認の団体です。」
男がスーツの内ポケットから大量の書類を取り出し説明をする。どうやらこの世に存在する人智を越えた存在を調査する団体らしい。普通なら信じるわけも無い話だが、死に戻りを体験した後だから少なくともそういったものが存在するのは信じられる。
「えっと…つまりあなたたちは私が体験した死に戻りについて話を聞きに来たんですか?」
「いえ、違います。ですが他の異常存在に関しても知っていることがあるのなら後々お聞かせいただきたいです。」
信じてくれそうな彼らに話したいことは山ほどある。しかし、今は彼らの話を聞く事を優先すべきだろう。
「では、端的に言います。あなたに世界を救っていただきたい」
「え?」
「困惑するのも無理はありません。多少残酷な話になりますがよろしいでしょうか。」
「構いませんよ。」
どんな出来事であろうと、最早動じないという絶対の自信があった。
「ではまずこちらをご覧ください。」
男が見せた画像には金色の像が映っていた。
「この像は生贄を捧げることで大規模な災害を弱める力を持っています。そしてその生贄は像によって指定されます。今回指定されたのは、貴方のご子息です。」
喋っていない方の男が彼を睨み付ける。もう少し配慮して話せという事なのだろう。
「災害を鎮めるためには、貴方が自分の意志でご子息に火を点け、像に捧げなければいけません。」
そういう現象が実在する事自体に疑いは無い。しかし、なぜまだ拓也の命が脅かされなければいけないのか。ここで一つの可能性に辿り着く。
私はまだ、ループから抜け出せていないのでは無いだろうか。
こんな性格最悪な現象のことだ。希望を抱かせておいて、なんて事があり得てもおかしくない。
つまり、するべき事は一つだ。私は拓也の手を掴んで駆け出した。
SCP-268-JP-185
SCP-268-JP-A: 6歳男性。SCP-268-JP-Bの実子。
SCP-268-JP-B: 享年36歳。女性。飲酒運転の軽自動車からSCP-268-JP-Aを庇い死亡。
表題: 我が子を守り抜いた母親の英雄譚
改題後: 世界の人々を見殺しにしたエゴイストとその息子の物語
内容: 全6086章。最終章ではSCP-268-JP-Bの元に財団の職員が訪れ、SCP-089-Bに選ばれた旨を告げる。SCP-268-JP-BはプロトコルM8を拒否し、SCP-268-JP-Aを牽引し職員から逃げる。
付記: SCP-268-JP-BがプロトコルM8を受諾した場合、従来より判明している異常性により改題が行われていたと推測されています。このことから、章数が増加しすぎたSCP-268-JPは何らかの意思の介在により無理矢理終了させられると考えられています。現在SCP-268-JP-106の経過が観察されています。
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アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:6856613 (20 Sep 2020 02:05)
タイトルから見るに打ち切りENDって事でいいんでしょうか?
発想としては新しいので残るとは思いますが、やや展開が急すぎるORオチが浮いている印象を受けるOR何が起きているかわからない人もいるかなと思います。もう少し伏線を入れる、あるいは駆け出した後どうなったかをきっちり描写して感情の落差をたたきつけるなどがあるといいかなと思います。
あと、財団職員が「SCP財団」を自称していることにやや引っ掛かりを覚えました。「財団の者」とかでいいんじゃないかなと思います。
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