ある年の夏、私は40階程の高層マンションに来ていた。ここの最上階に住む主人が、警察に不可解な通報をしたことで公安部特事課に所属している私が派遣された訳だ。
「ああ、刑事さん、お待ちしておりました。」
60代ぐらいの男性だった。格好は半袖半ズボンとラフなものだったが、そのどれもがブランド物であり、恰幅がよく、いかにもお金持ちといった感じだった。
『通報をしたのは貴方で間違いないですか?』
「はい、そうです。」
『わざわざ下までお迎え頂きありがとうございます。』
「いえいえ、外も暑いですし、早速家まで案内致しますね。」
『ありがとうございます。』
「いやー、正直こんな話、取り合ってくれるとは思いませんでしたよ。私もいままで怪異の類は信じていませんでしたから。」
『良ければその時のお話、詳しく聞かせて頂けませんか?』
「ええ、もちろんです。」
『ありがとうございます。』
「昨日の夜のことでした。私はいつも通り夜11時に寝床に着きました。ただ、いつもと少し違うところは、一昨日だったかに、部屋の冷房が壊れてしまっていた事ですかね。なのでその日は窓を開けて寝ていました。ですがまあ、蒸し暑い中でもそれなりには寝れたんですよ。」
「あ、エレベーター来ましたね、お先にどうぞ。」
『すみません、ありがとうございます。』
「えー、そうだ、それでまあ、多分ですけど1時間程度眠っていたと思うんですが、その時、キリキリっていう金属の軋むような音と、涼しさを感じたんですよ。音はそこまで気にならないものでしたし、涼しさも夏なのにおかしいなとは思ったのですが、寧ろ快適だったので気にせずまた寝ました。それでまあ、また暫く寝たんですが、首辺りになにか冷たいものが当たったんです。それが気になって寝ぼけながら目を開けた訳ですが、その瞬間、何故か頭に設置されていたトラバサミが閉じてきたんですよ。」
『トラバサミ……ですか。』
「ええ。ぼーっとした意識のなか、自分は死ぬってことだけが分かりました。そしたらね、次の瞬間には空の上ですよ。」
『──どうゆうことですか?貴方は生きているじゃないですか。』
「そうなんですよ、生きていたんです。空の上に飛ばされたことで。それで次は空の上から落下です。もうどうにでもなれって感じでしたよ。そして気づけば布団の上。その時にはトラバサミもありませんでした。ほんとに、狐にでもつままれたようでしたよ。あ、ここが私の家です、どうぞ。」
『お邪魔します──失礼ですが、その一連の出来事自体が夢だった。ということはないんですか?』
「私も最初はそう思いましたよ。でも、これを見て、あれは現実だったんだと確信しました。」
『これは……』
そこにあったのは、この世のものとは思えない、傷ついた大きな大きな顔のみであった。
anomalous-JP
説明: SCP-2365によって顎部が欠損し、活動を終了したSCP-2613-JP
回収日: 20██/██/██
回収場所: 東京都,██タワー
現状: 低危険度物品冷凍庫に保管中。
追記: 状況証拠からSCP-2365とSCP-1315-JPとSCP-2613-JPが特殊な条件下において同時出現したことによる、偶発的な事故によって発生したものと推測される。
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任意A任意B任意C- portal:6812671 (15 Oct 2020 06:02)
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