楽天的な無鬼論者 - SCP-JPサンドボックスⅢ

楽天的な無鬼論者

SCP-JP SB3 » poppono032のサンドボックスポータル » 楽天的な無鬼論者

現在このページの批評は中断しています。

クレジット

タイトル: SCP-XXXX-JP - メタタイトル
著者: poppono032
作成年: 20XX

アイテム番号: SCP-XXXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPはサイト-8141の標準的人型オブジェクト収容チャンバーにて収容されます。SCP-XXXX-JPから何らかの要望があった場合、担当職員はサイト管理官と協議し、承認であれば要望のものを提供してください。また、SCP-XXXX-JPは現在自身の状況を”悪質な宗教団体に監禁されている”と認識しており、どのように説明してもその考えを撤回しません。しかしながら自身が快適に生活可能な環境であれば特に悪感情を抱く様子はみられないため、SCP-XXXX-JPに財団への理解を求めることは不要です。必要であればカウンセリング等を実施できますが、現在のSCP-XXXX-JPの精神状態に健康的な成人男性のものとの差異は見受けられません。

なお、SCP-XXXX-JPへの実験については現在審議が重ねられており、まだ結論が出ていないため、現時点ではSCP-XXXX-JPへの実験申請はすべて却下されます。

説明: SCP-XXXX-JPは鬼島忠彦として戸籍登録されている現在27歳の日本人男性です。外見、身体構造等に一般的な成人男性と逸脱する箇所は確認されていません。性格は”我関せずで非常にマイペース”と称されており、他者や物事への関心が希薄であること、環境への適応能力が極端に高いこと等が特徴として挙げられます。特筆すべき点として、SCP-XXXX-JPは一切の超常的な現象及び存在を信じていません。

SCP-XXXX-JPは自身に対する異常を認識せず、またそれらの影響を無効化または無意識的に改変する特性を持つものと推測されます。現状、多くの異常存在がSCP-XXXX-JPに影響を与えられないものと仮定されていますが、その性質上、実験を実施した際の影響についての推測が困難であることから他の異常存在を用いた実験は見送られており、詳細は不明です。なお、SCP-XXXX-JPが自身の異常性について認知している様子はありません。

以下はSCP-XXXX-JP本人へのインタビュー及び財団の記録から得られた特筆すべき事例の抜粋です。

当時のSCP-XXXX-JPの年齢	状況と証言
11歳(小学5年生)	当時SCP-XXXX-JPが通っていた██小学校には現在SCP-███1-JP¹として記録されているミーム汚染が発生していた。██小学校のすべての児童及び教師が影響を受けていたが、SCP-XXXX-JPは一切の影響を受けておらず、ミーム汚染者らに対して”バカ、アホ”等と罵倒を浴びせていたことが記録されている。その際にSCP-XXXX-JPはミーム汚染者らに暴行を受けているが、それを苦にしていた様子は確認されておらず、毎日のようにミーム汚染者らを罵る、煽る等の行為を繰り返していた。対抗ミームの散布による鎮静化の直前、ミーム汚染者らはSCP-XXXX-JPを避けるように行動しており、SCP-XXXX-JPの視認内では暴力的な行為を控えるようになっていたことが確認されている。本件の担当職員はSCP-XXXX-JPを非異常のミーム耐性者であると判断し、事後処置は記録と本人への記憶処理に留めた。確かに記憶処理を行ったと記録されているのにも関わらず、当時のことをSCP-XXXX-JPは想起することができ、「小学校がまさかの不良校でね、ムカついたんで悪口言いまくってやった。何度か殴られたけど。そのあとみんな大人しくなったからある程度反省したんじゃないかな」と述べている。
20歳(大学2年生)	当時SCP-XXXX-JPは所属していたサークルメンバー7名とともに、肝試しという名目で現在SCP-███4-JP² として分類されている廃屋に訪れており、この際に発生した事案はSCP-███4-JP収容のきっかけとなっている。侵入したサークルメンバー(SCP-XXXX-JPを含めて)8名はSCP-███4-JP-Aの襲撃を受け、3名が死亡、4名が負傷したが、SCP-XXXX-JPのみ無傷の状態で保護された。当時現場に派遣されていた職員からは、「知人が死亡したり怪我したりしたことに対して混乱していたが、それ以外は至って落ち着いているように見受けられた。生存者のうち4名がSCP-███4-JP-Aを目撃したと証言したが、鬼島氏(SCP-XXXX-JP)のみ一切の霊的存在を目撃していないと発言し、死亡した3名の死因を崩れてきた瓦礫に埋もれてしまったためと証言、また他4名の証言をとっさの事故で集団パニックになっていると主張し、否定した。鬼島氏(SCP-XXXX-JP)に対して違和感はあったが、多少錯乱している様子は見て取れたためにあまり異常とは捉えず、記録処理をしたのちに解放した」と証言した。SCP-XXXX-JPは記憶処理の影響なく当時の想起が可能であり、「まあ浮かれてたんだよ。あんなところにほいほい入ったらそりゃ瓦礫に埋もれて死ぬよな」と述べ、”あくまで集団パニックである”という自身の見解は撤回しなかった。
26歳	財団が明確にSCP-XXXX-JPの異常性を認知した事例。当時SCP-XXXX-JPは██ビルの夜間警備員として勤務していた。20██/██/██、██ビル付近に設置されたダストボックス内にて収容違反中であったSCP-███2-JP³の死骸が発見された。SCP-███2-JPの死骸の頭部には打撲痕が複数確認されており、それが死因であると推測された。ただちに調査が行われた結果、██ビルの監視カメラの映像から、竹箒でSCP-███2-JPを撲殺するSCP-XXXX-JPの姿が確認された。⁴殺害後、SCP-███2-JPを██ビルの裏口へと引き摺っていく様子も確認されている。その異様さから担当エージェントは即座に財団に報告し、SCP-XXXX-JPの身柄の確保が行われた。詳細はインタビューを参照。

インタビュー記録-1: 以下は初期収容時にSCP-XXXX-JPに対して行われたインタビュー記録です。

+ 閲覧開始

- 閲覧終了

インタビュー記録XXXX-JP-001

対象: SCP-XXXX-JP(鬼島忠彦氏)

インタビュアー: 瀧村研究員

付記: 瀧村研究員は██区の職員に扮し、██ビルの衛生調査のための聴取という名目でSCP-XXXX-JPと接触。初期接触の際、SCP-XXXX-JPはインタビューに応答することに難色を示したが、報酬を支払う旨の交渉を行うと即座に承諾。その後、収容状態に移行できるよう仮説サイト-81██の聴取室に誘導。不測の事態に備え、聴取室外には複数名の機動部隊隊員が待機していた。

<記録開始>

[聴取室へと誘導されたSCP-XXXX-JPは椅子に座った状態で室内を見回している。]

瀧村研究員: あの、何か気になることでも？

SCP-XXXX-JP: あ、いえ、なんかやけに仰々しい部屋だなあと思って。あれですか、外部に音が漏れないように防音がめちゃくちゃしっかりしてるとか、そんな感じの。

瀧村研究員: はい、まあそんなところです。では、いくつか質問に答えていただいてもよろしいでしょうか。手短に済ませますので。

SCP-XXXX-JP: はあ、私が答えられることなら。

瀧村研究員: まず鬼島さんが██ビルに警備員として働かれるようになったのはいつ頃からで？

SCP-XXXX-JP: 去年からですね。ちょうど仕事探してたんで面接受けてみたら偶々職にありつけただけですよ。

[以降、関連性が薄いと思われるやり取りが続くため省略]

瀧村研究員: それで、ここからが本題なのですが、鬼島さん、昨晩の仕事中に何かおかしなものは見ませんでしたでしょうか。

SCP-XXXX-JP: はい？おかしなものとは？

瀧村研究員: 普段見ないような、何か異常なものです。心当たりはありませんか？

SCP-XXXX-JP: なんです、それ。オカルト？すみません、私そういうものはまったく信じてない質なので。[約2秒間沈黙]まさか役所の人に成りすましてる宗教勧誘とかマルチとかだったりします？

瀧村研究員: いえいえ、そういうわけではありません。[約3秒間沈黙] では直球にお訊ねしますが、昨晩ネズミがいませんでしたか？

SCP-XXXX-JP: ネズミ？[約3秒間沈黙]ああ、ネズミならいましたね。

瀧村研究員: そのネズミに何か異常や違和感は覚えませんでしたか？

SCP-XXXX-JP: うん？どういう意図の質問ですか、それ。ネズミはネズミじゃないですか。異常とか違和感とか言われましても。

瀧村研究員: [約2秒間沈黙]わかりました。では次の質問なのですが、あなたはそのネズミを殺しませんでしたか？

SCP-XXXX-JP: 殺しましたよ。職場にネズミがいたらそりゃ殺したくなるでしょ。だから竹箒で叩き殺しました。一応ちゃんと掃除はしてますよ。

瀧村研究員: ネズミの死骸は外のゴミ箱に？

SCP-XXXX-JP: そうですけど。[約4秒間沈黙]もしかしてそれが何か問題でした？

瀧村研究員: いえ、ただ鬼島さんがそのネズミに対してどう感じたかを教えていただきたいだけです。

SCP-XXXX-JP: はあ、どう感じたかなんて言われてもネズミだなあと思ったとしか言えませんが。

瀧村研究員: [約2秒間沈黙]こちらの映像をご覧いただけますか？

[瀧村研究員はノートパソコンを用い、SCP-███2-JP殺害の際の監視カメラの映像を再生する。SCP-XXXX-JPは監視カメラの映像を視聴する。]

SCP-XXXX-JP: [映像を視聴しながら] 何ですか、これ。あのビルの監視カメラですか？これがどうしたんです？じつは不審者でも映ってたんですか？

[SCP-XXXX-JPがSCP-███2-JPを殺害するところで、瀧村研究員は映像を一時停止する。]

瀧村研究員: これは恐らくあなたがネズミを殺害するところですが、何か違和感は覚えませんか？

SCP-XXXX-JP: はい？え、そんなこと言われても普通に竹箒を振り回してる自分しか映ってませんけど。

瀧村研究員: ネズミが通常よりも巨大なものに見えたりはしませんか？また、この映像を見て巨大なネズミだったと思い出したりはしませんか？具体的には1メートルくらいの。

SCP-XXXX-JP: 1メートル？ 1メートルのネズミなんているわけないでしょう。だいたいネズミなんて小さな生き物、こんな遠目からの監視カメラで目視できませんよ。だからさっきも竹箒を振り回してる自分しか映ってないって言ったじゃないですか。

[瀧村研究員は監視カメラの映像を続きから再生し、SCP-XXXX-JPがSCP-███2-JPの死骸を裏口へと引き摺っていくところでまた一時停止する。]

瀧村研究員: こちらの映像では、鬼島さんが死んだネズミを引き摺っているように見受けられるのですが、引き摺るほど大きなネズミというのは異常じゃないですか？

SCP-XXXX-JP: はあ？引き摺ってるって何です？別に何も引き摺ってないですけど。確かに手に何か握ってますけど、これがネズミの死骸ですよ。どこに引き摺るほど大きなネズミが映ってるんですか。

瀧村研究員: [約5秒間沈黙] あなたには本当にこれが通常サイズのネズミに見えているんですか？そして触覚もそう知覚していると？

[SCP-XXXX-JPがしきりに左脚を上下に動かす。苛立っているように見受けられる。]

SCP-XXXX-JP: あの、もう眠いんで帰らせてもらえないですかね。今晩だってシフト入ってるんですよ。さっきから質問もなんか変だし。

瀧村研究員: いえ、まだお聞きしたいこともありますし、今日はこちらに宿泊していだたこうと考えているのですが。

SCP-XXXX-JP: は？ [勢いよく席から立ち上がる] さすがに付き合いきれませんよ。勝手に帰りますね。出口はわかりますし。

瀧村研究員: 気分を害されたならすみません。しかし、少しお待ちを。

[瀧村研究員は即座に外部に待機させている隊員らと連絡を取る。3名の隊員が入室し、SCP-XXXX-JPを取り押さえる。]

SCP-XXXX-JP: は？なにやってんだ、なにやってんだよ、おい！ [激しく暴れる] てめえら、なんだ？これ拉致か？拉致だろ、おい！

[瀧村研究員が素早く接近し、SCP-XXXX-JPに即効性の睡眠薬入りの注射を打つ。数十秒後、睡眠薬の効果が表れ、SCP-XXXX-JPは気を失う。]

<記録終了>

終了報告書: SCP-XXXX-JPはサイト-8141へと輸送し、標準人型オブジェクト収容チャンバーの一室へ運び入れた。数時間後にSCP-XXXX-JPは覚醒し、「事情を説明しろ！」と叫びながら収容室の壁を激しく蹴りつける等の行為を始める。鎮静化のため要望を訊ねたところ、”高級な寿司”を要求。サイト管理官と相談した末に提供後、鎮静化。覚醒当時は高いストレス値を示していたが、”高級な寿司”の提供後には急速にストレス値が低下した。食事後、SCP-XXXX-JPは暴れることなく眠りに就いたことが確認されている。

インタビュー記録-2: 以下はSCP-XXXX-JPに対して行われた2度目のインタビュー記録です。

+ 閲覧開始

- 閲覧終了

インタビュー記録XXXX-JP-002

対象: SCP-XXXX-JP

インタビュアー: 瀧村研究員

付記: SCP-XXXX-JPは食事中が最もストレス値が低く落ち着いているため、当インタビューはSCP-XXXX-JPが昼食を摂取している最中に行われた。また当インタビューはSCP-XXXX-JPに現状を説明し、本人の異常性の認識及び協力を得られるかどうかを確認することが主目的だった。そのため、遠隔脳波スキャンによる虚偽反応の検査が並行して行われていた。

<記録開始>

[SCP-XXXX-JPは昼食に提供されたそばの麺を啜っている。]

瀧村研究員: 食事中に失礼します。まず謝罪をさせてください。不躾に手荒な真似をしてしまい、申し訳ありませんでした。しかし、これは我々なりの理由があっての行為なのです。そこで今回は現状のあなたの状況と、我々の目的についてお話させていただきたいと思いまして。

[SCP-XXXX-JPは瀧村研究員に目を向けず、どんぶりを持ち上げてそばの露を飲んでいる。]

瀧村研究員: 我々はSCP財団という組織です。財団とよく呼称されます。我々はこの世界に存在する異常なものを確保、収容、保護し、保管及び研究することを主な業務としています。

[SCP-XXXX-JPの箸を動かす手が止まる。困惑したような面持ちで瀧村研究員を見る。]

SCP-XXXX-JP: 異常なもの？なんだそりゃ。

瀧村研究員: [約2秒間沈黙] 例えば、幽霊とか超能力者とか宇宙人とか、何か奇怪な化け物とか呪いの物品とか、あとは超常現象とか、そういったものを調査する秘密結社とかでもいえばわかりやすいですかね。

SCP-XXXX-JP: ひみつけっしゃ？ [笑う] なに言ってんだ、あんた。何歳だよ。見たところ俺より年上みたいだけど、そんな研究者然とした格好でなんてアホなこと抜かしてんだ。[さらに大きく笑う] バカじゃねえの。コスプレか、おい。コスプレで白衣着てんのか。

瀧村研究員: [約3秒間沈黙]鬼島さんが信じられないのも無理はありませんが、これは事実です。我々が鬼島さんが今監禁しているのは、鬼島さんに何らかの異常があると判断されたからなのです。

SCP-XXXX-JP: へえ、じゃあ俺にどんな異常があると？手から火が吹けるのか？スプーンを曲げられるのか？あんたの頭の中でも覗けるのか？時間を止められるのか？雨でも降らせられるのか？生憎俺にはまったく心当たりがないんだよ。ぜひとも教えて欲しいもんだけど。

瀧村研究員: [約2秒間沈黙] 鬼島さんは自身の異常性について本当に認識していないと？

SCP-XXXX-JP: 認識も何も俺にそんな力はないけど？というか誰にもないだろ、そんなもん。異能力だとかなんとかは漫画や映画とかだけの絵空事なんだよ。現実にあるわけないだろ。

[遠隔脳波スキャンの結果、SCP-XXXX-JPは一切の虚偽反応を示していない。]

瀧村研究員: では、あなた自身は現状をどうお考えですか？どうして今自身が監禁されていると？

SCP-XXXX-JP: そんなもん知ったこっちゃねえわ。大方あんたらは自分たちを秘密結社だと思い込んでる悪質な宗教団体かなんかで、なんか妄想が盛り上がって偶々俺が標的になったとかそんなとこだろ。陰謀論に憑かれたアホの考えなんかに思考を割くほど俺の頭は要領良くないんだよ。

[遠隔脳波スキャンの結果、SCP-XXXX-JPは一切の虚偽反応を示していない。]

瀧村研究員: [約1秒間沈黙] ではあなたは異常なものの存在を認める気はないと？

SCP-XXXX-JP: はあ、逆に訊くけどさ、どうすりゃ信じられるんだよ。だって俺は、生まれてこの方あんたが言うような異常なものになんか会ったことがないのに。

[遠隔脳波スキャンの結果、SCP-XXXX-JPは一切の虚偽反応を示していない。]

瀧村研究員: [約4秒間沈黙] 質問を変えます。鬼島さんは自身の置かれた環境の異様さに比べて、随分と落ち着いているように見受けられます。なぜですか？

SCP-XXXX-JP: ああ？あんたは俺にもっと騒いで欲しいのかよ？

瀧村研究員: いえ、そういうわけではありません。しかし普通、今のあなたのような状況に置かれた人はもっと取り乱すような気がします。

SCP-XXXX-JP: 他の人がどうとかそんなこと知らんけど。ここで俺が取り乱したところで出してくれるわけじゃないだろ。下手に暴れて縛られるのも嫌だし、そんじゃあ今こうやって飯食えるくらいで甘んじとこうってなってるだけだが。そんなに変か？

[遠隔脳波スキャンの結果、SCP-XXXX-JPは一切の虚偽反応を示していない。]

瀧村研究員: [約2秒間沈黙] では何かを企んでいるようなことは一切ないと？

SCP-XXXX-JP:はあ、俺がいったい何を企むっていうんだ。直近まで警備員のバイトしか仕事がないくらい能なしのやつが。あんたらが俺をどう買い被ってるのかは知らんけど、俺みたいなのを祀り上げて構ってる暇があったらもっと政治とか戦争とかについて考えた方が有意義だと思うぞ。

[遠隔脳波スキャンの結果、SCP-XXXX-JPは一切の虚偽反応を示していない。]

瀧村研究員: [約3秒間沈黙] 最後にもう一つだけお訊ねしていいですか？先日からの繰り返しになりますが、あなたが██ビルで殺したネズミは、本当に普通のネズミでしたか？

SCP-XXXX-JP: しつけえな。普通のネズミだよ。少なくともあんたが思うような化け物じゃない。ごくごく普通の、竹箒で叩き殺せるくらいの、ただの汚いネズミだ。

[遠隔脳波スキャンの結果、SCP-XXXX-JPは一切の虚偽反応を示していない。]

<記録終了>

終了報告書: 当インタビューの結果より、SCP-XXXX-JPは自身の異常性について一切認識していないものと考えられる。現在SCP-XXXX-JPは財団のことを”悪質な宗教団体”と断じ、友好的な態度は示していないが、同時に敵対的な態度を取る気もないように見受けられる。いずれにせよSCP-XXXX-JP自身及び異常性には不明確な要素が多いため、インタビュー及び検査は継続される。

インタビュー記録-3: 以下は特筆すべきと判断されたインタビュー記録です。

+ 閲覧開始

- 閲覧終了

インタビュー記録XXXX-JP-008

対象: SCP-XXXX-JP

インタビュアー: 瀧村研究員

付記: 定期的なインタビュー。当インタビューの時点で、SCP-XXXX-JPが収容されてから6ケ月が経過している。

<記録開始>

瀧村研究員: 失礼します、本日のインタビューを始めさせていただきますね。

[SCP-XXXX-JPは返事をせず、提供された棒状のチョコ菓子を食べている。]

瀧村研究員: あなたがここに収容されてからすでに半年が経ちました。何かご不満な点などはありますか？

SCP-XXXX-JP: [咀嚼物を飲み込んでから] ネットできねえことくらいかなあ。漫画はわりと買ってきてくれるしな。正直仕事してわざわざ金稼がないといけないのが面倒だったから、ただ飯食えるのは良いよな。

瀧村研究員: [約2秒間沈黙] 心境的な面ではどうですか？家族や友人が恋しくなったりは？

SCP-XXXX-JP: 恋しくなるほど深い関係の友達なんていねえな。それに実家とはとっくに縁を切ってんだよ。向こうだって俺の顔なんか見たくもないだろうよ。

瀧村研究員: [約3秒間沈黙]ここから出たいというお考えはないのですか？

SCP-XXXX-JP: 別に。どっちでもいい。最初はわけわからなくてムカついたけど、住めば都っていうか、郷に入れば郷に従えっていうか、まあ悪くはないわ。ただ飯食えるし。というかそれあんたが言うか普通。[笑う]

瀧村研究員: [約4秒間沈黙] 質問を変えます。これまでのインタビューで、鬼島さんの過去の話について色々とお聞きしましたが、結論から言えば、鬼島さんは我々のいう異常なものに複数回遭遇していると考えられます。鬼島さんは当時のことについて問題なく想起することができますが、その上であれらが正常の範囲内の出来事であると？

SCP-XXXX-JP: はあ、本当にしつこいな。正常かどうかなんて知らねえよ。そもそも何が異常か正常かなんてそいつの価値観によって違うから、線引きなんてできねえだろ。小学校はただ治安がクソだっただけだし、サークル仲間が瓦礫に埋もれて死んだのは事故で、他の連中は集団パニック起こしてただけだ。それ以上でも以下でもねえ。少なくとも俺の中ではな。

[SCP-XXXX-JPは数秒間沈黙したのち、一瞬口角を上げる。]

SCP-XXXX-JP: なかなか上手い喩えを思いついた。なあ、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」って言葉があるだろ。あれな、俺からすれば「幽霊の正体見ずとも枯れ尾花」なんだよ。

瀧村研究員: [約3秒間沈黙] どういう意味でしょうか？

SCP-XXXX-JP: ようはな、幽霊がいるかもしれないなんてバカなことを考えてるから、枯れ尾花は幽霊になっちまうわけだ。なら幽霊なんているわけがないと思っとけば、わざわざ見に行かなくてもただの枯れ尾花しか存在しないわけ。あんたらみたいに調査するのも意味わかんねえな。調査する必要ないだろ。最初から枯れ尾花なんだから。むしろわざわざ調査なんかするから幽霊になるんじゃねえの。

瀧村研究員: [約5秒間沈黙] それは、あまりに主観的すぎるのでは？

SCP-XXXX-JP: は、主観の何が悪い。客観的事実っていうのも結局主観の集合でしかねえよ。他のやつの視点なんてどうでもいい。だってどう足掻こうが俺は俺の人生しか生きられないんだから。なら俺の視点から見えるもんが、この世のすべてだろ。

[SCP-XXXX-JPは提供された別のチョコ菓子の包装紙を破く。]

瀧村研究員: [約3秒間沈黙] 本日のインタビューはこのあたりにしましょう。ありがとうございました。

<記録終了>

終了報告書: インタビュー後に定期検診が行われたが、SCP-XXXX-JPの精神状態は健康的な成人男性と同様のものを維持していた。SCP-XXXX-JPが現状に概ね満足していることに虚偽はないようであり、これは同様の収容環境に置かれた他オブジェクトと比較してかなり特異なことであると思われる。また、当インタビューで得られたSCP-XXXX-JPの発言は、SCP-XXXX-JPの異常性に深く関与している可能性がある。

補遺: 20██/██/██、SCP-XXXX-JPの担当職員である瀧村研究員より、自身の異常存在への知覚能力に異変が生じているとの報告が提出されました。状況確認のため、瀧村研究員に対して急遽インタビューが行われました。下記は記録の抜粋です。

+ 閲覧開始

- 閲覧終了

職員インタビュー記録-JP-████

対象: 瀧村研究員

インタビュアー: 苗田研究員

<記録開始>

苗田研究員: これよりインタビューを始めます。瀧村さん、まずご自身の現在の状況についてご説明していただけますか？

瀧村研究員: はい。正直なところ、自分でもあまり飲み込み切れていないので、上手く説明できるかはわかりませんが。[口ごもる。]

苗田研究員: 嚙み砕いた話でいいので、ゆっくりとおっしゃってください。

瀧村研究員: はい。[約3秒間沈黙] えっと、まず私はこのサイトに収容されている複数のオブジェクトに携わっているのですが、その中にSCP-███0-JP⁵と呼称されるものがありまして。SCP-███0-JPはわかりますか？

苗田研究員: [資料を確認する。] 肉塊に包まれ、誘導ガスを噴霧する人型実体ですね。

瀧村研究員: はい。私はSCP-███0-JPの定期的な実験観察に参加していました。異変に気付いたのは、1か月ほど前、実験室に入ってすぐでした。SCP-███0-JPは四方を強化ガラスで囲われた収容室に入れられていて、我々研究者は隣接している実験室からオブジェクトの姿が見えるようになっていたんですが、その、SCP-███0-JPの姿が以前とはまったく別のものに見えました。

苗田研究員: 以前とは別の姿というのは？

瀧村研究員: [約6秒間沈黙] 普通の、男性でした。瘦せ型で、結構若くて、全裸で、黒髪の男性が収容室の隅で蹲っていて、泣いていました。

苗田研究員: [約3秒間沈黙] それは、どういうことですか？

瀧村研究員: わかりません。ただ私はオブジェクトでもない男性がいるということに驚いて、周りの職員に訊ねました。オブジェクトではなく見たこともない男性がいると。しかし他の職員は私の問いかけに首を傾げるだけでした。オブジェクトはちゃんと収容室の中にいる、男性などいないと。私以外の全員がそう言うので、私は私自身の目を疑わざるを得ませんでした。

苗田研究員: ミーム汚染や認識災害などに関する検査は？

瀧村研究員: 真っ先に受けましたよ。しかし結果は、ミーム汚染の兆候も認識災害を受けた形跡も一切みられないとのことでした。視力検査や脳波の検査なども受けましたが、問題はほとんどありませんでした。精神状態も比較的健康との診断でした。

苗田研究員: では疲れなどによる一時的な幻覚ということは？

瀧村研究員: 私も最初はそう思ったんですけどね、何度実験観察に参加してSCP-███0-JPを見ても、それは以前のような肉塊ではなく一般的な男性のようにしか見えませんでした。ただ蹲って泣いているだけの男性に対して、私以外の職員たちは最近の有毒ガスの勢いはどうだ、成分はどうだと記録をつけていました。私には男性から有毒ガスが出ているようになんて一切見えないのに。

苗田研究員: [約4秒間沈黙] 何か、ご自身の認識の異変に関して心当たりなどはありませんか？

瀧村研究員: 心当たりなら、一応あります。[口ごもる。]

苗田研究員: どんな些細なものでもいいので、おっしゃってください。後ろめたいことだったとしても無関係な他者には絶対に口外しませんし、罰せられることもありません。

瀧村研究員: いえ、確証はないんです。確証はないんですが[約2秒間沈黙] あの、私が担当しているオブジェクトの一つにSCP-XXXX-JPというのがあるのですが、ご存じですか？

苗田研究員: [資料を確認する。] 自身に対する異常を認識せず、影響を無効化すると推測されている日本人男性、ですね。このオブジェクトがどう関係していると？

瀧村研究員: その、SCP-XXXX-JPが直接関係しているというわけではなく、私が彼とのインタビューの中で考えていたことに原因があるのではないかと。

苗田研究員: 考えていたこととは？

瀧村研究員: [約5秒間沈黙] SCP-XXXX-JPは、自分の主観こそが絶対的で、客観的な視点などどうでもいいと断言するような人物でした。私は研究者として、またそれを志す者として客観的な視点に立つよう努めてきましたし、実際周囲にもそういう人が多い環境で育ったので、その価値観には驚かされるものがありました。それで、これもある種研究者の性なのかもしれませんが、ふとこう思ったんです。彼の目から見えている世界と同じ世界を、私も見てみたいと。

苗田研究員: [約3秒間沈黙] どういうことですか？

瀧村研究員: SCP-XXXX-JPが知覚している、異常なものがまったく存在しない世界です。先に断っておきますが、私は別に異常存在から逃げたいと考えたことはありません。恐ろしくなることは多いですが、自分の使命はきちんと理解しているつもりですし、それを誇りにも思っています。ただ純粋に、私には知覚できない、SCP-XXXX-JPしか知覚していない世界に、強い興味を持ったんです。だから私はしばらくの間、SCP-XXXX-JPのいう主観的な視点について深く考えるようになりました。

苗田研究員: 考えるというのは、どういう風に？

瀧村研究員: ただ考えただけです。カントの著作なども多少参考にしましたが、あくまで参考程度です。仕事の合間の時間に、本当にただただ考えました。客観的な視点に立つのをやめ、あらゆる物事を自分の主観で観察してみました。それからSCP-XXXX-JPの主観がどういうものなのかを想像しました。ひたすら想像しました。[約2秒間沈黙] 結局答えは出ませんでしたし、今も出ていないはずです。はずなんですが。

苗田研究員: [約3秒間沈黙] ご自身の異変は、その”主観について考える”という行動に原因があると？

瀧村研究員: いえ、そうではないと思うんです。”主観について考える”からこうなったわけじゃないんです。あくまで今の私の主観が”そうなっているだけ”なんじゃないかって。他の人が同じように考えても同様のことは起こらなくて、ただ私が、私の主観を以て考えたからこの異変が生じたんじゃないかと。すみません、漠然としたことしか言えなくて。でも客観的な視点では理解できないことだと感じるんです。

苗田研究員: [約6秒間沈黙] ひとまず状況は把握しました。本日のインタビューはこれで終了します。お疲れでしょうから、今日は早退し、しばらくの間はご自宅で休暇をお取りください。今後のことは追って連絡させていただきます。大丈夫ですよ、処罰などはないと思います。安心してください。

瀧村研究員: はい。お気遣い、痛み入ります。

<記録終了>

上記インタビューによる瀧村研究員の証言を受け、急遽SCP-XXXX-JPに対してインタビューが行われました。以下は記録の抜粋です。

+ 閲覧開始

- 閲覧終了

インタビュー記録XXXX-JP-009

対象: SCP-XXXX-JP

インタビュアー: 苗田研究員

付記: 当インタビューは瀧村研究員の認識の変化に関して、SCP-XXXX-JPが何らかの関与及び知識を保持している疑いがあるとして、尋問及び検証の意図で行われた。そのため、遠隔脳波スキャンによる虚偽反応の検査が並行して行われた。

<記録開始>

苗田研究員: 記録開始します。SCP-XXXX-JP、急なインタビュー失礼します。ご気分の方は大丈夫ですか？

[SCP-XXXX-JPは起床直後であり、髪に寝癖のついた頭部を掻く。]

SCP-XXXX-JP: 本当に急だし、あんた誰？いつものおっさんはどうしたの？

苗田研究員: 私は上級研究員の苗田といいます。あなたの担当だった瀧村は、現在休暇を取り、自宅にて療養しています。

SCP-XXXX-JP: うん？なに？あの人、なんか病気だったの？

苗田研究員: いえ[約2秒間沈黙] これより事情を説明しますので、黙って聞いてください。

[苗田研究員は瀧村研究員の認識の変化についてSCP-XXXX-JPに説明する。SCP-XXXX-JPは最初のうち、”不機嫌そう”と形容される表情をしていたが、徐々に”真剣そう”と形容される表情に変化する。]

[説明後、苗田研究員はノートパソコンを用いて瀧村研究員のインタビュー映像を再生する。SCP-XXXX-JPは終始沈黙して映像を視聴する。]

[インタビュー映像が終了する。SCP-XXXX-JPは沈黙している。]

苗田研究員: SCP-XXXX-JP、正直に答えてください。あなたはこの瀧村の認識の変化に関して、何か関与していますか？それか何か心当たりなどはありませんか？

SCP-XXXX-JP:[約7秒間沈黙] すげえなあ。

苗田研究員: はい？

SCP-XXXX-JP: すげえよ、この人。えっと、名前は、たきむら、瀧村か。そうか、そんなことにも興味を持ってなかったんだな。

[SCP-XXXX-JPは”感嘆している”と形容される表情で天井を見上げている。]

苗田研究員: あの、SCP-XXXX-JP、質問に答えてください。

SCP-XXXX-JP: [苗田研究員に向き直って] え？ああ、俺がこの人になんかしたのかって話？何もしてるわけないだろ。俺にはあんたらが期待しているような力は何もないって前から言ってるじゃん。いい加減にそのめでたい頭どうにしかしろよ。それにさ、あんたらはこの人のことを馬鹿にし過ぎだよ。

苗田研究員: 馬鹿にしている、とは？

SCP-XXXX-JP: 瀧村の主観が変わったのはさ、俺なんかの影響じゃない。瀧村自身が自分の主観を変えたんだよ。それを俺のせい？そんなもん、この人を馬鹿にしているのと同義だろ。

苗田研究員: いえ、そういうわけではありません。我々は客観的な視点に立って様々な可能性を[SCP-XXXX-JPが遮る。]

SCP-XXXX-JP: それ。それだよ。それがムカつくんだ。色んな視点に立つっていうなら、何で異常なものなんかいないっていう俺の話を否定する？結局あんたらはあんたらの主観を客観って呼んでるだけだ。俺と同じように決めつけて、それに世界を合わせようとしてるだけだ。

[SCP-XXXX-JPは”睨みつけるよう”に苗田研究員を見る。苗田研究員は沈黙している。]

SCP-XXXX-JP: 俺だってあんたらのことを責められる身分じゃない。俺も他人の視点になんて立ったことなんかない。立てるやつなんて誰もいないと思ってた。どいつもこいつも他人の視点に立っている気になっているだけで、その実主観でしかすべてを捉えていないんだってな。でもな、結局俺は屁理屈捏ねてただけだって気づかされたよ。

苗田研究員: [約3秒間沈黙] 瀧村さんに、ですか？

SCP-XXXX-JP: ああ。今まで俺の屁理屈なんか真に受けてくれるやつなんていなかった。勝手なことばっか言うなっていつも怒られたり殴られたりしてさ。初めてだよ、俺の考えをこんな真剣に聞いて、俺の視点に立とうとするやつがいるなんてな。

[SCP-XXXX-JPは一瞬俯き、すぐに顔を上げる。]

SCP-XXXX-JP: 初めて他人の視点に興味を持てそうだ。[笑う]

苗田研究員: [約5秒間沈黙]一時インタビューは終了します。

SCP-XXXX-JP: あ、最後に一ついいか？気が向いたらでいいからさ、また瀧村に会わせてくれよ。すぐじゃなくていいから。それと、あんたらのいう異常とやらはやっぱ信じらんねえわ。だって俺には何一つ見えやしないんだから。[笑う]

<記録終了>

終了報告書: 遠隔脳波スキャンの結果、SCP-XXXX-JPから虚偽反応は一切検出されなかった。このことから、瀧村研究員の認識の変化に関して、少なくとも直接的にSCP-XXXX-JPが関与した可能性は低いと考えられる。また、インタビュー終了後にSCP-XXXX-JPは改めて瀧村研究員との面会を希望した。

その後、瀧村研究員の認識に関する検証が行われました。その結果、サイト-8141に収容されているオブジェクトのうち5体のオブジェクトを正確に認識していないことが判明しました。瀧村研究員はそれらを主に”正常な生物及び物体と同様に見えるもの”、”通常の生物及び物体と逸脱した箇所のないもの”、”特に異常性質を示していないように見えるもの”として認識していると証言しました。記憶処理やミーム摂取等の対策が講じられましたが、瀧村研究員の認識に改善はみられませんでした。そのため、緊急の措置として瀧村研究員は財団研究チームから外れ、理学系の財団フロント企業の研究者に配置されました。瀧村研究員はこの処遇に不満を述べてはいません。

また、SCP-XXXX-JPによる面会の希望は、その予測不能性のため現時点では却下されています。SCP-XXXX-JPはそれについて催促する様子はなく、収容監視下及びインタビュー時においても以前と変化のない言動を行っており、精神状態は健康的なものを維持しています。現時点では、瀧村研究員の認識の変化と同様の異変の発生は確認されていません。

SCP-XXXX-JPの処遇及び研究方法について、現在も審議が重ねられています。

Footnotes

+ スポイラーっぽいもの

ページコンソール