"Fallen Down"

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クレジット

タイトル: SCP-2563-JP - Fallen Down
著者: ©Enderman_desu
作成年: 2021

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BY ORDER OF THE OVERSEER COUNCIL

The following file is Level 4/2563-JP Classified,
Unauthorized access is forbidden.

2563-JP

- _
<Access to SCP-2563-JP>Access Granted.
Item#: 2563-JP

Level4

Containment Class:

keter

Secondary Class:

{$secondary-class}

Disruption Class:

amida

Risk Class:

notice

link to memo

　

SCP-2563-JP内部に存在する星雲、銀河。

特別収容プロトコル: SCP-2563-JPの存在を秘匿するため、各国に存在する主流な天文・宇宙科学関係機関の全てにミルグラム従順度検査で高得点を獲得した財団潜入エージェントを派遣する必要があります。アメリカ航空宇宙局を筆頭とする天文学データベースには各機関との機密協定の下、SCP-2563-JPに関する情報の削除を施行してください。SCP-2563-JPの有する異常性より、その概念が一般に露見する可能性は極めて低いですが、科学的研究の観点及び技術の発達に伴う将来的な隠蔽のリスクより、SCP-2563-JPに関する情報は確実に削除、秘匿される必要があります。

説明: SCP-2563-JPは銀河系より約74億パーセクの距離、赤方偏移14.███の周辺区域で円弧状に展開されている時空間異常です。当該時空間異常は我々の観測可能な宇宙を概ね内包するような形状で展開されており、SCP-2563-JPの外部へと接近する程に対象となる物質の時間の流れには相対的な遅延が発生します。これは財団技術を用いた光の伝播実験により実証済みです。また一般相対性理論に基づく実証実験より、時間的遅延の発生からSCP-2563-JPのその遠方へと接近する程に何らかの引力が発生していることも推測されます。これはSCP-2563-JPに接近した物質の指数関数的加速度の上昇により証明可能な現象です。

SCP-2563-JPが時空間的な異常を及ぼす存在である以上、以下の点において全ての研究関係者の合致が取れています。これらの確実性は将来的なYK-クラスシナリオの発生を招く恐れがあります。
- SCP-2563-JPの内部は極めて不安定であり、現実性の崩壊に至る可能性があります。
- SCP-2563-JPの膨張により地球が影響を受けた場合、地軸の崩壊や時空間的概念の損失、あらゆる古典力学の崩壊、バタフライエフェクトによる系の変化、現実不全が発生します。
財団は現在これら以外の異常性については研究中、また懐疑的であり、根幹的な当該オブジェクトの発生起源については如何なる発見もありません。観測データよりSCP-2563-JPは外円に近づくにつれ銀河や星雲の数は減少しており、特筆すべき事にSCP-2563-JPの外円に最も近い位置に存在するあらゆる物質は時間の流れに極度な遅延が発生しており、光速に近い速度でない物質は完全にその動作を停止しています。光速、もしくはそれ以上の速度の物質でない限り、SCP-2563-JPの境界面に到達することは不可能であると推測されます。

何故SCP-2563-JPは物理的な観測限界で無いにもかかわらずそれ以上遠方の観測が不可能であるのか、また当該オブジェクトの発生期限について調査すべく、財団は2021年の時点でErebos-9遠征隊をSCP-2563-JPへと派遣しました。

Erebos-9

アルダ=ベヴィン隊長

部隊名: Erebos-9("クロノスの針")

部隊長: ベヴィン隊長

部隊員: セルベル-2, デレ-3, アルカイデ-4

対象: SCP-2563-JP/ポイント-α

目標: SCP-2563-JPのその異常性の起源たる何らかの要因について調査すること。

説明: SCP-2563-JPの周辺区域には時間的作用を含む異常な因果が関係しており、これによって財団は長年直接の観測を行うことが困難な状況に置かれていました。しかしながら近年開発されたFTL-System、ラング歪曲ドライブによってその技術的問題は突破されました。ラング歪曲ドライブは神的エネルギーを用いた超光速での加速を行うことが可能であり、同時に発生する現実改変流は周辺の現実を破壊し、通常達成不可能な速度、時間的問題を解決することが可能です。我々は長期間に及ぶ神学部門、科学部門、研究部門、宇宙開発部門etc……様々な部門との連携によってこの装置の開発に至りました。犠牲は少なくありませんが、これらによって与えられる恩恵は未知なる脅威を探るために必要不可欠でした。時に歪曲ドライブは複雑なエラーを発生させます。それが如何なる理由であれ、発生したエラーは人員諸共周辺の宇宙を崩壊させかねない大規模な現実改変を発生させます。彼ら船員はそれを幾つかの契約の下、同意する形で受け入れました。この歪曲ドライブを用いることにより、時空間的な干渉を一切受けることなくある程度の範囲まで宇宙船を活動させることが可能です。

SCP-2563-JPの本質的な異常性の解明のためには先ず、SCP-2563-JPの規模を知る必要があります。我々は観測限界を規模の最大と捉え仮定し、研究を進めますがそれは憶測に過ぎません。我々が正確な情報を知るためには未知を観測する必要があります。歪曲ドライブは地球より最も近いSCP-2563-JPの一部へと移動し、円周上に光速移動を行って距離を測定します。その性質上、外部との通信には情報的矛盾及び破損が生じるため情報伝達システムにはスクラントン超光速通信システムが用いられます。これはバイタルサインの確認、及び伝達される情報の解析、修復に利用されます。

全ての計画は本年3月を以て始動します。関係者に何らかの異変が確認された場合、計画の延期とともに根本的原因に伴う計画の改訂が行われる予定です。

　　　Secure, Contain, Protect.

　

Record/SCP-2563-JP

日付: 2021/03/14

出力元: Erebos-9の搭乗する宇宙船("SCPS-タルタロス") - 現地時間13時頃に対応サイトへと送信された。

<記録再生>

[映像が出力される。映像の中心にはベヴィン隊長が座っている様子が確認される。]

ベヴィン: チェック。部隊員全員の生存、並びに現実性の安定化を確認した。こちらSCPSタルタロス船員隊長、アルダ=ベヴィン。今回の渡航にあたり幾つかの判明した事実、及び関連するデータを提出するため情報を記録する。デレ、もう少しアングルを寄せてくれるか？

[カメラがズームインされる。ベヴィン隊長の顔が明瞭に描写される。特筆すべき異常は見受けられない。]

ベヴィン: 見ての通り私たちは問題ないが、船外の様子は極めて不安定だ。何と言えば理解してもらえるか分からないが、一先ず言えるのはここ全体がSCP-2563-JP、つまり時空間異常の影響を受けてるってことだ。あらゆる惑星や小惑星は　　あー、引き伸ばされている。中心へと近づくにつれ、その外見がディストーション特性のレンズみたいに湾曲するんだ。そして中心へ近付けば近付くほど、その勢いは減衰している。これが観測されていた時間的改変、まぁタイムラグの発生に直結する問題だろう。奇妙な事に、レーダーでの観測によればSCP-2563-JP、つまり時空間自体が膨張したり収縮したりする傾向は確認されていない。そして最も重要な事項として、現時点で観測できていた全範囲を探索してもなお、SCP-2563-JPの全貌が観測できていない、という事だ。

ベヴィン: 現時点での最深部への突入は危険性から断念しているが、恐らく円周状に進めば大きな時空間的影響は受けない。このまま一先ずは指令があるまでデータ収集を続行するが、我々も既に幾つかの見解を持っている。まず第一にこれだけ大きな時空間異常でありながらそれが"制御されている"事項を懸念すれば、これを制御するための何らかの別の因果が存在すると言って良いだろう。そして恐らく、それは我々にとっても危険な実体であるか、Thaumielクラスの制御機構であるか、といったところだろう。この仮定が確定すれば、SCP-2563-JPのHiemalへの指定はまず最優先になる。第二に推測される事項として、SCP-2563-JPには限界が存在しない筈だ。レンズの様に無限に速度を低下させられるのであれば、実質的に観測側からは質量、体積が無限であると証明できる。これは一先ずの良いニュースだろう。少なくとも宇宙が有限であれば、短期間でのビッグクランチは免れなかったからな。

ベヴィン: 少し長引かせてしまったな。SCP-2563-JPに関する調査は続行される。何か問題が発生すれば対応サイトは我々に情報を伝達してくれ。

<記録終了>

当該遠征計画によって収集されたデータより、SCP-2563-JPの本質的な異常性が判明しました。SCP-2563-JPは全宇宙の中心を内包する形で球殻状に形成されており、その規模は財団による技術で測定不可能な範囲まで拡大していることが確認されました。この大規模な時空間異常を収容する方法は現在確立されておらず、また当該オブジェクトの膨張による如何なる現象も全て地球に影響を及ぼすものと推測されます。しかしながら現時点ではSCP-2563-JPが確実に膨張、及び収縮した様子は観測されておらず、副次的に影響を与える別の何らかの異常が存在する可能性が浮上しました。現在、財団はErebos-9遠征計画と別の観測計画を並行して実行しています。

　

　

要セキュリティクリアランスレベル5事項

Logout

Item#: 2563-JP

Level5

Containment Class:

esoteric

Secondary Class:

apollyon

Disruption Class:

dark

Risk Class:

critical

link to memo

　

SCP-2563-JP内部に存在する星雲、銀河。

特別収容プロトコル: SCP-2563-JPの存在を秘匿するため、各国に存在する主流な天文・宇宙科学関係機関の全てにミルグラム従順度検査で高得点を獲得した財団潜入エージェントを派遣する必要があります。アメリカ航空宇宙局を筆頭とする天文学データベースには各機関との機密協定の下、SCP-2563-JPに関する情報の削除を施行してください。SCP-2563-JPの有する異常性より、その概念が一般に露見する可能性は極めて低いですが、科学的研究の観点及び技術の発達に伴う将来的な隠蔽のリスクより、SCP-2563-JPに関する情報は確実に削除、秘匿される必要があります。

説明: SCP-2563-JPは全宇宙の中心点を軸としてそれらを内包する、測定不可能な規模の球殻状時空間異常、及びその中心に存在する大質量ブラックホールの総称です。後者はSCP-2563-JP-2に分類されます。SCP-2563-JPは地球より観測可能な全ての宇宙を内包しており、その外部へと到達することが不可能になる因果関係を形成しています。具体的に、SCP-2563-JPには指向性の存在しない強力な時空間の改変能力が存在します。そしてその効力は外部へと接近する程に強さを増していき、最終的にその時空間は完全に圧縮、改変された状態で時間的概念を喪失　　時間の完全な停止に至ります。これらの効果により、超光速を遥かに上回る速度の物質(タキオン粒子など)で無い限りSCP-2563-JPからの脱出は不可能であり、財団の現在の技術を用いた脱出の試みは何れも不可能であると断定されています。SCP-2563-JPは我々の知るところの"宇宙の果て"です。そしてSCP-2563-JPは前述のSCP-2563-JP-2によって膨張、及び収縮活動を完全に停止しています。

SCP-2563-JP-2は全宇宙、即ち我々の観測外の宇宙を含めたあらゆる領域の宇宙の中心に存在します。その質量は財団の技術を用いた測量では測定不能であり、また当該オブジェクトの有する重力はあらゆる物質を吸収しながら急速に膨張反応を繰り返しています。しかしながらSCP-2563-JPの有する膨張能力によってSCP-2563-JP-2の物理状態は常に一定に保たれており、全宇宙がSCP-2563-JPにより"引き伸ばされる"事によって平衡状態を維持しています。しかしながら当該プロセスによって拡張された宇宙は希薄化する一方であり、最終的に起こりうる現実不全はYK/ZK/UKクラスシナリオの何れかの発生へと直結します。当該プロセス並びにSCP-2563-JP-2は宇宙の吸収可能な物質が全て消失するまで継続するものと考えられており、またこれらに対する何らかの回避手段は存在しません。過去にワームホールを用いた回避計画なども考案され実際に実行されましたが、座標の関係でSCP-2563-JPに干渉され、ワームホールは効力を喪失しました。推測される事項としてはSCP-2563-JPが何らかの形で時空間移動を阻害しているものとみられ、我々はこれに対する打開策を持ち合わせていません。

本年3月に派遣されたErebos-9遠征隊は現在もなお調査活動を継続しています。しかしながら3月26日の伝達を最後に、Erebos-9遠征隊からのシグナルは遮断されています。以下は送信されたデータの修復結果です。

Last-Record/SCP-2563-JP

日付: 2021/03/26

出力元: Erebos-9の搭乗する宇宙船("SCPS-タルタロス") - 現地時間19時頃に対応サイトへと送信された。

我々は意を決してSCP-2563-JPの最深部へと突入する事を選んだ。そして今、辿り着いたんだ。これ以上先に進むことは出来ない。これは……檻だ、閉ざされた鉄格子だ。我々はここから先に進めない。時空間的な干渉でも、未知の異常性でもない。これは、コイツ自身の持つ機能だ。我々を捕えるためのバリケードだ。詳細な資料は添付ファイルのデータを参照してくれ。虚構の檻は、不可視の鉄格子はここにある。皆、檻の中にいる。宇宙の境界面は確かに存在した。それは閉じ込めるためにあった。この時空間は猛毒だ。我々を囲って、確実に喰らうための災厄だ。この時空間の中心に位置するアレは、我々を逃さない為にある。軈て星々が生まれなくなるまで、塵もガスも彼の災厄が呑み込む。そうして全てが終わるまで、この檻は我々を逃さない。引力によって収縮するが先か、彼の災厄に呑み込まれるが先か。どちらにせよ、我々に行く先などない。我々は、宇宙にとってちっぽけな存在だ。これまでも、そしてこれからも。

ここが深淵の底なんだ。Τάρταρος、神々は我々を忌み嫌った。我々だって忌み子なんだ、そうだろう？