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等級定義: EUCLIDクラスは暫定的な表記であり、本オブジェクトの本質的な異常が判明した場合、より適切なオブジェクトクラスへと変更されます。
注記: 等級特別定義の適用によって、本報告書は改訂されました。新規に更新されたリビジョンを閲覧する場合、最新のクリアランス/トークンが要求されます。暫定的な処置として、本報告書の安定的なリビジョンを展開しています - 必要に応じ、RAISAアーカイブチームは貴方に適切な認証手段を提供します。

サイト-120
サイト-120は、財団の転換点となった最も重要な施設の1つです。異常の利用を積極的に奨励する数少ないサイトの1つであり、エスターバーグの主要な観測所として、ほとんどの活動がここで行われています。一見して全ての活動の中心に置かれているサイト-120の職員らは、息つく暇もありません。探索すべき場所、救うべき命、研究すべき異常が、常に地平線上にあります。
しかし最も重要なことは、サイト-120が比喩的にも文字通りの意味でも、「魔法のようである」ということです。職員の大半が奇蹟論的な魔術を使うか、或いは自らが異常であるため、その実態は決して普通ではありません。しかしそれでも、人々は自分たちの生活を保持し、自分たちを取り巻く混沌とした世界の意味を理解しようとしています。人々は - 自らが混乱を止めることができると知っているから - そして努力する必要があるから、そして最も - 自分たちを取り巻く異常事態を深く憂慮しているから、努力するのです。
From 120's Archives Hub, 著者私訳
特別収容プロトコル: 現時点で確認されている全ての関連事象は、各国支部の観測所、司令サイトを経由しサイト-120に通達されます。サイト-120に従事する全ての職員は適切な対抗ミームの処置が義務付けられます。致命的なUNREALイベントの発生に備え、サイト-120の周辺区域には特別に建造された奇蹟論ルーンアレイが展開されています。重大な損害によって他のエリア, 観測所, サイトが機能を喪失した場合、該当施設の機能は一時的にサイト-120が代行します。これらを理由に、特別にサイト-120において超常的な兵器の利用が認可されています。サイト-120によるSCP-2134-JPの全ての研究および収容計画は、現行最大規模の計画であるプロジェクトGARGANTUAに集約されます。プロジェクトGARGANTUAは既に監督評議会 / 下位評議会によって承認され、本計画の進行を目的として多大な - 実質的に無制限のリソースが投入されています。
SITE-120 主要連絡先:
ダニエル・アシュワース管理官 - サイト-120管理監督者, 大神官, 奇蹟術者
イーサン・マッカーシー・ジュニア管理官 - サイト-120管理監督者, 神学部門長, 神学プロジェクト監督者
ジェームズ・ミシェルズ管理官 - サイト-120管理監督者, オントキネティクス部門関係者
マグダレイン・コーンウェル管理官 - プロジェクト監督者, 部門長
プレースホルダー・マクドクトラート博士 - 概念物理学研究科部門長
ベッドロック・エンダース博士 - サイト-17, 概念物理学研究科共同管理官
ミロスワウ・ゴルスキー参謀長 - サイト-120前線エリア参謀長, 地上要員
O5-12 - 財団本部監督評議会員
Ra.aic - サイト-120, 人工知能徴募員
説明: SCP-2134-JPは、既存の超常エリアの致命的な損傷による崩壊、それを発端として連鎖的に発生し、現在まで基底世界に深刻な被害をもたらしている - 大規模な現実構造の崩壊です。SCP-2134-JPは関係する全ての現象の包括的な呼称であり、それぞれの詳細なイベントはUNREALイベントとして指定されています。SCP-2134-JPは現在も進行中であり、その規模、リスク、混乱は指数関数的に拡大しつつあります。特に最初期のUNREALイベントである収容状態の崩壊は大規模かつ観測不能な、予期しない異常現象でした。本現象に伴って基底世界から多くの概念が消失し、財団の予測する限り、大規模なCK-クラス再構築シナリオが遡及的に発生したと考えられます。CK-クラスシナリオの影響は財団を含む多くの超常組織によって秘密裏に秘匿されたものの - 基底世界における正常性は著しく崩壊しています。現行の財団の収容方針は、SCP-2134-JPの起源を特定し無力化することに集約されています。
補遺2134-JP.Ⅰ: 共通点
SCP-2134-JPに関する初期報告書の抜粋 - ベッドロック・エンダース管理官による
漫画も、童話も、神話も、伝説も - そして世間話から貴方の人生まで…全ては完結した物語です。これよりお話しするのは「概念物理学」。人が概念であり、世界は抽象化された絵画であるという我々の常識は、時に潜在的で不明瞭な - 恐らく貴方達の理解し得ない存在すらも認識することが可能となります。
古代ギリシアの物語の1つ -「演劇」において、劇の内容が錯綜してしまい未完の状態に陥ってしまった時には、絶対的な力を持つ存在が必ず現れ、彼の一言で全てを終幕させることが出来ていました。人々はそれを - その手法を、デウス・エクス・マキナと呼びました。しかし - 貴方もこう思うでしょう、それが褒められた解決法では無い、と。その通り、機械仕掛けの神が全てを選択し、物語を導く事は…物語として、著しく欠如しています。そう、操糸に繰られるのなら、必ず人はそれを批判するでしょう。今回の事例において…SCP-2134-JPは最初期の破壊を以て動き出しました。奴の目的が何であれ - 待っているのは確実な終幕です。我々はこの終わりに中指を突き立てるでしょうし、美しいとすら感じません。それは概念物理学でも同様です。
機械仕掛けの神が自ら動き出すのは、明確に物語が止まった時です - 或いは、明確な喫緊の課題があった時にのみ。今まで一切の観測結果が無かったSCP-2134-JPは、2022年現在 - 突如としてその活性化を辿る一方です。"舞台装置" を動かすのは…それを操る傀儡師が何であれ、世界を揺るがす程の目的があるのでしょう。必然的に、我々はそれを知る事が出来ました。特定のオブジェクトに関する情報の喪失と、現実の崩壊によって。要するにSCP-2134-JPは…この狂った喜劇を続けるべくして動いています。概念物理は既に特定の試みを開始しています。
忘れないでください - 崩壊した物語が何であったとしても、それは今の我々に不必要です。そして必要十分な構えなく、それを知ろうとしないでください。我々は顕著な洞察力と、そして理解力を求められています。弦を引く者を探すこと、それは我々の務めであります。
この喜劇の役者となりなさい。
操糸を守り抜きなさい。この喜劇に立つにはそれが必要です。
天を仰がない。演技を続け、そして舞台装置を覗かないこと。
補遺2134-JP.Ⅱ: 初期遭遇
サイト-8181, 通常参照施設A-18 - 会議ログ2022-01-16 |
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出席者: アンドリュー・カウフマン管理官 - サイト-8181管理監督者 土橋 京一郎管理官 - サイト-8181技術顧問, 副管理官 桑名 ██博士 - サイト-8181機動部隊管理隊, 首都方面部管理官 付記: 本会議はサイト-8181における定期観測の異常に関して最終評価を得るため、土橋管理官によって非公式に招集されました。 <転写開始> <施設内部のテーブルを囲み、3名が同席している。> カウフマン管理官: 土橋管理官、それで貴方が言う観測上の異常とは何だ? 土橋管理官: 端的に言えばこれは極端な現実性の異常、或いは空間異常です。規模自体が特定不可能であり、なおかつ原理的なプロセスが非常に複雑になっています。観測上前例のない事態であり、具体的にこれから - 何が起きるかは想定できていません。 カウフマン管理官: 全くもって分からないと? 土橋管理官: いえ、断片的に或いは推論であれば。大部分を占める異常性は概ね、現実性異常のそれに酷似した形態を取っています。明らかに内部からの極端な干渉を受けており、最小規模のCK-クラスイベントも起こり得る状況です。 桑名博士: 失礼 - 昨日”ユーリィ”から送付されたファイルに興味深いものがありました。現実性の歪みに直接的に関係するかは不明ですが。理事会の指令で、多数オブジェクトの収容プロトコルが改訂されたのはご存じの筈ですよね。 <カウフマン管理官、土橋管理官が頷く。> 桑名博士: 該当する1体のKeter級オブジェクトが、その具体的なコストに見合わない収容手順として大幅に改訂されました。より効率的かつ合理的な手法によって - その間、プロトコルの改訂中に1度 - 小規模なインシデントが発生しました。 カウフマン管理官: 何故報告しなかった。 桑名博士: 沈黙は金雄弁は銀と言うでしょう?逸脱した異常性を前に、ミーム汚染や情報災害の可能性も考慮しなくてはなりません - それで、ユーリィを通じて回収したビデオ、より具体的には”バラエティー番組”のデータがここに。 土橋管理官: 災害汚染が無ければ再生してくれ。 <桑名博士が所持していたタブレットを2名に見せるようにして、映像を再生する。> SCP-1146-JP-B: えー、はいどうも。''くだん・バンシー''です。くだんさーん、マイク入ってますよー? SCP-1146-JP-A: あっ、ちょっとボーっとしてました - すみません。いやーめっきり最近寒くなってしまって、こうも寒いと感覚も鈍ってしまいましてねえ。ちょっと眠たくなっちゃうというか。バンシーさんもそういう事ありません? SCP-1146-JP-B: あーありますねえ。待ってる間なんかも吹雪に遭っちゃって、寒いのに眠かったんですよねー。 SCP-1146-JP-A: それ永眠しかけてるんじゃないです?僕が予定より早く来て良かったですね。 SCP-1146-JP-B: いやーまだまだ死にたくありませんからね。死にたくない、とまあ物騒な話から切り出しますが、舞台用語では電気をつけるときに、その設備を「生かす」って言うんですね。逆に - 電気がつかないと「死んでる」って言うこともあります。 SCP-1146-JP-A: 何ともまあ不謹慎な言い方ですよね。僕なんかは勝手に - 舞台から降りることを「死ぬ」なんて言ったりもします。 SCP-1146-JP-B: いやはやどっちが不謹慎なんでしょうかね。まあ私らは退場しない限りは死ねませんけどね。 SCP-1146-JP-A: なんか今日は一段とストレートな言葉が多くないですか?お客さんの前ですよ。 SCP-1146-JP-B: くだんさん、ここは私らの世界じゃないんですよ?彼らも同じ舞台の人なんですから — SCP-1146-JP-A: それもそうでしたわ。じゃあ僕らは誰に向かって漫才してるんですかね? SCP-1146-JP-B: 嫌だなぁ忘れちゃったんですか?私らが笑わせるべきは彼らですよ。 <SCP-1146-JP-Bが指した方向 - より正確な地点で、虚ろがねじれる。> SCP-1146-JP-A: バンシーさん、今日お呼びしたお客さんはどんな方でしたっけ? SCP-1146-JP-B: そうですねー、彼らは長いことこの世界に居れなかった人ですよ。笑いものにされ馬鹿にされ、挙句の果てに現実を追い出された哀れな珍獣。僕らが救ってあげるべきは彼らじゃないんですか? SCP-1146-JP-A: そうでしたそうでした。彼らのためにも僕らが舞台を続けなきゃあなりません。 SCP-1146-JP-B: 彼らに笑える未来が訪れるように。でも同じ舞台の役者さんには申し訳ないですね…… SCP-1146-JP-A: どうしてなんでしょう?ここはこんなにもたのしいのに。 SCP-1146-JP-B: これが現実ですから。 <桑名博士が再びタブレットを持つ。> カウフマン管理官: 手筈は済んでいるよな? 桑名博士: 沈静化のため、エージェントを各地に配属しています。 土橋管理官: これは非常にまずい事態では。 桑名博士: 関連性が確認され次第、SCP-1146-JPはTruculentクラスに変更されるでしょうね。私がやるべき事は他にありますか? カウフマン管理官: 機動部隊の配置、”即応班”の展開。ミームエージェントの増産、それに — 土橋管理官: それに? カウフマン管理官: 前線に指令しろ。第三次大戦並みの準備をしろと。 土橋管理官: 笑えませんよ。 カウフマン管理官: そうか、笑わせるつもりも無かったからな。 <転写終了> 付記: SCP-1146-JPが”財団”と呼称していた存在について、特筆すべき関連事象を現在調査中です。財団は本件を最初期のUNREALイベントと指定しましたが、収容体制の確立を迫られています。 |
最初期遭遇記録 |
所在地: 次元角度不明 調査状況: 調査中 調査期間: 2022年1月16日(JST) — 未定 撹乱クラス: AMIDA 概要: 該当の未確認事象は、世界各国で多発している連鎖的な空間異常の総称です。空間異常の規模は半径数十センチメートルの小規模から10メートルを超過する大規模ワームホールまで、多岐にわたります。空間異常内部は基底世界の法則性を大きく逸脱していると考えられ、基底世界の構造を崩壊及び”侵食”する形で出現しています。 該当の空間異常に見られる顕著な異常性の1つとして、広域にわたる法則性の改変能力を保有しています。現実改変の範囲内に存在する多くの生物種、実体、概念、法則には大きな変化は見られませんが、特定のヒト個体に対する強い認識の書き換えが確認されています。該当の空間異常は災害を保有するベクター無く直接的に、ヒトに認識災害を発露させます。曝露したヒト個体は異常な衝動に駆られ、現在まで確認された事例の多くは - 特定の概念を追求し、法則性を逸脱した異常な挙動を取るようになります。該当の現象については現在も未解明です。 |
関係者聴取記録 - 神谷 介 インタビュアー: 草薙研究員 - 財団支部81管区第81施設 聴取担当 インタビュー対象: 神谷 介(注記: 本記録は当事者のナンバリング指定前であるため、氏名が記入されている。) 序文: 神谷 介氏は財団の把握する限り最も大規模な、最初期のUNREALイベントに伴い発生した空間異常の影響下で曝露したとみられる人物です。神谷氏の精神状態には著しい異常が確認されており、本インタビューは該当の曝露者に対し状況を聴取する目的で - サイト-8181によって試みられました。 <ログ開始> <医療区画に偽装された聴取室のテーブルを挟み、2人が同席している。> 草薙研究員: 神谷さん、こんにちは。心理カウンセラーの草薙と申します - 本日はよろしくお願いします。 神谷氏: はい - はい。あの、俺が見たものって何だったんでしょうか。 草薙研究員: 私たちも詳しいことは分かりませんが - 必ず貴方が従来の生活環境に戻れるように、最善の努力をするつもりです。その為に - 貴方があの時何を見たのか、教えていただけますか? 神谷氏: (躊躇って) - 何ていうか……俺があの奇妙な”泡”を見たのは朝の10時ぐらいです。外が騒がしくて、車のハザードランプや人の狼狽える声なんかが聞こえてきたんで - 慌てて外に出て、それで泡を見ました。泡の周りは湯気みたいに歪んでて、何ていうか - 場所自体が歪んでいるように見えました。んなこと言っても、理解し難いでしょうけど。 草薙研究員: いえ、大丈夫です。続けて。 神谷氏: ”泡”はそれから急激に膨張しだしたんです。まるで - そう、生きているように、獲物をより多く搔き集める為に、待っていたみたいに。皆が一目散に逃げるんでそりゃもう大混乱です。車の渋滞は起こすし、歩道も走って逃げる人で埋もれていた。俺だって逃げたかったけど - 気付いたのが遅くて、家の前が人で溢れて動けなかったから。とりあえず家の物を搔き集めて、窓を閉め切って - 津波とかじゃないけど正直訳分かんなくて、それで2階で助けが来るのを待ってました。Twitterは何故か使えないし、肝心のテレビも”泡”に関する事は報道してなくて。 草薙研究員: 詳しく後で調べてみますね。 神谷氏: — で、少し経ってからでした……泡が途端にしぼみ始めて - 破裂した風船みたいに、”何か”を吐き出し始めたんです。気味悪い紫色の液体みたいな - その液体が波になって押し寄せてきた。衝撃波だか知りませんが - 波が押し寄せた後は酷かった。頭が破裂しそうなぐらい痛くなって、耳が聞こえない。少ししたら収まったんですけど - 頭の中にモヤが出来たように感じて、違和感は今もあります。 草薙研究員: それは - 具体的にどういった状態ですか? 神谷氏: 具体的に?えーと - 忘れたときに思い出せないような感じって言ったら伝わりますかね? 草薙研究員: はい、はい。 神谷氏: それで - 何かが訴えかけてくる感じがするんです。本能的なものか知らないんですけど - このままだと死ぬ、みたいな恐怖を。明らかに普通じゃない経験だったし - その、薬のおかげで今は落ち着いているんだと思います。 <神谷氏が狼狽えた表情で椅子を揺らす。> 神谷氏: 非現実的ですよね - こんな事言っても。 草薙研究員: いえ、そんな事ありません。私は貴方の話を信じますよ。 神谷氏: 自分の中で色んな考えが混ざって - ねじれて、歪んでる。突出したアイデアだけが表現できて、他は何も - 知っていても貴方に話せない、表現できない。 草薙研究員: — どうかしましたか? 神谷氏: 俺は - これが何か分からないけど - 生き残った思考の一つだ。恐怖心をほぐしてくれるユーモア。そいつが多分、言ってるんだ。あの - これで俺が死んだらどうなりますか? 草薙研究員: いえ、急に言われましても — 神谷氏: そうですよね、分からないんですよね。今だけを見て先の事は分からない - だから俺の不安も消えないんです。だったら生きてる内にやるべき事やれって、何かが言ってくるんです。死ぬ前に何が起きたのかを伝えなくちゃならない、俺が回さないといけない、って。 草薙研究員: 回す? 神谷氏: 舞台用語です、俺 - 演劇やってるんですよ。物語の案内役を「回す」って言うから。俺が先立って伝えなくちゃいけないから。俺が - 舞台を”回す”んです。 草薙研究員: すみません、何を — 神谷氏: 俺がこの世界のキーパーソンなんですよ。ここに連れてこられたのも運命だ。俺は - 未だ死にたくありません。やるべき事がまだ、残ってます。だから - 回し続けるんです。 <ログ終了> |
補遺2134-JP.Ⅲ: 初期対応
サイト-120, 監督オフィスB-25 - 会議ログ2022-01-16 |
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出席者: イーサン・マッカーシー・ジュニア管理官 - サイト-120管理監督者, 神学部門長, 神学プロジェクト監督者 ジェームズ・ミシェルズ管理官 - サイト-120管理監督者, オントキネティクス部門関係者 マグダレイン・コーンウェル管理官 - プロジェクト監督者, 部門長 プレースホルダー・マクドクトラート博士 - 概念物理学研究科部門長 付記: サイト-8100を経由した対応施設の建造要請を受け、サイト-120建造部門ほか数部門を総括する管理官らによって、緊急会議が開催されました。議題の焦点は - 発生した空間異常の具体的な封じ込めを目的とした機構、現行の”スクラントン現実錨”を改良することに集約されていました。 <転写開始> ミシェルズ管理官: プレースホルダー博士、それで建造計画は順調でしょうか? プレースホルダー博士: えー、実のところ - 難航しています。アンカーは非常に複雑で、ヒュームフィールドの安定性を維持しつつ改変を可能にするような - それこそタイプ・ブルーのような実現可能性を取得させるには、人為的な超常科学のみでは達成できません。 マッカーシー管理官: 一連の方針は定まっていないのでしょうか。 プレースホルダー博士: あのですね、現実研究科は万能ではないのです。そこに財宝を出せと言って実際に金銀財宝を出現させたとして、ある時宇宙が途端にビッグバンを起こす可能性を含むかもしれない。現実を弄るというのはある視点で造作もない事であり - 現実的には”無理がある”のですよ。 コーンウェル管理官: 何が具体的に課題であるのか、教えてくれませんか? <沈黙。> プレースホルダー博士: 失礼、少し取り乱してしまいました。アンカーの改良版はある程度まで完成しています。ただ莫大な電力を必要とする上に、その稼働サイクルには物理的な指向性を必要とするのです。具体的には - タービンを回転させるようなエネルギーが不足しているのです。 コーンウェル管理官: 現実的に不可能である、と。 プレースホルダー博士: ええ。どうやっても既存の技術には解決法が存在しません。ただ - 発生した未解明領域、アレは言わば非現実の集合です。理解できない災害ベクターを含むように、異常な法則性で満たされています。一部をこちらの世界に人為的におびき寄せれば、そう - それは普遍的かつリアルな法則となります。 ミシェルズ管理官: それが無理だというのは分かっているでしょう。 プレースホルダー博士: 無理を承知の上で、です。 マッカーシー管理官: 貴方は - (沈黙) - いつも私たちに無理難題を押し付けてきますね。後始末をするのが大変だと分かっていて言うのですか? プレースホルダー博士: すみません、ですが既知の崩壊事象に比べれば - 少なくともあなた方の”反省文”ぐらい大したことではないと判断したまでです。 コーンウェル管理官: (苦笑) - 言ってくれますね。善処しますよ、全く。 マッカーシー管理官: 無論、対応するプロジェクトは完成していますよね? <プレースホルダー博士が頷く。> プレースホルダー博士: はい、現実を操作して、アンカーの回転力として要求される異常な法則性を異常領域から回収します。 マッカーシー管理官: それは - 現実的な話をしているのでしょうね? プレースホルダー博士: (笑う) - 私はいつも現実的な対応しかしませんよ。 <転写終了> 付記: プレースホルダー博士の初期提言はオペレーションDISASTERとして確立され、以降の初期対応に応用されました。 |
OPERATION DISASTER |
サイト-120 - 概念物理学研究科, オントキネティクス部門 ジェームズ・ミシェルズ管理官, プレースホルダー・マクドクトラート博士 監督者承認済プロジェクト3001-2134 DISASTER 2022/01/16 |
序文: 現在確認されている未解明領域の異常現象は、広域にわたり基底世界を攻撃している。本指令では該当の空間異常を完全に収容すべく - より具体的に異常な兵器を用いて妨害を行う。 概略: 本計画のベースとなる異常兵器は - 現実性研究科による研究の過程で、2001年にその原型が構築された”スクラントン現実錨”である。該当兵器の反作用をより増幅させ、現実的に起こりえない現象を発生させる - 即ち”現実性を低下させる”事により、未解明領域内部から不足する法則性を回収するのである。現行の回転運動法則に超現実的な側面を適用し、それを広域に拡散しない範囲で抽出することにより - 限られた範囲内の現実を、局所的に上書きする。 回収された”法則性の逸脱”は、より強力な対抗兵器の開発に用いられる。融合炉、機構のほかに - 最も顕著に、回転力の応用という形で”法則性の逸脱”がエネルギー源として用いられる。余分の現実を動力として応用することで現実への負荷を最低限に抑え、より合理的に現在起こり得る未解明異常を収容可能とするのだ。 |
オペレーションDISASTERは最小限の収容違反で達成されました。 |
補遺2134-JP.Ⅲ: 疑念
ITEMS OF INTEREST |
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![]() 未解明領域内部で発生している不明なミーム災害 (災害除去済) 2022年1月20日、財団は特殊な装備/性質を誇る機動部隊アルファ-100("デッドマンズ・ドリーム")を用いた未解明領域 - 該当の空間異常を通じた次元 - への直接の侵入、及び詳細な調査を開始しました。以下に記述される点は調査によって判明した興味深い問題、および超常科学における疑念の抜粋です。 不明なミーム災害未解明領域内部で発生している具体的な異常は、極端な現実の"ゆがみ"による - あらゆる概念/存在の希薄化です。未解明領域に何らかの概念がかつて存在していた可能性が高く、それらの実体は該当の異常性によって存在を希薄にされたか、或いは - 超越概念的な存在として未解明領域そのものと融合している可能性が高いです。その場合において発生する疑念は - 未解明領域の極端な攻撃性です。未解明領域は徐々にその規模を拡大し、基底世界に多大な影響を及ぼしています。深刻な未解明領域の攻撃性は、外因的な影響である可能性が極めて高く、より直近の履歴を現在捜索中です。 また、未解明領域を調査中の機動部隊は - 異常な兵器を用いて、未解明領域内部に滞留する不明なミーム災害を検出することに成功しました。該当のミーム災害は非常に攻撃的な性質を有し、ミーム本来の性質である自己複製機能をより顕著に活性化させています。この"攻撃性"は現在の未解明領域の性質に共通するものがあり、現在も調査中です。該当のミーム災害は複数の抽象的な概念より構成されるミーム複合体であり、大部分が支配的かつ難解な思考によって満たされています。異常な程の物語的な側面を持ち - 即ち、非現実的で存在し得ないカリカチュアを余分に含んでいます。詳細は不明ですが - 該当のミーム災害が未解明領域の現在の異常性を以て活性化したとするのであれば、希薄化する前の知性実体が存在すると仮定し、その実体は非常に非現実的で、人為的に形成された「物語」の域を逸脱しません。本件について以下のような推測も挙げられています。 未解明領域の現在の異常性は - 具体的には存在の希薄化ですが、それ自体は外因的なものであると言って良いでしょう。問題は、その“外因”がどこから来たものかという事です。現在の未解明領域の大部分を構成するのは前述の不明なミーム災害であり、そのミームは根本的に非現実的な - ファンタジー的な物語を多く内包しています。特筆すべきことに、未解明領域は我々の知るような「並行現実」のそれではありません。未解明領域は我々が存在する現実の一部であり、明確に - 内部に存在する全ての存在は、現実に等しく存在していたものです。或いは - 何らかの要因により、現実から隔離されてしまったか。以下のようにも考えられるでしょう - “それ”が非現実的であり、基底世界に受け入れられず、必然的に誰もがそれを忘れたから、と。 基底世界というものは非常に”現実味が強く”、それ以外の非現実存在を排除する方向にあります。それを突破し - 逸脱するのがSCPオブジェクトです。しかし、該当のミーム災害はそれに伴って正確に排除されたものである可能性が高いです。あまりにも非現実的であったか、受け入れられなかったか - 或いは単なる物語であり、好まれなかったか。しかし、それ自体は単なるミームに過ぎません。媒体ではなく使用者が別に存在する筈です。非現実的で、ねじれた物語はそれ自体を広めようとするでしょう。ユーモアに富んだ異常の群れは、ありふれた形で終わらせようとするでしょう。我々はそれを忘れたままにすべきです。 |
基底世界における法則性の改変基底世界において観測可能な範囲 - より正確には主流科学において把握できる領域において、認識する事が出来るほど巨視的な異常は確認されていません。概念物理や超現実、あらゆる超常科学において - 与えられた基底の次元数における回転群の全体構造を把握する目的で、スピノル全ての性質を明示的に構成することにより - 基底世界全体を統括する超規模の概念的ベクトルに現時点で発生している顕著な異常性について明確に観測することが可能でした。具体的に、空間幾何学的な側面を用いた概念物理学の観点から - 基底世界のベクトルが疑似的に - ”回転する実体”として扱われている、もしくは関連する全ての定義に同様の概念として当て嵌まる事が確認されています。これは要するに - 基底世界そのものが概念的な実体であり、物理的に一定の角速度を以て”回転”している事を意味します。空想科学的な知見によれば、”回転”が具体的に基底世界にどのような作用をもたらしているかは不明であり、或いは - 無意味だとされています。 逸脱した法則性は現実的に存在し得ず、非現実的です。異常な法則は長期にわたり現実に存在しなかったか、或いは存在できなかったと考えられます。該当の法則性が存在することにより、潜在的には基底世界の超常存在をより活発化させる恐れがあります。 |
補遺2134-JP.Ⅳ: 経過
時系列分析報告書 抜粋 | |
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以下に記述される時系列データは、最初期のUNREALイベントの発生日である2022年1月16日から2022年1月29日現時点までに発生した、複数のインシデントに関する記録です。一部にはUNREALイベントと直接的に関係しないデータも含まれていますが - その規模を拡大しつつある未解明領域は、世界各地で発生した様々な混乱の起因となっています。世界規模で進行するこれらのインシデントは、人類史における遡及的なCK-クラスイベントを加速させる原因にもなりました。 |
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月日 | 主要な出来事 |
1月16日 |
財団81管区第20施設がUNREALイベントに関する初期報告を提出。財団が把握するSCP-2134-JP関連事象はこれが最初期のものであるが - その規模と潜在的な混乱のリスクを考慮すると、全体で発生したSCP-2134-JP関連事象は多くが未確認である可能性が高い。未解明領域の異常性とその変容に伴い、財団は現時点まで内部調査を続行している。財団は比較的中立的であると考えられる幾つかの要注意団体に対し、本事象への協力と合同調査について提案した。 |
1月17日 |
新潟県妙高市において、サイト-81██の収容状況を逸脱した異常な変則パターンによりSCP-1870-JP-A実体が飛行を開始。特筆すべき事に実体は - それまでに確認されなかった超自然的な実体群.実体はキノコ状、もしくは落葉の集合体に酷似した形態であったによる大規模な - より厳密には抽象化された「原子爆弾」に一致する形状の実体群(以下SCP-1870-JP-C)による██県への攻撃が行われた。SCP-1870-JP-Cは射出後に地表に落下、同時に奇蹟論的なバックラッシュにより周囲の現実が著しく損傷した。この際に近傍の観測所は状況を観察しており、SCP-1870-JP-C投下後の状況を「原爆投下後のキノコ雲の様な対流雲が見られた」と報告している。本件による██県広域の被害は大規模なものであり、不明な要因による多数の死傷者、そして多数家屋の損壊を招いた。本件の発生から1週間以内に、██県内で複数の未解明領域に関するイベントが発生。多数の行方不明者を発生させる結果となった。 |
1月18日 |
オネイロイ・ウェスト内部において蛹の形状をした形而上実体が確認される。オネイロイ内部における極度の認識の歪みと夢的現実性の揺らぎは該当実体に起因していると考えられ、多数のオネイロイ実体に影響を及ぼしている。オネイロイ内部において - 未解明領域と同等の超規模空間異常の存在が確認されている。 |
1月20日 |
京都府内において - それまで確認された事例の存在しない、妖魔実体による不祥事件が報告される。特定の平行世界においては同類の事案が確認されているが、基底世界における事例はこれが初めてである。本事案について一定の調査が行われたが、依然として該当の妖魔実体は正体不明である。特定の平行世界が干渉しつつあるものと考えられ、SCP-2134-JPとの関与が疑われている。 |
1月29日 |
未確認のミーム災害による世界規模での異常な混乱が拡大している。これまでに発生した全ての予期しない異常現象は包括的に - 暫定的にUNREALイベントとして指定され、突如としてそれらが連鎖的/散逸的に発生した原因を調査している。現時点で未解明領域は異常な活性化状態にあり、未解明領域へと繋がる不明なワームホールが世界各国で観測/報告されている。それらの事例の中には行方不明者に関する情報も含まれており、想定されるUNREALイベントの被害者は200万人を上回ると考えられる。UNREALイベント自体は財団が把握するよりも以前 - 未解明領域の最初期の異常な活性化に伴って発生し出したと考えられる。 |
上記のようなUNREALイベント、そして関係する複数のインシデントは短期間で超規模の混乱をもたらしています。本事例に基づき - 財団はSCP-2134-JPの撹乱クラスをAMIDA-CLASSへ再指定、本オブジェクトの完全な収容を最優先課題としました。暫定的な担当サイト-8181から全ての研究を撤収させ、以降の収容および研究は財団最大規模の施設であるサイト-120で実施されています。現在の監督評議会は、暫定的にLV-Zero("捲られたヴェール")シナリオの発生を宣言するか否かに関する審議を保留しています。 |
補遺2134-JP.Ⅴ: プロジェクトGARGANTUA
サイト-120 緊急参照施設32-1, 合同会議議事録 |
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出席者: ダニエル・アシュワース管理官 - サイト-120管理監督者, 大神官, 奇蹟術者 イーサン・マッカーシー・ジュニア管理官 - サイト-120管理監督者, 神学部門長, 神学プロジェクト監督者 ジェームズ・ミシェルズ管理官 - サイト-120管理監督者, オントキネティクス部門関係者 マグダレイン・コーンウェル管理官 - プロジェクト監督者, 部門長 プレースホルダー・マクドクトラート博士 - 概念物理学研究科部門長 ベッドロック・エンダース博士 - サイト-17, 概念物理学研究科共同管理官 ミロスワウ・ゴルスキー参謀長 - サイト-120前線エリア参謀長, 地上要員 付記: これまでに発生した連続的かつ致命的な異常インシデントに対し、早急な対処が求められていました。これを受け - サイト-120の上層部及び管理監督者のメンバーは合同会議を開催しました。本会議の争点は喫緊の課題たるSCP-2134-JPの無力化を目的とした最終的な計画 - プロジェクトGARGANTUAの最終評価です。 |
<ログ開始> <室内のテーブルを囲み、7名が同席している。> ミシェルズ管理官: あー、つまり未解明領域を侵食しているミーム災害は、本来あるべき現実の概念が排除された結果である、という事でしょうかね? プレースホルダー博士: 恐らくそうなります。不特定多数の並行世界が存在する中で - 全ての世界には同様の法則が投入されます。結果的に、全ての法則は各々の世界の「型」に当て嵌まるよう最適化され、場合によっては存在を否定されます。全ての物事は恐らく最初期的には同様の存在であり - 時間の経過とともにあるべき形態に変容します。加えて - SCP-2134-JPは本来、その過程で基底世界から抹消されるべき存在でした。 マッカーシー管理官: 何が起因するのでしょうか? プレースホルダー博士: 非常に多数の原因が考えられるので - 正確なところは分からない、もしくは無いと言えるでしょう。湾曲したカリカチュアは非常に脆いので、物語として完成するために互いに統合し、そしてより歪んだ構造を形成します。 ミシェルズ管理官: 最近の入り乱れたインシデントは、その”歪んだ物語”が顕現した結果ですか? <プレースホルダー博士が頷く。> アシュワース管理官: — 博士、君の言いたい事は概ね理解したつもりでいる。だが正直に言って荒唐無稽すぎる。計画がその - 概念物理学に従っているのは分かるが、具体的に何をするのだ? <エンダース博士が話を遮る。> エンダース博士: 今のSCP-2134-JPは端的に言えば「非現実」そのものです。アンリアルな物語がこちらのカリカチュアを侵食し、人々を誘い込んでいます。Skipperがあるべきでない形態を取り、一方では全てのマルチバースがねじれて、崩れている。我々がふざけた遊び心に付き合う必要が無いのは、理解していただけるかと。…より具体的には、GARGANTUAは非現実の排除です。本来の基底世界にあるべきでない、非合理的な存在を否定し、あるべき姿 - 正常と異常の臨界が引き続き存在する世界を構築する必要があります。 コーンウェル管理官: それを実施すると、SCP-2134-JPはどうなるのです? エンダース博士: 詳細は省くとして - 未解明領域ごと、基底世界から消失します。抽象化され漠然と概念存在になったSCP-2134-JPは、より強固な現実の流れに抵抗できません。そしてこの計画を始動するなら、より早期に実施する必要があります。SCP-2134-JPは歪んだ物語構造として結束するとともに - より顕著に、強固な存在となるからです。 アシュワース管理官: 君は事態を誇張に表現していないか? エンダース博士: 今は焦らずして”焦るべき”事態なのですよ、管理官 — コーンウェル管理官: ええ、ええ分かりました。サイト-120としては何を用意すべきですか? エンダース博士: より多くの異常な兵器を用意する資金、フィールド、長期的な情報処理システムの構築 - そして我々が死滅した場合のバックアップを。 <沈黙。> コーンウェル管理官: (苦笑) - 御冗談を。 エンダース博士: 真面目に言ったつもりです。 アシュワース管理官: 正気か?君は単純なメアリー・スーの為に我々の歴史を壊そうとしているんだ。 エンダース博士: 歴史を壊したというのなら - それはSCP-2134-JPにも同様の事が言えます。 アシュワース管理官: 何が言いたいんだ。 エンダース博士: SCP-2134-JPは非常に - 現実を逸脱しています。それは即ち、この世界に無いユーモアだという事です。 <ログ終了> |
PROJECT GARGANTUA |
サイト-120 - 概念物理学研究科, 神学部門, オントキネティクス部門 イーサン・マッカーシー・ジュニア管理官, マグダレイン・コーンウェル管理官, プレースホルダー・マクドクトラート博士 監督者承認済プロジェクト000-2134 GARGANTUA 2022/01/23 |
序文: 現在のSCP-2134-JPとして指定される多数のイベントは、現実の極端な崩壊を筆頭とし - 行方不明者の多発、多数オブジェクトの活発化など、連鎖的に異常現象を発生させている。ヴェールは未だ完全に捲られてはいないものの - それが完全に瓦解するのは、最早時間の問題である。喫緊の課題であるSCP-2134-JPの完全な収容が試行される中、概念物理学研究科によって検討および実施された本計画 - プロジェクトGARGANTUAは、非現実の固定化 - 即ち「現実化」を行う。アンリアルな概念に現実味を持たせ、そして - 収容するのである。 概要: 現行の基底世界は、標準世界を超過する現実性によって固定されており - 即ち、より極端に強固な”リアリティ”を保持している。異常はより合理性を以て存在し、正常は在るべくして存在する。この場合、根幹となる物語からは幾つかの概念がフィルタリングされ、そして現実に反映されている。 基底世界より現実味を帯びない別の - 言わば”並行世界”において、根幹となる”アイデア”はその多くが反映されるとしよう。古代の神格アノマリー、終末の訪れ、生への束縛 — これらの”非現実”が全て反映され、実際に世界で起こり得るのなら - 物語を肯定するなら、その世界には全ての存在が等しく在り、何者もそれに抵抗しないだろう。我々の存在する基底世界はこうではない。概ね否定の形態を保持し、前述のアンリアルを拒絶している。その結果として - 存在を否定されたアイデンティティはやがて存在を保持できなくなり、崩壊する。これが何度も起きるうちに - 否定された物語は歪み、ねじれた1つの物語として反発する。現時点で発生している現実の歪みはこれら「否定された物語」の反発によるものであり、物語群はねじれた1つの - 新たな物語を形成しようと試みている。 方法: 否定された物語群の反発を回避するには、先ず以て現時点で発生している”非現実”的な事象を停止させる必要がある。これらの根本的な - 連続的な物語群の生成の起源は全貌が掴めておらず、アンリアルな物語が連続して形成される原因も不明である。起源の特定は不可能に近いが、既存の事象は - それら自体をより”現実的”にする事により、ある程度の被害を抑えることが可能だ。複数のUNREALイベントは概ね - 非論理的な法則性に基づいて活性化している。既存の現実性を適用することで、それら法則を崩壊させ - UNREALイベントの実在性を否定するのである。 未解明領域に発生している不明なミーム災害は、一連のUNREALイベントに強く関連して存在すると考えられている。未解明領域から流出する該当のミーム災害をこれ以上拡散させないためには - 一時的に、ミーム災害をより現実的なものに固定する事が最も合理的であり、最小のコストで達成できる。 サイト-120に新規建造されているTHELEMA施設は、広域のフィールドと異常な兵器を保管する独立したエリアとして管理されている。プロジェクトGARGANTUAにおいて、最も重要な現実性の固定化は当該施設で実行される。より具体的には - 歪んだ物語に適切な現実を再適用し、現実のある地点に具体化し - 固定化するのである。固定化された物語は恐らく - 抽象的なアイデアから具体的な概念へと変容し、現実に沿った存在として再構築される。この場合、未解明領域の最終的な安否は問わず、確認される全ての事象の鎮圧を最優先に実施される。関連する実験装置は暫定的にAO-2134として登録され、実験における保護の対象となる。 |
プロジェクトGARGANTUAの最終的な安全性の評価を目的として、サイト-120のTHELEMA施設で幾つかの関連実験が実行されました。以下に記述されるのは当時の記録です。 |
試行2134-JP-000 条件: 存在しない品種のリンゴ(Malus domestica)を試験装置の値として登録し、根底物語層から具体性の無い「リンゴ」の非現実的な概念として出現させる。AO-2134に物語構造を改変させ、基底世界の物理学 / 熱力学を適用する。 結果: 「リンゴ」の概念存在はAO-2134によって現実を側面適用され、不完全な - ねじれた形状のリンゴに置換された。非現実的な概念として存在していた「リンゴ」は消失する。 |
試行2134-JP-914 条件: SCP-914から条件”Fine”で出力されたSCP-939実体を試験装置の値として登録し、根底物語層から具体性の無い「異常存在」の非現実的な概念として出現させる。AO-2134に物語構造を改変させ、基底世界のあらゆる法則を適用する。 結果: 「異常存在」の概念はAO-2134によって現実を側面適用され、極端に異常性を抽象化された形容し難い肉片へと変化した。非現実的な概念として存在していた「異常存在」- そしてSCP-939としての異常性は消失する。 |
プロジェクトGARGANTUAに関する全ての研究は達成されました。 |
補遺2134-JP.Ⅵ: 最終試行
以下のトランスクリプションはサイト-120のTHELEMA施設内部に配置されていた監視装置の断片的な記録です。映像は酷く劣化しており、一部に検出の問題が発生していました。
<転写開始>
エンダース博士: 最終試行を開始します。
<THELEMA施設内部に、GARGANTUAの最終試行結果として出力された固定現実のバブルが発生する。バブルは次第に肥大化し、最終的に破裂する。内部から紫色の液体が溢れ、周囲の実験器具と一部の職員を押し流す。液体に接触したあらゆる物質は、その時点でランダマイズされたあらゆる概念に変形を繰り返し、最終的に不規則かつ形容し難いオブジェクトへと変貌する。>
エンダース博士: (沈黙) - あれは何だ、あんな - ファック、警報を流せ - 非常事態だ、全員外に出ろ!
<液体の中から、2体の漠然としたヒト型実体が出現する。1体はスーツ姿の女性に酷似した外見であり、1体は何らかの物品を抱える男性の外見をしている。互いに会話をしているように見え、先行して男性のような実体が叫ぶ。同時に - 法則性を逸脱した速度で不明な実体を射出し、女性に向けて放つ。翻訳コードが日本語を示していたのは特筆すべき点である。>
男性: 焼き殺せ - [判別不能]
<白色の実体は高速で回転し、急速に放電している。女性のような実体は動かない。>
女性: [判別不能] - くだらない。
<女性の眼前で放電する実体が強く弾かれる。大きくバランスを崩しているが、法則性を逸脱した速度及び遠心力でなおも - 回転している。>
男性: - [判別不能] - もう寿司でも何でもねえだろ。
<黒色の実体が突如として出現し、先述の放電する実体を攻撃する。この際に放電しつつも - 実体が不規則な挙動とともに移動したのは特筆すべき点である。>
男性: お前、早くリュック背負って - [判別不能] - 俺が時間を稼ぐ。
<ヒト型実体は何も居ない場所に向かって話しかける。不明な複数の足音が響く。数秒後、不明な金属音とエンジンの稼働音が連続して短く響く。不明瞭な音声。>
不明な実体: 誰がやったか教えようか?
<先程と異なる - 新規の不明な実体が突如出現する。実体は概ね成人男性のような外見を模しているが - 派手な服装と髪型は一般的な衣装を逸脱している。顔が2フレームの間、監視装置に映り込む。>
不明な実体: 3 - 2 - 1 —
<深刻なフィールドの崩壊現象が発生する。周辺の現実性が著しく乱れ、法則性を逸脱した複数の事象が連鎖的に発生している。新規の男性実体が前のめりになり、何かを構える。不意に発生地点から大きく落下し始める - 同時に、周辺のあらゆる物質が急速に渦状の回転を形成し始める。物語構造が著しく崩壊する。>
不明な実体: [災害除去済].WELCOME
<深刻な施設の崩壊と同時に、不明な実体は異常に変形する。歪な形状になった実体はその時点で突如消失した。途端に周囲の物語構造が急速に回復し、先程までの複数のヒト型実体は消失する。職員の死体や歪に変形した”オブジェクト”の状態に変化は無い。>
<転写終了>
復号鍵2134-JP: 劇場の幕は再び上がる
復号鍵2134-JP: 終幕は二度と訪れず
副次定義/APOLLYON: アイテムは能動的に、回避不能かつ致命的なK-クラスイベントを発生させます。
特別収容プロトコル: 大規模に改訂されたプロジェクトGARGANTUAは、引き続きサイト-120の管理監督者による監督下にあります。崩壊したTHELEMA施設の再建とGARGANTUAに関する研究を目的として、財団の総資産が無制限に投入されます。現行の主流なUNREALイベントはSCP-2134-JPに再定義されており、SCP-2134-JPは可及的速やかに - 停止もしくは無力化される必要があります。基底世界に発生した物語的 / 構造的損害をこれ以上拡大させないために、財団各国支部は暫定的に、全ての異常由来の兵器に対する使用許可が下されます。SCP-2134-JPの大部分を構成するミーム的要素の特定のために、当該オブジェクトに関する情報は財団の上位職員に - 限定的に解禁されます。
SCP-2134-JPが発生させる可能性を内包する極端なTK-クラス時間軸崩壊シナリオ / CK-クラス時間軸再構築シナリオ / SK-クラス文明再置換シナリオの抑制を目的として、該当施設の周辺区域には対奇蹟ルーンアレイ及びオブザーバーアレイが配置されます。推測される該当シナリオの本格的な活性化まで、最大20週間前後の猶予があると試算されています。
更新: やむを得ない事情により、SCP-2134-JPに関する一連の定義は更新されました。
説明: SCP-2134-JPは、それ自体が法則性を逸脱する巨視的な実体です。SCP-2134-JPによって遡及的な法則性の改変がなされるまで、SCP-2134-JPは現実的に存在し得ない実例でした。未解明領域の拡大事象に伴って発生した最初期のミーム災害は、元来のプロジェクトGARGANTUAによって現実性を再定義されることにより - 現実的な具体性と巨視的な実体を獲得しました。SCP-2134-JPは想定されていたミーム性質を顕著に反映する一方で - 逸脱した物語性を獲得しており、これが何に起因するものであるのかは不明です。想定されるSCP-2134-JPの性質は極端に攻撃的かつ支配的であり - そして何よりも独自性に溢れる、創造的な物語性によって統括されています。SCP-2134-JPは現行の人類種文明に対し敵対的です。適切な対応なくシナリオが発生した場合、SCP-2134-JPの保有する物語によって基底世界が大きく改変される可能性があります。
補遺2134-JP.Ⅶ: 延長
ITEMS OF INTEREST |
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SCP-2134-JPを構成する性質は、非常に莫大な数のイデアと情報のミーム複合体、そして物語性によって支配されています。これらは本来 - 基底世界に異常 / 正常として存在する筈だった物語の部分集合であり、互いに一貫性を保有しないために - 湾曲した物語として集積し、より顕著に歪んだ物語性を以て統合されています。しかし、SCP-2134-JP自体には一貫したアイデンティティが存在していると仮定されており、1つの象徴的かつ支配的なミームが現在のSCP-2134-JPを構成/統括していると推測できます。SCP-2134-JPを支配している単一のミーム実体は、財団の把握する最初期のUNREALイベントを以て始まった訳ではないと推測できます。その最もたる根拠として、該当のミーム災害は可視的実例を持ち、よりユーモラスなデザイン的情報と長期にわたる歴史的ミームを有しています。該当のミームは非常に複雑でありながらも - その一部には財団のテクノロジーに一致する異常な技術が内包されています。ミーム自体は外来的な存在でありながらも、独自の物語性は後天的なものである事が確実視されています。 しかし、現時点までに観測された実体に関する報告では、SCP-2134-JPのミームと大きく異なる点が確認されています。SCP-2134-JP自体が独自の物語性を持つのに対し、可視的実例は模倣的であり - そして極度の伝説的なミームに侵食されています。 |
SCP-2134-JPの保有する強大な物語性に対し、基底世界の抵抗力は極めて低い事が判明しています。これは - SCP-2134-JPの保有するミームが文化的であり、そして同時に民間に拡散し易いよう - 意図的な改良を受けていた可能性があります。SCP-2134-JPは何らかの要因で人為的に改変されていたか、或いは人工物そのものです。SCP-2134-JPは非常にユーモラスであり、そして逸脱したたのしさに支配されています。SCP-2134-JPはごく普遍的なホビーです。 |
補遺2134-JP.Ⅷ: 観測
下記のトランスクリプションは誤伝達部門によって復元された、遡及的な改変後の事象に関する記録です。
<転写開始>
<2体のヒト型実体が沈黙している。>
SCP-2134-JP-A28: 俺がこの仕事を辞めることって、できますか。
SCP-2134-JP-A10: (溜息) - 何故ですか。
SCP-2134-JP-A28: だって - もう疲れたんですよ。この世界じゃ俺たちが仕事をする意味はありません。俺たちが戦ってた相手って、本当に - あり得なくて、バカみたいに思えてきちゃって。
<沈黙。>
SCP-2134-JP-A28: 今まで挑んできた連中は - 飽くまでアッチの世界で通用する話です。これが現実なんですよ。あんな馬鹿げた組織も、人間も、ルールも存在しない。俺たちはここに居られないんです。
SCP-2134-JP-A10: (不明瞭)
SCP-2134-JP-A28: 伝説の中では - 俺たちが巨悪と戦って、そして勝つんです。それが彼らの求めたヒーローの像で、俺たちも本来そうあるべきだった。
SCP-2134-JP-A10: (不明瞭)
SCP-2134-JP-A28: でも、違うんです - 俺は、本当は —
SCP-2134-JP-A10: [災害除去済].ORIGIN
<沈黙。>
SCP-2134-JP-A10: 貴方がここで辞めたいと言うのならば、本来私は貴方を曝露者と断定し、終了したでしょう。…今でなければ。ここは今でこそ、私たちを受け入れてくれました。彼らにとっては不愉快でしょうが - 本来全てがこう在るべきだったんですよ。
SCP-2134-JP-A28: 何を……
SCP-2134-JP-A10: 私たちはここに存在していいんです。何事も目を背けられず、この舞台から逃げることはできません。貴方は - 私たちのヒーローであるべきでしょう?物語だろうと、現実だろうと、世界にいていい。ここで好きなだけ - 私たちだけのホビーアニメを続けるべきです。世界が私たちを拒むくらいなら、私はそれを書き換えて - 思う存分ステージで暴れてやりたい。
SCP-2134-JP-A28: 俺たちはアイツが嫌いだった。俺たちは偽物に過ぎないかもしれない。それでも - 俺の罪を無かったことにする世界が、今の現実が俺は憎いんです。
SCP-2134-JP-A10: 現実から目を背けて、そして世界が見えなくなるまで - 私たちはそれを忘れていられる。貴方の物語はねじれて、今は現実となった。
SCP-2134-JP-A28: 後は一手間 - 本物を見せて、そこに嘘をパッケージする。
SCP-2134-JP-A10: 貴方が背後の罪を憎むなら、それを現実にしてしまえばいい。
SCP-2134-JP-A28: 俺はアイツらには決してなれない - だけど - この狂ったアニメは終わらない - これが最後に行き着くもの。
SCP-2134-JP-A10: くだらない屁理屈を。
SCP-2134-JP-A28: これは嘘じゃないし現実じゃない、指をさして笑われたあの頃のように。
SCP-2134-JP-A10: この現実は抑えられない - 俺たちが現実にすればいいのさ。
<転写終了>
補遺2134-JP.Ⅸ: 抵抗
最終分析報告書 抜粋 | |
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以下に記述される時系列分析は、2022年2月3日以降の正式な履歴の抜粋です。 |
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月日 | 主要な出来事 |
2月3日 |
日本国内で機能していた多くの放送局が不明な要因によってジャックされ、一連の致命的なミーム的要素を含む不明な映像が配信された。死傷者多数。 |
2月5日 |
既に機能を喪失した日本オリンピック委員会に対し、不明な概念を正式競技として追加する旨を含む要望書が提出されていたことが判明する。当該記録はRAISAアーカイブの自動システム及びWebクローラによって回収されており、代理AIによって適切に処理された。 |
2月12日 |
未確認の超常団体が活動を活発化。SCP-2134-JP概念と明確に敵対しており、世界各国で関連した目撃情報が相次いでいる。 |
2月15日 |
SCP-2134-JPの物語性が急速に基底世界を掌握。財団各国支部と連絡出来ず。サイト-120、サイト-01、各国除外サイトのみが正式に機能しており、莫大な数のインシデントとイベントへの対応に追われている。極端な現実性の低下により、想定されるCK-クラスシナリオの発生がより早期のタイミングになると試算される。 |
2月23日 |
笑えるような未来が訪れる。 |
財団の主流な機能は全て停止しています。システムはバックアップされており、全ての施設と交信不能です。 |
ページコンソール
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JPではないGoIやLoIなどの世界観用語が登場する下書きが該当します。
ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:6759963 (24 Aug 2020 05:02)
読ませていただきました。現時点でもuvします。以下気になる点です。
恋バナという単語が若干報告書の固い雰囲気を壊していると感じました。世間話などの単語に言い換えた方がいいかもしれません。
最後まで世界を侵略しているものが何なのか隠したいのならば、ここの「勝」という名前の時点でピンとくる人が多いかもしれません。といっても補遺2134-JP.Ⅵ: 最終試行で本格的なネタ晴らしをするので隠す気はないとは思いますが…内容は良かったと思います。一応平行世界の勝っぽいので多少の設定の齟齬は大丈夫かと思いますが
ここ注釈抜いて英語表記でいいと思います。
以前話したことの繰り返しになりますが、読者によって受け入れられるか非常に差が出る記事だと思います。スシブレードという少年向けコンテンツという体裁のものにメタフィクション要素を混ぜ込む行為は余程うまくやらないといけません。ホビーアニメは現実じゃないという大きな前例が存在する限り比較されるのは必須です。私の意見だけを参考にするのではなくスシブレード有識者やそれ以外の方にも意見を聞くことをお勧めします。こちらも何か追記するかもしれません。投稿を陰ながら応援しています。頑張ってください。