闇寿司ファイルNo.900 "ハッカクキリンの握り"

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バルセロナの植物園に植えられたハッカクキリン

概論

ハッカクキリン(白角麒麟)とはサボテンに似たトウダイグサ科の多肉植物で、強力なカプサイシン類似体であるレシニフェラトキシンを高濃度で含み尋常ではない辛さを誇る。ハッカクキリンの握りは分類としては野菜寿司の一種になる。野菜寿司は伝統的なものでもカッパ巻きやナスの握りがあり、ピーマンの握りなども闇寿司としては一般的なレパートリーである。サボテンもまたメキシコでは食用サボテンが盛んに食べられている。
カプサイシンは痛覚神経末端のイオンチャネルTRPV11に特異的に作用し活性化させる。TRPV1は痛覚・熱・辛さを伝達する神経にのみ存在する。トウガラシを食べると舌が焼けるように感じるのはそのためである。レシニフェラトキシンもまたTRPV1に特異的に作用し、カプサイシン比で1000倍もの活性を持つ。ちなみにワサビやカラシなどに含まれるアリルイソチオシアネートや、ショウガなどに含まれるジンゲオール・ショウガオール、サンショウに含まれるサンショオールなどは作用機序が異なる2
雑な書き方をすればハッカクキリンはトウガラシよりも1000倍辛い3訳だが、トウガラシも辛さのないピーマンからメキシコで一般的なハラペーニョ、日本でよく見られる鷹の爪、辛さで有名なハバネロ、触れるだけで手がただれるキャロライナ・リーパーなどピンからキリまである。今回使用するハッカクキリンは闇寿司実験農場4で栽培された、限界までレシニフェラトキシンの含有量を高めたものを用いる。
レシニフェラトキシンはトキシン、毒と名前が付くように激烈な作用を人体に引き起こす毒物である5。ハッカクキリンは園芸植物として栽培されることがあるものの、その樹液に素手で触れると化学火傷を引き起こす。取り扱いには十二分に気を付けなければならない。間違っても食べてはならない。

スシブレード運用

攻撃力

防御力

機動力

持久力

重量

操作性

スシブレードとして特筆すべきところはやはり過剰な攻撃力であろう。基本的な話として、スシブレードの味はスシブレードの性能に密接に関係する。旨ければ強いというほど単純なものではないが、辛さが攻撃力と機動力の向上と持久力の低下を引き起こすことはよく知られている。ハッカクキリンの辛さは通常の範囲を超えており、操者の痛覚をも焼き操作性も低くなる。野菜寿司でありセルロースの固さが並程度の防御力を担保し、重量はやや軽めとなっている。
ハッカクキリンは握りの形で寿司としており、スシブレード回転時内部の乳液が飛び散る。これが非常に強力な攻撃手段となりうる。飛び散った乳液が相手の寿司に掛かれば、それだけでその寿司は食べられないほど辛くなる。それによる寿司性質の変容によりスシブレードの暴走やコントロールの喪失などが狙える。相手の意思力次第ではそのまま相手の寿司を逆に操作してしまう事さえ可能であろう。フグ肝の握りの無味無臭のテトロドトキシンとはそこが大きく異なる。またフグ肝などの毒寿司と同様相手へのダイレクトアタックも効果的だ。
その尖りきった性能から短期決戦こそ華となるスシブレードと言えよう。
なお、取り扱いにはゴム手袋などの着用をお勧めする。触れた手で目などの粘膜を触ってはならない。

他の活用法

ハッカクキリンの原産地はアフリカのモロッコ、アトラス山脈周辺であり、現地では軟膏の形で皮膚発泡薬6として用いられる。またレシニフェラトキシンは特異的に痛覚神経にのみ作用するため、痛覚神経を疲弊させることによる鎮痛剤としての利用も可能である。他の感覚神経や運動神経などに作用しないためモルヒネなどのオピオイド系鎮痛剤より優れており、常習性もなく効果も半年近く持続する。無論、激痛によって激痛から解放するという方法論であり、処置には麻酔が必要であるなどの問題もある。これをヨウ素化して神経伝達阻害剤とする薬剤もあるがこの辺りの話は学問的すぎるため本報告書では省く。
食用には適さない。

寿司概念

伝統性

食可能性

食関連度

回転適応度

寿司言語力

正常性

このファイルを読む読者は「これが寿司と言えるのか?」と疑問に思うかもしれない。しかし、これは紛れもなく寿司である。SUME-CI7に所属する私がハッカクキリンの握りの寿司性について、何故寿司と言えるのかについて、なぜ本報告書がDeletedカテゴリに送られないかについて説明を行おう。
まず一見問題に見える点としてとても食べられないという点であるが、食に関係するならば必ずしも寿司は食べられるもので無くともよい。フグ肝の握りが良い前例である。
そうすると、フグ肝は魚肉であり寿司の元型に近いから、という意見もあろうがハッカクキリンも植物であり、野菜寿司の前例は多い。これがレシニフェラトキシンそのものを寿司として回す、という発想ならばとても許されるものではなかっただろう。
更に追記するならば、同じ毒でもレシニフェラトキシンは辛さという味を極めた化合物である。無味無臭の神経毒などよりもよほど食に関連する。カプサイシンとレシニフェラトキシンの関係は言ってしまえばショ糖に対するサッカリンの関係に似る。同じトウダイグサ科のマンチニール8の握りなどではやはり厳しかったかもしれない。
以上を併せ考えて、ハッカクキリンは明確に寿司と言える。
…… もう一つ付け加えるならばSUME-CIの同僚への根回しもした。無論、明確に寿司ではあるが誤解される恐れはあった。SUME-CIに所属する本人が使う寿司の評価は本人抜きで行われるがこうした飛び道具は必要である。
SUME-CI所属闇寿司構成員の使うスシブレードが逆説的にグレーゾーンの強力な寿司が多いのはつまるところそういう理由である。
ちなみにこの場合の食可能性とは口に入るかというレベルの話であることを明記しておきたい。繰り返しになるが間違っても食べてはならない。

エピソード

そしてなぜそこまでして強い寿司を求めたか?これは言うまでもなく闇寿司という組織は弱肉強食であり、その中で幹部の座を狙うために他ならない。闇寿司四包丁やスシの暗黒卿といった大幹部となるには闇親方に認めてもらうかスシブレード勝負にて勝利し実力を知らしめす以外にはない。構成員を競い合わせることで闇寿司全体の実力を向上させようという仕組みであるわけだ。

回らない寿司協会のエージェントを数人ハッカクキリンの握りで蹴散らし、感触を得た私はすぐさま次の目標を闇寿司四包丁の一人、隠し包丁のスニークに移した。数多くいる闇寿司四包丁9の中でも手頃な強さであり、なおかつ奴の所在も割れているからだ。当然、待ち伏せして不意打ちによる勝利を狙う。スニークの使うシビカララーメンに対して、シビ、サンショウの辛さはともかくカラ、トウガラシの辛さではこちらのハッカクキリンの握りが大きく上回っている。高温による寿司劣化も野菜であるハッカクキリンには重大な影響を及ぼさない。総合的にみて相性有利と言える。
スニークが拠点とする某回転寿司チェーン店付近の茂みに隠れ、待ち伏せていると日付が変わるかと言う時に奴が帰ってきた。奴が裏口のドアの鍵を開けようとする瞬間私はハッカクキリンの握りを構え襲い掛かった。

「「3、2、1、へいらっしゃい!」」

驚いたことに、不意打ちが来るとわかっていたかのようにスニークはシビカララーメンを構え、私と同時に発射した。
シビカララーメンとハッカクキリンの握りは激突、ハッカクキリンの握りはシビカララーメンの石焼鍋様の器にはじき返され私の方に、正確には私の口へと跳ね返ってきた。
これは、スシブレードの裏技の一つ、リバース・マウス・アタック!スシブレードの敗者は原則として自分のスシブレードを食する訳だが、スシブレード対決の中で強引に相手自身にそのスシブレードを喰らわせる事で逆に勝利と判定する超高等戦術!
しかし私のハッカクキリンの握りは……

高速で思考する中、私のスシブレードは私自身の口の中に滑り込んだ。


























気が付くと目の前に天井が広がっていた。私は人工呼吸器に繋がれており呻くことも出来なかった。掛け時計が目に入る。時計の短針は2時を指している。舌や消化器、及びその周辺の感覚は無である。
しばらくしてスニークが入ってきた。どうやらここは奴のアジト、某回転寿司チェーン店地下医務室のようだ。スニークは湯気立つシビカララーメンを手にしている。

スニーク: 無様ですね、機織さん。

私、機織は精神酢飯接続でスニークと会話することにした。

機織: (スニーク、貴様なんのつもりだ?)

スニーク: なんのつもりもなにも、いきなり大声を出して倒れた闇寿司ブレーダーを放っておくわけにもいかないじゃないですか。闇寿司医療スタッフ達に感謝してくださいよ。しかしハッカクキリンでしたっけ?ずいぶんと辛い香辛料みたいですね。あなたはすぐに胃洗浄をしたのに気道と食道が腫れた肉で塞がっているとか聞きましたが。

機織: (…… なぜ俺の寿司の詳細について知っている?まさか!)

スニーク: ええ、SUME-CIの友人から聞いていました。私を狙っているとも。あの茂みはちょうどいい場所にあったでしょう?

なるほど私の完敗である。スニークの方が一枚も二枚も上手であった訳だ。狙われていることがわかっているならば奇襲を受けたのはむしろ私の方だ。
スシブレードにおいて寿司に凝ることは必要であるが、実際の勝負には様々な要素が介在する。そこをおろそかにし過ぎたのが敗因という訳だ。
邪道を行っても外道に堕ちるな。その限りにおいて強力な寿司を求めるのは闇寿司ブレーダーの本能のようなものだが無論闇寿司ブレーダーの適正はそれだけではない。強力な闇寿司をどう運用するか。そこが問われた勝負だった。
私はこれを反省点として闇寿司ブレーダーとしての更なる高みを目指す所存である。
ともかくまずは、体を治すことから始めよう。













スニークはあくびをしながらシビカララーメンをテーブルに置いた。ラーメンは私とのスシブレード勝負で使ったものとは異なりまさにいま作ったばかりのようで、スシブレード化も為されていない。
更に包丁と箸を取り出す。

スニーク: このハッカクキリン、私のシビカララーメンにも応用できるかもしれないですね。色んなトウガラシを使ってみましたが上には上があるということでしょうか?

スニークは私の持っていたタッパーから予備のハッカクキリンを取り出し、それを細く刻み、数切れをシビカララーメンに落とし、かき混ぜた。

スニーク: とりあえず試食させていただきます。夜まで根田くんを捜索していて夕飯も食べてないんですよ。あなたの意識が回復するまで待ってましたし。…… ではいただきます。

スニークは手を合わせ、シビカララーメンの麺を持ち上げ、一気に啜った。





















闇寿司四包丁の叫びが夜陰に響き渡った。

関連資料

闇寿司ファイルNo.031 "ワサビ寿司"
単純にワサビを増量したもの、ネタをワサビに置換したもの、シャリをワサビに置換したものとバリエーションが多い。

闇寿司ファイルNo.2000-ARC "シャリカレー"
スパイスの一つにハッカクキリンを推薦したが、禁断のシャリカレー計画は凍結された。

ゲノム編集入門
遺伝子組み換え食品は闇寿司の規制には当たらない。

精神酢飯インターネット法
精神酢飯接続を応用すれば療養中でスマホが無くてもネットが出来る。精神酢飯ネットワークから中継することになる。

Youtuber名鑑
Youtubeを見ていたが、ハバネロやら激辛ソースやらを舐めるユーチューバーはそれなりにいてもハッカクキリンを食べたユーチューバーはいないようだ。

文責: 機織経緯


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