闇寿司ファイルNo.1225 "寿司パン"

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オープンサンドイッチ1も寿司パンの一種と言える

概論

寿司パンあるいはパン寿司とはシャリをパンに置換した寿司である。握り寿司のシャリをパンに置換したものが多いが巻き寿司のシャリ及び海苔をパンに置換したものも見受けられる。
単純にシャリをパンで置き換えても食べれるものではあるが、本格的には繋ぎにアボカドを使う場合も多い。つまりネタをそのままに、炭水化物のシャリをパンに、緑色のワサビを同じく緑色のアボカドペーストに、という具合だ。この場合のネタは通常の江戸前寿司同様の魚肉あるいは魚卵を前提としている。魚とパンはどちらもアボカドとの相性が良いからである。

アジア圏の主食は米であるが世界、特に欧米圏での主食は小麦のパンである。欧米人には未だに寿司に忌諱感を抱くものも少なくない。カルフォルニアロールなどは海苔の裏巻きによって海苔に対する忌諱感を減じたものであるが、寿司パンは闇寿司の世界進出に当たり重要な役割を果たすかもしれない。

スシブレード運用

攻撃力

防御力

持久力

機動力

重量

操作性

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スシブレード運用の点から通常のシャリを使った寿司(チャート赤色参照)と寿司パン(チャート青色参照)との比較を行うと、多くのネタで同ベクトルの違いが見受けられる。
後述の理由により今回は比較にそれぞれのネタはティラピア2の握りを用いている。

通常の寿司と比べ寿司パンは攻撃力・機動力が減じるが、防御力・持久力に優れている。これは通常の寿司は酢飯の粘着力によるネタとの一体感での衝撃、そして土俵との摩擦力による加速により攻撃力・機動力が上回り、寿司パンはパンの弾力による衝撃吸収・滑らかな表面による土俵との摩擦による速度減衰の少なさが防御力・持久力の優位に繋がっているのだと思われる。
酢飯と比べパンは空洞が多く、重量はわずかに軽くなる。空洞が多いが故の柔軟さが故に操作性はある程度高くなる。

総じてどちらが優れていると言えるものではないが、持久戦には寿司パンが優れていると考えられる。機動力は低いため突っ込んでくる敵の寿司に対し闘牛士のごとく躱すという戦法が有効となってくるであろう。

また、もちろんパンに慣れ親しんだ欧米出身のスシブレーダーとの相性も良いだろう。カルフォルニアロールを欧米人のスシブレードの入門とすることもあるが、寿司パンも大いに可能性がある。

他の活用法

寿司パンは魚とパンで構成されている。このことから何か思い出さないだろうか?
そう。キリスト教、聖書の記述である。
イエス・キリストは大麦のパン5つと魚2匹を5000人に分け与え全員を満腹にさせたという「パンと魚の奇跡」がある(『ヨハネによる福音書』6章第5節-第13節)。
また、イエスは使徒達との最後の晩餐の際にパンを取り「これが私の体である」といい、盃を手に取り「これが私の血である」と言って弟子たちに与えた(『コリントの信徒への手紙一』11章第23節-第26節)。
それに、12使徒の内ペテロ、アンデレ、大ヤコブ、ヨハネは元漁師なのであるが、ペトロはイエスに「魚ではなく人間を取る漁師になれ」と諭され弟子になったという(『ルカによる福音書』5章10節)。史的イエスはガリラヤ湖畔で宣教活動を始めた。それ故元漁師の弟子が多い訳だ。

そもそも神話には食べ物に関するエピソードは多い。
黄金の林檎は北欧神話とギリシャ神話の両方で不老不死の源とされる。黄金の林檎とは花と実を同時に付ける奇妙な黄色い果実、オレンジやレモンのような柑橘類を指すとも言われる。
東南アジアやオセアニア、日本、南北アメリカで見られるハイヌウェレ型神話では殺された神から作物が生じたと説かれる。インドネシアを中心に世界中で散見されるバナナ型神話ではバナナと石の内、人類は食べられるバナナを選んだが故に死すべき運命を背負ったということになっている。
バナナ型神話は日本ではニニギの婚姻に置き換えられ、旧約聖書では亜流として知恵の樹の実と生命の樹の実の話となっている。知恵の樹の実=禁断の果実は俗説ではリンゴとされる場合も多いが、ブドウやイチジク、あるいは西アジアで親しまれるマルメロ3や新大陸原産のトマト、穀物であるコムギだと考えられている場合もあり、イスラム圏ではバナナと想定されているという。

食は神話に通ずるものであり、寿司パンはキリスト教のミームと合致している。それをどのように利用すべきか?聖霊である。

キリスト教の神は三位一体といい、「父」と「子」と「聖霊」という3つの位格を持っており、それら全てが等しく神であると説かれる。3つ組の神もインド神話のシヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーや日本神話のアマテラス、ツクヨミ、スサノオ等々非常に多くの類型が見られるが、それらが同一のものであるとされるのは興味深い。

能力ある寿司ブレーダーは自らの寿司から聖霊を現出させることが可能である4
例えば闇寿司恋昏崎店を任せているルベトゥス睦美はバラムツ寿司を専門としており、強力な聖霊を寿司より現出させて敵を葬っている。
現東京都知事のマドンナリリーはマダコの握りから甲冑武者様の聖霊を出す難敵である。
かくいう私も聖霊を出すことは出来る。必ずしも聖霊を出す事がスシブレード対決に有利に働くわけではない為余り披露はしないが、余程特殊な寿司でなければその寿司の聖霊を出せると自負している、ちなみにラーメンの聖霊は中華丼を頭から被った半裸の中国人の姿をしている。

聖霊(Holy Spirit)、ただ単に言葉が被ったのではなく深い意味の重なり合いが存在する。
そういう訳で、寿司パンを触媒として聖霊を現出させることで、父と子と聖霊の神、キリスト教の全知全能の唯一神を手中に収めることが可能になると期待できる。それにより我々闇寿司による力の追求も一つの到達点へと達するかもしれない。

エピソード

以上の実証実験のため私はイスラエル、ガリラヤ湖畔まで飛んだ。

今回の寿司パンで使うネタはティラピアの中でも聖ペトロの魚とも呼ばれるマンゴーティラピア(Sarotherodon galilaeus)を用いた。
パン部分は、西方教会の流儀では聖体として食べられるパンは無発酵パンなのであるがこれは寿司パンには合わないので東方正教会の流儀に従い発酵パン5を用いた。
アボカドについては現地で購入したものを使用した。中央アメリカ原産の果実には上手い工夫が見つけられなかった。

寿司パンに合わせるために赤ワイン6の入ったワイングラスを用意した。寿司パンを回すときに箸頭にぶつけるのに使う。箸自体も変えようかとも思ったがこれも現地で購入したものを使用するに留めた。

日時は12月25日未明。イエス・キリストの伝説的な誕生日に合わせた格好だ。いや、正確にはキリスト教徒の見解でもクリスマスはキリストの誕生日ではなく誕生を祝う日でしかない。
元々古代ローマのミトラ教において冬至の祭りに不滅の太陽が生まれる日として太陽神ミトラを祝っていたというがそれが転用されていった形であるらしい。古代人が冬至を境に短くなっていた日照時間がまた長くなっていくことに神秘性を見つけた訳だが、元旦なども冬至由来であることを考えると同じ事を何度も祝い過ぎている気もする。

本実験の為に二人の闇寿司四包丁を同行させた。
一人は赤髪赤眼の吸血鬼、十字包丁のブラッド。もう一人は闇寿司本社工場7工場長、食品機械用切断刃のリネームである。

ブラッドは現地に到着した後も疑問があったようだ。
「闇親方、選ばれたのは光栄ですが何故我々二人という人選なのですか?」
「ああ、実験の観察と聖霊現象の理論化、あわよくば聖霊の量産のために技術者としてリネームを呼んだんだが、リネームにブラッドを同行させろと言われてな」
「…… リネーム、何故私を?」

リネーム、身長約160cmの眼鏡を掛け作業服を着た日本人男性は常に完全な無表情であり、問いに首も動かさず答えた。
「吸血鬼であるブラッドさんには聖霊の聖的要素による影響を測るための計器として同行を願いました」
「え?は?」
「吸血鬼の肉体は銀や十字架、流水などによって傷つけられるという情報からキリスト教実在による影響力を測ることが可能だと推測しました」
「人のことをなんだと思っているの?」
「白木の杭で心臓を貫かれないと死なないと聞き及んでいますので」
「あんたねえ……」
リネームは完全に社会常識や共感性が喪われているが技術者としての腕は確かである。今回の聖霊実験においても有益な研究結果を導く一助に成り得るかもしれない。

そして実験を開始した。リネームが実験観察のため機材を並べ、計器をブラッドに取り付けていく。リネームは更に朝食兼不測の事態のための自衛手段として寿司桶8を傍に置いた。
ブラッドは困惑しながら様子を見ている。

私は寿司パンを回し始めた。ここまで条件が揃えば聖霊はどう作用するか。そういう実験である。
聖霊を自在に出すことぐらいは私にとって容易い。取り立てて精神を集中させるなどするまでもない。
寿司パンは高速回転を始め、その上部に像を結び始める……



…… 空が黄金色に輝く。
聖霊の像は茨の冠を被った偉丈夫だ。別に聖書に神の偶像が載っている訳でもないが、どことなくキリストかヤハウェを想起させる姿だ。
現在時刻は午前2時を過ぎたところ、しかし夜のガリラヤ湖畔はまるで昼間であるかのように照らし出されている。地平線の向こうまで闇が祓われたようにはっきり見える。

「我を地上に呼び出したのはお前か」
驚くべきことに聖霊が喋り出した。傍にいたブラッドは悲鳴を上げて蒸発しかかっている。リネームは虚無的な表情で計器を見ている。

この実験は明らかに危険すぎる。そう判断してスシブレードを止め聖霊を消そうとした、が出来ない。スシブレードが操作を受け付けない。
それどころか私の体が宙に浮き始めた。

「お前は預言者となり千年王国の王として民を導け」
聖霊が私を指さしそう告げる。
ガリラヤ湖畔は現実性が薄れ幻想的な情景を映す。
白、赤、黒、青色の馬に乗った騎士がどこからともなく表れた。
これは、まずい。

白い服を着た人々が集まり、地が揺れる。
上空から七人の天使が降りてくる。
スシブレードの回転音が耳をつんざくように響く。

「これより終末が訪れん」
聖霊が全てを指揮するかのように宣言する。
天使達がラッパを口に付ける。


その瞬間聖霊の姿が崩れ始めた。周囲の幻像もまた乱れて、夜闇が再び周囲を覆っていた。私の体は地に落ちる。
スシブレードの回転音はさらに高く大きくなり、頭が痛くなるほどだった。
聖霊が私を睨みながら話しかけた。
「至高の存在になる機会をふいにするのか?」

然り、止めることが出来なくなった寿司パンブレード、しかしその回転を助長することは出来た。
暴走回転を続けたスシブレードはスシフィールドの保護も追いつかない力で自壊していく。
自立した寿司の精霊であったが、やはり私の寿司であり、私が使う寿司であるのだ。

「何が至高の存在だ。お前は結局寿司に過ぎない。…… 目的のために手段を選ばない奴らが多いヴェールの裏側の組織の中で、俺達は確かに手段にこだわる。寿司こそが俺達の唯一無二の手段で、寿司の強さこそが俺達のプライドであり存在証明だ。寿司という手段のために目的を選ぶことだってある。いつも掲げている世界征服という目的も寿司の可能性を示すための一貫に過ぎない。だが、手段は目的ではない。そこははっきりしている。寿司に目的を決められるなんてまっぴら御免だ。俺達にとってお前は寿司で、所詮、俺達にとって寿司は道具に過ぎん。道具が主人を動かすな。消え失せろ!」

話しているうちに聖霊の像は崩れ去り、超高速回転の末に寿司パンは爆ぜて粉々になった。
何事も無かったかのようにガリラヤ湖畔には静寂が戻った。
あのまま聖霊の言うとおりにすればこの世界は天の国に至ったのであろうか?そうだとしても、私はそれを望まない。世界を動かし変えて行くのは我々の作った寿司ではなく、我々自身であらねばならない。

ブラッドは灰のようになっていたが、血を与えれば蘇るだろう。たしか輸血用の血液パックも持ってきていたはずだ。
リネームは変わらず計器類を見ていたが、ふいに寿司桶からシアトルロールを取り出して食べ、顔を上げてこちらを見てこう言った。

「よくわからなかったのでもう一回やってもらっていいですか?」
ふざけるな。



結果として、あまりに条件を寄せた聖霊召喚は聖霊に寿司が持っていかれることが判明した。人の身では神は支配しきれないという訳だ。

しかし、これはキリスト教の神の場合である。他にも、例えばマンゴーはヒンドゥー教の神プラジャーパティの化身とされるのでマンゴー寿司を用いてこれを呼び出すことは可能なのか?コーン軍艦ならばアステカ神話のセンテオトルでもよびだせるのか?それらを操作可能な状態で使うことは可能なのか?そもそも一般的な寿司の聖霊もスシブレーダーによって真に完全に操作されているのか?そういった派生の課題も生まれてきた。
聖霊にはまだまだ謎が残されており、スシブレード研究には終わりがない。
これからも寿司の道、寿司の力、寿司の可能性を究めるために日々研究を重ねる次第である。

関連資料

闇寿司ファイルNo.666 "寿司ピザ"
寿司ピザが引き起こしたあの禍々しき事件については忘れようもない。

旧約聖書
旧約聖書に描かれる神の姿は理不尽そのものであり「妬みの神」とも呼ばれる。

新約聖書
最後に置かれたヨハネの黙示録にこの世界の終末についての記載がある。

「聖霊について」スシアカデミア学術紀要, Vol 102 2020 pp.121-126
非常に難解であり読めば聖霊を出せるという訳でもないが、数少ない寿司の聖霊に関する文章。

文責: 闇


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