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「コッカトリス?SCP-1013のことか?」
「あれとは別物です。関連性がないと断言はできませんが」
アフリカ大陸中央部に位置する隔離サイト-F8194では様々な財団支部から派遣されてきた100を超える人員でひしめき合っている。今話している境と、俺、駒込も日本支部から来ていた。
雑多に並べられた資料にホワイトボードに書き連ねられた数式。そして色々な景色や事物を映すモニターに用途の掴めない観測機器の数々⋯⋯
「で、そのアノマリーがここにいるの?」
「いえ、統計学的にその存在が想定されているに過ぎません」
「は?」
境は山と積まれた紙の束から必要な資料を引っ張り出した。
「財団統計学部門を中心とした研究によりこの地域に反ミーム実体による影響があると結論付けられ、正式なナンバーが付与されるまでの間コッカトリスと仮称することになりました」
「コッカトリスっていうとアレだろ?鶏で尻尾が蛇になってるとかなんとかで、視線で石にするとか槍で突いたら伝ってきた毒で死ぬとか水を飲めばその水場は飲めなくなるとか」
「ええ、中世ヨーロッパでは実在するとされてきましたが、それほど危険ならばどうやって見た人間が生きて帰ってきたのだ、と疑問視されたようですね。『カンタベリー物語』や『十二夜』といった創作作品、あるいは中世の幾つかの聖書の版にコッカトリスの記述がありますが、実際の記録としてはありません。しかし、コッカトリスは実在します」
境の話を俺は呑み込めない。
「想像の産物じゃないって話か?じゃあどうやって小説にできたんだよ」
「偶然の可能性もありますが、あるいは我々と同じ方法で真実にたどり着いたのかもしれません」
スクリーンに映し出される表計算データと様々な石ころの画像が載せられた資料。
「統計部門の功績です。人口統計に流産の発生率、行方不明者数などがありますが、最も不自然なのは██川流域での研究調査自体の少なさ、およびその中止回数が顕著です。そして、██川流域の少ない資料では地形中の石配置の法則性が水準より極めて偏っています」
「つまり?」
「人間が石となり、誰もそのことに気が付いていません」
資料は逆因果的操作を受けていることを暗示している。
「河原の石にしか見えんが」
「██川流域の高等動物の存在量は有意に低く、その石の配置は不自然でむしろ動物類が移動する動線上に多く見られます」
「たまたま、ではないのか」
境が示す資料の全く見栄えがしない石ころにはそれぞれその回収場所の詳細な位置が記されている。
「統計学的には、これらの内、約30%は石化した生物だと考えられており、またこの隔離サイトに来た人員の10%以上が石化されて、その記録が失われていると判断されています。河原で異常性に暴露したからこそその場にあるありふれた小さな丸い石になったのではと推測され、近傍の森では木の枝や落ち葉に変化したのではと考えられています。石化の条件は触れること、見ること、などが考えられますが現状不明です」
「なかなか最悪だな。⋯⋯ で、中世の人間も同じ研究が出来たって?」
「不思議ではないでしょう?今だって財団のような組織でなければできない事、ということは財団のように世間一般に知られていない組織があったのでは?」
「そんな組織あったっけか?」
大量に配置されたモニターを見ると、その内の半分ほどが小さな石ころを映し出している。
「アレは?」
「我々の研究の成果として、コッカトリスの卵と考えられるものを捕獲することに成功しました。完全に石へと擬態している、と考えられていますが、観察されている352個の石の内、1個以上がコッカトリスの卵である可能性は統計学的に98%を超えます」
「つまり2%ぐらいの確率でバカをしていると」
モニターが映す石ころは、ニワトリの卵よりも小さく、ウズラの卵よりはだいぶ大きいが、はっきりいって卵型というのも憚られるほど不揃いで、その材質も雑多に見える。水切り遊びに使う石に選ぶならば、もう少し扁平なものを選びたい。
⋯⋯ 突然、一つのモニターの石が揺れた。
総員30名の人員がざわめきだす。皆が足元に山と積まれた書類を蹴り崩しながらモニターに注目する。
⋯⋯ ?俺は確かに日本支部からの唯一の人員として資料を作成していた。誰にでも説明できるように。しかし、この隔離サイトの規模からいって書類の数は過剰ではないのか?いたるところに資料はあるし、その内容も書いた覚えがあるが、俺は広範な知識を持ち過ぎではないのか?確かに統計学・生物学・地質学の博士号を取った覚えはあるが⋯⋯
モニターの石には独りでにヒビが入る。背後から鶏が羽ばたく様な音が聞こえるが誰もそちらを振り返らない。
全ては記録され、財団本体に通知される仕組みになっている。
しかしその記録すらも過去から変えられてしまうのならば?
コッカトリスは何故実在を疑問視されたのだったか?
コッカトリスの卵はついに割れた。
「コッカトリス?SCP-1013のことか?」
「はい」
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ジャンル
アクションSFオカルト/都市伝説感動系ギャグ/コミカルシリアスシュールダーク人間ドラマ/恋愛ホラー/サスペンスメタフィクション歴史任意
任意A任意B任意C- portal:6719937 (09 Aug 2020 13:25)
現状DVです。直接的な観測例(写真や映像および目撃者そのもの)が現存しないのにコカトリスの伝承が残っていて、それはコカトリスを直接的に観測した人間が抹消されているからということ、というコンセプトとして受け取りました。この理論が正しいとして、30人の職員が瞬時に消滅するほどのペースでコカトリスの効果が迅速に発揮されるならば、中世をはじめ直接的な観測と筆記による記録しかできない時代の人間は、それを他者に伝達する前にコカトリスの効果で消失するだろう(=コカトリスの情報は伝承としてすら残らないだろう)と思います。
また30人の職員が斉一的に消滅した中で、語り手だけが1人消されず取り残されたことの合理的説明もなされていません。コカトリスの性質に気付くことが発動条件だったとしても、他30人の職員も同時にそれを悟ったとは考えにくいです。30人の職員のうちモニターを見ていた職員のみ消失して人数が減り、遅れて目撃した職員がさらに消え、最後まで書類か何かに目を通していたり思考を巡らせていたりして確認の送れた語り手が最後に消える……というのが自然な演出ではないでしょうか。
全体の構成としては、コカトリスの情報が伝承でしか伝えられていないという根幹の要素が消滅現象の直前(というか起きている真っ最中)にしか登場していないので、情報を後出しされた印象があります。本作の大部分は間接的証拠と統計処理からコカトリスの真相に近づく様子を描写していますが、その分「伝承しか残っていない」という本作の骨格の要素があまり強く伝わって来ません。これをもっと(答えとの繋がりの明言は避けるにしても)前面に押し出す形にした方が良いのではないでしょうか。
ここは初見で意味を読み取るのに苦労しました。かつては語り手1人しか所属していなかったが、やがて人員が増えて30人の大所帯になった、という話を回想を踏まえてしているように誤読しました。消失事象が起こったこと、場面が大きく変化したことを示すために、もっと空行を挟むのが良いかと思います。
なお、似た展開や事象が発生している作品として『ドクター・フー』第5シリーズ第5話「肉体と石」が思い浮かびました。こちらでは時空間の裂け目に呑まれた人物が時間エネルギーの効果を受けて消滅し、存在ごと無かったことにされるという展開があり、次々に現実が書き換えられて直前まで実在していた人々の存在が消滅していく矛盾に満ちた様が描かれています。テキスト媒体だけですが台本も参照できますし(MARCOの台詞とその前後を追っていくと大体わかると思います)、可能なら映像も確認してみるとよいのではないでしょうか。演出のヒントになるかと思います。
ご批評ありがとうございます。
なるほど、確かに中世の記録者が物語にできる程度に観測できた理由がわからない、というのはそうですね。確かに納得感が薄いですね。理屈付けをします。中世にも財団と同等の組織があっていくらか以上の対処方法があったとか。
伝承しか残っていない、財団が架空の存在になったという骨子をもう少し書いていきたいと思います。
100人以上だった人員が30人に減り、の下りは背後から鶏の羽ばたき音が聞こえることから、誰にもわからない形でコッカトリスが侵入して、いつのまにかその場にふさわしいなんでもないもの(=書類)に変換されつつある、ということを書いているつもりでしたが説明不足のようですね。そもそも色んな手段で「石化」ができるというのも話をややこしくさせている感があるので「見ること」一本に絞った方がいいのかもしれないですね。
ドクターフーの話も参考にさせていただきます。ありがとうございました。
拝読致しました。
リビジョン18時点での批評です。
元記事を読ませていただきましたがコッカトリスと関連づけられるオブジェクトではないように感じました。どこでSCP-1013と考えたのでしょうか
現状DV寄りのNVです。内容の発想は面白いのですが
Tutu-shさんの言う様にここまでの強力な異常性を保有している場合現在より対策技術のない中世時代の人物らがコッカトリスについて言及できている事が非常に不可解である様に感じられてしまいます。また、「そうそう。現実にそんな大層な組織があるならwikidotみたいな不安定なサービスとか絶対に使わないよ」と言う文章が若干身内ネタ気味な様に感じます。「そうそう。現実にそんな大層な組織があるならそもそも一般人の自分らが見れるわけないでしょ」とかならわかるのですが……
記事作成頑張ってください。
SCP-1013のメタタイトルがコカトリスなんですよね。ENの1000コンテスト?の時に
Dr Gearsが書いた作品らしいのですが、石灰化するからコカトリスって話のようですね。
中世の観測者の言及についてはそうですね。違和感がありますし、ただの観測者ではなかったと読者に思わせる工夫をしてみたいです。
たしかにWikidot云々はやりすぎ感がありますね。一考します。
ご批評ありがとうございました。
ではSCP-1013-JPへのリンクになっているのはミスでしょうか?強力な毒性を持つクラゲの話です。
あー、すみませんミスです。ありがとうございます。