闇夜の闘牌

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闇寿司本社ビル10階第6会議室。

その夜、全自動麻雀卓を囲むのは袈裟で身を包んだ長身の闇寿司四包丁ニルヴァーナ、鋭い目で他のメンバーを睨む寿司の暗黒卿幻の銀次、眉根を寄せて雀卓を見つめるSUME-CI所属の機織、そして闇寿司の親方、闇であった。




闇寿司の幹部会議が深夜2時に終わった後、ニルヴァーナが麻雀をやろうと声を掛けた。初老の域を超えつつある歳のニルヴァーナは真夜中であるのに溌剌としており、異常なヴァイタリティを感じさせる。

ニルヴァーナの主張することをまとめると、ギャンブルの中で研ぎ澄まされる神経はスシブレード対決においても有用であり、また負けて賭け金を払うことは喜捨の精神を養い、それに麻雀牌は握るものであり横から見ると牌裏がネタで白い部分がシャリで寿司に繋がるモノで、親番やツモ順も回るのでやはり寿司である、らしい。

麻雀の誘いにまず乗ったのは銀次である。銀次もまたギャンブル狂いの気がある。そしてたまたまそこを歩いていた機織が捕まった1。それを見咎め、闇もまた麻雀に参加し、面子が揃ったという具合である。




「チー、ポン、それもポンだ!」

軽快に鳴いていくのは幻の銀次。それを見て微笑みながらテキーラを呷るのはニルヴァーナ。闇の表情は窺い知れない。機織は俯きがちに渋い顔をしている。

(ハメられたか?こいつら俺をカモにするつもりで面子に加えたらしいな・・・・・・)

闇寿司麻雀のレートはデカピン、つまり1000点で1000円。ウマは10-30で4位が1位に3万点、3位が2位に1万点差し出す。オカは4万5000点持ちの5万点返し。一半荘ごとに10万は動く計算だ。
極端な高レートといえばそうだが、まあこれぐらいならばギャンブル中毒者にとっては驚くほどのものでもない。しかし闇寿司麻雀はそれ以上にかなりのインフレルールとなっている。赤ドラは🀋🀔🀝に2枚ずつ、🀉🀒🀛🀍🀖🀟に1枚ずつ、白ポッチのルール2はないが白ポッチ牌は一枚混ぜ、それを赤ドラと数え計13枚存在する。もちろん通常のドラ、裏ドラ、槓ドラ、槓裏もある。
そして、闇寿司麻雀最大の特徴が・・・・・・


「お、ツモ!」

「タンヤオドラドラで2000オール、の三重割れ目で8倍の16000オールだ!」


割れ目というルールは元々、牌を取り始める位置、開門位置のプレーヤーの点数授受が倍になるというモノだが、闇寿司麻雀ではかなり特殊な形で採用されている。
位置には関係なく、鳴きによって割れ目状態となる。ポン、チー、カンの副露により割れ目となり、しかもここからが肝心なところであるのだが、その割れ目は重複する。
つまり裸単騎、四副露すれば2の4乗、16倍になってしまう。他家も割れ目状態になり得るのでそれらも合わせれば天文学的な点数にもなり得る。無論鳴けば鳴くほどオリは困難になり、リスキーさは更に増す。とはいえ、和了できると言う確信があればいつでも鳴くことで点数を増やせると言う業の深いルールである。

一応、誰かの持ち点がマイナスになる、ハコ割れでその対局は終了と言うルールはある。インフレルールに対応するため若干持ち点は多いがすぐにドボンするのが闇寿司麻雀だ。無論、持ち点がマイナスになった分もハコ下精算する。極度にインフレした和了によりいきなりとんでもない金額が飛び交うのが闇寿司麻雀であるのだ。




更に数半荘経過した。半荘ごとに精算し、最終的な終了局に現金で支払う形になっている。
現在トップは銀次でプラス40万円程、2位はニルヴァーナがプラス20万円程、闇はマイナス10万、機織はマイナス50万ということになる。
まだまだ夜は長いがこの半荘はこの局で南四局、オーラスということになる。

(ここは勝負するしかないか)
機織が動く。


「ポン、カン、ポン・・・・・・ これもポン」

ドラ表示牌は🀀🀚。ホンイツトイトイ白ドラ6、11飜は三倍満、機織は親であり闇寿司麻雀ルールによりこのまま和了れば36000×2の4乗、576000点になる。これだけあれば概ね借金を返せる具合になる。

しかし……


「カン。それポン」

銀次も二副露。西家の彼はこれだけで役が出来ており待ちはわからない。


「チー」

ニルヴァーナも副露。しかも打ったのはチーによって得たのと同じ🀑。純粋に割れ目の権利を取りに来た辺り悪質である。なお闇寿司麻雀は喰い替えありである。


銀次もニルヴァーナも機織を狙い撃ちしており、欲望の光が目に宿っている。


緊張感の中、牌を打つ音だけが響き渡る。


「・・・・・・ それだ。ロン!」

「ホンイツ西ドラドラ。満貫8000点の2の六乗倍、64倍は256000点!当然機織、お前はトビだな」

「グオッ・・・・・・」


そう。これが闇寿司麻雀の真の恐怖である。お互い鳴き麻雀だと信じられない点数になってしまうのだ。
銀次は得意満面で、機織は今にも吐きそうだ。


「・・・・・・ 悪いな、頭跳ねだ。ロン」

「ピンフのみ1000点の16倍は16000点。この半荘は俺がトップだな」


闇は今回の闇寿司麻雀を通じて常に闇聴3を続けている。無論この闇寿司麻雀ルールで不用意にリーチすることは得策ではないが、それにしても鳴きもしないのは特筆に値する。闇寿司麻雀においては通常以上に防御的な戦略と言える。他家の多重割れ目の和了により痛い目に会うこともあるが、放銃率もかなり低い。そして狙い撃つように裸単騎の他家から和了する。
銀次のようなエゲツない和了を狙うでもなく、ニルヴァーナのような奇怪な打ち回しでもないが、闇もまた熟練の打ち手である。

闇寿司麻雀は邪道戦術とも言われる鳴き麻雀の要素を強く抽出したルールだ。鳴くことで素早く強力な攻撃ができるが、防御力は見るも無残になる。強力な力を振り回されずに使う、あるいは強力な力の弱点を突く。これは闇寿司の本来的な思想にも繋がってくる。邪道を恐れるなという事で、賭博という勝負の中でそれが鍛錬できるというのはあながち嘘ではない。
様々な状況に即した戦術を選び、天に祈り人事を尽くし、お互いぶつかりあいながら対話を続ける。あるいは麻雀もまた一つのスシブレードなのかもしれない。




そろそろ朝が近い。徹夜麻雀は朝を迎えるとともに最終半荘となる。今回か、その次が最後となるだろう。

現在のトータル収支は銀次がプラス54万1000円、ニルヴァーナがプラス46万3100円、闇がプラス1万1300円。
機織は累計マイナス100万円にまで達した。これは機織の貯金の大半である。麻雀の歴、特にこの特殊ルールの歴が他三人とはだいぶ劣る。あるいはこの結果は予想できたものだった、が、ここに至って機織は勝負手を掴む。


「それもポン!」

3副露、跳満の聴牌、ポンさせた銀次は意外そうに機織を睨む。親は機織、これを和了れればかなり大きい。
他に誰も鳴いていなければ親の跳満18000インパチ×8=144000点、だが・・・・・・



闇以外の二人は既に裸単騎。機織がツモれば6000×8+6000×8×16×2=1584000、ニルヴァーナか銀次にロンできれば18000×8×16=2304000。当然誰か飛んでトップとなるのでウマやオカも含め負け分を返して余りある大勝ちだ。

しかしここで振り込めば・・・・・・ その先は考えたくも無かろう。




誰も声を発さず牌を打つ音だけが響き渡る。ニルヴァーナは葉巻に火を付け、金色の腕時計で時間を確認する。




やがて機織最後のツモ番が来るが、

和了ならず。そのままツモ切りする。


「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

通った。


闇もツモ切り。


「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

通った。


銀次。

「チッ・・・・・・」


「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」

これも通る。


最後、ニルヴァーナ。ニルヴァーナがここで和了牌をツモればトイトイにハイテイが付いて40符3飜、子に1300点、親に2600点、に大量の割れ目が付いて、闇に1300×16=20800点、銀次に1300×16×16=332800点、機織に2600×16×8=332800点、計686400点。


ニルヴァーナは牌をツモり、じっとり見つめる。


「ツモか?どうなんだ?さっさとしろ!」
銀次が唸るように尋ねる。



「ツモではないが・・・・・・ カン!」

「何だと!」
「加槓!?」
「・・・・・・」

加槓、小明槓。ポンしたものに更にカンする。都合二回分の鳴き、闇寿司麻雀においてそれは二回分の割れ目を意味する。
それに、槓は符を大きく増やす。このまま嶺上開花すれば、50符3飜、合計点数1686900点。


ドラ表示牌は🀘🀟
ニルヴァーナは嶺上牌をゆっくりツモり・・・・・・ それを更に己の牌の上に乗せた。



「カン!」

ドラ表示牌は🀘🀟🀀

「え?」
「おい・・・・・・」
「・・・・・・」


「更にカン!」

ドラ表示牌は🀘🀟🀀🀠


「三槓子・・・・・・ いや、コレは」
「イカサマだろーがオイ!」


ニルヴァーナは大笑いしている。

「ダハハハハハハ!いやいやこれこそが御仏の導きというモノ!仏道を通して徳を高めたが故!皆様何の心配もございません、こうして私へ財産を喜捨することによってあなた方も来世できっと解脱への道が開かれるでしょう!何、現金が足りない?ならば私の友人の金融屋を紹介させていただきましょう!少々利子がお高いですがな!・・・・・・ ダハハハハハー!死ねーッ!カン!」


「ロン」


ニルヴァーナは盲牌もせずに嶺上牌を叩きつけ、天を仰いで万歳をした。

「ツモ!」

「四槓子八重割れ目!闇親方に2048000点、銀次君と機織君に32768000点で合計67584000点!そして役満祝儀オール2万円にも割れ目が乗って・・・・・・ 闇親方なにかおっしゃいました?」


「聞こえてただろ。ロンだ。搶槓だ」

闇が牌を開くと同時に窓から光が差した。夜明けだ。



「これが、俺の・・・・・・ ラーメン闇聴数え役満だ」

ドラ表示牌は🀘🀟🀀🀠


「搶槓三色ピンフジュンチャン一盃口ドラ5、子の数え役満で、搶槓時はカンが成立しないから7重割れ目、32000掛ける128は4096000点だ。そしてウチのルールでは数え役満でも役満祝儀がつく。2万円オール、多重割れ目がついて機織は16万、銀次は32万、ニルヴァーナ、お前は256万だ。・・・・・・ 若者には優しくしてやれ」


「ガババババババ・・・・・・」
ニルヴァーナは泡を吹きながら後ろに倒れた。


機織       -117万4400円
闇        +717万6300円
銀次       +022万6000円
ニルヴァーナ   -622万7900円




徹夜麻雀の夜が明ける。


闇寿司本社ビル玄関、ATM前で清算が行われている。

「どうぞお納めください」
「うむ。どうせお前は溜め込んでるんだろうから罪悪感はないな。これは闇寿司の運営資金に足しておく」

ニルヴァーナがうやうやしく闇に600万円と22万7900円手渡す。闇はそこから銀次の勝ち分、22万6000円を分けて渡す。

「・・・・・・ 何とかプラスはプラスってところか」
「銀次、お前もイカサマしてたよな。バレないようにせこい手ですり替えを。流石にスリ師の技だったな」
「いやあ、何のことやら・・・・・・」

銀次は頭を掻き、逃げるように去ってゆく。ニルヴァーナも一礼して本拠地の青森へと帰っていった。




「で、機織、あるのか?」
「・・・・・・ どうぞ。貯金全部と財布の中に入っていた金、小銭も含めてほぼ全てでちょうど117万4400円で足りました。もう、そこの自販機でコーヒーも買えません」


闇は確認する。


「うむ。確かにあるな」
「ううう・・・・・・」






「・・・・・・ で、これが今夜の夜勤手当だ」


闇は機織から受け取った現金117万4400円をそのまま返した。


「闇親方・・・・・・ !」
「これに懲りたらもう博打なんかするんじゃないぞ」

朝日を背にして闇は去っていった。

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