ラードルフ・コナー変死事件

評価: 0+x

give me money 2022/5/19 (Thu) 18:42:10 #71236234


警察というのは本来、その国の秩序を守り、悪を懲罰する機関だ。だが、その実態には国からの圧力や癒着、裏組織との暗黙の了解があまりにも多く紛れ込んでいる。私はかつて警察関係者だったのだが、それが嫌で警察をやめた。

さて、君たちはラードルフ・コナー変死事件というものを知っているか? テレビで話題にならない日はないと断言できるほどに世間を賑わせたが、どういうわけか一瞬にしてメディアが取り上げなくなり、そのまま忘れ去られた事件だ。国にとって不都合な事実があったとか、宗教団体からの圧力だとか、いろんな噂が飛び交っていたが……。私は前者の噂を支持する__いや、それが真実だと断言しよう。

give me money 2022/5/19 (Thu) 18:47:23 #71236234


私が元警察関係者であるということは、ついさきほど話した通りだ。何を隠そう、私はこの事件を担当していた人間の1人だったのだ。私が先述の噂を真実だと断言する理由を語るには、この事件が変死事件ではなく、失踪事件と言われていたころに戻る必要がある。舞台はA市としよう。私が当時住んでいたところだ。

時刻は17時ごろだっただろうか。「息子が帰ってこない」と女性から通報があった。1日ならともかく、数日以上帰って来ないという。その息子の名前はラードルフ・コナー。事件名にもなっている。ある程度の質問や会話を挟み、その日は会話を終了し、上へと報告。翌日、上からの命令によって私は同僚や上司と共に彼らの捜索を開始した。当初、我々は楽観的に考えていた__失踪者の顔には十字架のように見える特徴的な痣があり、身長は6フィート以上。ドラゴンが描かれた大型リュックを背負い、派手な緑と黒のパーカーを着ている。明らかに目立つのだから、捜索願いのポスターを貼り付けたり、人々への聞き込みを続ければ、1週間足らずで見つかるだろうと。

だが、一行に彼が見つかることはなかった。いや、確かに目撃証言はいくつもあったのだ。そのどれもが電車内や歩道など、移動中の所を目撃されていたのにも関わらず。不自然なほど建物内で目撃されていないのにも関わらず。彼がどこに行ったのかを知る者は1人としていなかった。

give me money 2022/5/19 (Thu) 18:53:19 #71236234


通報から2カ月経過。このころになると、我々の間でラードルフ・コナーはすでに死んでいるのではないかという疑惑が浮かび上がっていた。いや、ほぼ全員が確信していたと言っても良いだろう。近辺のほかの署とも協力し、捜索範囲を広げたのにも関わらず、不自然なほどに有力な目撃証言は現れなかったからだ。

だが、ある日。1つの目撃証言が寄せられた。

昨日、A市とB市の間にある森に、2人の男女と共に入っていく、バッグを背負った高身長の男を見た。

B市というのはA市の40km北側にある小さな市であり、その間にはそこそこの規模がある森が存在していた。あまり目立たず、これといった話もないために誰も注目しないようなところだった。
いわば新鮮ともいえるこの情報に、我々の確信は打ち砕かれると同時に、この捜索活動に終止符を打つ時が来たのかもしれないという思いが湧き上がった。なぜ今の今まで見つからなかったのか分からないが、無事失踪者は見つかってハッピーエンド。そう終われると思い、私はすぐに同僚2人を連れてその森へと向かった。既に外は暗く、どこからか夜鳥の鳴き声が聞こえてきていた、

give me money 2022/5/19 (Thu) 18:59:22 #71236234


パトカーを走らせて数分、目的の森が見えてきた。名前は付けられておらず、地元の人々からもあまり注目されないような、何の変哲もない鬱蒼とした森。そこでラードルフ・コナーらしき人物が目撃されたという。しかし、何よりも気がかりなのは、彼以外の2人の男女だった。ラードルフ・コナー失踪から2カ月間、新聞を読まない日はなかったはず。最初は1面記事だったラードルフ・コナー失踪事件も段々と隅のほうへ追いやられていったが、男女が行方不明になったという情報は1つも得ることはなかった。だとするとその2人は行方不明者でもなんでもなく、A市がB市、あるいはその近辺の町村に住む人間ということになるだろう。ならば、なぜ彼らはラードルフ・コナーと共にいたのか? 今言ってしまえば、結局、そのことは分からずじまいだった。

閑話休題。私と同僚2人は、鬱蒼とした森へと足を踏み入れた。懐中電灯で森の奥を照らし、地面を踏みしめながら奥へ奥へと入っていく。道中気付いたことだが、木の幹に、何か巨大なものが引っ掻いたような傷が深々と刻まれていた。当時は熊か何かがやったんだろうと思っていたが、後々調べたところ、どうやらあの森に熊は生息していなかったらしい。

give me money 2022/5/19 (Thu) 19:06:52 #71236234


森の奥に行けば行くほど、木の幹の傷の数は増え、深くなっていっていく。本当に熊の仕業なんだろうかと疑い始めたころ、同僚が何かを見つけた。
見に行ってみれば、それはどうやら丸太小屋のようだった。森の妙に開けた空間の真ん中に佇むそれはどこか異様な空気を放っており、僅かに足が竦んだ。無理やり動かしてその小屋へと近づいてみれば、周囲に立ち込める血生臭さと共に、奇妙な点に気付いた。
妙に小屋がボロボロだったのだ。ガラスは砕け散り、小屋のあちこちには木々の幹にあったような傷がおびただしいほどに刻まれていた。そして何よりも奇妙だったのが、扉が破壊されていたことだ。開け放たれていたとか、外れていたとか、そういうわけではない。いくつかの大小さまざまな破片に砕け散って、辺りに散らばっていたのだ。そして、謎の血生臭さをよく嗅いでみれば、この小屋の中から漂っているということに気が付いた。この時、私も同僚も、恐らくほぼほぼ一致する嫌な想像をしただろう。……小屋の中の凄惨な光景を。

give me money 2022/5/19 (Thu) 19:12:01 #71236234


気は進まなかったが、私たちは小屋の中へと足を踏み入れた。もしも殺人が起こっていたのなら、現場を保存し、写真を取り、上へと連絡を取らなければならない。そうじゃなかったとしても、何が起こったかを知る必要があった。
今まで以上に濃い血生臭さが鼻を突き刺す中、懐中電灯で部屋の中を照らす。……予想以上にグロテスクな光景が広がっていた。ぐちゃぐちゃになった、かつて人であったであろう肉塊が部屋の床や壁、挙句には天井に張り付き、床の溝や角に血が溜まっている。はらわたは床にぶちまけられていて、まるで噛み千切ったかのように大きく引き裂かれ、欠けていた。……何も食べていなくて本当に良かったと思う。同僚の1人は外で盛大に吐いていたし、もう一人は顔面蒼白で危うく倒れそうになっていた。
さて、この部屋を調査しているうちに、いくつか奇妙な点に気が付いた。
まず、先ほど説明した様子から分かる通り、あまりにも猟奇的で、常軌を逸した死体の状況だ。よく見てみれば、それらすべては引き裂かれたかのような跡が残っていた。頭や胴体はもはや原型をとどめていなかったので性別や身元は特定できなかったが、ほぼほぼ目撃証言にあった男女だろうと推察できる。残っていた衣服のかけらを集めてパズルのように組み立ててみるに、どうやら森に入るにはかなり軽い服装をしていたようだった。
次に、床に奇妙な幾何学模様が描かれていたことだ。血とはまた違う赤黒いもので、円の中に方位磁石のような模様が描かれていた。文字のようなものも書かれていたが、この惨劇が起きたときに擦れたせいか、判読はできなかった。近くには真っ黒な本が置かれていたが、少し目を離した隙にいつの間にか消えていた。探してはみたものの、結局見つからなかった。
そして、何よりも疑問に思った点として。目視による推測ではあったものの、肉塊の量は本当に人間2人程度だったことだ。部屋を探せば、ドラゴンが描かれた大型リュックが放置されているのが見つかったものの、ラードルフ・コナーだと判別できるような派手な緑と黒のパーカーなどは痕跡がなかった。ここで、私はある1つの可能性に気付いた。__ラードルフ・コナーは生きているのではないか。
ひとまず、私は同僚と共に現場の写真を何枚か撮り、その場を立ち去った。

give me money 2022/5/19 (Thu) 19:18:41 #71236234


後日、私たちが持ち帰った証拠を元に、即日猟奇的殺人事件として捜査が始まった。しかし、捜査の結果得られるのはいくつもの奇妙な結果だけだった。
・未知のDNAが被害者の内臓の表面から検出
・被害者は数百キロの力で引き裂かれたと推測される
・被害者のDNAを鑑定しても、合致する人物が存在しなかった
・ドアやガラスには道具で破壊された形跡が存在しなかった
・周辺の土壌で植物を枯らす未知の細菌を検出
……などなど、上げればきりがない。容疑者として挙げられたのはご察しの通りラードルフ・コナーだった。しかし、これはすぐに否定された。いくら調べようとも、彼のDNAが肉塊からは検出されなかったからだ。呪いで体が爆発したとか、エイリアンに襲撃されただとか突飛な説が飛び交ったが、正直そのどれか1つに正解があっても私は一切驚かないだろう。……少なくとも、あんなことはただの人間ではできないだろうから。
毎日マスコミが押しかけ、いたずら電話や無言電話が届く。ある種の捜査妨害にもなっていたそれにうんざりしていたころ、1件の重要な通報があった。

緑と黒のパーカーを来た男が、目の前で何かに引き裂かれた。

半ば狂乱状態でそう告げられたそれをすぐさま全員に通達。私たちは現場である林へと向かった。

give me money 2022/5/19 (Thu) 19:24:59 #71236234


現場に到着すると、通報者が茫然と立ち尽くしていた。声をかければ、我を取り戻したかのようにこっちを見た。彼は無言で林の奥を指差す。確かに、その先にそれはあった。
上半身と下半身が乱雑に引き裂かれたそれは、派手な緑と黒のパーカーを羽織っていた。つなぎ合わせれば身長は6フィートを超えるだろう。瞳孔が完全に開き切り、青くなった顔には十字の痣が浮かんでいた。
……ここから、ラードルフ・コナー失踪事件は、ラードルフ・コナー変死事件と名前を変え、しばらく世間を賑わせた。私は改めて捜査官の1人に任命された。
以前の事件と同じく、捜査の結果得られるのはどれも奇妙な結果ばっかりであり、謎は深まるばかりだった。
・ラードルフ・コナーは数百キロの力で引き裂かれたと推測される
・体内には逆さ十字型の火傷がいくつも確認された
・顔の十字の痣には深い切り傷ができていた
他にもいくつかあるが、割愛する。ともかく、彼はなぜ今になって現れたのか、そして何に殺されたのか。今となってはもうわからずじまいだ。

give me money 2022/5/19 (Thu) 19:30:11 #71236234


事件は進展を見せなかったが、何カ月経っても世間の熱は冷めなかった。陰謀論者が騒ぎ出し、この事件を元にした曲が作られ、見当違いな推理をする自称探偵も現れ出す。しかし、突然捜査中止が言い渡されるとともに、メディアは静まり返った。不気味なほどに、報道がされなくなったのだ。当然ながら私は捜査官の任を解かれ、地方に左遷された。

……しばらくして当時の上司と偶然再会した時に聞いたんだが、どうやら政府から捜査の中止命令が脅し付きで届けられたらしい。中止しなければ不幸なことが起きるぞ、と。

give me money 2022/5/19 (Thu) 19:36:43 #71236234


それ以降私は警察をやめ、独自でこの事件を調査しているが……やはり進展はない。ただ、調査していくうちに、段々と体調が悪くなったり悪夢を見るようになったりした。最初は生活リズムが崩れたせいだと思っていたが、何か違う。ものすごく嫌な予感がする。

最近、家の周りに深い切り傷のようなものができているんだ。

付与予定タグ: ここに付与する予定のタグ

ERROR

The Oda_keeent's portal does not exist.


エラー: Oda_keeentのportalページが存在しません。利用ガイドを参照し、portalページを作成してください。


利用ガイド

  1. portal:6717718 ( 07 Nov 2020 15:59 )
layoutsupporter.png
特に明記しない限り、このページのコンテンツは次のライセンスの下にあります: Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 License