夜中のドライブ

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potato 2021/7/6 (Tue) 17:43:22 #18171615


数年前に友人のDと山奥へドライブに行ったときの話だ。特にオチとかもないと思うが、暇だったら聞いてくれ。
Dはいわゆる車オタクで、新しく車を買ったから一緒にドライブに行かないかと誘われたんだ。
車には興味がないんだが、Dはドライブ中、いつも面白い車のエピソードや車関連の意味怖なんかを語ってくれるため、彼とのドライブは楽しみにしていた。

potato 2021/7/6 (Tue) 17:46:51 #18171615


大体18時くらいだったか、冬だったからすでに日が沈んで満月が上っていた。空がすごく晴れていたのが印象的だった。
Dの自宅前につき、車に不良がないかとトランクやドアを開閉していたDと軽く駄弁って車へと乗りこむ。Dは当然ながら運転席に、俺は後部座席に座った。
いつもより遠くへドライブしようということで、隣県の山まで行くことになった。
高速道路に乗り、県境をまたぐ。道中、いくつもあった街灯は段々とその数を減らして、建物もその数を減らしていく。
某コンビニ店に立ち寄ってタバコと水、ガムを買った以外、ほぼ寄り道せずに山までまっすぐ進んでいった。
Dが話してくれた話は相変わらず面白かったし、田舎の景色というものが好きなので道中飽きることは一度もない。
完全に街灯がなくなると、明かりは車の前照灯だけが頼りになる。
窓越しに見た空は、見たことがないぐらいきれいだった。Dも僅かに感嘆の声を上げていたのを覚えている。

potato 2021/7/6 (Tue) 17:48:58 #18171615


山に入ると頭上は何重にも重なった葉っぱで隠されて、夜空は見えなくなっていた。鬱蒼とした森が広がる姿は実に不気味だ。
ある程度進んだところで互いに会話の種も尽き、無言も多くなる。少し気まずかった。
山の中ほどまで進んだところ、ついにDはそんな空気に耐えかねたようで、タバコ休憩を挟んでここらへんで引き返さないかと提案してきた。俺も気まずすぎると思っていたので、すぐにその提案を承諾する。

車から出て30秒ほど歩き、某コンビニ店で買ったタバコに火をつける。
木漏れ月とでもいうべきなのだろうか、葉っぱの間から漏れる月の光に向かって、紫煙は上っていく。
半分ほど吸い終わったところで、ガタンという物音が車の方向から聞こえてきた。
Dが慌てて車のほうに走っていったので、俺はタバコを携帯灰皿でつぶし、Dの後を追いかけていった。
車を見てみると、トランクが開いていた。
俺は「走ってる時から開いてたのか?」とDに聞いてみたんだが、Dは即座に否定した。
「開いてたら走らせるときに警告音が鳴るから、間違いなくそれはない。」
じゃあなんで開いてたんだ?と聞いてみても、Dはわからないとだけ答えた。

結局、音の正体はわからなかった。

potato 2021/7/6 (Tue) 17:53:43 #18171615


山道を降りていくうちに、肩が湿気っているのに気が付いた。
タバコを吸っているときに、葉っぱにたまっていた雨水が肩に落ちてきたのかと思って特に気にしなかった。
気にしなくてよかったのかもしれない。

暫くして、後ろからコン、コンと窓をたたくような音が聞こえてきた。
まあ、撥ね飛ばされた小石が跳ねて車に当たっているのだろうとは思うが、行きはそんなことなかったのにな、と疑問に思っていた。
その時だった。急にDが叫び声をあげたかと思うと、アクセルが踏み込まれ、急加速していった。
いくら呼び掛けても反応しないDの横顔は、青白くなっているように見えた。

結局、Dはアクセルを踏みっぱなしのまま自宅まで帰り着いた。ネズミ捕りに捕まらなかったのは幸運だったと思う。
俺が下りると、Dは「また今度」と言って車にカギをかけ、すぐに家の中に帰っていった。

potato 2021/7/6 (Tue) 17:57:10 #18171615


Dは、数カ月でその新車を売り払ってしまった。売り払われるまでに何回かその車で一緒にドライブや買い物、旅行に出かけたが、その時も顔が青白かった。会話は普通だったが。

暫く、その時に何があったのかは話してくれなかった。
段々と会う機会も少なくなってって、疎遠になりかけてもいた。
だが、つい先月、二人で居酒屋に行こうと誘われた時のことだ。
互いにある程度酒を飲んでいるうちに、Dが口を開いた。

だいぶ前のことだし、お前ももやもやしてるだろ?

Dはわずかに震えながら、俺にあの時何があったかを話してくれた。
先ほど、「コン、コンと窓をたたくような音が聞こえてきた」言っただろう?Dもあの音に気が付いたらしい。
そして、気になってバックミラーを覗き込んだそうだ。

曰く、髪の毛が湿気っていた女がバックミラー越しにDを見ていたんだと。
真っ黒な、光のない目で。

そしてあの後、トランクのドアの裏側を見たところ、突いたような指紋がべったり張り付いていたらしい。
その日以来、バックミラーを覗き込むと、たまにそいつが見えることがあったらしい。

つまりはあのドライブの時、そいつが俺の後ろに居たってことだよな?ってDに聞く。
Dはそれを肯定し、謝ってきた。
俺は特にその姿を見てないから問題ないといったら、Dはこう言ってきたんだ。

今でも見えるよ。って。

potato 2021/7/6 (Tue) 18:02:19 #18171615


車じゃなくて俺の後ろに居るんだってさ。
今でも。


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